魔獣。それはこの世界に生息すると言われる生物の一種、とされている。
しかし実態はまったく別の物である。視点を魔王に移してみる。
「魔獣の生産はどうなっておる」
暗くかがり火が焚かれている玉座にて座る人型がそう聞いた。
「滞りなく生産されております」
傍らにいた人型がそう答えた。玉座に座る人型こそが魔王。魔獣を統べし人類の敵である。
そしてその玉座がある建物の外、その周囲の光景は異様であった。
地面の土から魔獣がいたるところより這い出てきているのだ。姿形こそ違えど魔獣は全て土から生まれているのだ。
そしてこの土地の土は人類が住む土地の土とは全く違う物であった。魔王が発する魔素に満ちており、魔獣の苗床となっているのだ。魔王が消えない限り魔獣はこの土地の土から湧き出るのである。
そして生れ出た魔獣は歪みを通って人類の生息域へと侵攻するのである。
以前研究者が静音に魔獣は魔素を使い生まれると話していたがそれは誤りである。正確には魔素は魔獣の腹を満たす物の一つであるのだ。魔素さえあれば魔獣は生きていける。しかし魔素は非常食でもある。
故に魔獣の草原に住む魔獣たちは腹を満たすため同じ土地より生まれし魔獣を食らうのだ。
しかし魔獣は生きれば生きるほど強くなる。それはそれまで食らい続けてきた生物、特に魔獣が持つ魔素を食らうからである。
何故人類は魔獣を倒すとレベルが上がり強くなるのか。詳しいことは話せないが単に魔獣と同じように魔素が影響しているのである。と言っても魔素は人類にとっては害ある物に近いが克服できるものでもある。
故に倒した魔獣の魔素を取り込めるのである。
そして少なからず人類が住む土地には薄くとも魔素がある。結論としては魔獣を倒さずともレベルは速度は遅いが上がることもある。
つまり人間も長生きすれば住んでいた土地の魔素にもよるが強くはなる。
逆に言えば例外もある。そう、静音である。体や精神の年齢は年相応ではあるが、転移時のレベルとしては幼子と同じレベルであった。年相応の魔素を取り込んでいないためである。
転移によって作られた肉体でも制約があり幼子同然の肉体しか得られなかったのだ。
だが静音の成長が著しく速いのは理由がある。
スキルの存在である。スキルとはレベルが上がるにつれて獲得できるものである。
しかしスキルは経験を積み得られる物とレベルが上がると同時に何の関係も無く得られる物の二種類がある。
前者はレベルの関係なしに得られるが、後者についてはレベルが低い時ほど得る可能性が高くなる。
一からスタートだった静音の状態は言わばスキル取り放題の状態だったのである。
そして経験を積み、レベルが上がるにつれてそれ相応の力を得た。
しかし問題もある。それは闘気の存在である。
戦う者であれば通常は色は関係なくとも発現するであろう事象である。
闘気の有無はかなり違うと言われている。闘気は戦闘に関係する事象を強化すると言われている。
身体能力、反応速度、武器の威力諸々・・・。故にまず戦う者は上を目指すのではなく闘気の発現を一番とすることもある。しかしどうすれば発現するのかは未だ究明されておらず、経験を積むしか方法は無かった。
静音が闘気を発現できないのはレベルと同じ状態であるからだ。闘気もレベルと同じく魔素に影響されている。闘気は生来取り込んだ魔素の量によって変動することが多い。
静音の身体は同年代と比べて取り込んだ魔素が圧倒的に少ないために闘気が発現しないでいるのである。
逆に最高の紫の闘気を発現したとされる勇者はよほど魔素が濃ゆい土地で育ち、戦うことになってからは数多の魔獣を倒し魔素を吸い成長したとされる。
以上が現在開示できる情報である。
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