静音がアルの訓練をつけるようになってから数日。魔獣の出没が増えてきたという噂が本格的に流れ始めた。
冒険者ギルドは依頼が休まず舞い込んできており、中には緊急で村などを助けてほしいという物まであった。
それにより王都の門からは毎日、武装した冒険者に限らず兵士までもの出入りが増えていた。
そんな中、アリムスは冒険者ギルドの様子を探るべくここ毎日のように冒険者ギルドにいた。今日もまた同じであった。
「ふむ・・・ここにも、それからここにも・・・」
「よぉ。アリムスじゃねぇか。何やってんだ?」
「おやダンさん。ダンさんは依頼を探しに?」
「いんや。最近キナ臭くなってきたからな。大本の様子を見に来ただけだ」
「そうですか」
「んで、何枚も地図なんて並べて何やってんだ」
「これはですね、出没したという魔獣の位置ですよ」
「魔獣の位置?そんなの調べてどうすんだ?」
「私は学者ほど知識はありません。ですが思うところがあるんですよ。歪みのない村の近辺などにどうやって魔獣は現れるのかと」
「そりゃぁどっかの歪みからコッソリと流れ着いたってのが定説じゃねぇか」
「そう。そうなんですよ。ですがこの分布を見てください」
「ん・・・ん!?」
「気づきましたか」
「あぁ、頭の悪い俺でもわかる。こりゃ異常だ」
アリムスが書き記していた地図には明らかな異常があったのだ。王都は周りにいくつもの小さな町があり、その町はまた周りに小さな村がある。そしてその村の近辺などに魔獣が出没しているとある。しかし日付が問題だったのだ。魔獣の草原の他にも王都に近い魔獣の歪みはある。しかしそれらを加味しても説明できないような点があったのだ。魔獣が現れたという日付であった。
「えーっと近場の歪みはこことここ。だが近い村にも表れているが少しおいてすぐ別の近くの村にも表れている。で、それら線を引けるように見事につながっている。アリムス。現れたという魔獣の姿は確認できているか?」
「はい。こちらのメモに」
歪みから現れた魔獣が移動すると言ってもエサに困っているのならば一番近くに現れるはず。それが別の種が全く別の位置。それも距離を考えたとしても日をまたいで現れているのが連続して起こっているのだ。
「こりゃ何かデカイやつに追い立てられたか?」
「そうなると同じ種が連続して線でつながるはずです。しかし現れたのはゴブリンからワイルドウルフだけに留まらず、湿地によく現れるというリザードマンが森になんてことまで起きています」
「異常にもほどがある。だがそうなると原因はなんだ?」
「わかりません。異常に関しては最近気づいたのですが、原因はさっぱりですね・・・」
「一体何が起こっているんだ・・・それよりももう何かが始まっているのか・・・?」
「とりあえず団長に報告しましょう。冒険者ギルドに少なからず功績を残している団の長ならばギルドに何かしら提言して聞き入れてもらえるかもしれません」
こうして二人は静音の元を訪ねた。
「ふーん、なるほどね。アリムスの資料は大体わかった。だけどギルドに言っても『で、どうしろと言うんだ』ってしか言われないよ・・・」
「やはりそうなりますか・・・」
「とりあえず当面は遠征よりも村の救援に出向いた方がいいね。益を優先するのも大事だけど失われる可能性がある命を無視することはできないや」
「わかりました。ではどう出ます?」
「とりあえず出ている依頼を見て編成を考えよう。大所帯で一か所に行くより分かれて複数に行ったほうがいいだろうし」
とりあえずダンは大抵はクランハウスにいるであろうメンバーを集めに、静音はアリムスを連れて先に冒険者ギルドに向かった。
「では、緊急会議を始めます」
幸いメンバー全員が何かしらの用事もなくクランハウスにいたためすぐに集合できた。
「とりあえず説明よろしく。アリムス」
「では私から・・・」
まずアリムスの説を説明してから本題に入った。
「とりあえず出ている依頼は数は多いけど難易度は低い物ばかり。だから今回はクランに入る前のパーティー編成で随時討伐に向かっていってもらいたいのです」
「それは構わないが、ギルドにも報告した方がいいはずだ」
「一応やっておく。他になにか気になる点は無い?」
「多分全員が気になっているとは思いますが、原因があるとしたら何なのでしょう?」
「魔獣の集団移動とは考えにくい。あるとすれば、陣取り?」
「陣取り・・・確かにまるで場所を確保するような動きに見えるが・・・まさか魔獣は王国を!?」
「わからない。それは上が判断してくれると思う。とりあえず私たちは戦えない人たちを救うことに専念しよう」
アイアン・イグニスはクランを上げて救援依頼につくことになった。
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