静音たちは救援依頼を出していた村を巡って魔獣を倒していた。
「ありがとね、ファティ。おかげで魔獣がどこにいるかすぐわかったよ」
「オダイをハズンデモラエレばソレデイイノサ」
静音の肩でビスケットを食べるファティ。
「それでどうするんだ?あらかた近辺の依頼は達成しただろう?」
「うん。それで確かめたいことがあるんだ」
「確かめたいことですか?」
「そ。確かここの村が依頼を出したのが数日前。なら、次の魔獣が近くに現れている可能性ってないかな?」
「そんなまさか・・・と言いたいが、アリムスの一件もあるし否定できないな」
「しかしそうだとしてもどこに行くべきでしょうか?まだ行ってない村はここからだと二か所になります」
「うーん。王都にできるだけ近い村に行ってみよう。外れれば御の字だしね」
静音たちは先手を打つべく出発当時は救援依頼を出してなかった村へと出発した。
そして着いた静音たちは村長に話を聞いてみたが、魔獣は現れていないとのことだった。それに候補から外した村も近いのでそちらに現れたかどうかも確かめたがこちらも外れだった。
「ふむ、予想が外れたか。まぁ危険が無いのは良いことだ」
「ううん。多分これから起こるんだと思う」
「やはり確かめるしかないのか」
静音たちは山へと入った。だが少し歩いただけでファティが騒ぎ出した。
「コワイ!!コワイコワイコワイ!!」
「どしたの?ファティ」
「ヤマにヒトキワイヤナヤツがイル!!」
「ひときわ・・・強い魔獣か?」
「わかんない。とりあえず方向を教えてくれない?」
「シズネ、イクノ?」
「行かないと。村の人が襲われちゃう」
「ワカッタ。アッチダヨ」
「ありがと、ファティ。これ、お礼ね。きつそうだから戻った方が・・・」
「ウウン、ツイテイク」
「そう・・・ありがと」
ファティの先導で山を歩いていくと一人の人物と遭遇した。
「おや。こんなところで迷子にでもなりましたか?」
「あ、いえ。魔獣を探してまして」
(シズネ。コイツ、スッゴイイヤナヤツ!!)
ファティが静音に耳打ちした。その意を汲んで静音は≪慧眼≫を発動させる。
魔族 大王蜘蛛
レベル302
結果は悲惨というべきか、恐ろしい物であった
「・・・ところであなたはここで何をしに?」
「いえ、少し探し物を・・・」
「最近じゃ魔獣がいたるところに現れるそうですのでお気をつけた方がいいですよ。でも見たところ強そうですから心配はいらないようですが」
「シズネ?」
「ご心配頂き、ありがとうございます」
「ところで探し物って・・・魔の歪みの候補地、ですよね?」
「!?」
「シズネ、何を!?」
「すみませんがね、見えるんですよ。それに頼れる友人もいましてね。その筋からあなたは魔獣に寄する者、そう判断させていただきました」
「なっ・・・」
「それにレベルも聞いたところじゃ人間の寿命じゃ到達できないほど。エルフなどと答えていればよかったものを、あなたは人間だと否定しなかった」
「ふむ・・・まさか行動を読んでここに?」
「えぇ」
「では危険ですね。排除させてもらいます」
すると人物は黒い霧のようなものを発生させた。
「マズイマズイマズイ!!アイツ、ヨクナイヨ!!」
「ファティ。戻った方がいいよ。今からちょっと飛ばすから」
「ワカッタ。キヲツケテ」
そう言ってファティは妖精郷に戻った。
「なぁ、シズネ。目の前のヤツはどれくらい強いんだ?」
「正直わかんない。レベルは高いし・・・」
「人間で到達できないほどのレベル、想像したくもないですね」
「ごめんね、巻き込んじゃって」
「何かあるとわかって着いて来たんだ。後悔はない」
「シズネはよく突っ走りますからね。止める役は必要かと」
「ありがと」
そして変貌を終えた大王蜘蛛が現れた。
「大王蜘蛛か・・・確か魔獣の上、魔族に分類されるんだったか」
大王蜘蛛は大きな両腕の鎌が印象的だった。そしてすぐさま攻撃を仕掛けてきた。
腹部を反らして尻の部分から糸を噴き出したのだ。
「せい!!」
しかし静音の炎の魔力を宿した斬撃波で糸はかき消され、さらには吹き出た糸を伝って炎が大王蜘蛛に伝播した。
「キシャァァァァ!?」
「リーシャさん、足止めを!!エラム、叩き込むよ!!」
「任された!!」
「了解です!!」
リーシャは地の魔力を使い、大王蜘蛛の周囲の地面を盛り上げ、大王蜘蛛を挟み動きを止める。
そこへリーシャが詠唱を終えた火属性の≪ファイアウェッジ≫を放つ。
大王蜘蛛に文字通り炎の楔が撃ち込まれた。
「一気に決める!!」
静音は雷と炎の魔力をフル稼働させ、手に持つ雫に魔力を込める。雫からはあふれんばかりの雷と炎が迸り、光を放っていた。
「ヤメロ・・・ヤメロォォォ!!」
大王蜘蛛からは悲痛な叫びが聞こえたが、静音はそのまま魔力を込めた。そして臨界ギリギリに到達すると、雫から魔力を解放した。
雷と炎の奔流はまっすぐ、大王蜘蛛へと突き進んだ。そして衝突すると大爆発を起こした。
エラムが刺していた≪ファイアウェッジ≫が反応して大爆発を引き起こしたのだ。
どんな魔獣が現れようとも、仲間を守るために三人が練習していた手順だった。
爆風が晴れると、そこには崩れかかった大王蜘蛛の骸があった。
「オノレ・・・オノレニンゲンドモ・・・・」
そう言い残して大王蜘蛛の骸は塵と消えた。残ったのは少し大きめの魔石だった。
「ふぅ・・・とりあえず一件落着と、言うべきかな?」
「もし大王蜘蛛がここら一帯の魔獣を呼び出していたとなるとこれ以上魔獣は出ないだろう」
「ただ、他の場所に行ったみなさんが気になりますね。魔族と鉢合わせしてないと良いのですが・・・」
「そうだね。早く王都に戻ろう」
静音たちは大物を倒した余韻に浸ることなく、王都へ急ぎ戻ったのであった。
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