ウェイル・プレインでの生活が始まって一週間が経った。
最初の数日で木柵を徐々に広げて基盤を作り、王都から届く資材で補強し、そのままフォロムのような石壁を目指しているようだった。
静音たちは変わらず周囲の警戒についていた。町の石壁が完成すれば静音たちは魔獣の調査に赴くことになる。
最初は問題となった夜警も、開拓団の長が話を付けてきっちりと全員で交代する仕組みになった。
食料は自分たちで用意するというのも静音たちは専用の班を作って王都から調達していた。
しかし二週間ほどになるとまた問題が起こった。
「だーかーら。俺たちは食糧を調達するために王都に戻るんだっての」
「それは困ります。あなた方はここの護衛として雇ったのですぞ。持ち場を離れられては困ります」
「食料も無しで依頼をしろってか!?」
そう、静音たちのような大きな集団ならともかく、パーティーや一人で参加している冒険者は自前の食糧が
命綱で班を分けたりしての調達ができないでいた。
「そもそもなんで自前で調達しなけりゃならないんだよ。アンタらが用意してくれればいいだけの話だろ」
「建材はともかく食糧の輸送には危険が伴うのですよ。それに元々同意書に書かれたことに納得したから依頼を受けたのでは?」
双方譲らず、言い争いは平行線になっていった。
そんなことはつゆ知らず、静音たちは哨戒に出ていた。
「シズネ、あれを」
エラムが指さした方向には一匹の牛のような生き物の死体があった。死体はほぼ肉は食い尽くされて骨と皮だけであった。
「野生の肉食動物の仕業かな?」
「そうとも限らん。以前の調査隊の報告が確かならここより先に魔の歪みがあるはずだ。テリトリーからはぐれた魔獣の仕業かもしれん」
しかし静音たちがいるのはまっ平な草原。かろうじて丘があるくらいだった。
「とりあえず昼の集合の時にちょっと議題に上げてみようか」
昼になって昼食をとるときに静音はあったことを議題に上げた。
「なるほど。魔獣の仕業かもしれないと。平原の捜索など膨大な時間がかかりますよ」
「だからね、ちょっと奥に踏み込んでみようかなって。魔獣の生息域近くにまで行ければどれくらいいるのかも確かめられるし」
「それは防壁が完成してからのはずでは?」
「でも事前に知っておかないと不意を突かれたら大変だよ。それに昼からは私たちはフリーだし」
「俺たちもフリーだし団長に着いて行くぜ」
「くれぐれもお気をつけてください」
こうして静音とダンのパーティーが事前調査に行くことになった。
「それにしても何もない平原だな」
「確か最初の計画書では農村まで作る予定だったとか」
「そりゃ無理だろ。魔獣が近くに出るかもしれない土地に農村なんて無理だろ」
「うーん、小さな砦を横に並べて防衛線を整えればできないかな?」
「確かに普通の防衛線のようにすればいけるかもしれないが、そこまでして危険な土地を開拓する必要はないだろう」
「ん、少し空気が変わったような」
「魔獣の生息域に近づいたんでしょうか」
何気ない平原を進んでいたはずが、唐突に触れる空気が変わった気がしたのだ。
「ふむ、特に周囲に異常はないようだが・・・」
「先に進むのはここまでにして周囲の散策に切り替えよう」
進むのを注視して散策に切り替える。すると少し離れた先で何かが走っているのが見えた。
「うーむ、警戒依頼だったから新しく買ったけど正解だったみたいだね」
静音は望遠鏡を持っていた。これならば遠くも見渡せて警戒にちょうどいいと思ったのだ。
「多分ワイルドウルフだと思う。それが数匹。こっちには気づいていないかも」
「討伐しますか?」
「戦闘になって他の魔獣が寄ってくると厄介だから手は出さないでおこう」
そのまま周囲を散策した結果、はぐれ魔獣に遭遇することなく静音たちは拠点に戻ってきた。
しかしそこは騒然としていた。
「あ、団長。ちょっと・・・どころか大問題が・・・」
「どしたの?」
「食料調達で問題が起こって・・・一部の冒険者が勝手に帰ってしまって・・・」
「え?」
アリムスは聞いた話を静音にした。
「うーん・・・私たちは準備が整ってたから気にしてなかったけど、やっぱ起こったかぁ・・・」
「いま開拓団が急いで新しい割り振りを考えているところです」
「そう言えば食糧の輸送だと野盗に狙われるって言ってたけど、ウチの班って少ないのにどうやって防いでいたの?」
「適当な材木などを買って外装をそれでごまかして内部に食糧を隠していたんですよ」
「あーだから馬車に木材があったわけか。それにしても大丈夫なのかな・・・」
静音のつぶやきは現実となりつつあった。
ありがとうございました。評価やコメントでの感想を頂けると投稿者が喜びます。