刀オタクが異世界転移したので剣豪を目指します   作:かんせつ

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第八十六話

ウェイル・プレインでの生活ももう二か月が過ぎていた。先日ジャイアント・マンティスを始めとする巨大虫の襲撃があってから、冒険者たちの一部が逃げるように去って行ってしまった。

どうもジャイアント・マンティスは生物ながらミノタウロスと同等以上の格付けがされているらしいのだ。

とはいえ町の石壁も完成し、今はここに店を建てようと躍起になっている状態だ。しかしどの建物も開拓団を主導する商団のものばかりであった。それに商団独自に集めた冒険者なども到着しつつあり、そろそろ静音たちの役目は終了しつつあった。

「それで、今日は言った何のご用でしょうか」

「あぁ、君たちは最初からよく仕事をこなしてくれた。まずはそのことに感謝を。それで今後はどうするつもりかな?」

「また王都に戻って依頼や魔獣狩りの生活に戻るつもりです」

「そうか。ではこういうのはどうかな?恒久的な契約というのは」

「恒久的な契約?」

「そうだ。この町を守る契約だ。君たちはここに常駐しこの町を守ってもらうということだ」

「ありがたいお話ですがお断りさせていただきます」

「ふむ、不満かね?」

「はい。届くかわからない食糧、それにここは娯楽という物が欠けていると実際に生活してわかりましたからね」

「ふむ・・・確かに君の言う通りだ。仕方がない、今日を持って君たちの依頼を終了とする。報酬はギルドから受け取ってくれ」

こうして二か月に及ぶ依頼が終わった。

このことをみんなに告げると特に男連中は喜びの声が大きかった。そうだろう。酒が全くと言って飲めなかったからである。娯楽の力は恐ろしく、その日のうちに荷物をまとめ上げて静音たちは王都へと帰ったのであった。

 

――――――――――

 

まず静音は王都につくとすぐに報酬を受け取り、アーマー・インセクトの甲殻の値段を調べてそれ相応の報酬をメンバーに払った。その後すぐに自分の工房に向かった。

「たーだいまー!!」

「あ、シズネさん。おかえりなさい!!」

「おーシズネ。おかえり」

工房では暇そうにボードゲームで遊ぶ二人の姿があった。しかしミーナは静音を見るやすぐに飛びついてきた。アルも恥ずかしそうについてきた。

「二人とも元気だった?」

「はい。寂しかったけど何事もなく過ごせました」

「べ、別に寂しかったわけじゃ・・・」

「兄さんはたまにシズネさんが座っていたところを見てましたもんね」

「べ、別に見てねーし」

「うんうん、元気そうで何よりだ」

その日は静音たちの帰還を祝ってのちょっとした宴会があった。久々に腕を振るったというエマたちの料理に舌鼓を打ちながら騒がしくも穏やかな夜は終わった。

 

朝、静音は朝食を食べてから散らかった広間の片付けを手伝いながら今後どうしようか考えていた。

不確定な収入で操業している今、継続的な収入をどうやったら手に入れられるか。

自分は鍛冶工房があるが、他のみんなは違った。狩りや依頼をしなければ収入は得られない。魔石の値段も永遠に同じとは限らない。需要が満たされたら値段は当然下がる。

開拓団の時のようにどこかに滞在して依頼に当たれば収入は得られるが場所によっては生活水準が下がるのが問題だった。それに良い条件のところは他のクランとかが契約しているだろう。

「何を考えているんですか?」

そんなところにエラムがやってきた。ちょっと意見を聞きたくて静音は軽く胸の内を話してみたが、エラムにはすぐに感づかれてしまった。

「なるほど。継続的な収入の模索ですか・・・。もとより冒険者になった人の多くは収入が不定期であることを承知してなっているはずです。ですので今後も依頼や遠征での狩りを通じて収入を探れば良いかと」

「でもさ、怪我とかしたら遠征にも依頼にも行けないわけじゃん。そうしたら収入は無いし何かで使い切った後だったら治療費とかも・・・」

「確かにそうですが・・・シズネは少し考え方が私たちとは違うようですね」

「?」

「怪我のことなども含めて貯蓄をするのがスペリアに住む人たちの考えです。節制を是とし散財を悪とする。ですので最初は一気にお金を使うシズネを見てびっくりしましたよ」

なるほど。この国の人はしっかりと考えているわけか。静音は転移者のためにこの世界、国に住む人たちの伝統に疎い。どこか時間ができたら少し調べてみるのも面白そうだ。




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