王国御前試合一日目。
王都に数ある闘技場。そのいずれにも多くの観客が集まっていた。その視線が集まる中で、腕に自信がある冒険者たちが戦っていた。
「次。予選Dブロック八番目の選手」
「あ、はいっ」
そして静音の番が回ってきた。静音は雫を携えて闘技場に向かった。
耳を覆いたくなるような大きな歓声。集中する視線。それを目一杯受けた静音は少しめまいがした気がする。
こんな中で戦うとは結構きつい気がするのだ。
それでも試合は進む。目の前に対戦相手が現れた。男性で歳は20後半ぐらいだろうか?持っている武器は
ロングソードである。
「始め!!」
銅鑼と共に闘技場にある複数の試合が一度に始まった。ルールは簡単。相手の持つ武器を弾き飛ばせば勝ちである。しかし逆に一本は武器を持ってないといけないのである。
「もらったあっ!!」
勢いよく間合いを詰めて来る対戦相手。それに対し静音は相手の行動を待った。
「おらおらぁ!!」
最初から飛ばす対戦相手。上から右からと何度も剣を振るう。しかし静音はそれを冷静に弾いていた。
静音には一つ足りない物があった。対人戦の経験である。最初こそウィリアムに指導してもらっていたが、
力を付けてからはめっきりであった。一度手合わせしたがその時だけでは経験とは呼べない。
だから予選ではできるだけ経験を積むという一種の勝利宣言のような意気込みであった。
冷静に相手の攻撃を弾く。≪慧眼≫には頼らず、自分の経験で対応する。
何十と剣を合わせてくると大体相手の動きが予想できるようになってきた。それが分岐点だと思い、今度は
静音から攻めることにした。
「うおっ!?」
静音の持つ雫、いわゆる刀はこの世界ではまったくと言って知られてはいない。よって初見ではただ細い片刃のレイピアなどと間違えることもある。相手の武器の性質を掴めなければおおよそ対応は難しい。
そんな中、静音は一気呵成に剣戟を放つ。
何度となく戦場で振るってきた雫の一撃は相手の想像以上の威力を秘めていた。
速さ、威力共に相手の対応力を超えていて、十合と経たずに相手の剣が弾かれた。
「勝負あり!!」
こうして静音は初戦を勝利で飾ったのであった。
続く試合も静音は様子を伺いながらできるだけスキルの使用を抑えて体一つで戦い続けた。
それでも勝利が付いてくるだけ静音の力量がうかがえる。
そして迎えた予選ブロック決勝。相手は・・・。
「まさか団長が相手になるとは・・・これはキツイですね」
アリムスであった。
「こっちだってキツイよ。知ってる人と勝負ってなるときついよね」
お互い軽口を言いながら目は真剣で剣を構えた。
「始め!!」
「はぁっ!!」
初撃からアリムスは全力を上げてきた。斬撃波に水の魔力を混ぜて放ったのだ。
「やぁ!!」
ならばと静音も雷の魔力を雫にまとわせてアリムスの斬撃波を打ち払う。
しかしそうしている間にアリムスは一気に間合いを詰めて来る。水の魔力を足裏にまとい、滑るように一気に移動したのだ。そして静音の持つ雫めがけて連続して突きを放つ。
間合いを詰められた後の突きは防御が難しい。ルールがあるため狙いはわかるがそれでも最速の動きで放たれると防ぐのは困難である。
静音は雷の魔力で身体能力を強化してアリムスの鋭い突きを打ち払っていく。そして隙ができたとみると反撃の一閃を放つのだが、アリムスは自身に隙ができるやすぐに滑るようにして間合いを調整して静音の攻撃を避けるのであった。
攻めづらい相手、まさにそんな感じであった。魔獣との戦いはただ相手の攻撃を避け、こちらの攻撃を当て続ければよかった。だが対人戦は駆け引きである。その点で言えばアリムスの方が上手であった。
だが静音に勝算が無いわけでもなかった。アリムスが再び間合いを詰めようと水の魔力を使い、地面を滑り始めた瞬間。
「ごめんね」
静音は雫を地面に刺して雷の魔力を僅かながら解放。雫を差した場所は先ほどアリムスが立っていた場所であった。そこからわずかに地面に残った水を伝って雷の魔力がアリムスに到達、いわゆる感電を引き起こした。
「つぅ・・・」
感電など後が大変なため本当に僅かにだけ雷の魔力を解放した静音。しかしアリムスが怯んだ瞬間、今度は炎の魔力を解放。一気にアリムスの剣めがけて雫を振り下ろした。
予想外の足のダメージ。そして一瞬で詰められた間合い。そこから繰り出された重い一撃。それを受けたアリムスは簡単に剣を放してしまった。
「勝負あり!!」
静音の勝ちであった。
「流石団長。予想外の手を使ってきますね」
「えーっと、足、大丈夫?」
「はい。痛みはしますが歩けるので大丈夫です」
「何かあったらちゃんと言ってね?」
勝負が終わってから静音はアリムスを心配したが笑顔で返されるので大丈夫だと静音は思うことにした。
そして静音は御前試合本選に進むことになったのであった。
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20:50 下書きからのペーストが間違ってました。指摘ありがとうございます。