刀オタクが異世界転移したので剣豪を目指します   作:かんせつ

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第九十七話

運命とは手厳しいもの、誰しもがそう思ったであろう。かくいう私もこの日もそう感じていた。

『選手入場!!シズネ選手ー!!』

今日は王国御前試合三日目。当然勝ち残っているわけだから私の名前が呼ばれることになるのだが・・・。

『対戦者、レオノーン選手ー!!』

相手はあの兜を被った(謎)相手である。両者が試合場に立つと勝負は始まる。

『試合開始!!』

仕掛けてきたのは相手からだった。だが難なく私はそれをはじき返した。

(ん・・・?)

正直今の一撃には違和感を覚えた。今までの対戦相手や少しだけ手合わせしたウィリアムさん、そしてもう一人。その人たちの一振りはとても重く感じたのである。しかし、今の相手の一撃はとても軽く感じた。

決して自分が強くなったとか、相手が弱いという理屈じゃないだろう。

導き出される答えは一つ。この世界に広く使われているのは私のいた世界で言うところの西洋剣。

一般的な説だと西洋剣は重量や遠心力を使って文字通り叩き、その威力をもって対象を切断するらしい。

つまり力任せに振るうことができる、いわゆる筋力を利用できるのだ。

しかし私と今戦っている相手が持つのは刀に分類される。切れ味は鋭いが西洋剣と比較して細いのだ。

そして刀は正直打ち合いなどには弱い。肉を断つことは得意だがこのような得物をぶつけ合うような戦いには不向きである。実際試合が終わってから毎度、私は雫の手入れを行い欠けた部分がないかチェックしていた。

そして刀の特徴を知っているのは私だけのはずで、誰にも言ったことはない。

なのに打ち合うたびに相手もまた刀の特徴を知っているかのように感じるのだ。

この試合形式は相手の得物を落とせば勝ちになる。だから私は相手に打つときも受ける時もできるだけ刃の中心で受けて伝ってくる振動を減らして持ち手への負担を減らしていた。

しかし相手は自身の刀の中心でこちらの鍔近くを狙ってきているのだ。

そして何よりも・・・。

「強い・・・」

強いのだ。力任せに振るうのではなく、その得物の特徴を最大限に活かしているのだ。正直技量だけでの勝負となると刀を握ってまだ数か月の私は到底及ばない。たとえ≪慧眼≫で動きを読めたとしても足りないのである。だから私は負けている部分をを取っ払っておつりをもらうことにする。

「使ってきたか」

静音の全身が雷を纏い、さらに足は追加で炎を纏った。雷と炎の魔力の同時使用で身体能力の速度と疑似的な筋力増強を図ったのだ。そこからの静音の動きは凄まじいの一言だった。

雷の魔力で強化された速度に加えて炎の魔力で強化された腕力を使った一閃。これを怒涛の如く放ち続けたのだ。先に雫の心配をしていたのは何処へと。そして的確に相手の鍔付近を狙って雫を振り続けた。

前半の技量だけでの勝負では押していたものの、静音が魔力を使ってからは相手は防戦一方だった。

しかし相手に抵抗する余力を出せないほど静音は攻撃を続けた。

そして静音が魔力を使用してから数分後、事態は急変した。

相手が腰に下げていたもう一本の剣を抜き、二刀流になったのだ。

「え!?」

静音はこの御前試合が初めてだったので知らないのだが、事前に用意していた武器であれば交換、または追加が可能なのである。そして範囲は無制限。そう、『無制限』なのである。

静音は審判を見るも何も言わないので静音はすぐにこれが普通なのだと理解することにした。

しかし咄嗟に二刀流に変わったこと、知らないルールがあるということから静音の思考は一瞬止まってしまった。その隙を逃す相手ではなかった。そのまま二刀流の手数による攻撃が始まった。

最初こそ守りに徹していた静音であったが、炎を雫に纏わせ、相手の剣にぶつけたその瞬間、魔力を爆発させた。自分も爆風を食らう諸刃の剣であったが、相手に距離を取らせることに成功した。実際は『爆炎が噴き出すぞ』と見せかけて相手に距離を取らせたのだ。なので爆風を食らったのは静音だけである。

しかし爆炎の煙を突っ切って静音が突貫した。今度は雫に雷を纏わせて攻撃を仕掛けた。

今の静音は勝ちに執着していて、剣技の妙など知ったこっちゃなかった。

一撃、たった一撃静音の剣閃を受けた相手は手を震わせながら剣を落とした。静音はあらかじめ体に雷の魔力を纏っていたので何ともないが、雷が宿った雫の一撃によって触れた相手の剣に微弱ながら電流が伝わり、さらにそれが相手の手に伝わって突然の痺れを発生させ剣を落とさせたのだ。

突然のことに動揺したのか、それとも現状を把握できなかったのか相手は二度目の雫の一撃を残る刀で受けてしまった。そして再び手が痺れを起こし残る刀も落としてしまった。

『勝負あり!!勝者、静音選手!!』

決着はついた。だが静音の心中は勝利したはずなのに晴れ晴れとしてはいなかった。

「お疲れ様です」

「あ。ありがと」

「相手が二刀流を出してきたのはすごい技量だったがシズネはそれを上回ったな」

「ありがとね。あ、エラム。二刀流とかのルールってどうなってるの?」

「二刀流というより、あらかじめ用意していた武器を後出しするのはルール的にOKなんですよ」

「んーそれって試合場に出るときに装備していないとダメなの?」

「いいえ。ポケットに短剣を忍ばせるとかもOKです。あぁ、シズネには収納空間がありましたね。それも一応OKです。しかし使った人はあまり見ませんね。」

「収納空間を使っている奴なら見たことあるぜ。ただなぁ・・・試合が変に長引くんだよ。武器をとっかえひっかえするんだけどよ。最初こそどんな武器が出るんだろと思っていたけど結局全部同じ剣で観客なんかからは延命だとか言われてたけどな」

「なーるほどねぇ・・・」

この時の静音の顔はいたずらの方法を見つけた子供のような顔だったとその場にいた全員が思ったのであった。

そして次の試合。勇者ラークとその対戦相手だったのだが、ラークの圧勝で終わった。

ラークの技量にも目を見張るものがあったが、それ以上に剣同士がぶつかるときの音がすさまじかった。

しかも勝利した時には相手の剣は折れていたのであるまぁラークが持つのは伝説の聖剣なわけなのだから当然ではある。しかしこれで静音の次の対戦相手はラークに決まったのである。

そして別グループでは順当にウィリアムが勝つであろう。そう思うと静音の心は引き締まっていった。

そしてその日の夕方。静音の攻防に来客があった。

「すみません。静音様はおられるでしょうか?」

「はい、私が静音ですが」

「我が主がお呼びです。どうか一緒に来てもらえませんか?」

(うーん、来ると思ったよ。うん)

とりあえず静音は使いの人と一緒に馬車に乗って移動した。当然目的地は王太子邸だった。

「やぁ、急に呼び立ててすまないね。君の準決勝進出を祝いたかったのさ」

そして飄々というレオがいた。隣にウィリアムもいた。

「いやー今日の相手は強かったんですよ。ところでその相手が持っていた剣なんですが、以前王子に献上したのと似ていたんですよねぇ・・・偶然でしょうか?」

我ながらちょっとふざけた言い方だったと思う。しかしレオはそんなことも気にせず肩を下しただけだった。

「んーやっぱバレているか」

やはりレオノーン=レオ王子であった。

「王子って身分じゃ参加しても相手が気を使うんだ。だから宮廷に籠っている俺は本物の闘いができない。だからこうやって毎回外見を偽って出ているのさ」

「しかし王子。いつから二を使えるようになりましたので?」

「あぁ、以前シズネがウィリアムと戦っているとき二刀を使ったのを見てふと俺にもできないかなって

訓練に励んだのさ」

「そうでしたか。私も二刀を使うのは難しくてお教えできませんでしたからな」

「しかしやはり剣技だけでは限界があると思い知った。負け惜しみに聞こえるだろうがシズネは剣技と魔力をうまく使い分けれているようだ」

「まだまだ剣技に至っては未熟も同然ですよ」

「それを俺の前で言われたら少し詰まるものがあるなぁ・・・。ま、前振りは置いといてだ。静音、次の対戦相手は知っているだろう?」

「勇者ラークですね」

「そうだ。勇者は伝説、王国の誇り、そしてすべての剣士・戦士の羨望の頂点だ。それに挑む。意味はわかるだろう?」

「要はどうやってでも負けろ、ということですか?」

「確かに国の威信、勇者の名誉のことを考えれば確かにそう言わざるを得ない。だが今は逆にチャンスともいえる」

「チャンス?」

「俺は君にわざと負けろとは言わない。個人的には勝ってもらいたい」

「どういうことですか?」

「王国の剣士・戦士の頂点は存在しなくとも勇者だった。そしてその勇者が復活した。だがそれに勝るとも劣らぬ剣士が現れたら?」

「王国の戦力を強大化して見せることができると?」

「まぁ対外的にそう見せることができるわけだ。そして勇者は王国が誇る剣聖の弟子でもある」

「静音。決勝で待っている」

一瞬静音は心を見透かされた気分がして背筋が冷えた気がした。だが同時に嬉しかった。剣聖ウィリアムに少し認められたのだと感じたからだ。

「はい!」

そうして静音は元気いっぱいに答えたのであった。




一か月ほど間が空いてしまい楽しみにしていた方には申し訳ありません。
今後も読んでいただければ幸いです。
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