陣内○則「よーし、今日もウマ娘やるかー」

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陣内ターボ

 とあるマンションの一室――

 

「よーし、今日もウマ娘するかー。そろそろチャンミやから、強いウマ娘を育成せんとなー」

 

 およそ六畳ほどの室内で、パソコンに向かう男の姿が一つ。

 誰に聞かせるわけでもない独り言を呟きながら、男は慣れた手つきでマウスを動かしている。

 彼は今、とあるゲームに嵌まっていた。

 

『ウマ娘、プリティーダービー!』

 

「最近のチャンミは負け続けてるからなー。勝ちたいなー。次は勝てるかなー」

 

 テーテーテ・テーテテーテテー。

 親の声より聞いた音楽と共に独り言を呟き、男はカチカチとマウスをクリック。

 ホーム画面ではジュークボックスからバクシンシンが流れ、ゴールドシップが「目を離さないでよねっ!」というセリフを放っているが、男はマウスカーソルをゴルシの頭の辺りで左右に動かした後、育成画面へと進む。

 いつもの見慣れた画面にはアオハル杯の象徴たるスーツ姿のフラダr――ではなく、樫本理事長代理の姿が映っている。

 と、ここで男はある事に気付く。

 

「ん、無敵のテイオーモード? 何やこれ」

 

 ――無敵のテイオーモード。

 

 育成画面に表示されたその見慣れないUIに「そんなイベント実装情報あったっけ?」と男は首を傾げる。

 男はウマ娘の最新情報に関して、それなりに早く察知している自覚があった。

 ウマ娘公式ツイッターはフォローしていたし、ぱかチューブっ!も当然チャンネル登録済み。

 加えてツイ廃までとはいかずとも、仕事の昼休みや空いた時間には定期的にタイムラインを眺めるような男であった。

 

 そんなウマ娘に対してのアンテナをしっかりと立てていた男であったが、まぁたまには見落とすこともあるだろうとさして気にする事も無く、画面の左上にあった!アイコンをクリックしテイオーモードの内容を確認する。

 

「えーと、何々……? “無敵のテイオーモード”は通常より育成がとても難しいモードになっていますが、育成完了時にウマ娘のステータスを上げるボーナスが追加されます……えっマジで!?」

 

 誰も居ないのにいちいち説明口調なのはこの男の悪癖である。

 大きな声を上げて驚く男に近所迷惑が心配になるが、男にはそこそこの稼ぎがあり、それ相応の住居と防音環境を兼ね備えていたため騒音対策はバッチリであった。

 

「うわーマジか。ボーナス貰えるってことはより強いウマ娘を育てられるってことやろ? うわーインフレさせにきたなサイ○ームズ。アオハルの時もそうだったけど、今までの苦労が何だったのかって思ったからなー」

 

 男はウマ娘という作品に対し、愛着を持っている。

 とはいえたまには不満が口に出てしまう事もある。

 夏合宿前になまけ癖を引いた時。

 スーパークリークの小さなほころび5%を引いた時。

 推しウマピックアップガチャのバクシサクランオー状態などは特にそれが顕著になる――が、それは別におかしなことではないだろう。

 愛憎とは表裏一体、気分によって普段は許せることがその時許せないなんてことは人間にとって当たり前のことなのだから。

 

「……いや、こんな考えじゃアカンな。ゲームっちゅうんは楽しんでやるもんやし、今までの思い出が無駄になるわけじゃないしな。よし、気を取り直して早速やってみるか!」

 

 とはいえ、男は切り替えの早い男でもあった。

 好きな物には大体肯定ペンギンと化すのが特徴的な男なのであった。

 

「よし、ならまずはターボで育成するぞー! さーやるでー!」

 

 無敵のテイオーモード、男が初の育成に選んだのはダブルジェット師匠ことツインターボ。

 青のツインテールに赤と青のオッドアイ、ギザ歯が特徴のウマ娘。

 この男の一推しである。

 

『むむむむ、どっかーーーん!!』

 

「ターボ師匠は今日もかわいいなぁー。こういう元気な娘見てるとこっちも元気貰えて何か嬉しくなるもんなー」

 

 両手を左右に振って爆発するような様子を見せた後、バランスを崩して転びそうになるターボの因子継承……というか、パドックの好調ポーズを微笑まし気に眺める男。

 男はアホな子ほど好きになるタイプの人間である。

 かつてけものは居てものけものは居ないアニメを見ていた時は全員推しだと叫ぶほどの筋金入りであり、そういったゆるい作風のアニメも、一見ゆるそうで地獄みたいな設定のアニメも好きだった。

 強いて言えばそのアニメでの推しはへっぽこ探偵キリンであり、度し難いロボのショタだった。

 

 ――そしてこの時まで、男はある事を忘れている。

 

「よーし、今日もターボ育成だー!」

 

 無敵のテイオーモード、それは“通常より育成がとても難しいモード”である。

 それは公式がわざわざ“とても”と付ける程の――言わば、成長ボーナスに見合うほどの難易度に設定してあるということを物語っている。

 

「今度こそチャンミに勝たせてやりたいなー。毎回水マル・ウンスにボッコボコやからなー」

 

 即ち、今までの育成の常識が通用しない。

 そしてそれは、今まさに男の眼前へと牙をむく。

 

「……んぉ、トウカイテイオー!?」

 

 芝左1800m 中京レース場

 ジュニア級メイクデビュー

 

 ――2枠2番 トウカイテイオー

 ――8枠11番 ツインターボ

 

 最強無敵の帝王が今、立ちはだかる。

 

 




「全然違うじゃん!!」
「…………」
「陣内ターボは陣内ネタのコメディ短編!ストーリー展開なんて書くつもりはさらさら無いって!この幕の引きは何!?」
「小説形式での陣内漫才は再現が難しく、三人称も筆と興が乗りやすいし何よりこっちの方が面白そ……当然の結果かと」
「もういい!私続き書くの辞める!」

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