FGORPG仮面ライダーセイバーDLCカリバールートRTA 作:かかむりょう
「ジャンヌ・オルタ……?」
巨龍の背に乗ったもう一人のジャンヌが名乗った名前を聞いて、武たちは困惑していた。確かに今自分たちを見下ろしている聖女……否、魔女は、自分をジャンヌであってジャンヌではないと言っていたが、ジャンヌ・オルタなどという名前には聞き覚えがない。
「武、ジャンヌ・オルタなんて名前の人、聞いたことある?」
「……いや、ない。少なくとも、これまで学校の授業でもそんな名前は一度も聞いたことがないぞ」
「ドクター、ジャンヌ・オルタという名前に聞き覚えはありますか?」
マシュが管制室にいるロマニに聞こうとするも、当の本人はそれどころではなかった。
『オルタだってっ!?オルタは言わば英霊の別側面だから……つまりジャンヌは心のどこかで、フランスを恨んでいたってことかっ!?』
管制室にいるロマニが騒いでいる。だがそれも無理はないだろう。何しろ、生前誰よりもフランスを愛し、フランスのために戦い続けたジャンヌが、もしかしたら心のどこかでは、自分を裏切ったフランスに恨みを持っていたかもしれないのだ。しかしそんなロマニの疑問は、あっさりと切り捨てられる。
「いえ、それだけは決してありえません」
そう、正真正銘、本物の聖女たるジャンヌ・ダルク自身によって。ジャンヌはロマニの疑問に対して、きっぱりと言い放つ。
「確かに私は、フランスによって殺されましたが、彼らを恨んだことは一度たりともありません」
「口だけはずいぶんご立派ね。まさにつまらない清廉潔白な聖女様だわ」
そんなジャンヌを、ジャンヌ・オルタは面白くもなさそうに見下ろす。ゴミを見るかのような視線にジャンヌは一瞬気圧されるも、それでもジャンヌ・オルタを見つめながら叫ぶ。
「……あなたは、何故そこまでしてフランスを滅ぼそうとするのですか?何故こんな残酷なことを!?」
「何故?……そんなもの、決まってるでしょう?」
ジャンヌ・オルタは心底めんどくさそうに、ジャンヌに向けて言い放つ。
「憎いからよ……フランスが……いや、この世界そのものがっ!」
「っ!?」
「私は裏切られたっ!フランスにっ!この世界にっ!……あの人にっ!」
「あの……ひと……?」
「だから滅ぼす!このフランスも!世界も!何もかもを!私が滅ぼす理由なんて、それ以外にない!それ以外の理由などいらない!」
「……っ」
この一瞬で怒涛の勢いで放たれるジャンヌ・オルタの憎悪の叫びに、ジャンヌはただただ絶句した。一体どれほどの憎しみなのか。何があってここまでの憎しみを抱いてしまったのか。その計り知れない憎悪を前に、とても同じ自分だとは思えないジャンヌ。
「何故……そこまでの憎しみを……」
「はぁ……力も弱ければ耳も弱いのかしらあんたは。私はもう、あんな思いをするのは御免なのよ。ただ一人置いてけぼりにされるなんて地獄は……絶対にっ……!」
怒りを抑えきれないのか、歯をギリギリと食いしばって思いっきり拳を握るジャンヌ・オルタ。しかし不意に彼女は優しい笑みをジャンヌに向ける。
「まぁそういうことよ、聖女様。私は、私を裏切ったすべてを許さない。故にすべてを壊すの。それに犠牲がなければ存在できない脆弱な世界など、存在する価値があるとは思えませんからね。……まぁ、あなたには永遠に理解できないでしょうね。してほしいとも思わないけれど。憎しみも喜びも見て見ぬふりをして、神の啓示の奴隷になって、人間的成長を全くしない聖処女様には特にね!」
「なっ……!」
『……いや、サーヴァントに人間的成長なんてあるのか?あるとしてもせいぜい霊格アップの類だと思うけど……』
思わずジャンヌ・オルタに突っ込んでしまうロマニ。そんなロマニに対して、ジャンヌ・オルタは不機嫌そうに眉をしかめながら、ただ一言こう告げる。
「……やかましい外野は引っ込んでなさい。燃やされたいの?」
『うぉっ!?なんか急にコンソールが燃えだしたんだけど!?睨んだだけで相手を呪うのか、あのサーヴァントは!?』
管制室で慌てるロマニを他所に、ジャンヌはもう一人のジャンヌを見つめて問いかける。
「……あなたは、本当に私なのですか?」
「はぁ?ここまで話してまだわからないの?ほんとに呆れるわねこの馬鹿聖女は。いい?何度でも言うけど、私はあんたではない。私は私よ。この燃え滾る憎悪は私の物。断じてあんたの物なんかじゃない」
ジャンヌ・オルタは吐き捨てるように言い放つと、おもむろに片手を上げる。
「さぁ、話はそろそろ終わりよ。今まで雑魚の相手ばかりで面白くもなんともなかったでしょう?けど安心して。ここからは強敵が相手だから。あんたたちじゃ到底太刀打ちできないぐらいに」
その言葉と共に、巨龍の背から何かが飛び降りてくる。それらはこれまでのワイバーンたちとは比べ物にならないほどの圧を放っていた。
「ふん……ようやく我らの出番と言うわけか。待ちくたびれたぞ」
「えぇ。いつもならとっくに仕事を済ませているのに、何故か今回は話が長かったわね。どういう風の吹き回しかしら」
「……まぁ、いいじゃないですか。恐らく今回もすぐに終わるでしょう。もちろん、油断は禁物ですが」
「……おい、あれってまさか」
「はいっ……三人とも、サーヴァントですっ……!それも、ただのサーヴァントではありません!何らかの強化が付与されています!」
巨龍から飛び降りてきたのは、貴族のような黒衣を身に纏う男……ヴラド三世、仮面をつけた女……カーミラ、羽帽子を被った中性的な容姿の剣士……シュヴァリエ・デオンの三名。
武たちは、三人から放たれる圧倒的な存在感に冷や汗を流す。それもそのはず、彼らを含めてジャンヌ・オルタに率いられているサーヴァントは皆、ジャンヌ・オルタから特別な強化が施されている。それは闘争本能を抑える理性と引き換えに、恐ろしいほどの力を得るというものだった。聖杯を通して与えられた狂化の加護は伊達ではなく、並のサーヴァントであれば即座に蹴散らされてしまうであろう。
「……いったいいつまで続ければいいんでしょうね。こんなこと」
「さぁね。でもそろそろあの子も折れて諦める頃でしょう。……あなたたちも、もうこれ以上あの子に苦しんでほしくないでしょう?」
「……当然です。何が悲しくて、あの人のもがき苦しむ姿を延々と見続けなければいけないんですか」
「まぁ、そういうな。それも今回で終わりだ。……否、終わらせる。必ずな」
それぞれの思惑を胸に秘め、三人は己の中で燃え滾る暴力的なまでの魔力の圧を武たち……否、武個人へと向ける。
「……っ!?武さんっ!逃げてください!彼らの狙いは、あなたです!」
三人の狙いにいち早く気が付いたマシュは、思わず武に駆け寄ろうとするも、それを許さぬ存在がいた。
「させるわけがないでしょう?」
ジャンヌ・オルタが剣を振るうと、武と立香達を隔てる柵のように、地面から無数の剣が突き出てきた。
「脆弱なボディーガードはそこで大人しくしてなさいな」
「くっ!武さん!」
「武っ!逃げてぇぇぇ!」
孤立してしまった武に、思わず叫ぶ立香。しかし無情にも、武の周りにも同じような剣の柵が出現し、武の逃げ道を完全に奪っていた。武の周りには逃げ道はなく、味方も誰一人存在しない。完全な詰み状態だった。
(……これであいつはおしまいね)
武が生き残るためには、もはや彼らを倒す以外にない。しかしサーヴァントでもない武に彼らを倒す術はない。今回の彼には少しは戦う力はあるみたいだが、そもそもサーヴァントとただの人間では勝負にすらならない。ジャンヌ・オルタはそう確信し、静かに目を閉じる。
(全く、あの騎士王様が下手を打たなければ、私が出張ることもなかったってのに、はた迷惑な話ね)
でも、これで今度こそあいつの旅は終わる。もうあいつが苦しむこともなくなる。
この時のジャンヌ・オルタはそう信じて疑わなかった。
(……くっ、くくくっ!くはははははははははっ!)
しかしこの危機的状況に置いて、ある一人の男だけは内心で大笑いしていた。まるで面白いことになってきたと言わんばかりに。
(なんとも滑稽なものですねぇ……。どうやら彼らは、主がこれまでのようにあっけなく死ぬ弱者だと思っていらっしゃる)
そう、武のサーヴァントたる蘆屋道満である。彼はマスターである武が孤立しても焦るどころか、むしろ笑ってすらいた。仮にも自分のマスターたる武が危機的状況にいるにも関わらず。
(しかしジャンヌ・オルタ殿……あなたもつくづく愚かな小娘だ。自分の身の程をわきまえず、武殿を救うなどとほざいておられる)
道満は笑いながら、巨龍の背に乗って見下ろすジャンヌ・オルタを見つめる。無知な愚か者を見下すかのような冷たい目で。
(さぁ、我が主!我らの道を閉ざさんとする身の程知らずな愚者たちに、とくと教えて差し上げましょう!こんな程度では、我らを止めることなどできないということをっ!)
「くくく……」
「……道満さん」
「ンンン?何ですか、マシュ殿?」
「…………なんで、笑ってるんですか?」
「ンンンンン?もしかして、顔に出てましたか?いやはや拙僧、
顔どころか声に出していたことを棚に上げ、道満は悪びれもせずケラケラとしている。そんな道満を見たマシュは、苛立ちと共に道満に詰め寄る。
「……何がそんなに面白いんですかっ!?あなたは仮にも武さんのサーヴァントでしょう!自分のマスターが危ないときに、なんで笑っていられるんですか!?」
「まぁまぁそう怒らないでくださいマシュ殿。心配はご無用ですよ……あれを御覧なさい」
「え……?」
マシュは武の危機を笑って見守る道満の態度に抗議しつつ、道満が指さした方を向く。するとそこには、
「……武さん?」
闇黒剣月闇を構え、不敵に笑みを浮かべる武の姿があった。しかしその笑みは、傍から見れば邪悪としか言いようがないほどの、歪な笑みだった。
「さぁ、始まりますよ……愛しき我が主の蹂躙の時間が!」
そしてそんな武を見つめながら笑う道満の顔は、武とは比較にならないほどに歪んでいた。その時の道満の顔を、後にそばで見ていたマシュはこう語る。
――まるで獣のような、とても怖い笑顔だった……と。
なんか最近道満が内心で楽しんでいる描写が多くなってきた気がする。
次回はRTAパートです。カリバーが大暴れします。