FGORPG仮面ライダーセイバーDLCカリバールートRTA 作:かかむりょう
気が付けばオルレアン編がこんなに長く……。
早いところオルレアンにカチコミをかけたいところですが、もう少しお付き合いいただければ。
アルトリア・オルタとヴラド三世は、夜の闇に包まれた森の中を疾走しながら激しい攻防を繰り広げていた。
「そこだっ!」
「ちっ!」
アルトリア・オルタの黒き聖剣がヴラド三世の体を両断せんと迫る。ヴラド三世は槍に魔力を纏わせて対応するも、アルトリア・オルタの華奢な体からは想像できないほどのパワーに押しきられる。しかし潰される前に全身に魔力を込めて押し返す。
カウンターと言わんばかりにヴラド三世は槍の突きを繰り出すも、アルトリア・オルタは聖剣でそれを弾き、その衝撃が木々に伝わって亀裂が走る。
「これほどの力……さすがは騎士王と言ったところか」
「くだらん世辞はいらん。さっさと決着をつけるぞ」
「まぁそう急ぐことはない。夜明けまではまだ時間がある。少しばかり話をしないか?」
「貴様と話すことなど何もない。戦う気がないなら疾く首を差し出せ」
「可愛げのない小娘だ。もしや、そなたの愛しいマスターが気になるのか?」
「……っ!」
ヴラド三世の挑発染みた物言いに、アルトリア・オルタは図星を突かれたかの如く何も言えず、キッと睨み返すことしかできなかった。
「心配はいらん。そなたのマスター……星本武はここでは終わらんよ」
「……何故そう言い切れる?」
「貴様は自分の主を信じないのか?」
「それは……」
武の強さに疑うべきところはない。それは私が実際に特異点Fで剣を交えたからこそよくわかっている。だが、アルトリア・オルタが恐れているのはそこではなく、むしろ別にある。
(武が持っているあの剣、あれは非常に危険な代物だ)
あれは人がおいそれと振るっていいものではない。あの剣から放たれている闇は、底が知れない。敵を倒すだけにとどまらず、使い手である武自身をも飲み込みかねないほどに。エクスカリバーの極光を打ち消したあの剣は、それほどに強大な何かを秘めている。
いずれはあの剣について武に問いたださねばならないと思いつつも、今は目の前のヴラド三世を倒すことが先決だと、アルトリア・オルタは剣を構え直す。
「あくまで話に応じる気はない……と?」
「その通りだ。私は武に任されたのでな。貴様はここで討ち取る」
「ならば仕方あるまい。話は貴様の四肢を食いちぎった後にするとしよう!」
「その言葉、そっくりそのまま返すぞ、吸血鬼!」
そうして再び、アルトリア・オルタとヴラド三世は互いの得物を構えて激突する。アルトリア・オルタは聖剣を水平に構え、横一閃に薙ぎ払う。
それを上に飛び上がって回避したヴラド三世は、空中からそのままアルトリア・オルタに手を向けて、無数の杭を彼女のいる地面の下から出現させる。
「ちっ!」
アルトリア・オルタは急いでその場から離れて杭を回避する。その直後、槍を構えたヴラド三世が空中から連続で突きを放ってくる。
「舐めるな!」
アルトリア・オルタは聖剣を振るって槍を弾く。続いて聖剣に魔力を纏わせ、空中にいるヴラド三世に向けて黒い閃光として放つ。
「くっ!」
空中にいるために回避ができないヴラド三世は、全身から無数の杭を放つことで相殺した。黒き閃光と無数の杭が激突し、大爆発を起こす。
爆風で視界を遮られたヴラド三世は次の瞬間、驚愕に顔を歪める。
「何っ!?」
なんと、視界が悪い爆風の中を突破して、アルトリア・オルタが切りかかってきたのだ。アルトリア・オルタ自身の高い直感がヴラド三世を見失うことなく捉え、彼女の聖剣がヴラド三世を両断せんと迫りくる。
「もらうぞ!」
アルトリア・オルタが持つ黒き聖剣が魔力を帯びる。それを見たヴラド三世は急いで回避を試みるも、アルトリア・オルタの聖剣が一歩速く、ヴラド三世の身体を両断した……
「なっ……!」
……かに見えた直後、ヴラド三世の身体は無数の蝙蝠に姿を変えて聖剣の斬撃を躱し、そのままアルトリア・オルタに襲いかかる。
「ぐぅぅ!」
アルトリア・オルタは斬撃を躱された直後で反応が遅れ、無数の蝙蝠たちによる攻撃をもろに受ける。鎧が嚙み砕かれ、体中に無数の傷が広がっていく。
(ちっ!うっとうしい!まとめて吹き飛ばす!)
「――
全身に魔力を集中させ、アルトリア・オルタは魔力放出と同時に、周囲に黒い旋風を一気に解き放った。無数の蝙蝠は荒れ狂う風に襲われ、容赦なく吹き飛ばされる。
「ぐっ……おのれっ!」
どうにか風から逃れた蝙蝠を起点に、無数の蝙蝠たちが集まってヴラド三世の肉体が構築される。
「……そこかっ!」
「むっ!?」
しかし肉体を構築した直後の隙を、アルトリア・オルタは見逃さなかった。アルトリア・オルタは魔力放出で一気に距離を詰めると、聖剣をヴラド三世の心臓目掛けて突き出す。
「ごはっ!」
回避しようにも間に合わず、今度こそヴラド三世を捉えた聖剣は、深々と心臓に突き刺さる。剣を引き抜くと同時にヴラド三世は口から血を吐き出し、突き刺された心臓からは夥しい量の血がとめどなく溢れ出てくる。勝敗は決した。
「……なるほど。私の負けか」
「ずいぶんと手こずらせてくれたな。さすがは吸血鬼と言ったところか」
「煽りのつもりか小娘?」
「そう怒るな。純粋な世辞だ」
互いに憎まれ口をたたきあいながらも、そこまで気にしてないかのように笑みを浮かべるヴラド三世に、アルトリア・オルタもまた、笑顔で素直な世辞を述べる。実際、魔力の消費が激しいアルトリア・オルタでは、長期戦に持ち込まれてしまえば魔力切れになる恐れがある。その点を踏まえると、高い戦闘続行スキルを持ち、なおかつ近接戦闘に極めて有利な変化スキルを駆使して戦うヴラド三世は、アルトリア・オルタにとって相性が最悪とも言える敵なのだ。
マスター次第では普通に倒されていたかもしれない。そう考えると、この吸血鬼のマスターがあの竜の魔女であったことは、アルトリア・オルタにとっては幸運とも言うべきものであった。
(まぁ……仮にこの男が優秀なマスターと手を組んでいたとしても、私と武には敵わんがな)
そんな誰に対して言っているのかわからないことを考えながら、アルトリア・オルタはヴラド三世と向き合う。
「さて、あまり時間もないだろうから単刀直入に聞く。お前が言っていた話というのはなんだ?」
「……騎士王、貴様はどこまで記憶を保持している?」
「は?」
いきなりの質問の意味が分からず、思わず聞き返してしまうアルトリア・オルタ。しかし続けてヴラド三世が言った言葉で、その疑問は解消される。
「余は……いや、余も含めた我々は、あの竜の魔女によってある程度の記憶がよみがえっている。今貴様が主としている男……星本武が、我々にとってどんな存在だったのかを。だからこそ、それを完全に思い出すためにも我々はもっと知る必要があるのだ。星本武という男を」
「……そういうことか。それで、私から情報を聞き出そうと?」
「そうだ。どうやらあの魔女曰く、今回の奴は何かがおかしいらしい。我々もすべてを思い出したわけではないからな。それで探りを入れるために、余と聖女が遣わされたということだ。もっとも、あの聖女はそれとは別の目的があったみたいだがな」
「あの女、そこまで……」
今も自分たちを殺すために必死な竜の魔女を頭に浮かべ、アルトリア・オルタは笑みを浮かべる。自分が特異点Fで武を止めていればジャンヌ・オルタはここまで必死にならずに済んだのだと考えると、多少申し訳ないという気持ちは湧きながらも、どちらかと言えばざまぁないなという気持ちの方が強かった。
「……期待させて悪いが、私も詳しいことは知らん。これまでならば、何度でも人理修復をやり直しているただの人間というだけの話で済んでいたが、今回のあいつは我々に匹敵……いや、遥かに凌駕する力を持ってこの人理修復に乗り出している」
「ほう……それで、貴様は星本武に敗れたのか?」
「敗れたからこそ、今私はここにいる。聖杯の力を得た私を容易く屠れるだけの力を持つあいつは、今までのどのあいつよりも強い。それと同時に、あいつ自身が人をやめてしまう可能性もある。それがどういうことか、貴様ならば理解できるだろう?」
「……確かに、な」
ヴラド三世は自身が忌むべき吸血鬼と呼ばれていることに激しい嫌悪感を抱いている。それこそ、聖杯に自身の吸血鬼としての伝承の抹消を望むほどに。今のヴラド三世は吸血鬼であるという自分を受け入れていることもあって先ほどの蝙蝠の群れに姿を変えたり、吸血鬼特有の驚異的な生命力で致命傷を負いながらもこうして話すことができるが、彼の願望を考えるとそれ自体がそもそもあり得ないことであり、今のヴラド三世が普通ではないことを表している。
そんなこともあり、ヴラド三世は人間をやめるということに少なからず思うことがあるようで、アルトリア・オルタの言葉に理解を示す。
(それでも、貴様は決して止まらぬのだろうな……星本武)
いつかの記憶を思い出しながら、ヴラド三世は物思いに耽る。かつて護国の鬼将と呼ばれ、同時に一人の父親でもあった自分にとって、武はどんな存在なのだろうか。もしかすれば、武に対してどこか父性のようなものを抱いているのかもしれない。あるいは、同族意識のようなものだろうか。いずれにせよ、あの禍々しい鎧と剣をとって戦う武はどうも他人の気がしなかった。
「さて、もう少し話をしたいところだが、そろそろ限界のようだ。……夜が明けたら、ティエールに行け。そこにお前たちとは別のサーヴァントがいる。少々癖が強いが、お前たちの助けとなるはずだ」
「わかった、伝えておこう」
「それと……あの男に会ったら、伝えておいてくれないか?」
「……なんだ?」
「次こそは……ともに轡を並べよう、とな」
その言葉を最後に、ヴラド三世は黄金の粒子に包まれて消滅した。最後まで笑みを崩すことなく。
「……ティエールか」
確かそこには、病みに病んでる蛇女と、無駄に何度でも出てくるアイドルもどきのトカゲ娘がいたな。
ふと、そこまで考えたアルトリア・オルタの脳内に、ある疑問が生じた。
(ん……そう言えばジークフリートとゲオルギウスは、どうした?)
先ほどヴラド三世が口にしたのは、ティエールへ行けという言葉だけだった。もし言葉通りの意味だとすれば、そこにいるのは清姫とエリザベートということになる。しかしジークフリートとゲオルギウスに関しては、ヴラド三世は一切言及していない。
(まさか……すでにやられたのか?)
アルトリア・オルタの脳内に、最悪の想像がよぎる。もしすでにやられていたとすれば、後のあの悪竜との戦いに大きなアドバンテージを持たぬまま挑むことになる。その場合、勝つことはできてもかなりの損害を覚悟しなければならないだろう。
(とにもかくにも、ティエールに向かわないことには始まらんか)
そう考えなおしたアルトリア・オルタは、武と合流するために移動した。
その後、しばらく歩いていった先でかなりの傷を負った武を見つけ、アルトリア・オルタは発狂寸前まで陥った。武は大丈夫だと説明するも、アルトリア・オルタは聞く耳持たずで武を背負い、拠点まで戻るのだった。
***
(ンンンン。どうやらマスターたちは無事に敵を倒したようですね)
それらの一部始終を、密かに放っていた式神を通して見ていた道満は、満足げに微笑んだ。ほとんど心配してなかったとはいえ、怪我を負っている武の姿は道満には目に毒だった。何故ならば……。
(ああ……傷ついて尚、決して倒れず信念を絶やさないその御姿。まさに拙僧のマスターに相応しいものです!この道満、感激の極み!)
こうして我を忘れるほどに、武の姿に見入ってしまうからだ。マルタとの戦いで傷を負った武は見た目こそ怪我人だが、道満の手にかかればすぐに直せる程度のものだった。それ故に道満はニヤニヤしながら、式神越しに武を見つめていたのである。ちなみにアルトリア・オルタに関しては、勝敗の確認ぐらいしかしていない。
「あの……道満さん?」
「ンンン?どうされましたかな、立香殿?」
「い、いや、そのぉ……なんでそんなにニヤニヤしているんだろうって……」
そこに、部屋の片隅でニヤニヤしている道満が気になった立香が話しかけてきた。道満は努めて平静に、立香の問いに返す。
「おお、また顔に出てしまっていましたか。ですがご心配なく。拙僧、とても嬉しいことがありましたので」
「嬉しいこと?それって、どんな?」
「ンンンン、いくら立香殿でも、それについては内緒ですぞ♡」
「えぇ~!道満さんのケチ!教えてくれたっていいじゃん!」
そんなやり取りをしばらくしていると、突然家のドアが開く。
「あ、武遅いよ!いったいどこまで……って武っ!?」
「武さんっ!?どうしてそんな怪我を!?」
「大丈夫だ。命に別状はない」
そう言って家に入ってきたアルトリア・オルタは、肩に怪我を負った武を担いでいた。それを見た立香とマシュが顔面を蒼白させながら武に駆け寄る。どこか痛いところはないか、すぐに手当てをしなきゃ等、どんどんパニックになっていく二人を、道満が落ち着かせる。
「大丈夫ですよ二人とも。拙僧の手にかかればあっという間に元気いっぱいです。ほら、このように!」
道満は武に近づいて治癒の魔術をかける。すると武の傷はみるみるうちに治っていき、数分ほどですべての怪我を完治した。
「ほう……実に見事な手際だ」
「ンンンン!そんなに褒めても式神しか出ませんぞエミヤ殿!自らの主を癒すぐらい、この道満には造作もないことですので!」
「……」
エミヤは道満の謎のテンションとどこか胡散臭い態度に怪訝な顔をしながらも、ひとまず武が無事であったことに安堵する。
「お前たちに言っておくことがある。先ほど私と戦ったサーヴァントからの情報によれば、ティエールに我々とは違うサーヴァントが存在しているようだ」
「その情報、信用できるのか?」
「貴様の意見はもっともだアーチャー。しかし現状、次の目的地が定まっていない状況下で闇雲に動いても、事態は好転しない。ならばティエールに行って、そのサーヴァントの存在を確かめるのが最適だと思う」
「……なるほど」
アルトリア・オルタの意見を聞いたエミヤは、納得したような顔で頷く。
「それじゃあ、夜明けとともにティエールに向けて出発するってことでいいか?」
「問題ない」
「異論はないぞ」
「賛成です」
武の提案にそれぞれ反応を返すサーヴァント達。しかし二人だけ、まったく反応を返さない存在があった。
「うん、私もそれについては賛成だよ?」
「でも、武さん……」
「「その前にそこに正座して(ください)」」
そう、藤丸立香とマシュ・キリエライトである。二人の目には、明らかな怒りの色が見て取れた。それを見た武は慌てて弁明しようとするも、二人は聞く耳を持たず、足音をたてて近づいていく。
武は最期のあがきにサーヴァントたちに助けを求める。しかしサーヴァント達は同情の視線を寄せるだけで、歩み寄ろうとはしない。いや、できないと言った方が正しい。
「「……」」
二人が出している圧が、およそ人が出していい圧ではなかったのだ。まるで、浮気をした夫を問い詰めるかのような圧に、サーヴァント達は何も言えなかった。
こうして哀れな末路が決定した武に対し、エミヤは哀れみの視線を向けてこうつぶやいた。
「これも運命だ。潔く諦めたまえ」
死刑宣告を告げられると同時に、家中に武の悲鳴が響き渡る。翌日、ティエールに向けて出発する一行の中には、武の両側に陣取りながら監視の目を光らせるマシュと立香の姿があった。
正直、FGO時空のヴラド三世って相当強いんじゃないかと思うこの頃。
次回はRTAパートです。