アクセル・ワールド・アナザー 曼殊沙華には祈らない   作:クリアウォーター

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第五十一話

 第五十一話 二つの対峙

 

 

 必殺技《ランブル・ホーン》により伸びた角で、心臓部を串刺しにした小豆色アバターが消滅し、ゴウは空いた両腕を下ろす。

 戦闘開始から数分で、倒したデュエルアバターは四体。ダメージは頬を斬り付けられた分と、PKアバターの肉壁でカバーし切れなかった箇所を掠めた、心意を付与された弾丸が数発分くらい。それでもまだ残り体力は九割近く残っている。特殊な状況下にあることを差し引いても、中々の戦果だろう。

 その時、破砕音が響いた。

 すぐさま音のした方へゴウが首を向けると、コークス・デーモンと彼を追ったPK集団の一体がいるはずの建物から、過剰光(オーバーレイ)を纏った水流らしきものが壁を貫通している。向こうでも戦闘が行われているのは明らかだ。

 ──急いで加勢を……。

 建物に向かおうとするゴウだったが、両手首と腹部の胴回りに何かが触れた。

 

「な……」

 

 その部分には何も付いていないのに、圧迫感が強まって体が持ち上がり、足が地面から離れていく。

 二メートルほど宙に浮いた状態で、ゴウの体が百八十度回転した。ゴウの意思ではない。胴体に巻き付いている見えない何かが、蠢いて方向転換させたのだ。

 背後を向かせられた形になったゴウの前方で、景色がいきなり歪みだした。歪みはすぐに人の形を作ったかと思うと、ものの数秒で一体のアバターが現れる。

 ゴウが最初の不意打ちで建物の壁の向こうに吹っ飛ばした、あの青緑色のアバターだ。丸く大きなヘルメットには、先のゴウの一撃による陥没痕ができている。

 アバターの容姿は先程までとは少し異なり、波打つような胴体部の装甲によって恰幅のよい体型だったのに、現在はだいぶスリムになっていた。代わりに背中からは、吸盤が付いた四本の触手が伸びている。これらが自身の胴体に巻き付いていたのだ。現在はこの内の三本の触手もとい、蛸足(たこあし)こそがゴウを捕らえているものの正体だった。

 ──保護色か光学迷彩か。隠密系のアビリティで隙を狙ってたな。

 クリーンヒットしたとはいえ、一撃で倒せていたとは、ゴウも初めから思っていなかった。最終消滅現象も確認できていなかったし、必殺技ゲージのチャージ量もそこまで多くはなかったからだ。

 発動時点のゲージを消費し終えるまで止まらない、《限界突破(エクシーズ・リミット)》の効果時間が短く、比例してその後の弱体化時間も短かったのも、その為だと推測していた。

 

「この……」

 

 ゴウは腹に巻き付いた蛸足を引き剥がすべく、両腕を動かそうとする。ところが、三本の蛸足がゴウの動きに合わせて体を動かすので、力がほとんど入らない。まるで糸で操られるマリオネットになった気分だ。

 

「ムダムダ。君のパワーが凄いのは認めるけどさ、単純な腕力なんてどうとでもいなせるんだよなぁ。これが」

「……お前がアタマか」

「まぁ一応は」

 

 こちらを小馬鹿にしたような調子で話すPKアバターは、ゴウの質問にあっさりと首肯した。他のPK達よりもずっと落ち着いているあたり、嘘でもなさそうだ。

 

「それにしても大したもんだ。フィールドギミックの利用。味方の攻撃を利用した同士討ち。それに何よりも、相手に本領を発揮させないようにする立ち回り。いくらこっちが全損のプレッシャーがあるからって、多人数相手をああも圧倒するなんて」

 

 リーダーは拍手をしてから、わざとらしく大げさに肩を落とした。

 

「本当にえらいことやってくれちゃって……。《レムナント》の連中が鳴りを潜めている今、ここらでチーム名でも作って大きく売り出そうか、ってとこだったのにさぁ」

 

 PK集団はいくつかのグループが推測されるのみで、実体は不明とされている。唯一集団名を明らかにしているのが、《スーパーノヴァ・レムナント》。リーダーがたったいま口にしたレムナントとは、その略称だ。

 ゴウが聞いた話では、先月このレムナントに属するバーストリンカー四名が、一人のバーストリンカーに返り討ちにされたのだとか。

 

「これは全損していった奴らの弔い合戦をしないと。君だって──そういや名前も知らないけど……まぁいいか。聞いたところでこれから消えるわけだし。あれだけかましておいて、まさか生きて帰れるなんて思ってないだろ?」

 

 PK行為の現場を見られた以上、当然目撃者のゴウを見逃すわけがない。十中八九、リーダーには一本だけ自由に、これ見よがしに動かしている蛸足から放つ心意技で、ゴウを倒せるだけの自信があるのだろう。

 

「……どうしてこんなことをする」

「ん?」

「誰かのリアルを暴いて、集団で追い詰めて、ポイントを根こそぎ奪い尽くす。どうしてそんなことができるんだ」

 

 ゴウの問いを受けたリーダーは、デーモンと残り一体のPKアバターによるものと思われる、未だ戦闘音がしている建物を横目で窺ってから口を開いた。

 

「逆に聞こうか。君は何の為にバーストリンカーをやってんの? そっちが答えたらこっちも答えるよ」

「それは……この加速世界を楽しく──」

「はっはー! はい出ました!」

 

 リーダーが食い気味に大声を上げ、大袈裟な動きで手を叩く。

 

「スリリングで! エキサイティングで! ハラハラドキドキが止まらない! 対戦の中で友情まで芽生えちゃう、最高に素晴らしく楽しいゲーム!! ……そう思ってるクチなわけだ? 分かってない。全っ然分かってなぁい。ブレイン・バーストはさ、加速能力でそいつの社会的地位を上げられる、選ばれた人間だけが持てるツールなんだよ」

 

 先程同様、建物にちらりと視線をやりながらリーダーは続ける。

 

「運動や勉強に加速を利用するのは卑怯だー、だの。バーストリンカーの風上にも置けないー、だの。そんなのナンセンスな奴らを腐るほど見てきた。いつの時代でも自分の持つ武器を見つけて使って、生き馬の目を抜く競争を制した人間だけが勝ち組になれるのさ。もっと賢く生きなくちゃ。もっとも? 君はそのチャンスを一つ潰したわけだけど。出しゃばりさえしなかったら、まだお友達と楽しく遊んでられたろうに」

「……それがPKの理由か」

「ま、そんなところ。上手く動いて下手さえ打たなきゃ、対戦やエネミー狩りをせこせこやってくより、よっぽど簡単に何倍もポイントが手に入る。しかも依頼としてやれば、リアルマネーまで手に入る。おまけにだよ? 標的は自分が被害者だとも覚えてないから、後腐れもないときたもんだ!」

 

 リーダーは一切悪びれることなく、そう断言して締めくくった。

 ゴウとて何も、バーストリンカーに品行方正さを求めているわけではない。加速能力を現実で利用することを咎めるつもりもない。もし自分がこれから先、加速を使わないと切り抜けられない事態に直面した場合でも、絶対使わないと断言することはやはりできない。

 だが、ブレイン・バーストを加速能力の為の道具としか見ていない、維持の為には平気で他のバーストリンカーから、ブレイン・バーストそのものを奪えるこの男を、正しいと認めることはできなかった。

 

「分かったかい、エンジョイ勢君。こういうのが賢い奴のやり方さ」

「…………分かったよ」

「お、素直で結構。でも現場を見られた以上、始末するのは決定事項。このまま近くのエネミーの巣にでも放り込むか……いや、その前にここでメンタル折れるまで何度も殺してからでも──」

「違う。お前が自分は、周りよりも賢いと、勘違いしただけの、ただの間抜けだってことが、分かったって言ったんだよ」

 

 ゴウから冷淡に言葉を浴びせられ、リーダーは一瞬だけ硬直するも、すぐにせせら笑った。ただしアイレンズの奥は全く笑っていない。

 

「そのザマでよく言う。君がまだ死亡してないのは、単に俺の気まぐれで生かされてるだけで──」

「だから馬鹿なんだよ」

 

 ありったけの軽蔑を込め、冷たく言い放ったゴウの全身に、黒い紋様が一瞬で浮かび上がった。《電界路(インパルス・サーキット)》アビリティの証である稲妻模様から、ありったけの必殺技ゲージを消費して電流が流れる。

 

「っぐががっががががぁ!!?」

 

 ゴウに巻き付いた蛸足を伝って襲い来る電流に、リーダーは絶叫しながら仰け反り、地面へ突っ伏した。

 着地したゴウは、弛緩しても吸盤でへばり付いたままの蛸足を引き剥がし、リーダーの元へ歩いていく。右脚にだけ心意技《黒金剛(カーボナード)》を発動させて。

 

「か……か……」

 

 ぶすぶすと煙を燻らせているリーダーは、全身を痙攣させて言葉にならない呻き声を上げている。

 このスタン状態は短時間で終わってしまう上に、もうこの男と会話をする気もない。何かを訴えかけている呻きにゴウは一切取り合うことなく、まともに動けないリーダーの頭部を黒光りする足で踏み潰した。

 心意技は心意技でしか防げない。陥没痕に追撃を受けたヘルメットはあっさりと砕け、脳天を貫かれたPK集団のリーダーの体から痙攣が止まる。そして他の仲間同様、最終消滅現象によって残った体が、光の帯に変じて消え始めた。

 結局のところ、サドンデスによる一発退場を誰より恐れていたのが、他でもないリーダーだったのだ。

 ゴウが他のPK達と戦っている間、こちらの手札や動きの観察はしても加勢はしない。ゴウを蛸足で捕らえても、ダメージによってこれ以上ゲージが溜まらないように拘束のみに留め、仲間が早く合流しないか、しきりに建物の方を気にしていた。ゴウと会話を続けていたのも、時間稼ぎの側面もあったのかもしれない。

 本人にしてみれば、どの行動もリスクを排した賢い選択のつもりなのだろう。だが、それは全て我が身可愛さの保身でしかない。

 そもそも、せっかく姿を隠せるアビリティを持っているだから、こちらから反撃されるリスクを恐れず、仲間との戦闘中に自分も加わって奇襲すれば良かったのだ。蓋を開けた今となっては、仲間どころか自分のアバターさえも信じられなかった、卑怯な臆病者としか思えない。

 それでいて安全が確保されたと判断すれば、マウントを取りながら勝ち誇る。ゴウがこれまで出会った中で、一二を争うほど性根の腐ったバーストリンカーだった。

 そんな男とそれに組みした連中を永久退場させても、今後胸が痛む心配がないことだけが、今回ゴウがPK集団と出会って唯一の良かった点か。

 頭部が潰れ、もう少しで残った体も完全に消えるリーダーから、残る一人のPKアバターとデーモンのいる建物に、ゴウが首を向けたその時だった。

 

「っああああああああ!」

 

 戦闘によって発生した建物の穴から、炎の塊が叫び声を上げて地上に落下してきた。PKの一人である、消防士に似た格好のアバターだ。

 背中のタンクに繋がった、水流を発射するホースを両腕に装備し、高熱を発するデーモンとは戦闘の相性が良いはずのアバターは、どういうわけか火だるまになって地面をのたうち回っていた。

 

「熱い熱い熱い熱い! 離れろぉ! 俺から離れ──あぎああああああ!!」

 

 絶叫するアバターに纏わり付いた炎からは、よく見ると過剰光(オーバーレイ)が発生している。つまりあの炎はデーモンの心意技。その炎は風が吹いてもいないのに、妙に激しく揺らめいていた。

 だが、先程心意技らしき水流が、建物の壁を穿ったのをゴウは確認している。消防士アバターは、どうしてそれで消火をしないのか。

 

「あぐああああ──あ゛っ!?」

 

 消防士アバターの叫びが不自然に止まる。原因は背中に深々と突き刺さった、岩から削り出したかのように無骨な灰色の三叉矛。それをしっかと握って上から降ってきたのは、灰色の悪魔。

 この一撃により体力が尽きた、最後のPKアバターの体が光の帯に変わっていく中、ゴウはデーモンと正面から対峙した。

 

 

 

 少し時間は巻き戻る。

 心意技と思われる、使い手不明の広範囲結界の中で、大悟は移動拡張の心意技《天部(デーヴァ)風天(ヴァルナ)》を発動し、疾風さながらの速度で走っていた。

 ただし、現在走っているのは地面ではなく、建物の壁面だ。場所は千代田区の北西端に位置する大学のキャンパス。その敷地内で最も高い、百メートルを超える建造物、《ボアソナード・タワー》である。

 極端に前傾姿勢を取った走りで、《煉獄》ステージ特有の障害にしかならない、壁面から生える棘や管をすり抜けて屋上まで辿り着くと、ぶはーと大悟は盛大に息を吐いた。

 

「さすがに……この高さの壁走りはきつい……。もっと低い所に降りろよなぁ」

 

 大悟は文句を垂れながら心意技を解除し、タワーの中心に向かって歩いていく。その先には、大悟を待つ者達がいた。

 一体はM型アバター。

 頭頂から左右に飾り角が伸びた兜と、曲線の多い甲冑を身に着けた、陽光に反射する明るい銀色の騎士。背中に盾を背負い、左腰には十字型の鍔をした長剣を提げていた。

 右手には手綱が握られ、手綱は黒い馬勒が装着された馬に繋がっている。体毛とたてがみが雪のように白い馬には、今は折りたたまれている翼が生えていた。つまりペガサスである。

 もう一体はF型アバター。

 信じられないほどに華奢な体型に、ドレス型の装甲は隣のペガサスよりもなお白い、純白。金色の長髪に載せている冠は、芸術品を思わせる瀟洒(しょうしゃ)なデザインだが、同時に天使の輪のような円環を取り囲むようにして並ぶ縦棒が、どこか鳥籠を連想させる。

 過去に会ったのは、片手の指で数える程度しかない。おおよそ戦闘能力があるとは思えない容姿のF型アバターに向かって、大悟は口を開く。

 

「……最後にお前さんに会ったのは、いつだったかな。コスモス」

「久し振りね。まさか今日この場で、あなたに再会するなんて考えもしていなかったわ。アイオライト・ボンズ」

 

 応じるF型アバター──《ホワイト・コスモス》の清涼でどこか甘い、大気を震わせるような声が大悟の耳朶を打った。

 七大レギオンの一角、オシラトリ・ユニヴァースを束ねるレギオンマスターにして、《儚き永遠(トラジェント・エタニティ)》の二つ名で呼ばれる、純色の王の一人。そして聞いた話では、加速世界に混乱をもたらしている、加速研究会の会長とされる人物。

 

「俺だって同じだとも。時にお前さん、この馬鹿みたいに広い結界について、何か知らないか? どうも閉じ込められたみたいで困ってんだ。あぁ、それと武道館の方で、他の王達やその側近共が何かドンパチやってるみたいだぞ。お前さんは加わらないのか?」

 

 大悟はこのタワーからは東に位置する、日本武道館──だった、今や残骸が積み重なるクレーター状の跡地を指で示した。

 数分前。

 大悟は来た道を引き返し、武道館方面に向かっていると、《千代田区役所》の方から戦闘によるものと思われる音を聞いた。そこで現場には近付かず、北側へ少しだけ迂回した。その場での小競り合いに巻き込まれて、時間を取られたくなかったからだ。

 九段北まで辿り着き、南側に黒煙を上げる武道館の跡地が見えた所で、強いプレッシャーを察知した。それだけでそこいらのバーストリンカーではない、王クラスのハイランカーが何人も集まっているとすぐに分かった。

 千代田エリアで王達が集まっている。これは七王会議が行われていたとしか考えられない。問題は、どうして無制限中立フィールドに集まっているのか。

 通常二つ以上のレギオン間で会談等の話し合いをする場合、開始者(スターター)の二人以外をギャラリーとする、通常対戦フィールドで行う。対戦者はギャラリーを攻撃できず、ギャラリーも攻撃能力を持たないので、最低限の安全が確約されるからだ。

 ましてレベル9の王同士が戦えば、負けた方は一回で永久退場になるサドンデスが課せられている。仮に王自身がそのリスクを承知の上で応じようとしても、幹部勢が必死で止めるだろう。だというのに、自ずとバトルロワイヤル形式になってしまう無制限中立フィールドで集まっている意味が、大悟には分からなかった。

 そんな時、大悟は自分に向けられた視線を感じた。

 西の空を振り向けば、その先には翼を羽ばたかせるペガサスエネミーに乗った、二体のアバター。彼らは大悟が自分達に気付いたと分かると、方向転換して飛んでいった。

 誘われていると、大悟はすぐに悟った。そうして彼らがこのタワーの屋上に降下したので、こうして追ってきたのだ。

 

「代理に任せて、ここ何年か表舞台に一切顔を見せないことで有名なお前さんが、どうしてこの場に現れた? 胡散臭いな、気になって仕方ない」

「それを君に説明する義理はないよ……」

 

 追及しようとする大悟へ返答したのは、コスモスではなく、ペガサスエネミーを駆っていた騎士アバターだった。

 白のレギオンの幹部集団《七連矮星(セブン・ドワーフス)》の《プラチナム・キャバリアー》。単純な戦闘力以上に、厄介さから席次が高いとされる集団の中で、その剣の腕で第一席に座する男である。

 

「よぉ、ダウナー剣士。相変わらずぴかぴかの見た目にそぐわない陰気臭さだな」

「君こそ……相変わらず人の神経を逆なでする話し方だね……《拳鬼(クルーエル)》」

「そんな古い呼び名を使ってくれるな。ところで……良い鳩馬(はとうま)だな。どこで拾った?」

「……落ちていたわけじゃないし、それも説明する必要はない…………でも名前だけは教えるよ。《アリオン》だ……二度と鳩馬なんて呼ぶんじゃない……」

 

 キャバリアーは、アリオンと呼んだペガサスの頬に手を当てる。どうも握る手綱を含めた馬具は、調教(テイム)アイテムらしい。エネミーにそれなりの愛着があるのか、気だるげに余韻を含ませた話し方でも、大悟の呼び方を訂正する語気は心なしか強かった。

 

「どうしてわざわざ……君をここに誘導したと思う……? この大事な局面を、君なんかに引っ掻き回されたくないからさ……」

 

 そう言ったキャバリアーは、手綱をコスモスへ献上するように丁寧に両手で差し出した。コスモスが黙ってその手綱を受け取り、エネミーを牽いてその場から下がると、キャバリアーが左腰に下げた長剣の柄を握る。

 

「オシラトリ最強の前衛が相手とは、これまた光栄だ」

 

 まずは目の前の相手をどうにかしないことには、コスモスと話どころではない。この場で自分を倒そうと、殺気を放ちながら剣を抜く騎士を前にして、大悟は右手を突き出した。

 

「着装、《インディケイト》」

 

 ボイスコマンドにより青紫色の光が大悟の右手に集約し、一本の薙刀を形成する。手にした強化外装を掴んだ大悟は、更にコマンドを唱えた。

 

「《縮》」

 

 アイオライト・ボンズの背丈とほぼ同じ長さをした柄が縮んでいき、およそ四十センチにまで短くなったところで止まる。幅広で反り返った刀身は変わらないので、中国刀の一種に似た見た目に変化した薙刀を、大悟は軽く振ってみせた。

 

「せっかく名うての剣士とやるんだ。こっちも刀で相手をしよう」

「……………………」

 

 無言のまま長剣の切っ先をこちらに向けるキャバリアー。次の瞬間、彼の右手だけが握る剣と共にかき消えた。

 まだ互いの剣先も届かない距離。それでも迫り来る脅威を感じ取った大悟が刀を振るうと、両者の間で金属の衝突音と火花が舞い散った。

 

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