デギン・ザビの弟に転生したと思ったら、俺の知ってるガンダムの世界と少し違うんだが 作:TSしたとねり
かなりの難産……ホモネタを入れないだけでこんなに辛くなるとは……(多少は入れてますが……)
所々に納得できてない部分があるので、また書き直すかもしれませんが、とりあえず投稿します。
——宇宙世紀0068年11月。
なんの因果か、パプアの艦長に抜擢されてしまった俺は、ムンゾ政府の指示を受けてパプア級多目的輸送艦1番艦『パプア』に乗り込み、積荷とゲストを乗せて
無事にパプアの進水式を終えてから数週間で、初めて俺に任された任務はムンゾとハッテの友好条約を結ぶ使節団を送る事という重大なもの。
出港までの間は乗員の完熟訓練に励み、アステロイドベルト開拓団から引き抜いた乗員の質も相まって、短期間で高い練度を得ることができたと思っている。
俺の考えた計画を始めるには、むしろ出来過ぎと言っても良いほどのタイミングである。
「……なぁ、本当にやるのか?」
パプア艦橋の全てを見渡せるような位置に置かれた艦長席。
そこに物思いに耽る俺が腰を落ち着けていると、厳つい顔立ちに似合わない不安混じりの声でランバ・ラルは俺に耳打ちする。
無重力だというのに器用な事をするものだと感心するが、ちょっとここで耳打ちするのはやめてほしい。
「……ランバ、ここではやめて欲しい。兵たちが見ている」
TVアニメ版のガルマのように、髪の毛の先をくるくる弄りながら俺はランバを嗜める。
——おい、そこの女性士官! 何が「薔薇の花が咲きます、大切にしましょう」だ! 俺は百合の花を大切にしたいんだよ!
俺が艦長を務めるパプアの中には、軍艦とは思えない雰囲気が漂っている。良くも悪くも、風通しの良い職場ってことだからヨシ!(現場猫)
緩みつつも、一定の緊張感を維持しているパプアの艦内で、ノーマルスーツを着ていない兵士はいない。何故ならそれがこの艦での規則であり、俺がそれを厳命していたからだ。
でも、それさえ守ればある程度の自由——ちょっとした雑談や、冗談の類、私物の艦橋への持ち込みを許しているので、どちらかと言うと艦橋内の雰囲気は良い方だと思う。
——旧世紀の
「ロラン、しかしだな……ピッタリと一定距離を詰めてこない艦が真後ろにいるんだ。明らかに妙だぞ?」
ランバに言われるまでもなく、それは俺も気になっていた。
ムンゾを出港して以降、付かず離れずの距離を保ちながら一隻の船がパプアの後方に位置していた。
艦影からは、連邦軍に所属しているはずの旧式艦『ニューオーリンズ改級』であることが分かっていたが、
何度か交信を試みたものの、あちらからの返答は全くない。
その時点で怪しさ満点。対処は3点。ドキドキハラハラは年中無休。
「……連邦軍の観艦式にも出ない艦……考えられないが……」
俺がそう思ったのにも理由がある。なぜならば今頃、月では連邦軍が観艦式を行っているはずだからだ。
観艦式には、各サイドに駐留している艦船の全てが参加しているはず。それは、キシリアが入手した情報に基づいてほぼ間違いない。
連邦の跳ねっ返りか、それとも特務の艦か。
考えが尽きない中、ふわり、と文字通り宙を舞う女性が俺に声をかけた。
「ロラン中佐、偵察を出してみては?」
俺に提案を出したのは、俺にとっては聞き慣れたクールな声音。
しかし、軍人ではない——ワイズマン工業からの出向という形で乗艦しているタチアナに、艦橋で向けられる視線は冷たいものだった。
「……タチアナさん、君はゲストだ。艦の運営に口を出して欲しくない。……だが、そうだな……」
タチアナの提案は尤もだ。正体不明の艦に、偵察を出すというのは軍事的な観点から見ても常道だろう。
さすが、数年にわたって俺の副官を務めるだけあって、無難な解を導き出す。
まもなく、
もしも後方の艦が何か仕掛けてくるなら、そこで——、
「ザビ中佐! 後方の艦から通信! 『停船せよ、さもなくば撃沈する』です!」
——俺の思考は、突然放たれた観測員の言葉で妨げられた。
「なんともまぁ、分かりやすい。しかも紳士的だ」
艦影は連邦軍艦船の物。だが、あからさまに敵対的な行動をしてくる艦船に、導き出せる答えは一つしかない。
「電信員、後方の艦に……発光信号と、全周波帯で呼びかけろ! 『こちらはムンゾ国防軍輸送艦パプア、貴艦の所属を明らかにせよ』だ! 総員、第二種戦闘配置。不意の攻撃に備えろ!」
宇宙空間で『海賊』というのは正しくないかもしれないが、おそらくそれに近い奴らだろうと俺は推測しながら、どうしたものかと思案する。
まだサイド2までは遠く、パプアの船足ではまず間違いなく追いつかれる。
俺の号令で、俄かに慌ただしさと緊張感が艦橋内を包み込み、俺は更に指示を飛ばす。
「ランバと俺のモビルスーツはいつでも発進できるように準備しろ。ランバは対空装備、俺のは対艦装備だ」
俺が指揮するまでもなく、映し出されたモニターから『もうとっくにやってますぜ!』と整備班長の声が聞こえてきた。さすがムンゾの船員は仕事が早い。
「指揮官先頭とは……何を考えているのですか? 艦の指揮は誰がとるのです?」
『怒ってます』と言うまでもないほど、般若のような形相を浮かべるタチアナに、俺は怖気付きそうになるのを堪えながら普段通りを装って口を開く。
「艦の指揮は副長が執れるだろう。だが、後方の艦がはたして本当に海賊と決まったわけではない。選別するのに、俺が前線に行く必要があるのだよ、タチアナさん」
完璧な論理。穴はない——はずだ。
「……私は反対です」
「そうも言ってはいられないのですよ、タチアナ殿。
タチアナがなおも食い下がろうとするが、俺が口を開く前に柔らかい口調でランバは窘めた。
ランバの言葉で、タチアナは何か言いたげな表情を浮かべたが、キュッと口を噤む。
心配してくれるのは嬉しいけれど、ちょっと過保護すぎる。
「……と、いうわけだ。タチアナさん、ちょっとこっちに来てくれるか?」
俺はまだ納得していないタチアナを、パプア艦内の重力区画にある艦長室へと連れ出した。
艦長室は俺専用の個室だ。大きめの執務机とベッドがあり、軍艦とは思えないほどの豪奢な作りになっている。
いつかタチアナと、この部屋で
「タチアナ、君が心配してくれてるのは正直嬉しい。だけど、時と場所を考えて欲しい。あれでは君の立場も危うくするだろう?」
「……理解はします。ですが、私の感情は……」
言葉と共に、グッとタチアナの匂いが強くなった。
それも当然だ。タチアナが何を思ってか抱きついてきたのだから——。
「た、タチアナ⁉︎」
困惑する俺をよそに、タチアナは俺の身体に手を回してきた。
「……絶対に、生きて帰ってきてください。絶対にです」
今生の別というわけでもないのに、それだけタチアナは不安を感じていたのだろう。
俺がパプアに積んでいたのは、新型——とは聞こえがいいかもしれないが、今のところまだ試作されたばかりのワンオフ機。
——ちなみにヅダではない。
「……タチアナが、融通してくれた機体なんだ。絶対に帰ってくるよ」
我ながらこんなフラグ満載なセリフを言ってしまったことに少し不安を覚えるが仕方がない。そうでもしないとタチアナが離してくれそうにないんだもの。
すると唐突に、タチアナの顔が俺の顔に近づいてきて、自然と唇同士が重なり合った。
「……続きは、あなたが無事に帰ってからです。バーナードが弟か妹が欲しいと言っていましたから」
——本当に、俺の副官は素直じゃない。
顔を真っ赤に染め上げたタチアナを見ると、石にかじりついてでも必ず戻ってこようと言う気力が湧いてくる。
「分かったよ。タチアナが嫌って言っても止めてあげないからな」
俺の言葉に、タチアナは潤んだ瞳で俺を見つめ、コクンと小さく頷いた。
『発進シーケンスは手順通りに行います、中佐』
コックピットのモニターに映った男が、シニカルな笑みを浮かべた。
——できるのか? ザビ家の男が本当に? とでも言いたいのだろう。舐めてもらっては困るな。そのシーケンスを考えたのは俺だぞ?
「わかった。コンソールチェック」
——ブゥン、と音を立ててコックピットの中にほのかな光がともる。
「融合炉正常、モノアイカメラ、正常」
左右に視点が動くという事は、俺が乗り込んだモビルスーツのモノアイが正常に動いているという事。
次々と手を動かして、各種計器類もチェックしていたその時、ズンと胸に響くような振動が機体を揺さぶった。
「今のは⁉」
俺が慌てて通信機に問う。
——どこかに被弾したら、と思うと不安で仕方がない。この艦にはタチアナが乗っているのだ。
『後方の艦が撃ってきたミサイルです! 艦に損傷なし! 威嚇のつもりなのか、外れました!』
やはり、後方の敵艦は紳士的なようだ。俺は焦った様子を見せないオペレーターに告げる。
「よし、自衛戦闘をする口実ができたな。各員、第一種戦闘配置に移行! モビルスーツを出す! 副長!」
『はっ……』
俺の問いかけに、陰鬱そうな雰囲気を身にまとった男が短く答えた。
「艦は回避運動に専念しろ。それと、モビルスーツ発進と同時にアレを撒くのを忘れるな!」
『はっ、承知いたしました』
陰鬱な雰囲気を身に纏った男は、俺が直接スカウトした。
そう、みんな大好き壺マニア。マ・クベさんである。
マ・クベをスカウトするのは、はっきり言って大変だった。何せ相手は、知識と教養の鬼であるし、ザビ家の一員とはいえ何の権限も持っていない俺が『軍に入ってくれ』と言っても相手にされないことは目に見えていた。
ならばなぜ、マ・クベがムンゾ国防軍に入隊したのか? そう、彼にも弱点があったのだ。
——勘のいい諸氏なら分かったかもしれないが、何を隠そう壺である。
俺はギレンに下げたくもない頭を下げ、譲り受けた古伊万里の壺でマ・クベを買収したのだった。
『中佐、分かっているとは思いますが、一つの作戦ごとに……』
「わかってる。例の物だな? 今頃ギレンさんが磨いているだろうさ」
——アジアの文物に興味があるとギレンに嘘をつくのは申し訳ないが、これもムンゾのためだ。
また壺が一つギレンのコレクションから消えることになるだろうが、許せ。と俺は胸の中で呟く。
「ランバ、そっちの準備は良いな?」
『こちらの準備はオーケー。いつでも行けるぞ』
ランバのヴァッフを後ろに従えて、カタパルトに移動する。
原作では、ホワイトベースが搭載しているタイプの電磁カタパルトをパプワに搭載したことで、パプワの船体の大きさは原作に比べて大きくなっている。
今回、ムンゾと俺にとっては初めての実戦。
本当であれば使い慣れたヴァッフの方が良いのだろうが、好意で回してもらった新型機を使わないと勿体ない。
『一番機カタパルトスタンバイ、オールグリーン! いつでもどうぞ!』
「ロラン・ザビ、ザク、出るぞ!」
グッ、とフットペダルを踏み込むと同時に、ものすごい勢いでカタパルトが加速した。
俺に用意された機体は、原作では旧ザクと呼ばれる事になる、MS-05に似ているシルエットの機体だ。
「ぐっ」
息が詰まるくらいのGがノーマルスーツを締め付けて、血液が脳に行き過ぎるのを防いでくれるが、何度訓練しても身体を締め付ける感覚には慣れそうもない。
早くエアシートベルトを開発しようと心に誓うのだった。
読んでいただきありがとうございました
まだまだ頑張っていきますので、応援よろしくお願いします。