デギン・ザビの弟に転生したと思ったら、俺の知ってるガンダムの世界と少し違うんだが   作:TSしたとねり

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お待たせしました。
久しぶりの投稿です……
慣れない三人称での戦闘描写(戦闘描写というほどではないかもしれませんが……)
かなり難産でした……


12 遭遇戦(宇宙世紀0068年)

※三人称視点

 

「目標、依然として進行中! 船足止まりません!」

 

 モニターに描き出されている三次元映像には、船2隻を横に並べたような見た事のないシルエットをした艦が、モニター上に立体的に描き出されている。が、その映像はカメラの映像そのままを映し出している物ではない。

 

 宇宙空間で他の艦船を見つけるのは至難を極める。ただでさえ音速を遥かに越える速度で航行しているのに、宇宙空間は広大すぎるからである。

 

 そのため、モニター上に映し出されている映像は、軍艦に満載されている多種多様なセンサーやレーダー類がそれらの情報を複合的に演算することで、軍艦に積まれたコンピュータがリアルタイムの映像として出力しているに過ぎない。

 

 ニューオーリンズ改級『ボルチモア』も、その例に漏れず、連邦軍から除籍されたばかりとあって艦内にあるCICは老朽艦と思えないほど最新鋭の機器で溢れていた。

 

 レーダーこそ型落ちと言っても良い代物だが、火器管制の他、データリンクシステムや赤外線センサーは連邦の新造艦にも引けを取らないだろう。

 

「戦闘機隊、発進準備。砲雷長、次はエンジンに当てろ。間違っても貨物室に当てるなよ? 依頼人の欲しがる物は手に入れたいからな」

「了解。レーダーリンクを実施します」

 

 ブレノ・ソウザ少佐は、あまりにも簡単すぎるこの任務の内容に、CICに用意された席に深く腰を据えたまま内心ほくそ笑んだ。

 

 慣熟訓練をそこそこにして獲物が巣穴から出てきた時、ブレノは小躍りしたくなる衝動を必死に耐えた。

 

 目標の輸送艦は、連邦軍の輸送艦のように鈍重で、しかも入手した情報から対抗してくる装備は何もない事が分かっている。

 唯一、懸念するべきは未知の艦載機とやらだが、それでも()()()()が作る程度の機体であれば、偉大な連邦軍が正式採用している戦闘機に勝てる道理はない。

 

 その艦が、慣熟訓練を十分にする間もなく出港したのだ。

 

 こんな簡単な任務で、中央への栄達が約束されている。

 

 ——割りの良い仕事だ。

 そう思い、ブレノは下品に舌なめずりをした。

 

「艦長! 敵艦から高熱源体を射出! データありません!」

「ついに来たか! 戦闘機隊、即時発艦! (やっこ)さん方は我が軍の秘密兵器を奪取した海賊だ、秘密兵器は出来るだけ捕獲を試みろ!」

 

『了解!』

 

 嘘も方便。正確な情報を言わなかった理由は戦闘機隊には悪いが、そう言った方がならず者のような性格をした部下には効くだろう。——というブレノの考えからだった。

 

『一番機、発艦、続いて二番機、発艦準備。三番機、四番機は所定の位置へ』

 

 電磁カタパルトによって一機ずつ戦闘機が打ち出され、漆黒の宇宙空間に推進剤の青い光を煌めかせて小さくなっていく。

 

「通信員、敵艦からの反応はどうだ?」

「はっ、先程、本艦の所属と艦名を問う通信がありましたが、それ以降は沈黙しております」

「よろしい。それで、それに対しての返答は?」

「何も送っていませんが……何か送りますか?」

 

「……いや、良い。それよりも、敵艦から射出された高熱源体はトレースできているか?」

 

 戦闘機ではない機体——ムンゾの作ったモビルワーカーと呼ばれる作業機械のように、人間のような四肢を持っている事が分かっている。

 

 能力は未知数だが、宇宙空間で兵器をわざわざ人型にする利点がブレノは想像できなかった。

 

 その時——、

 

「艦長! 目標消失(ロスト)!」

「……はっ! 馬鹿野郎っ! 撃沈してどうする!」

 

 ——ブレノが物思いに耽っていると、観測員からの声がそれを一旦中断させた。

 

 栄達の道が閉ざされるかもしれない失態を告げる声に、ブレノは声を荒げた。

 ところが、観測員は「はっ、いえ!」とブレノの言葉を否定する。

 

「ま、まだ撃沈はしていません! ですが、突然レーダー上の輝点(ブリップ)が消失しました。……レーダー全体に、まるで靄がかかったように……」

「馬鹿野郎! 間抜け! ECMだろうが! さっさと対抗しろ!」

 

 電子戦は、現時点では前時代から大きく進歩していない。レーダー波をジャミングするという手口は、戦闘の常識だ。

 そしてブレノは、観測員にマニュアル通りの対応を飛ばすが、そんな事も一々指示しなければ動かないのか、と口調荒く怒鳴りつけた。

 

「艦長! 全帯域を試しましたが、変わりません! 通信状況も……!」

 

 ボルチモアのレーダーを見てみると、確かに観測員の言った通りになっている。

 

「ちぃっ、チャフでもまかれたか? 戦闘機隊に通信だ! あいつらに観測機の真似事をさせるんだ」

「し、至近距離のはずですが、通信も繋がりません! 原因不明です!」

 

 ガッ、とブレノは拳を近くにあった椅子へとぶつける。

 モニターに鬱憤をぶつけなかったのは、ブレノに残された良心からだろう。

 

「何が……⁉︎ どうなっていやがる!」

 

 CICには窓がない。対処のしようが分からなければ、目隠しをされた状態で戦闘をするのと同義。

 

「くそ、艦橋にあがるぞ! 戦闘機隊には発光信号で連絡を取る!」

「はっ!」

 

 足早にCICを後にし、ブレノは艦橋へと急ぐ。

 廊下の壁に張り巡らされているレバーを掴めば、無重力であっても楽に移動することができるが、ブレノにはその時間すらも惜しく感じられた。

 

「状況はどうだ? 戦闘機隊への連絡は?」

 

 艦長席に腰を下ろしたブレノは、手近にいた士官に声を掛ける。

 

「はっ、未だに通信障害で取れていません! 発光信号を送りましたが、あちらが了解したかも分からず……」

 

 ——それを何とかするのがお前らの仕事だろう! と、口を突いて出てきそうになる言葉を押し込みながら、ブレノは苦虫を噛み潰したよう表情を浮かべた。

 

「えぇい、クソ。信号弾でもなんでもいい! 返答させろ! それと、全火器管制をCICからこちらに回せ! 目視照準だ!」

 

「そ、そんな簡単には……」

 

「良いからやるんだよ! 口からクソを垂れる前に動け!」

 

 口汚く罵られつつも、健気にも甲斐甲斐しく艦橋要員は動き回る。

 連邦軍の艦艇はオートメーション化が進んでいるが、目視による手動火器管制のシステムも当然のように備えられている。

 もちろん、その理由は敵艦の攻撃によりレーダーやセンサーが損傷を受けた場合を想定しており、乗員もそれに則った訓練を重ねているが、今回のようなケースは経験がなかった。

 

 故に、ブレノの指示によって取り掛かるまで時間がかかってしまった事は、致し方のない事だと言えよう。

 

「電波障害……? いや、それにしては……」

「艦長!」

 

 思考の海に沈みかけたブレノを、兵の声が現実へと引き戻す。

 

 艦橋の外には漆黒の闇。

 ぽつり、ぽつりと小さく見える青い光は、おそらく戦闘機が出す推進剤だろう。

 

「どうした? 何が……?」

 

 ブレノは、誰にも聞こえることのない声量で疑問の声を漏らした。その時、突然一つの青い光に向かって火線が迸り、数瞬後に青い光は赤い火球へと姿を変えた。

 

「戦闘機が!」

 

 火線を迸らせた機体は、豆粒ほどの大きさにしか見えない。が、ブレノははっきりとその機体の視線が『ボルチモア』に向けられたのを感じ取った。

 

「っ各砲座! 敵機だ! 各個射撃しろ!」

 

 ブレノの命令を受けて『ボルチモア』の主砲や、随所に設置された機銃のターレットが敵機へと指向する。

 

 敵機——確か、モビルスーツと呼称するのだったか——はモビルワーカーを軍事用に改造したものだと聞いていたが、その動きはブレノが思っていた以上に機敏だった。

 

 肉眼では捉えがたい大きさのモビルスーツは、ブレノが確認できたもので2機。

 白い奴と青い奴。それぞれが背面に背負ったランドセルのような物に付いているスラスターから、推進剤が燃焼した時に生じる青色の炎を噴出し、漆黒に塗られたキャンバスを思わせる宇宙空間に二条の線を描いていった。

 

 2機のモビルスーツは、戦闘機のような直線的ではない複雑な軌道を描きつつ、ボルチモアから発進した戦闘機にあっという間に近づいたかと思えば、人間が手にする銃器を模した得物で一機、また一機と落としていく。

 

「近付けさせるなぁっ! たった2機の機動兵器だぞ!」

 

 ――どうしてこうなった? 簡単な任務だったはずではないか⁉

 

 ブレノは叱責に近しい声音で乗員に檄を飛ばし、ただ状況の推移を見守るしかない自分自身に嫌悪感を覚えた。

 白いモビルスーツが近付いてくるにつれて、その違和感すら覚えるシルエットが明らかになっていく。

 

 旧世紀の戦士を思わせる風体。

 だがその戦士は盾もなく、剣も佩いていない。が、槍の如く携えている銃器は、見るからに口径の大きな砲であり、あまりにも重厚で無骨に思えた。

 

 そのデザインは、まさに戦闘を行うためのもの。

 人類が有史以来、続けてきた闘争の体現といっても良い。

 

 そして、何よりも目を引いたのが人間の身体で言うと口に当たる部分。口を思わせるダクトはまぁ良い。

 その左右に伸びているカイゼル髭を連想させるアンテナは、ブレノが持つ僅かばかりに残った軍人としての矜持と自尊心を幾分か傷つけるのに充分すぎる物だった。

 

「機動兵器にヒゲだと⁉ 馬鹿にしてんのか⁉︎」

 

 そんなブレノをあざ笑うかのように、白いモビルスーツはボルチモアから放たれ続ける対空機銃の火箭の雨を潜り抜ける。

 

「落とせ! あのふざけた兵器を撃ち落とせ!」

 

 ——どうしてだ? 全て上手く行くはずだった。ただの輸送艦と、実戦経験のない機動兵器を捕獲するだけだったのに。ボルチモアから飛び立った戦闘機隊はもう残っていない。全てあの青い奴に落とされてしまったらしく、青いモビルスーツは白い奴の援護のつもりなのか、マシンガンのような武器で対空砲座目掛けて射撃している。

 

 迫り来る白い機体と焦燥感。

 感じた事のないプレッシャーをブレノは感じ取っていた。

 

「なぜ当たらん! さっさと当てろ! 消えてしまえ! じゃないと、俺の未来が……!」

 

「艦長!」

 

 あれほど小さく見えた白い機体が、ブレノの肉眼で不思議と大きく見えた。

 

「……主砲!」

 

 それを見て、——撃て! と咄嗟に号令を発そうとしたブレノは、その声を上げる前に見てしまった。

 

 至近距離にまで近付いてきた白いモビルスーツが構えた、人間からして見れば巨砲としか言いようのない得物から、一発の巨弾が放たれる瞬間を——。

 

 火薬によって打ち出された、飛翔弾の実際の口径は280ミリ。まぁ、そんなことをブレノが知る由もないのだが。

 

 旧世紀のアメリカで使用されていた、バズーカに似た形状の武器から放たれたそれは、砲口から伸びる白い火薬残渣の尾を引きながらボルチモアの艦橋へと一直線に向かう。

 

 実際に砲弾が艦橋へと突き刺さるまでにかかった時間は、ほんの数秒にも満たなかった。

 

 砲口から放たれた砲弾は()()()()()()

 それの意味は、ブレノの思考を凍て付かせた。

 

 艦橋に飛び込んでくる何かを砲弾と認識した脳は、何かをさせて生き残らせようと電気信号をブレノの四肢に送ろうとする。

 

 だが、それによってブレノが動くことは叶わなかった。

 せいぜいブレノにできた事と言えば、呪詛の言葉を口走ろうと口角を僅かに上ずらせただけだろう。

 

 砲弾は艦橋の強化ガラスを突き破り、ブレノの身体を艦長席ごと壁に押し潰し、次いで、砲弾の先端に付いた信管が作動し艦橋を破壊する。

 

 艦橋にいた乗員は、何が起こったのか理解する間も無く、肉片も残さず宇宙と一体となった。

 

 一瞬で命を失う事になった、艦橋にいた者達は幸運だったと言えよう。——艦内に残された者達に比べれば——、と注釈が付くが。

 

 炸裂した砲弾によって艦内に張り巡らされた回路がスパークし、燃焼物に引火する事で小さな爆発が艦内で起こる。

 小さな爆発は徐々に増えて行き、それらが合わさって更に大きな爆発へと変化した。

 

 艦内に残された者達は、何が起こったのか知る術もないまま爆発の炎に巻かれるか、生じた破孔の外に空気とともに流れ出した。

 

 それでも運良く爆発にも巻き込まれず、宇宙空間にも投げ出されなかった者は少ないが存在した。

 

 だが、運良く生き残った者達に定められた運命は更に過酷である。

 

 それを書き尽くすには言葉が足りない。

 

 空気が徐々になくなって行く恐怖感。飢餓に飢える乗員達の物語は、まだ始まったばかりなのだから——。




読んでいただきありがとうございました
少しはモビルスーツの怖さを描写できていたでしょうか……
三人称の戦闘描写難しい……

Twitterとかでエゴサもしてるの……たまに読んでくれたであろう人のツイート見ると嬉しくなっちゃいます。ありがとうございます

小説の話のタイトルについて

  • 数字だけで良い
  • 年号があれば良い
  • 副題をつけて欲しい
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