デギン・ザビの弟に転生したと思ったら、俺の知ってるガンダムの世界と少し違うんだが   作:TSしたとねり

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お待たせしました。
5月に入って一回も投稿していなかったので、急いで書き上げました汗


13 マッチポンプ(宇宙世紀0068年)

「艦長、ハッテです! ハッテの宇宙港です!」

 

 ハッテの宇宙港を肉眼で捉えることができるほどに近付くと、パプワの艦内に漂っていた緊張の糸が一気に弛緩した。

 

 ——それも仕方がない事だろう。ムンゾが始まって以来、初めてとなる実戦を経験してしまった後なのだから乗員達がサイド2に至るまでの間に緊張してしまっていたのも仕方がなかっただろうし、ゴールの見えた人間が緊張の糸を解してしまうのも当然と言える。

 

 だが、それは軍人としてはあまりよろしくない話だ。

 

 あくまで、俺たちの任務はサイド2に積み荷とゲストを届ける事。それにプラスして、俺が進めてしまっている計画がまだ完遂されていない。

 緊張を解きほぐすのは、それらが片付いてからにして欲しいものだ。

 

 俺の計画を知る人間は、俺の他にランバくらいだが、所属不明艦との戦闘というイレギュラーがあったとはいえ計画はすでに進行してしまっている。それが終わる最後まで緊張感を乗員に保ち続けてもらいたかったというのは、きっと俺の我儘だろう。

 

「各員、もうすぐだ。最後まで気を抜くなよ。見張り員は対空監視を怠るな」

 

 初めての遠征が佳境に差し掛かっているという事実に、俺は内心の興奮を抑え込みながら、それを隠すかのように乗員に向かって発破をかけた。

 

 そうでもしていないと、俺のいつもと違った調子に感づかれてしまうかもしれない。しかし、そんなわかりやすい俺の機微に聡いタチアナは、艦橋にはいなかった。——何があったのかは詳細語れないが、今頃は俺のベッドで目を覚ましている頃だろう。

 

『こちら、サイド2管制局(コントロール)。ムンゾからの長旅お疲れ様でした』

 

 モニターに映ったコロニー公社に所属する男が言葉を発して、いくらかノイズ交じりの声が艦橋に響いた瞬間、艦橋にいた全員が「おぉっ」と感嘆の声を漏らした。

 

「お言葉感謝します。こちらはムンゾ自治共和国国防軍、多目的輸送艦パプア。艦長のロラン・ザビ中佐です。入港許可を願います」

 

 ミノフスキー粒子を戦闘中に散布したのだが、サイド2に影響はないのか通信状況は良好で、すぐにパプアから送信された入港許可を求める申請書が男の手に持つタブレットに映し出される。

 

『はい、申請に不備はありません。予定通り、ハッテの入港を歓迎いたします』

 

 初めての遠征は大成功。某コレクションゲームだったら資源が増えるところだが、今回はゲストと積み荷を下ろす事が目的だ。

 

 おつかいは行って帰ってくるまで。最後まで気を抜くことはできない。幼児ですら教えてもらうことだ。

 パプアに積んである積み荷は、モビルスーツのほかに工作機械と若干の農作物。

 

 ムンゾ政府はモビルスーツ以外を手土産に、ゲストたる外交官を送り込み、サイド2(ハッテ)サイド3(ムンゾ)間の交流を活発化させることを企図していた。

 

 ——そして、それ以外に進みつつある俺の計画。

 

 所属不明艦との戦闘後、モビルスーツの整備と補給をした俺はキシリアから送られてきた高出力レーザー通信の内容を確認し、俺の考えた計画が順調に進んでいる事を知った。

 

 ——数秒の遅れも許されない、俺の計画を俺の構想を伝えただけで実現したキシリアは、本当に優秀だと言えよう。

 

 俺が「ありがとう」と、ハッテの管制官に口を開きかけた時だった。

 

「艦長! レーダーに感! 隕石がサイド2に向けて進行中!」

 

 観測員の言葉で、弛緩していた空気が一気に緊張感で引き締められた。

 

「衝突コースは⁉︎ どうして感知できなかった!」

「サイド2……アイランドイフィッシュ方向です! それが、ミノフスキー粒子散布の影響が大きい方向から飛来したため、今の今まで……」

 

 ——ついに来た! キシリアからの届け物が、これ以上にないタイミングで!

 

 宇宙空間には数多くのデブリや隕石が存在している。その大きさは大小様々ではあるが、宇宙船や人間にとって例え小さなデブリでもその脅威は平等だ。

 

 それは直径数kmの巨大なコロニーであっても同様。

 小さな亀裂が命取りになるし、大きな隕石であれば尚の事。

 だから、通常脅威となるような隕石はその動きを逐一トレースし、コロニーに近付いてくる前に破壊するのだ。

 

 その任務に当たっているという建前が、連邦軍の駐留艦隊にはあった。だが、コロニーの脅威を取り除くために駐留していた艦隊は、今頃は月で観艦式の真っ最中。

 

 もちろん、連邦軍も馬鹿ではない。あらかじめ観艦式前後に脅威になりそうな隕石やデブリは排除していた。

 

 ならば、今回のは何なのか——。

 

 俺がキシリアに告げた計画。それは、隕石に切り離し式のロケットブースターを付け、特定の時間に燃焼。ロケットブースターを切り離すというもの。

 

 単純に聞こえるかもしれないが、特定の時間というのが重要だった。

 

 少しでも燃焼時間が短くても長くても、隕石は慣性に従って目標に当たることがなくなるかもしれない。

 綿密に練られた計算と予測。そして定刻通りに実行する力。更に言えば、邪魔者がいないこの時が、俺の考えた計画のベストなタイミングだった。

 

『警報を出せ! それと緊急プログラム作動だ! アイランドイフィッシュをずらすんだ!』

『間に合いません……!』

 

 モニターに映る人影が、慌ただしくなる。

 

 コロニーと比べれば、隕石の大きさは大したことはない。およそ数十メートルから百数十メートルといったところか。

 

 だが、巨大な質量と運動エネルギーは十分にコロニーの脅威となり得た。

 

 突如として現れた隕石は導かれるかのように、コロニーのミラーをその基部から圧し折る。コロニーのミラーに衝突した隕石は、若干軌道を変えて宇宙の闇に消えていったが、ミラーはそうではない。

 

『ミラー破損! 重心が変わります!』

 

 コロニーは重心を変えると、歪な軌道を描き始める。今はまだ正常な定位置を保っているが、時を経るにつれて歪な軌道を描いていく。このまま回転させ続ければ、他のコロニーにも衝突しかねないという事は明らかだろう。

 

 更に、回転を続けさせれば残ったミラーは無事であっても、ミラーがコロニー本体にぶつかり破損する可能性が高い。

 

『緊急事態を宣言するようにハッテ政府に申し入れを! それとアイランドイフィッシュの回転を止めるんだ!』

 

 回転を止めてしまえば、破損したミラーがコロニー本体に衝突する可能性を減らす事ができる。だが、いっそのこと全てのミラーを破壊させてしまえば、コロニーの重心は保たれるのだ。

 

 どちらがマシかと考えた時、コロニー公社のマニュアル通りの対応はコロニーの回転を止め、他のコロニーへの損害を増やす事を防止する事だった。

 

 一千万人近い人口を抱えるコロニー側からしてみれば、罵詈雑言を吐き捨てたくなる。

 

 今、俺たちがアイランドイフィッシュの命を握っているのだ。

 

「こちら、パプア。ハッテ政府に繋いでくれ。援助を申し入れたい」

 

 俺自身が描き出した阿鼻叫喚。

 特に、病院なんかは最悪の事態に陥っているだろう。治療に欠かせない点滴は、重力が必要。俺はせめてもの罪滅ぼしに、入院患者を他のコロニーに移動させる事をコロニー公社に申し入れた。

 

『ちょっと待っててくれ!』

 

 上役に掛け合っているのか、モニターに映っていた男が画面外へと消え、暫くすると息を切らして戻ってきた。

 

『上の許可が出た! 正規の宇宙港から、物資搬入用のゲートに入ってくれ! そこからなら、君たちの船もコロニーの中に入れるはずだ』

 

 コロニー側から指定された入口は、アニメ版の第一話でサイド7にザクが侵入した物を想像してもらいたい。

 アニメ版の物は『物資搬入用』としては小さい物だったが、サイド2にあるものは違う。

 

 初期に建造されたコロニーの多くは、物資を大量に積んだ宇宙船を直接コロニー内部に入れるため、大きなゲートを備えているものが多い。

 

 有名なところで言えば、サイド1のシャングリラがそれだろう。

 

「パプア了解した。全員聞いたな? これより本艦は、人道的支援のためアイランドイフィッシュに入港する。救助に使えるものは全て使え! モビルスーツもだ!」

 

 俺は艦長席にドッカ、と腰を深く据える。

 これが公になれば、マッチポンプの謗りは免れまい。

 

 眼前に映るアイランドイフィッシュのゲートが開かれ、先導のつもりかビーコンがパプアを誘っていた。

 

「コロニー内部に入り次第、モビルスーツと救難艇を出す。第一避難目標は病人、妊婦、子供だ。それが済み次第、健康的な大人を避難させる」

 

 アイランドイフィッシュ港内は、混乱の坩堝と化している。

 出港を急ぐ民間船の間を縫うようにして、パプアは宇宙港の奥へと進み、物資搬入用のゲートを通ってコロニーの中に入っていったのだった。

 

 


 

 結論から言うと、救出作戦は成功だった。

 

 何度かピストン輸送をすることになったが、民間船舶の協力も得られたことで、俺たちは3日間という短い期間で、アイランドイフィッシュの全住民を避難することができたのだ。

 

 そして、俺たちパプアのクルーには、もれなくハッテ政府から感状をもらうことになった。

 

「——ここに、貴官らの功績を讃える」

 

 避難が終わって、ようやく正式な入港作業が終わり、ホッと一息ついたのも束の間。

 交渉のために送り出した外交官が、血相を変えてパプアに戻ってくるや否や、俺に対してすぐ制服に着替えるように告げてきた。

 

 半ば拉致同然にエレカに乗せられ、ドナドナされる事数分。

 ハッテの中心部にある政庁舎に着いたと認識する間もなく、あっという間に式典に出席していた。

 な……何を言っているのかわからねーと思うが——(以下略)

 

 あれよあれよと言う間に式典は終わり、何故か俺は外交官と共にハッテ首相との会談をセッティングされていた。

 

「……帰りたい……」

 

 交渉に熱中する2人を横目に、俺が漏らした呟きは誰に聞かれることもなく虚空に消えた。

 

 2人が話し合っているのは、詰めの交渉だ。

 ムンゾとハッテ間で結ばれる通商関係の合意については、すでに大筋で合意しており、あとは2人のサインを待つばかりになっている。

 

 では、何故議論に熱中することになっているのかと言うと、破損したコロニーに関しての事だった。

 

「コロニーは、我々(ムンゾ)の管理下において修復されるべきだ」

「何を仰る! コロニーは我々(ハッテ)の財産である!」

 

 ——と、まぁこんな感じの会話が延々と続いている。

 議論は相変わらず平行線。

 早くパプアに帰りたい。いや、ムンゾに帰りたい。

 

「……少し、よろしいですか?」

 

 おずおずと手を小さく上げながら言葉を発した俺に、ギロリと目線を向けてくる。そんなに睨まなくたっていいじゃん……

 

「破損したコロニーがハッテの所有である事には、当方としても異存はありません」

「では、こちらの管理下で修復するという……」

 

 ——そう、そこが問題なのだ。

 

「それについては反対致します」

 

 俺がそう告げたと同時に——ガッ! と机に拳を打ち付ける音が室内に響いた。

 

「こちらとしては! ムンゾで修復するのは許容できん!」

 

 こうまでサイド2(ハッテ)側が、コロニーそのものに拘泥するのも分かる。

 まず、コロニーという物は、コロニー1つで自己完結するように作られている。電力、食料、そして人間もだ。

 

 コロニーはただ生活するだけの拠点と言う物ではなく、コロニーの中には工場もあれば農業プラントもある。

 それらはハッテにとって技術の集積でもあるし、人が住めなくなったからと言って手放しても良い物ではない。

 サイド3(ムンゾ)に移送して修復するとなれば、それらが奪われてしまうのではないか——、とハッテ側が懸念に思うのも理解できる。

 

 ハッテの技術? ハッテの農業プラント? ムンゾにとって、そんな物()はどうでも良い。

 

「ですから我々はあなた方の管理下で——、と申し上げた。つまり移送することなく、現宙域での修復です」

 

 修復するための資材を輸送するコストは増えるが、サイド3のある宙域までコロニーを移送することに比べれば許容範囲内。むしろ、連邦に良い顔をする意味でも、献身的な態度を見せた方がプラスになるだろう。

 

「資材や資源に関しては、ムンゾが協力いたします。しかし、修復するとなれば、モビルワーカーを予定以上に購入していただくことになるでしょう」

 

 ムンゾが用意できるモビルワーカーは、機種更新のためにダブついた古い物が主流になる。もしも連邦にモビルワーカーの技術が漏れたとしても、今やムンゾは数年先の技術を先取りしている。大した事はないだろう。

 

 

「地球からの資源よりかはいくらかお安くできますが、それでもムンゾの人員を作業員として派遣することについては、ご理解いただけますかね?」

 

 

 技術流出以上のメリット。それは、合法的にムンゾの人間を多数サイド2に送り込めること。

 

 以前は連邦の手によってジオン党の拠点を潰されてしまったが、コロニー修復のための労働者を合法的に、それも数万人規模で送り込むことができるのだ。

 いかに連邦とは言え、数万人の労働者全員の思想を調査するには時間がかかりすぎる。

 ただでさえスペースノイドにとって親和性の高い思想を持つ、数万人の集団が、ハッテに入ればどうなるか——。

 俺は、その考えを顔に出さないように取り繕う。

 

「あぁ、それと、我々から送り出す労働者の給与や糧食については、できる限りあなた方に迷惑をかけないようにしたいと思います。ですが、労働者も一人一人が人間であります。多少、ハッテの街に出たほうが、経済交流の促進になると思いますが……」

 

「……分かった、それで手を打とう。次に、アイランドイフィッシュ住民の事だが……」

 

 ——その日、ハッテ政府とムンゾ政府から共同で発表された内容は、ムンゾとハッテの両国民に歓呼の声をもって受け入れられたのだった。

 


 

MNNムンゾネットワークニュース

 ムンゾネットワークニュースからムンゾ共和国政府の発表をお知らせします!

 

 先般、サイド2のアイランドイフィッシュを襲った未曾有の災害は、ムンゾ自治共和国政府代表団とハッテ政府代表団との話し合いの結果、一致協力して復興に取り組むことを決定した! ムンゾ首班、ジオン・ズム・ダイクン首相は、初動対応に当たったジオン党幹事長デギン・ソド・ザビ氏の弟であるロラン・セア・ザビ中佐に対して勲章を授与する考えを表明しました!

 

 復興に当たって、同胞たるスペースノイドのアイランドイフィッシュ住民の内、およそ30万人がムンゾに避難することとなり、今後我が軍の最新鋭輸送艦パプアによって避難が行われる予定です。

 

 地球に、重力に魂を縛られたアースノイド政府は、今回の我が軍の大活躍の最中、月において呑気に観艦式を執り行っていたというのですから、どちらが地球圏の守護者なのか視聴中の皆様には自明でありましょう!

 ジオン・ズム・ダイクン首相は演説の最中『我々ムンゾの民衆の守護者は、ハッテにおいても守護者となった。彼らの危険を顧みない献身と、任務に対する忠実に感謝したい』と述べられ、帰還する乗員に対しても何らかの褒賞を与える考えを示しました。




読んでいただきありがとうございます。
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