デギン・ザビの弟に転生したと思ったら、俺の知ってるガンダムの世界と少し違うんだが   作:TSしたとねり

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先月は更新できずに申し訳ありませんでした。

今回のお話はタイトルで想像できるかもしれませんが、まぁそんな感じです。


14 政権(宇宙世紀0069年)

 ——宇宙世紀0069年、2月。

 

 サイド2(ハッテ)からムンゾへの避難を希望した、数十万人にも及ぶアイランドイフィッシュ住民の輸送をパプアだけで行うのは流石に無理があった。

 

 そこでムンゾは、パプア級2番艦以降の進水(進宙)を前倒しする事にしたが、それでも艦艇数が圧倒的に足りない事は誰にでも分かる問題だった。

 そんな時、解決策を模索したムンゾは、ある物に注目する事になる。

 

 ある物というのは、ムンゾ——というより軍が昨年から建造し始めた『アルカナクラス』。

 

 正史では、後年『ムサイ級軽巡洋艦』に生まれ変わるべく、急ピッチで建造されている民間貨客船を運用する事で、避難に必要な艦艇数の不足を補う事にしたのだ。

 

 そんなこんなでかき集めることのできた30隻余りの艦船——艦隊と言っても良いであろう規模だ——が、ムンゾ最大の宇宙港からハッテに向けて出港するのを見送る事になった俺は、その威容とも言うべき姿を見て息を吐いた。

 

「……やっぱり帰りたくなかったなぁ……」

 

 ハッテではあれほどムンゾに帰りたかったのに、帰ってみるとそう思ってしまうのだから、我ながら我儘な物である。

 

 ムンゾの宇宙港でハッテに派遣する艦隊の式典が執り行われ、ドズルもその中の一将兵——しかも、アルカナクラスの艦長だ——として出航して行った。

 もちろん、俺が息を吐いたのはそれに参加できなかった事が理由ではない。

 

 式典が終わり、参加していた人間はすでに思い思いの帰路についている。そんな中俺は、式典用の礼装を身に付けたまま式典で用意されていた椅子に深く腰掛け、現実逃避という名の思案に暮れていた。

 

「まだ間に合う……いっそどうにかして逃げ……いや、身を隠して……」

「叔父上、こんなところで何をしているので?」

 

 俺が思考の海にダイブしようとしたところで、キシリアが冷たい声音で問いただしてきた。

 

 ——なんでよりにもよって、一番見つかりたくない相手に見つかっちゃうのかなぁ⁉︎

 

 きっと配席を考えた奴は、俺に対して悪意を持っているに違いない。分からないが、そうでもないと俺の隣にキシリアが座るはずがない。

 本当だったら、兄上(デギン)の隣に座るべきだと思うんですが——。

 

「ひ、ヒトチガイデスヨ、キシリアチャン? ワタシ、マダナニモシテナイネ」

 

 どう考えても無理がある俺の言い訳に、キシリアの瞳から光が消えた。

 

「……叔父上、私が何も思っていないとお思いで? それと既に父上とダイクン首相がお待ちです」

 

 がっしりと——逃すまいと言わんばかりのキシリアに掴まれた俺の肩が、女性とは思えないほどの握力によってミシミシと悲鳴を上げる。

 キシリアの雰囲気から、逃げられない事を悟った俺は、キシリアに無理やり席から立たされると、捕虜になった兵士のように項垂れて式典の会場を後にしたのだった。

 


 

 俺がキシリアに連行(・・)(誤字ではない)された場所は、ムンゾの首相府と呼ばれる場所。つまりは、ムンゾの政治の中心地である。

 

 ——もう慣れたから良いんだが、こんな煌びやかな場所に軍服の礼装姿って、俺浮いてません? 帰って良い? 浮いてない? 普通? いや似合ってる? そう……(シュン

 

 キシリアに誘われて入った部屋は、本来であれば議員団が様々な会合を行う場所。

 数百人は入れる広い部屋であるが、俺が部屋の中に入った瞬間、多くの目がこちらを睨んだ。

 

 部屋に集まった歴々は、議員をはじめメディア関係者各位。

 部屋の奥——演台が置かれた場所の横に、政治家らしくスーツを着込んだ兄上とジオンの姿も見える。

 

 懐疑。

 羨望。

 嫉妬。

 欲情。……欲情? やめて……

 

 視線からは、無数の感情が見て取れる。

 しかし、俺が視線を向けられる理由は一つしかない。

 

 その証拠に、俺とキシリアはその視線を無視しながら着席しようとすると、最前列の席で腕を組んでいるジンバから睨まれた。

 

 俺が兄上(デギン)とジオンの間に挟まれるように席に着くと、兄上の次男であるサスロ・ザビがそれを見て、口火を切った。

 

「それではこれより、ムンゾ国民の皆様にジオン・ズム・ダイクン首相からの重大なお知らせがありますので、ご傾聴願います。進行は、私ジオン党宣伝部長であるサスロ・ザビが務めます。首相閣下、お願いいたします」

 

 サスロの言葉が終わるとジオンは立ち上がり、用意された演台に向かう。

 

「私、ムンゾ共和国首相たる、ジオン・ズム・ダイクンは、今期をもって政界を引退する事を決定した」

 

 原稿を見る事もなく、訥々と話し始めたジオンの話の内容に、出席していた関係者は驚きのあまり、腰を浮かせかけた。

 何かを押しとどめるような表情を浮かべる者もいれば、隣の席に座る人間に対して何かを耳打ちする者もいる。ジオンはそういった者達を一瞥し、黙らせた。

 

「既にメディアによって知っていると思うが、私は病のため、余命幾許(いくばく)もない。私が亡き後、おそらく議会の小鳥雀たちが、己が権勢のために囀り回るであろう事は、火を見るよりも明らかである」

 

 11年前にムンゾ議会で演説した時とは違い、ジオンの語る口調には力がない。

 

 実際に顔色は、ここ数年でかなり悪くなっているようにも見える。

 

 おそらく、うっすらと化粧を施しているのだろうが、それでも目の窪みと声の震えは隠し通せていない。だが、窪んだ眼窩から覗いている瞳は、11年前と変わらず鋭かった。

 

 緘口令を敷く間も無く、メディアによって健康不安説が囁かれ始めた事で今回の会見になったのだろう。ジオンは、誰にというよりも臨席している全員に語り掛けるように、言葉を紡いでいた。

 

「くだらない政争で、ムンゾの国力を浪費することは、私の望むところではない。そこで、今回の会見で私の後継者を指名しておこうと思う」

 

 メディアの座っている席あたりから、一斉にフラッシュが焚かれ、ざわめく声が大きくなった。

 

 そもそも、今回の会見の内容はジオンの引退宣言だけだったはずが、突如として降って湧いた政権移譲の話に、食い付かないメディア関係者はいない。

 

 気が早い者は、足早に部屋の外に出て本社に連絡を取りはじめる。

 

 慌ただしく出て行った一部の者を除いて、会場内は冷静さを取り戻し始めていた。

 

「……まず、私を長年支えてくれたジンバ・ラルに感謝したい。私の理論が日の目を見て、ムンゾにおいて受け入れられたのも、彼の助力があってこそである」

 

 ジオンがそこで話を区切ると、ジンバは笑みを湛えて深々と頭を下げた。

 おそらく、ジンバは自分が指名されると信じ切っている。

 

「そこで彼には、また新しい政権の下で、私の後継者と共に力を発揮していただきたい」

 

 ところがそのジオンの言葉で、ジンバの顔から笑みが消えた。

 

 ジオンにここまで明言されてしまうと、ジンバが表立って後継者の足を引っ張ることは出来なくなる。

 

「私の後継者は、ジンバと同じく昔から私を助けてくれた、デギン・ザビにお願いしようと思う」

 

 ジオンの言葉で会場は騒然とした。

 

 それもそうだろう。これまで協力関係にあったとは言え、地球連邦政府に宥和的なデギンの派閥とジオンやジンバの派閥は水と油。——いや、もしかすると水とガソリンかもしれない。

 

 いかに飴を与えるとしても、ちょっとしたきっかけでどちらかの派閥の不満が暴発することは必至。

 

「そして、もう一つ重大な知らせがある」

 

 ざわめきが収まるのを待って、ジオンは再び言葉を続けた。

 

「私の娘と、デギン・ザビの弟であるロラン・ザビが婚約することになった。次代へと続くのは、我らの統合の象徴であり、ジオニズムの体現者となることはお約束できるだろう」

 

 はい? 聞いてないんだけど?

 

 娘って、アルテイシアちゃんの事だよな? まだ7歳なんだけど……

 いや、ムリムリ。俺はYESロリータ、NOタッチを標ぼうにしてきた男ぞ?

 俺は今三十路。アルテイシアちゃんが結婚できる歳である、18歳になるころには四十路ぞ?

 

 それを本人の承諾なく決めるなんて、あってはいけないことだ!(建前) しかも、俺がロリコンのレッテルを張られてしまう。(本音)

 

「か、閣下……! 自分は……!」

 

 今回のお話はご縁がなかったという事に、とジオンへと告げるために俺が立ち上がろうとすると、俺の隣に座っていたキシリアちゃんが物凄い力で椅子へと押しとどまらせた。

 

 わーお、逞しく育っちゃって、おじさん感激だぞ?

 

「叔父上、これは父上の思し召しです。文句は後ほど聞きますので、今は笑顔で耐え忍んでください。」

「で、でもねキシリアちゃん。俺はロリコンのレッテルを張られたくないよ! 今はただでさえ女に興味がないだの、掘られるしか能のない男だのって……それに加えてロリコンなんて……ただの変態……変態性癖のデパートじゃないか?」

 

 自分で言ってて悲しくなる。

 いや、まぁ未婚を貫いているのは申し訳ないと思っているが、でも、もしも俺が結婚して子供が出来たらお家騒動が避けられないんじゃないのか?

 まぁ、タチアナの事は置いておくとして、だ。

 ザビ家が実権を握るとすれば、間違いなく俺とその子供は、ザビ家、ギレンやサスロにとって邪魔になるだろう。

 

「叔父上、駄々をこねられますな? これは我々ザビ家の総意なのですよ」

 

 と、近寄ってきた眉無し(ギレン)が俺の耳元で(のたま)った。

 

 ギレンの眼の奥にあるのは、何か複雑な算段をしている表情。

 ここで逆らっても仕方がないことは理解したが、俺はまだ死にたくない。

 

「……わかりました……ですが、条件があります」

 

 俺の言葉に、ギレンはただでさえ悪い目つきを更に鋭いものに変えた。

 

「……ふむ、聞くだけ聞きましょう?」

 

 腕を組み、俺を睥睨してくるギレン。

 ——一体何を考えている? と、俺にそう言いたいのだろう。

 俺は自分の考えという名の言い訳を口の端に乗せる。

 

「ジオン首相の御息女が結婚できる年齢になるまで、私はムンゾを離れます。まだ年端もいかない少女といっても、そんな女性と結婚となると、あまりにも外聞が悪いでしょう」

「そんなことは……ないとは言いませぬが、それでもメリットの方が大きいことは、叔父上にも分かっていただきたいものですな」

 

 ギレンが小声で言うメリットは、おそらく政情の安定。

 ジオン派の暴発を防ぐための人質として、ザビ家がダイクン家を保護するという建前を以て、囲い込みたいというのだろう。

 

 ——だが、

 

「政略……私もザビ家の男です。いつか私の身を、どこかの良家とくっ付けることは予想しておりました。ですが、相手が子供とあれば話は別です!」

 

 ——そうだ、俺はロリコンじゃない! レッテルを張られてたまるものか!

 

「確か、地球連邦軍との人材交流プログラムがまだ生きていましたね? 私が帰ってくるまでに、彼女が私とは別に結婚したい相手がいるならばそれで良し。私が帰ってくるころには、ご自身で考える事が出来るでしょう」

 

 俺が提案したのは要するに、問題の先送りだ。

 いや、ギレンはどう思うかはわからないが、あくまでも婚約はする。

 そうすれば、ザビ家の庇護下にダイクン家が入ったことを周囲に知らしめることもできるし、何より暴発するかもしれないバカも、迂闊に手を出すことは出来なくなる。

 

 問題は、お互いに結婚ができる年齢になった時だが、相手の意思を尊重して「結婚したくない」と言えば、俺は潔く身を引くつもりだ。

 

 ——「結婚する」ってなった場合? うーん、何とかなるでしょ。俺にはタチアナもいるし。

 

 俺の言葉に、ギレンは眉根を寄せサスロが何かを耳打ちした。

 

「……はぁ……仕方がありませんな。叔父上の我が儘にももう慣れました故、今回の事はダイクン家にも伝えましょう。ですが叔父上、覚えておいていただきたい。今回の我が儘は目を瞑りますが、それが続くとは思わない事ですな」

「分かってる。全てはムンゾの……ザビ家のためだよ」

 

 殊勝な態度でも見せておけば、ギレンさんも納得してくれるんでしょ?(適当)

 

 さて、そうと決まれば、地球に一緒に連れて行く人員を探すとしようかな。

 ——マ・クベ? 逃すと思うの? こんな滅多に無い骨董品の本場に行く機会。

 きっと俺がムンゾに残ってしまえば、次の政争の具にされることは明白。

 こんな所にいられるか! 俺は地球(実家)に帰らせてもらう!

 

 そんな思いを笑顔の仮面の下に隠して、俺がジオン、デギンと並んで立つと、一斉にカメラのフラッシュが焚かれた。

 

 ——フラッシュで照らされながら、俺はすっかり忘れていた事を思い出した。

 この場に多数のメディア関係者や、ジオン派の人間がいた事を——。

 


 

MDM〜〜ムンゾデイリーメール〜〜記事から抜粋

 

 突然降って沸いた政権交代劇。ジオン・ダイクン首相は、来月正式に辞任され、デギン・ザビ氏が同日、新首相として君臨することになる。

 おそらく、ジオン派の代表格であるジンバ・ラル氏も、今回の事には寝耳に水だったに違いない。(写真)

 

 会見中、何より衆目を集めたのはデギン氏の弟であるロラン・ザビ中佐だろう。

 ジオン・ダイクン首相の御息女と婚約する事にも驚いたが、それを拒否するかのような言動があったのだ。

 婚約には政治的な側面もあり、デギン、ギレン両氏のいる派閥と、ロラン氏を担ごうとするジオン派の対立を抑えようとするジオン首相の思惑があった。

 ロラン氏が、年端も行かない少女との婚約という醜聞を自身に降り掛かる事を忌避したというのは、あくまで憶測にすぎない。だが、結局ギレン氏やサスロ氏の説得により婚約は成った。

 これからムンゾの政局は、主流派であるデギン、ギレン両氏の派閥と、ジオン派を抱き込んだロラン氏の派閥の一騎打ちになる事が予想される。

 だがロラン中佐は、自ら地球連邦軍への留学を宣言し、ジオン派は暫くの間、旗頭無く政争に臨まなければならない。

 いや、これも憶測にすぎないが、ロラン氏は両派の対立を防ぐために自ら留学を申し出た可能性もある。

 ダイクン首相の御息女と婚約されたロラン氏を旗頭に、ザビ派と政争を繰り広げようとした者達の梯子を外した形になるからだ。

 本来、旗頭になるべきだったジンバ氏は、ジオン・ダイクン首相直々に、「後継者と共に力を発揮してもらいたい」と懇願され、表立って政争の具になることはできなくなった。

 そこでロラン氏、という事になるのだが、ロラン氏もおそらく宇宙世紀0074年の任期終了まで、ムンゾに帰ってくることはないだろう。

 

 ジオン・ダイクン首相の深謀遠慮と相まって、ムンゾの政局はザビ派の旗の下で一つに纏まる事になったのだ。




読んでいただきありがとうございました。

感想等お待ちしています。
次回のお話は、少し時間が進みます。(具体的には宇宙世紀0074年くらい)
地球連邦軍との人材交流が終わったロランは、きっと男を上げて帰ってくることでしょう……

登場人物紹介(作者メモ)について

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