デギン・ザビの弟に転生したと思ったら、俺の知ってるガンダムの世界と少し違うんだが   作:TSしたとねり

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主人公の学園生活(校長職)はどうなるのでしょうか、お楽しみにしていてください


16 ムンゾ士官学校(宇宙世紀0074年)

 俺が勤務することになったムンゾ国防軍士官学校は、ガーディアンバンチと呼ばれるコロニーの中にある。

 

 ムンゾ唯一の士官学校であり、演習場や学科の勉強をする校舎も含めて敷地だけは広い。

 その理由はガーディアンバンチというその名が示すとおり、ムンゾ士官学校を含む国防関連施設はガーディアンバンチの中における主要な施設であり、その他に目ぼしい公共施設といえば連邦駐留軍の駐屯地くらいだからである。

 

 ——簡単に言うと、田舎の家が大きな理由と同じと言えるかもしれない。(偏見)

 

 ガーディアンバンチに住む住民も、それら施設で仕事をする人間か施設に物資を供給するための人員。だからか、ムンゾにあるコロニーの中でも特に軍事色が強いコロニーだと言えよう。

 

 その広さは、俺が視察したことのある連邦軍の士官学校にも負けてはいないと思うが、連邦軍は士官学校をいくつも持っているらしいので比べるだけ無駄というものだろう。

 

 かくいう俺も、はるか昔にここを卒業した一人なのだが、今にしてみれば何もかもが懐かしい。(沖田風)

 

「——以上、新入生代表! ガルマ・ザビ!」

 

 きらきらと眩しく輝く、真新しい制服に袖を通した士官候補生達を代表して、我がザビ家の天使——ことガルマが代表挨拶を述べた。

 

 ムンゾ士官学校で一番大きな講堂には、1000人を超える士官の卵で埋め尽くされており、代表挨拶の後一人一人が万雷の拍手を送る。

 

 ——ガルマ……こんなに立派になって……おじさんは感動したよ……!

 

 ガルマの挨拶を泣きながら聞いていたために、その内容はほとんど覚えていないのだが俺の隣でウォンウォンと泣いているドズルから察するに、きっと素晴らしい内容だったのだろうと推測が付く。いや、きっとそうに違いない。流石天使(さすてん)

 

 しかし、男子三日会わざれば刮目してみよとも言うが、何年か振りに会ったガルマは、もう天使というよりも貴公子と言った方が良いのかもしれないくらい成長していた。

 

 幼い頃の天真爛漫な天使のような顔立ちは面影を残すばかりとなり、身長も追い抜かれ……いや、この話題はよそう。大丈夫だ、安心しろロラン。兄上の子供は何処かしらかの毛がなくなる運命なのだから。

 

「続いては、ムンゾ士官学校校長——ロラン・ザビ大佐からの挨拶です。入校生、気を付け!」

 

 式典という物には、どうしてもこういった挨拶というものがついて回る。

 儀礼のためとは言え、オッサン相手に媚び諂うのは好みじゃない。特にあの髭もじゃのおっさん。なんかどこかで見たことあるような気がするんだよね。具体的に言うと、突然「ジオンに兵なし」とか言い出しそう。

 

 そんな奴らに「へいこら」と諂うのは俺の好みではない。

 だが、好みではないからといってやらなきゃならないのがこの世界なのだ。

 

 そう、例えばタチアナのようにツンツンクールな女性将校や、ララァのようなロリっ子になら、俺は五体投地の上でおみ足をぺろぺろするのも吝かでないんだけどね。

 ——そんな事を本人達にしたらドン引きされるだろうからやらないけれど。

 

 司会に促された俺が壇上に立つと、数百の視線が俺に集まる。

 

 もちろん俺も大勢の前で話した経験はないわけではないのだが、何度やっても視線を感じると緊張してしまう。

 

「諸君、まずは入校おめでとう。今年度から本校の校長職を務めることになった、ロラン・ザビだ。座って構わないから楽にして聞いてくれたまえ」

 

 俺の言葉で、立ち上がった生徒達は一斉に腰を落ち着ける。うん、立ちっぱなしで長いお話を聞いていたら、倒れる人も出てくるだろうしね。(苦い思い出)

 

「……挨拶の前に来賓として来てくださった、地球連邦軍および関係者各位に感謝を述べたい。多忙な業務の中、わざわざ遠い、月の裏側にあるムンゾの士官学校の入学式に来てくださり、まことにありがとうございます。立場は違えど同じ国防の志を持った若人達の門出に、あなた方の出席を得た事を心から喜ぶ次第であります」

 

 こんだけ連邦軍ヨイショをすれば、俺を悪く思う連邦軍人さんはいないだろう。いないよね? 日本人的な挨拶の言い回しかもしれないが、感謝の気持ちって大事だよ。

 

 座っている連邦軍人達の何人かは、何の表情を浮かべぬまま俺の挨拶を聞いている——かと思ったが、何故か何人かは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている。何でだ? 俺は特に変な事を言ったわけではないのに。

 

 あの髭もじゃは眠ってるかのように目を瞑っていて、何を考えているのかわからないので、俺は気を取り直して挨拶を続ける。

 

「さて、我が軍の門戸を叩いた新兵諸君。もう察しているかと思うが、私は恥ずかしながらザビ家の末席を汚している立場だ。故に——既に察している者もいるかと思うが——ガルマ・ザビは私の甥である。そして、生徒諸君はきっとこう思うだろう。依怙贔屓で成績をつけられるのではないか、とね」

 

 俺の言葉に思い当たる節がある生徒数名は、気まずそうに顔を歪ませる。

 いや、そう考えるのは人間として当たり前のことだ。

 

 この宇宙世紀という世の中で、いまだに幅を利かせているのが縁故や家柄といった旧態依然としたものなのだから。

 

 でも、だからと言って「どうせあいつがいるから」とか「俺が評価されないのはあいつのせいだ」とか言う歪んだ人間にはなってほしくない。それに、そういう人物は反ザビ家に転じる可能性が高いだろう。

 

 だから、俺は挨拶でそんなことはないという事を表明しておく必要があると考えた。

 

「私は身内贔屓をせずに、公正公平である事をここに誓おう。そして、私が誓ったように君たちも誓ってほしい。我々は、国防の志を同じくする同志である。その間に人種や思想、家柄、生まれの貴賤は存在しない。この学校にあるのはただ国を愛し、国防に尽くすという信念のみであるからだ」

 

 一息をつき、俺の言葉に聞き入っている生徒を見渡すと、ガルマがキラキラとした目で俺を見ているのが目に入った。

 

 ——よせやい、照れるだろ? ところで、隣に座っているサングラスを付けた女性(・・)は誰なんですかね?

 

「我々は、ジオン・ズム・ダイクンが提唱した世界を目指し、一意専心、努力し、邁進していく。ゆえに、諸君らも我々の背中を見て、追い掛け、自らの信念のもとに行動していってもらいたい。さて、改めてになるが同志諸君、入学おめでとう!」

 

 俺が挨拶を終え自分の椅子に戻ると、少し遅れて拍手が送られる。

 そして、生徒のうちの誰かが感情の発露を求めて「ジオン万歳(ジーク・ジオン)!」と声を上げた。

 

 ここで言う『ジオン』はおそらくジオン・ダイクンの事なのだろうが、原作を知っている俺は少しびっくりしてしまった。

 

 ——ちょっと国粋主義に染まるの早すぎない? まだ連邦との仲は決裂にまで至っていないんだけど?!

 

 そんな俺の内心を知らない生徒達は、その誰かの声に釣られたように『ジオン万歳』の声は伝播していく。

 

 「ジオン万歳(ジーク・ジオン)」の声は講堂の中で大合唱となり、来賓として来ていた連邦軍の高官は、何を思ったのか式典の途中だというのに席から立ち上がってその場を後にするのだった。

 


 

 ——慌てて連邦軍の高官の後を追いかけたけれど間に合いませんでした。(テヘペロ)

 

 そんなこんなで多少のイレギュラーがあったものの、士官学校で俺の業務がスタートした。

 

 業務——と言っても、俺が生徒に対して直接授業することなんて殆どない。それぞれの専門的な知識を持った軍人が多数在籍しているし、強面に育ったドズルが生徒達に目端を利かせる副校長として君臨しているからだ。

 

 ——まぁ、端的に言ってしまえば俺は暇を持て余すしかなかった。

 

 俺に与えられた校長室は、一体誰の趣味なのかゴテゴテとした装飾品()がやたらと多い絢爛豪華な部屋。マの趣味ではないことは確かだ。

 

 執務机の他に、中央に鎮座するゆうに8人は腰掛けられるであろうソファや書棚にも、細やかな装飾が施されているし、もういっそここで生活できるんじゃないか?

 

 ——たぶん、偉い人をもてなすためなんだろうけど、もっと他にお金をかけるところがあると思うんだけどなぁ……

 

 そんな事を思いながらも、俺は与えられた仕事をこなす男だ。

 

 執務机の上に置かれた書類の山を分類分けしながら、その一つ一つを手に取ってチェックする。

 

 ——宇宙世紀にもなって、資料とかマニュアルとかが紙媒体なのはどうなのかと思うが、そういう世界なんだから仕方がない。

 

 俺に回ってきた書類は、士官学校での雑多な内容が多い。問題のある生徒がいようはずもなく、俺に回ってくるのは座学の結果で誰それが優等であったとか、行軍演習で誰それが落伍したとかその程度の内容だった。

 

 それにプラスして、俺が首を突っ込んでしまっている部門——つまりは技術研究の書類がタチアナやキシリアちゃんから回ってくる。ついでに子供の養育状況とかも紛れ込んでいるあたり、きっと誰かの陰謀に違いない。

 

 タチアナやキシリアちゃんから上がってくる書類仕事は殆どMS開発関連のもので、細かい技術的な物から1G下におけるコンセプトデザインのものといったように多岐に渡る。

 

「……ジェットホバーの研究はかなり進んでいるな……このまま予算は増額、っと。正式名称はドム? いいねいいね、それで行こう。…………ん? 試作型水陸両用MSシリーズ? 何こいつ? なんで腕にドリルついてんの? グレ◯ラガンかよ。 却下だ却下」

 

 上がってきた書類に目を通し、誰が思い付いたか分からないようなビックリドッキリメカには却下の判を押す。

 

 グフ(MS-07)の開発をすっ飛ばしてドム(MS-09)の開発が進んでいる事を考えると、かなりの歴史(原作)改変が進んでいる。

 

 新しく正式採用されたMS-06(ザクⅡ)が軍に配備され始めたのは今年から。今の時点でも、既に連邦に対してかなりの技術的なアドバンテージが蓄積されている。

 

 だが、それでも胡座(あぐら)をかいてはいられない。

 

 連邦軍は持ち前の技術力と資金力を元手に、MSの宇宙空間における優位性を認識してから数か月という短い期間で本格的に量産できる能力がある。

 ムンゾの軍拡に合わせて、連邦軍は艦隊決戦で必勝を期すために次々と艦艇を就役させているから、まだMSの優位性には気付かれてはいない。

 

「ふん、連邦軍のモビルスーツ……か」

 

 俺が手に取ったのは、キシリアちゃんからもらった書類の一つ。

 それには写真付きで、連邦軍が開発を進めているというモビルスーツの試作機に関しての情報が載っていた。

 

 それの形状としては、ザニーに近いと言えるだろう。

 しかし、ザニーと違うのは両肩に大きなキャノン砲と思われる火砲が乗せられている事。

 

 資料には『おそらく、輸出型のMW(モビルワーカー)をもとに開発しムンゾ国防軍に行き渡ったMS-05を参考にした』と記載されていて、原作(史実)との乖離が見られた。

 

 添付された写真に写ったその機体の外観は、言うなればガンキャノンの試作型——と言うのが正しいのかもしれないが、名称等は現時点不明。

 

 資料に描かれているのはガンキャノン(もど)きの推定されるスペックだけだ。

 

「あくまでも連邦軍は、モビルスーツを歩兵の直協支援機に位置付けているのかな」

 

 ムンゾと連邦。その設計思想、運用思想の違いが現時点でMSに現れてきていた。

 

 ムンゾは国力が連邦に比して小さい。故に、艦載機としてのMSに対してマルチロール的な役割を求めている。

 

 つまりは、ムンゾにとってMSは宇宙における戦闘機であり、攻撃機であり、1G下での砲兵でもあるのだ。だが、資料にある連邦軍の物を見てみるに、連邦軍はその役割を分業させようとしているようにしか見えない。

 

 あくまで宇宙戦艦がメインで、MSはムンゾが研究しているからついでにやっておこうというもの。

 

 金と物資が有り余っている連邦軍だからこその設計思想と言えよう。

 

 それはそれで一つの答えと言えるのだが、史実のジオン(ムンゾ)にはそのような国力の余裕はなかったし、今のムンゾにもそのような余裕はない。

 

「強いてやるとすれば、バックパックを交換して任務に合わせた換装をする案だが、まだまだ技術の蓄積が足りない……」

 

 バックパックの換装自体はそう難しい技術ではない。

 

 原作におけるザクマリナーと呼ばれる機体は、既存のザクⅡに水中で限定的ではあるが活動できる急造品のバックパックを取り付けたものだ。

 

 まぁ、細々とした改装、例えば水漏れを防ぐためのシーリングとかもやっていたりするが、その程度のもの。

 過酷な宇宙空間で活動することを前提として作られたMSを、水中で活動できるようにする改装は容易い物だろう。

 

 もちろん、深い海へは潜ることができないが、そういった任務は後に登場する水陸両用MSに任せておけばいい。

 

 あとは陸の王者——戦車の研究も進めておかなくちゃいけない。

 万が一地球に降りることになった場合、モビルスーツよりも安価で数の揃えやすい戦車の数が、陸上での趨勢を決めることになる。

 

 俺が考えを纏めようとした時、校長室のドアから——コンコン、と控えめなノックの音が聞こえてきた。

 

「……どうぞ」

 

 ノックに対して俺が返答すると、ガチャリ、とドアが開かれた。

 

「失礼します」

 

 時計を見ると、俺が指定した時間の5分前。

 

 入学早々に生徒を呼び出すと何かしら噂が立つかもしれないが、このまま曖昧なままにしておくと良くない気がした俺は、ある生徒を呼び出していた。

 

 生徒の視線はサングラスで隠されており、表情を窺い知ることは出来ない。

 

 軍帽からはみ出ている髪の毛は金髪で、その声は鈴のように聞き心地が良かった。

 

「よく来てくれた。……シャルロット(・・・・)・アズナブル候補生」




読んでいただきありがとうございました
ようやくタグの一つが回収できました。この構想は最初から考えていたので、ようやくお話にできて良かったです。

今まで、キャスバル君が男の子って明言したことないですよね
少しでも皆さんの脳汁が分泌されて、新たな性癖に目覚めていただける事を願っております。

ちょっと長くなりそうなので、今回はここまでです

登場人物紹介(作者メモ)について

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