デギン・ザビの弟に転生したと思ったら、俺の知ってるガンダムの世界と少し違うんだが   作:TSしたとねり

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読んでいただきありがとうございます。
今回でシャルロットの過去編最後になります。今回は短めになります。お酒の勢いで書いたので、多少文章が粗いかもしれません。

予め言っておきますが、「ふしだらな女と笑うが良い」



幕間 青い瞳のシャルロット2

 それからの4年あまりの時間は、僕にとってかけがえのない時間になった。

 2週間に一度行われるロランから受ける訓練は辛い事も当然あったのだが、それ以上にロランと会って話をするだけで楽しかったのだ。

 

 可愛い妹(アルテイシア)と、ロランの買ってきた甘い物を食べた日。

 訓練を終えてヘトヘトに疲れ果てた僕が、母上とアルテイシアと一緒に眠った日。

 

 モノクロに映っていた情景が、ロランとの出会いをきっかけに鮮やかな色に色付けされていった。

 

 そんな日々が続けば良い——、と子供ながらに思っていたある日、僕は父上に母上と共に本邸へと呼び出された。

 

 父上の執務室に集まっていたのは、父上の他にジンバと本妻であるローゼルシア。

 ジンバはまだ良いとして、母上を目の敵のように接するローゼルシアを見た僕は、母上の手をギュッと握った。

 

「態々すまないなアストライア。どうしても大事な話をするのだから、本邸に呼び出した方が良いとローゼルシアが聞かなくてな」

「あら、私が言いましたか? フフフ」

 

 いつも母上を苛めていた剣幕はどこに行ったのか、ローゼルシアは父上に女の顔を見せた。

 

 ——醜い。

 弛み切った頬肉を持ち上げ、うっとりと父上を見つめるローゼルシアを見た僕は、心中でそう吐き捨てた。

 

 母上を苛めていた時の顔を、父上は知らないのかもしれない。もしも知っていれば、あの女が近付いてきた瞬間に振り払うはず。

 

 しかし父上は、しなだれかかるように密着してきたローゼルシアを振り払う事なく、僕達に向けて言葉を発した。

 

「ザビ家と……いやザビ派と和解する。ザビ家を、というよりもロランを信じようと思うのだ」

 

 父上の言葉を聞いた僕には、父上の意図が何なのかさっぱり分からなかった。

 

 そういった話は政治をするジンバやローゼルシアと話せば良い事。それなのに、僕と母上にその事を話す理由が分からなかったのだが、母上は何かを察したのか暗い表情を浮かべていた。

 

「そこで、和解の証として娘の内1人をザビ家の誰かに嫁がせるというのが、我々の派閥が出した決定だ」

 

 父上の言葉で、流石の僕も気が付いた。

 

 ザビ家の誰かに嫁がせる娘の一人に、どうやら僕が選ばれたらしい。

 

「幸い、デギンにその話を持ち掛けたところ案外にも乗り気でな」

 

 僕達の意思を無視して決定した事を淡々と告げる父上の言葉で、母上の身体はわなわなと震え、母上は僕を一瞥すると口火を切った。

 

「私は……! 私は反対です! キャスバルはあなたの都合で男として育てられて! キャスバルは……!」

 

 怒りに震える母上は、父上を言葉の限り詰ろうとした。だが、今この場でそれをするのは良くない気がした僕は、母上の言葉に被せるように口を開いた。

 

「……母上……僕は構いません」

「キャスバル⁉」

 

 どうせこのまま育てられたとして、僕を男と隠すにも限界はある。

 きっと成長期に入れば、胸も出てくるだろうし僕に声変わりが訪れることは一生ない。

 成長しきってから公表するよりも、今の段階で公表した方が派閥に与えるダメージは限りなく少ない。

 

 父上はそれを見越して、早いうちからザビ派を身内として取り込んでしまおうと考えたのだろう。

 

「……僕だって、思うところはあります母上。でも、それがダイクン家の子供が負う責任なのだとすれば、僕はその責任を果たしたい」

「違う! 違うのよキャスバル! 貴方には、子供には責任なんて早いの。こういう問題は本来であれば大人たちが責任を取るべきものなのよ」

 

 キッ、とジオンやランバを睨む母上は、後から聞いたところによればこの時初めて父上に意見したのだそうだ。

 

 正妻ではなく、側室という立場から肩身の狭い思いをしていた母上が、正妻であるローゼルシアの前で父上に意見するのは相当な覚悟が必要だっただろう。

 

「……本当に、すまないと思っている。この通りだ」

「あなた、この女に謝る必要はありません。ジオン・ダイクンの血を、これからの世代に受け渡し続けていくことの方が重要なのですから。そうだとは思いませんか? 側室の分際で、聞き分けを持ちなさい。私が、あなたという存在を認めたように、ね?」

 

 ローゼルシアの尊大な物言いに、母上は眉を顰め何かを言おうとしたが、ジンバの声で遮られた。

 

「アストライア様、ローゼルシア様、責任となれば、このジンバも同じこと。派閥の拡大に尽力してきましたが、このままではザビ派に大きくなられ過ぎてしまうのです。不甲斐ないことですが、このまま最悪を求めるよりかは、現時点で奴らに首輪をつけた方が、我らとしても、ダイクン家のこれからとしても最善であると、ダイクン首相はお考えになったのです」

「……では、誰に嫁がせるというのです? 確か、ガルマ……という者が、ギレンの末弟にいたと思いますが……」

 

 母上のまだ納得はしていない声音に、父上は困ったように口を開いた。

 

「……それに関してはデギンの方から指名があった。弟のロランに嫁がせてほしい、と」

 

 父上から出た名前に、僕と母上は驚きを隠せなかった。

 

「そ、それは……! いえ、こちらとしては最上の方ですね……しかし、何故? 年齢も離れて……」

「デギンが言うにはだが、ロランにはもう少し落ち着いてほしいらしい。家庭を持ち、家族を持てば少しは落ち着くと考えているようだ」

 

 父上の説明に母上は「あぁ」と得心が言ったようだ。

 確かに、ロランは鳥のように忙しなく働いている。僕の家庭教師もそうだが、新型の作業機械の研究開発にも携わっていると父上の話を小耳に挟んだこともある。

 

 いつ、どこで飛んで行くかも分からない鳥に、住処を用意しようと言うのだろう。

 

 ——僕が、少佐(ロラン)の……僕が、先生のお嫁さん……

 

 黙り込んでしまった僕を、周りは心配そうに覗き込んでくるが、僕の脳内では語るのも恥ずかしい妄想が溢れ出ていた。

 


 

 妄想の中での僕は、エプロンを身に着けて台所に立っていた。

 

 ロランは僕を背後から抱き締め耳元で愛を囁き、僕は恥ずかしそうに破顔する。

 

 仕事に出かけようとする少佐に行ってらっしゃいを言う時は、少佐が僕に、時には僕から口づけをする慣例になっていた。

 

 すると、ロランは困った顔で僕を横抱きつまりはお姫様抱っこで寝室へと運ぶ。我慢が利かない旦那様を持ってしまった身を呪うほかない。

 

 それから行われる行為はただ一つ。

 

 僕は自分からロランの顔に、自分の顔をに近付けてまた煽るように言葉を発する。

 

 その情景は、僕が妄想する理想の結婚生活。

 誰からも憚られることなく、好意を抱く者同士が、愛を確かめ合う日常である。

 


 

 僕が考え込んだ時間は一瞬。だけど、溢れ出て止まらない妄想で、僕は顔に熱がこもるのを感じた。

 

 その熱を振り払うように、僕は頭を横に振って物理的に熱を冷ます。

 

「……わかりました。僕に異存はありません。ですが、一つ条件があります」

 

 父上を始めとした皆に悟られないよう、あくまでも冷静に僕は口を開いた。

 幸い、部屋は仄暗く、僕の顔の赤みを悟られることはないだろう。

 

「なんだキャスバル」

 

 僕の言葉を待つように、父上は鷹揚に頷きながら僕の言葉を待った。

 

「僕を、ムンゾ士官学校に入れさせてください」

 

 僕の発言で、ジンバとローゼルシアも顔を歪ませた。

 父上は静かに、まるで僕を諭すように言葉を紡ぐ。

 

「……私は、お前を跡継ぎにすると決めた時から、様々な教育を受けさせてきた。それは政治の指導者のためだと考えて、軍事にも明るい方がよかろうと思ってのことだ。お前は使われる側ではなく、使う側の人間なのだ」

 

 暗に諦めろ、と父上は言いたいのだろう。だが、僕は引き下がらなかった。

 

「はい、分かっています。ですが、僕はこれまで男として育てられてきて、今更再び女として男に嫁げと言われて是と言うほど、僕は大人じゃない」

 

 僕が父上に口答えをしたのも、今回が初めてだった。

 大人の所為で、僕には自由がなかったのだ。だから僕には、自分のわがままを押し通す権利がある——と考えたからだ。

 

「大人のエゴで僕を振り回したのなら、僕のわがままの一つくらい聞いて見せてよ!」

 

 最後に、叫ぶように言い放った僕は、父上が僕の言い分を聞いて渋い表情を浮かべているだろうと思った。だが、父上が浮かべていた表情は僕の見たことのない物だった。

 

 大きく目を見開き、口ひげを蓄えた口元はヒクヒクと小さく動いているが、その口角は上がり、何かを耐えているかのようにも見えた。

 

 すると——、

 

「っふ、ははははは!」

 

 突然父上が笑い出したことで、僕と母上はポカンと間抜けな表情を浮かべるしかなかった。

 

「く、くくくっ、言うようになったじゃないかキャスバル。そこまで言うのであればよかろう」

「あなた⁉」

 

 逆にローゼルシアは驚きのあまりかヒステリックな声で叫ぶ。それを父上は「まぁ、待て」と制し、再び僕に向かって言葉を続けた。

 

「女として嫁ぐお前に言う言葉ではないかもしれないがな、キャスバル。『男に二言はない』な?」

「はい、父上」

「ならば良い。好きにすれば良い。儂らもこれまで好きにしてきたのだ」

 

 父上はニヤリ、と笑みを浮かべると、ジンバに指示を出す。

 

「キャスバルの言葉を聞いたな? ジンバ。条件の擦り合わせは任せる。どうせ儂が亡き後は、暫くの間は貴様に任せるほかはない。あのロランが二つ返事で肯定すると思うな」

「はっ、畏まりましてございます」

 

 淡々と指示を出す父上は、僕へと近付き大きな手を僕の頭にポンと乗せた。

 

「キャスバル。これからも苦労をかけるが、これまですまなかったな」

 

 一言の謝罪。それだけの事なのに、僕が今まで抱いていたモヤモヤとしたやるせなさや憤懣が霧が晴れるように消えていくのを感じた。

 

 言葉一つ、そしてされたこともない父上の父親としての表情に、僕は困惑と喜びがないまぜになった感情を覚えていた。

 

 僕はキュッ、と唇を真一文字に結び、その感情が爆発しないように耐えた。

 今まで何故僕が耐えなくてはならなかったのか。今更父親面するのか、と口から発してしまいそうになるのを耐えながら、僕は笑みを作った。

 

「父上、僕のわがままを聞いてくださり、ありがとうございます」

「気にするな。ただ、士官学校にそのままの名前で入校すると、いらぬトラブルが舞い込むだろう。ジンバの伝手に、サイド5のある家がある。そこの名前を使うと良かろう」

 

 父上はそう言うと、話は終わりだとでも言うように、僕と母上に退室を促した。

 母上は、僕に「本当に良かったの?」なんて聞いてきたが、父上から引き出せた条件は僕にとってこれ以上にない成果だと考えた。

 

 少なくとも、デブでロリコンな成金に嫁がされるわけでもなく、自分の好きな、やりたいことをすれば良いと言われたのだ。

 

 これまで鬱屈していた僕に、父上は羽を伸ばす場所を与えようというのだから、僕が反対する理由はない。

 

「母上、僕なら大丈夫です。それにロランのお嫁さんになるって考えると、何だかよくわからない気持ちになるんです」

 

 この辺りが、と僕は胸に手を添え母上にそう言うと、母上は僕を優しい瞳で見つめてきた。

 

「キャスバル、貴方にとってロランはそんな人なのね」

 

 母上の慈しみに溢れた瞳は、喜びに満ちていたようにも見える。

 

「まだ分からなくても、きっと分かる日が来るわ。私も貴方と同じだったもの」

 

 母上の言葉は意味深で、その時の僕には理解できなかった。

 けど、今なら分かる。

 きっと僕は、昔からロランに恋をしていたんだ、と。




読んでいただきありがとうございました。
恋は下心、愛は真心じゃ。

次からは政治パートです

登場キャラの絵を描いた方が良い

  • 描いても構わん
  • 描かんでもよろしい
  • 原作だけ描け
  • オリだけ描け
  • ロランの裸が見たいわ(どちらでも良い)
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