デギン・ザビの弟に転生したと思ったら、俺の知ってるガンダムの世界と少し違うんだが   作:TSしたとねり

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短めのお話(約4000字)でタイトルどおりの内容かと思います。
本当は土曜日に更新したかったのですが、推敲に手間取って、飲みに出たりしていたら遅くなりました。申し訳ありません。


17 国体(宇宙世紀0075年)

 年が明けた宇宙世紀0075年のある日のこと。

 

 ザビ家本邸に召集された俺は、ハゲと眉なしの間に挟まれながら、二人の議論を聞く羽目になっていた。

 

 小難しい話を上の空で聞きながら、——この場にはちょっと毛根が足りないですね——。なんて事を考えてしまったら、何故か2人から向けられる視線が厳しいものに感じられた。怖っ。近寄らんとこ。

 

 兄上とギレンが話し合っている場所は、本邸にある会議室。

 

 本来の使い方をすれば十数人は入れるであろう広さの部屋を、むさ苦しい大人の男3人で占有し、この場に子供(ララァ)でもいれば耳を塞ぎたくなるような汚い政治の話が飛び交っていた。

 

「……ですから、何度も申し上げたように連邦に対抗するためには独裁体制の方が、軍備の増強にも更に注力することができるのです」

「……儂はそう思わん、ギレン。ムンゾの民衆は、その事を十分すぎるほど認識しておる。選挙では……」

「父上、父上が折れなければこのまま話は平行線ですな。しかし、何と言っても連邦とは将来対決する公算が大きいのです。父上はこのムンゾの貧弱な軍事力で勝てるとでも?」

 

 ムンゾではモビルスーツの増産体勢が整いつつあるものの、現時点で連邦に比して決定的に足りない物は戦闘艦艇の数だ。

 

 確かざっくばらんに計算して、連邦軍とは30倍くらいの開きがあるはず。

 

 ——圧倒的じゃないか連邦(てき)軍は!

 

 俺はミノフスキー粒子下における戦闘が有視界戦闘になることを身を持って体験し、さらに原作知識もあるから、艦艇数や人員の数だけが絶対ではないことを知っている。

 

 ——だが、そういった認識を持った人間は今の時点で殆どいない。

 

 宇宙世紀における殆どの人間が持つ宇宙空間での戦闘のイメージは、戦列歩兵の如く押し並べた艦艇が質量弾やビーム兵器を撃ちあい、先に潰走*1した方が負けというものである。

 

 事実、連邦軍はそれを想定して軍備を割り振っており、モビルスーツにとって戦闘初期で交戦するであろう宇宙戦闘機と呼ばれる機体は、大艦巨砲主義的なドクトリンにおける、支援機に過ぎない。

 

 宇宙空間での破壊力(攻撃力)は、質量こそがすべて。

 航宙母艦に改造されたコロンブス級も、機動兵器である宇宙戦闘機も宇宙空間においては主役たり得ない。

 

 つまりは連邦軍にとって、宇宙空間の戦闘の主役は戦艦や巡洋艦であり、宇宙戦闘機は肉薄してくるであろう攻撃機を迎撃するためのものなのだ。

 

 対してムンゾは、逆立ちしたって数で劣る連邦軍に対抗するため、MSを主軸としたドクトリンを採用しつつある。

 

 だが兄上やギレンですら、俺が提出した戦闘データに懐疑的な目を持ち続けているのだから、軍内部での俺の立ち位置は厳しいというほかはない。

 

 とはいえ、MSの有用性は俺が提出した戦闘データ上確かなものであるため、俺はまだ自由にMS開発に携われているのだから、今のところ良しとしよう。

 

 ——だが、おそらくギレンは『守旧派』とも称すべき軍内部の『艦隊主義者』を『戦争をすることに納得させるため』に艦艇数ひいては軍事力を増やそうという思惑を持っている。

 

 MS開発と運用に俺が携わっているため、『これ以上ザビ家に軍内部の権勢を独占させたくない』という軍内部にいるダイクン派の意向もあるし、ギレンは本格的に軍の掌握に乗り出そうとしていると考えられた。

 

 デギンの執務室で話していたギレンが一息に言い切ると、デギンは深くため息を付いた。

 

「……お前の考えは分かった。だが、我らはあくまでも民衆の力でこれまで政治をやって来た。デモクラシーを蔑ろにすることなんぞできぬ」

 

 ジオン・ズム・ダイクンの病状は悪化するばかりで、その余命はもって一年であろうと見られていた。

 

 今回2人が揉めているのは、ジオン・ズム・ダイクン亡き後、ムンゾの国体をどうするかという事。

 

 国体と聞いて、国民体育大会を想像した人は、そのまま純粋に生活していただきたい。詰まるところが国家の体制についての話なのである。

 

 俺個人としてはそんなもの非常にどうでも良いと思っているのだが、2人にとってはそうでは無いらしい。

 

 ——いや、本当に俺は場違いだと思うので、帰らせていただいてもよろしいですか? だめ?

 

 俺がキャスバルと正式に婚約し、ダイクン派を抱き込むことでザビ派はその身中に不安定な要素を抱き込むことになる。

 

 それを受け入れ、甘受する事でザビ派は勢力を更に拡大させるわけだが、連邦との関係も怪しい物になっている以上、独裁という形で政府の権限を強化したいギレンと、あくまでも民主主義的な政府を目指す兄上は意見を対立させていた。

 

「……ロラン、お前はどう思う?」

「……叔父上の意見も参考にさせていただきたい」

 

 俺に対して、ほぼ同時に問い掛けられた言葉。

 

 鋭い4つの眼光に射抜かれ、俺は考え込むフリをして視線をずらした。

 ——だって、二人とも人相悪いし怖いんだもん。二人揃って眉毛ないし。ヤク◯と目を合わせちゃダメだって、ママから教育を受けたんだ。

 

 二人からジリジリと身を焦がすようなプレッシャーを覚え、これ以上の沈黙は得にならない事を悟った俺は、言葉を選びながら二人に向かって口を開いた。

 

「……まず、民主政治をやめた場合、ジオン党が割れる可能性があります」

 

 これはこの場にいる3人が抱く共通認識だ。その証拠にほぼ同時に2人は首肯し、俺に続きを促す。

 

「ジオン党が割れた場合、ムンゾは混乱に陥る事でしょう。そうなった事態を一体誰が得をするのか……ダイクン派ですか? ザビ派ですか? いいえ、間違いなく連邦だけが得をするでしょう。しかし、このままの体制ではいつまで経っても軍備増強なんぞ出来ないことも事実」

「叔父上、それは皆が分かり切っていることです。我らにとってダイクン派はいわば毒。それを喰らったからには……」

「いや、分かっているよギレンさん。つまり、ダイクン派の溜飲を下げながらも支持を得て、それでいてかつ、今まで以上の軍備増強ができる強権的な政体が必要ってことだよね」

 

 俺の言葉にギレンは深く頷き、兄上は心配そうな表情で俺を見てくる。

 

「……ロラン、そんな都合良く行くか?」

「はい兄上。あくまでも希望的観測しかありません。が、ダイクン派に提案をするだけの価値はあると思います」

 

 これは、俺とシャルロット——キャスバル——が婚約したことによって取ることのできる選択肢。

 

 非常に不本意な案だが、それでも現在の不安定な体制では、ジオン・ダイクンが死去した時に、原作(史実)どおりの混乱に発展しかねない。

 

 そんな事になるよりはマシだ。何倍も、何十倍もマシだ。

 

 混乱を避け得る国家の体制は——、俺は意を決して考えを吐き出した。

 

「……立憲君主制。この統治体制をダイクン派に提案します。民主的な面を保持しながら、非常時には強権を行使できる政体です。ダイクン家を君主とし、スペースノイド統合の象徴とすれば、ダイクン派の離反も防ぐことができ、軍備増強の障害も排除できるでしょう」

 

 キャスバルが名乗る称号は『(プリンス)』となるのか『(キング)』となるのか。個人的には『シャーハンシャー』*2も捨てがたいけど、それは非常に些細な問題。

 

 それこそダイクン派とザビ派で話し合えば、すぐにでも解決するだろう。

 

「……ふむ、しかし叔父上。そうなれば我らザビ家……ザビ派の権勢は削がれるのでは?」

 

 ようやくダイクン派とザビ派を形だけでも統合し、政治的に安定してきたというのに、また新たな派閥抗争の火種になりかねない、とギレンが抱いた疑問も当然の事だろう。

 

 キャスバルに正当性を与えれば、それを旗頭にダイクン派が好き勝手し始めるかもしれない、と誰でも抱く危惧だろう。

 

「それはもちろん考えられます。ですが、立憲君主制の君主とは『君臨すれども統治せず』を原則として、政治的権限を持ちえません」

「ふむ……つまり、ダイクン家に権威を与えてダイクン派の溜飲を下げさせ、我々が政治の実権という果実を取る……ということか」

「はい、兄上。それに、まだダイクン家の子供はいずれも成人していません。しばらくの間は『摂政』を置く必要があるでしょう。その席もカードの一つになり得るかと」

 

 原作におけるジンバの行動の根本は保身。口では『ダイクン家が』どうのこうの、『ジオン・ダイクンの思想』がどうのこうのと宣っていたが、それは己の権勢を守りたいがためである。

 

 だから、それを保証する、もしくは権威付けをするとなればどう行動に出るのか。

 

 俺の考えでは少なくとも、ジンバ、いやラル家が表立ってザビ家を批判することはめっきり減るだろう。

 

 そして政治的な正当性を与えながら、実権は議会が掌握する。

 議会工作に長けたサスロとギレンであれば多数派工作は容易だろうし、如何にダイクン派が正当性を訴え出ようとしても、最終的には議会で数が多い方が勝つのだ。

 

 そこまでの考えを話した俺の説明を聞き、兄上とギレンは数秒で答えを出した。

 

「ギレンよ、ダイクン派……ジンバ・ラルとの折衝は儂がやる。お前は派閥の承諾を取り纏めろ」

「わかりました父上。ダイクン家を旗頭とすると言えば、ザビ派、ダイクン派問わず諸手を挙げて歓迎するでしょう。……しかし、叔父上も悪い方ですな。自ら進んで首輪になろうとは」

 

 ——ん? 首輪? そんな話したっけ?

 

「ロランよ、ダイクン派への首輪の役目は多くの困難や非難がお前に向くだろう。それでもやってくれるか」

「いや……そこまd」

「あぁ父上、叔父上がこうまで言ってくださっているのです。早々に準備しませんとな」

「そうだな。そうなれば、婚約披露のパーティーも盛大にせねばな」

 

 俺が嘴を挟む前にとんとん拍子で話が進み、話題から置き去りにされてしまう。

 

 このままじゃまずい。兄上とギレンに俺の婚約パーティーを開催させてしまったら、西と東の文明のごっちゃ混ぜパーティーになるに違いない。混沌(カオス)すぎる。

 中間をとって中東風にするかもしれないから、それは断固として阻止しなくてはならない。

 

「あ、兄上! 金銭的な余裕がない中、私の婚約パーティーなど……」

「ロランよ。儂らをみくびるな。その程度の端金なんぞ、幾らでも用意できる。幸い、お前の提案した食糧プラントや資源採掘も順調である事だしな」

 

 ——悲報。人生の墓場を喜び勇んで、せっせと掘っていたのが自分だった件。

 

「クックック……摂政に相応しいのは王配になるロラン・ザビか、それともダイクン派の領袖たるジンバ・ラルか……民衆の論議の目をそこに向けさせるとは、さすが叔父上ですな」

 

 ——俺はそこまで考えてないよ⁉︎

 

「いや、俺は……」

「そうと決まればギレンよ。早速、政財界の要人から招待状のリストに載せる者をピックアップして、それから日取りも決めねばならん」

「フフフ、父上。既に作成してありますとも。場所の選定は、父上と叔父上に選んでいただきたい、と。既に数カ所まで候補を絞り込んであります」

「おぉ! そうか! ロラン、聞いたか!」

「あ……はい」

 

 完全敗北。

 

 口を挟む隙すら見せてくれない親族二人に、退路を断たれてしまっている事を悟った俺は、ただ2人が嬉々としてパーティー会場をどうするだとかという話を複雑な気持ちで眺めるほかはなかった。

 

*1
イメージとしては銀英伝が近い。でないと、連邦軍が建艦した戦艦や巡洋艦の数に説明ができないと思ったため、このような設定にしました。

*2
シャアハンシャアではない。




読んでいただきありがとうございました。
次回はおそらく再来週くらいになると思います。(進捗20%くらい)
次のお話は貴族なジャンク屋が登場し、主人公と何かのお話をしてダイクンのお葬式もする予定です。

登場キャラの絵を描いた方が良い

  • 描いても構わん
  • 描かんでもよろしい
  • 原作だけ描け
  • オリだけ描け
  • ロランの裸が見たいわ(どちらでも良い)
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