デギン・ザビの弟に転生したと思ったら、俺の知ってるガンダムの世界と少し違うんだが 作:TSしたとねり
——宇宙世紀0076年、1月16日。
とある葬儀に参列するための黒く長い列が、ムンゾのメインストリートを進んでいた。
メインストリートには、ムンゾの国旗と共に黒い弔意を示す旗がたなびいている。
棺を納めた黒塗りの車が集団の中央を進み、黒く長い列を見送るために、沿道に集まったムンゾ国民の誰もが項垂れ、一人一人が浮かべる表情は暗い。
——ジオン・ズム・ダイクン死去。
そのニュースがテレビジョンで流れた時、俺の部屋にいたシャルロットは呆然と立ち尽くしていた。
——指導者。建国の父。稀代の思想家。
ジオン・ズム・ダイクンを形容する言葉は数多い。
だが、ムンゾ国民が悲しみに暮れる光景を目の当たりにすると、国民にとってはそれ以上に精神的支柱であった事は疑いようがなかった。
『……我々には、一人の男が必要だった。今も、そして……これからも……』
ギレンが演説台に立ち、弔辞を読み上げる姿がテレビジョンを独占していた。
どのチャンネルに合わせてもギレンの顔のアップが映し出されており、俺は諦めてテレビを消した。
時計を見ると、もう昼近かった。
俺は何故朝方に電話が頻繁に鳴っていたのかを理解し、寝ぼけながら電源を落として以降触っていなかったセルフォン*1の電源を付けた。
「……оh……」
不在着信+999。未読メッセージ+564。
内訳をみて、脳裏によぎるのは可愛い姪っ子が怒っている姿。
--これはまずい、と思いながらも、俺は過ぎてしまったことは仕方がないと諦めた。
「……本当なら、君はあそこにいなくちゃいけないんだよ、キャスバル」
ベッドに腰かけた俺が放った言葉は、ベッドの中から覗く白い足に向けたものだった。
白い足の
その様子を見た俺が一つため息を吐くと、キャスバルは渋々といったように身体を起こし、シーツで身体を隠す。均整でありながら、男に欲情をもたらす肉欲的な裸体は、白いシーツで隠されたことで一つの絵画のようにも見えた。
「……まさか、僕が寝坊するなんて、想定外だよ。それもこれも、全部貴方の所為さ。ロラン
恨みがましく聞こえる文言は、その言葉とは裏腹にあっけらかんとした声音だった。
「よく言う。夜遅くに襲ってきたのはそちらだろう。いや、むしろ式典に遅れるために襲ってきた、とか」
「その言い方はナンセンスだね大佐。こう言う時は普通、殿方が『申し訳ない』って頭を下げれば万事丸く収まるのさ」
ジトっとした目で俺に非難の視線を向けてくるキャスバルは、わざとらしく溜息を吐いてノソノソと俺に近付き身体を密着させた。
「ふふ、ありがとう、大佐」
そう言いながら、キャスバルは柔らかな唇を俺の頬に落とした。
何に対しての感謝の言葉なのか、俺は聞かなかった。
ただ、昨夜震えて泣いていたキャスバルの姿はここにはなく、どこか吹っ切れたような様子を見せる女の姿があった。
「……これからどうなるのかな?」
不安そうな声音で、キャスバルは俺に問いかけてくるが、その答えを俺は待ち合わせていなかった。
ここまで来てしまえば、もうなるがままに任せるしかない。
歴史の修正力と言うものがあるのかどうかは分からないが、少なくともジオンが病死した事を公表したことで、ダイクン派とザビ派の間で何らかの協定が成立したということだろう。
穏当な権力移譲の後、絵図面を描いた俺が言うのも何だが、キャスバルはこれからスペースノイドの象徴としての生活が待っている。
少なくとも今ほど自由ではなくなり、士官学校も退学せざるを得なくなるかもしれない。
「大丈夫。これから良くなっていくよ」
安心させるように声を掛けるが、それをキャスバルはどことなく悲しいような笑みで答えた。
「分かっているよ、大佐。……だけど、僕はもう子供じゃ無いんだ」
キャスバルは言葉を残し、シャワーを浴びるために立ち上がって浴室へと姿を消したのだった。
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ジオン・ダイクンの国葬が終わり、すぐに日常が戻るかと言うとそうでは無い。
——宇宙世紀0076年2月、ジオン国号法制定並びに住民投票が実施さる。
ムンゾ自治共和国は国号をジオン
——同年2月18日。
ジオン王国初代王国摂政に「ジンバ・ラル」就任。
ジンバ・ラル王国摂政の下、ムンゾ——改めジオンは、急速に軍備を整えていくことになる。
怒涛のように過ぎた一ヶ月。こう言ったイベント事に付き物なのが会議、会議、それから会議のための会議である。
あくまで形式的な会議も多いが、それでも数が多いと流石にゲンナリとしてくる。
「……憲法は、既存の物を流用する事が確定しております」
キャスバルを中心に、ジオンの中枢を担う閣僚を集めての御前会議。
王国摂政に就いたジンバが、集まった面々の前で新しく発布される憲法の説明をする。
とは言っても、ここに集まっている面々がその憲法について考えたのだから、言うなればキャスバルに対しての説明に過ぎない。
「国の形が決まり、これからは裁可を仰ぐ案件も出てくるかと思いますが……」
ジンバがチラリ、と俺を見た。——何だよ。
「あくまでも王配は王配であり、政治にはかかわらせることのないようお願い申し上げます」
ザワ、と室内の面々がざわついた。
ジンバの言葉は、俺を政権運営から排除する——という事に他ならない。
ダイクン派の者達は、然も当然と言った表情を浮かべているが、ザビ派の者達は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。
こんな所でも派閥争いか、と俺は一瞬思ったが、ギレンや兄上が浮かべる表情に怒りの感情は見当たらない。
「ふむ、それは当然の事でしょうな。その事もしっかりと法なりに明文化した方がよろしいでしょう。ですな、父上」
「うむ。ジンバ殿、よろしくお願いする」
兄上が言った言葉で、ジンバは鷹揚と頷き「任された」と短く返した。
——おかしい。ジンバの言葉がもしも政争の、派閥争いの一貫であるならば、あの2人が大人しくジンバの言葉を聞くなんてことはあり得ない。
つまり、これは予定調和ということだろう。
兄上と眉なしが何を考えているのかは分からないが、ここで場を乱すのは得策ではないと判断した俺は、開こうとした口を閉ざした。
「さて、次に国軍の編成であるが……」
各々は何事もなかったように資料をめくり、俺も釈然としない中それに習う。
「なっ!」
資料を見て思わず声を上げてしまった俺を、幾多の視線が射抜いた。
「いや、何でもありません」
——おかしい。時代を先取りしすぎているなんてレベルじゃない。
俺はそんな感想を内心呟き、努めて感情を外に出さないように堪えた。
説明役に当てがわれたのであろう将校——どこかで見たことのあるトカゲのような顔の男だ——が、資料に書かれた内容の説明を始める。
「資料に書かれた編成は、あくまでも計画段階のものであります。それも、経済の状況が今と同じように持続して上向くと仮定した話ではありますが、これだけの艦船を揃えることが可能です」
——そんな所で何してんのクベさん?
パプアを降りた後、参謀部に異動したと思ったらこんなところにいたのか。逃がさん……(ニチャァ)
そんなことよりも、原作でジオン公国が開戦時に揃えた艦船数は戦艦8隻、重巡洋艦42隻、軽巡洋艦108隻、補給艦240隻、MS約3000機と言われている。
ところが、資料に書かれた数字は信じられないものだった。
「2年以内に戦艦12、重巡洋艦50隻、軽巡洋艦200隻。それに、改装MS母艦……これが実現可能だと?」
ギレンの視線がマ・クベを見据え、マ・クベはプレゼンを続ける。
「はい。我々……いや参謀部の試算では、現在建造途中の戦艦を含めましても最低限の戦力を建造、維持できる見込みです」
「維持できるのは分かるが、この資料では大幅に増強されている。それらが建造可能かどうかは別問題では? 仮に、軍の艦船で船渠を圧迫するようでは、主要経済の柱である
「もちろん軍としても国の経済を停滞させるつもりはありません。しかし、少なくない部分で軍と民間の共存を図ることができれば、全ての問題が片付きます」
マ・クベが手元の何かを操作すると、室内の照明が落とされ、プロジェクターに船の設計図らしい物が映し出された。
「この艦は、資料に書かれているものと同じですが、こちらをご覧ください」
画面が切り替わり、現在月航路で運行している貨客船「アルカナクラス」が映し出される。
「民間で運用しているアルカナクラス。この船体を流用し、武装を施す事で連邦軍が配備しつつあるサラミス級と同程度の性能を有する巡洋艦が配備可能となるのです」
マ・クベはそう言うが、映し出された設計図は俺の知っている「ムサイ級」とはかけ離れたものだった。
まず、推進力を得るためのエンジンユニットが船体後部にまとめられ、特徴的とも言える支柱外装式のエンジンユニットが廃されている。
艦橋の正面に縦列で、連装砲塔に納められた主砲は3基。
それだけでは死角が気になるところだが、その艦のコンセプトの象徴とも言える左右両舷に配置された箱型の格納庫が目を引いた。
「多目的輸送艦『パプア級』で培った、モビルスーツ運用能力。建造する巡洋艦全てにこれを付加いたします」
騒つく室内。——それもそうだろう。
常識的に考えて、軍はこれまでのドクトリンとは異なる軍を編成しようと言うのだから。
「それは……! 軍は、ムンゾ、いやジオンの防衛を疎かにするつもりか!」
「艦隊決戦に敗れれば、我らは蹂躙されるではないか! 反対である!」
「戦列艦こそロマンじゃないか! 建造中の軍艦は全て戦列艦に名称を変えるべきだ!」
喧々囂々。
侃々諤々。
最後の奴は知らん。怖っ。近寄らんとこ。
そんな中——、
「……かつて、旧世紀の海戦も艦隊決戦が主流でした」
騒つきながら思い思いの意見を述べる面々を無視するように、マ・クベは静かに話を続けた。
マ・クベが話を続けた事で、会議室はまるで大学教授が学生に対して歴史を語る時のように静まり返っていた。
「しかし、最後に艦隊決戦が生起したのはいつのことでしょう。もちろん、大規模な艦隊同士の殴り合いなんてものが起こる土壌が無くなったとも言えるかもしれませんが、新しい存在にとって変わられたのも、また事実なのです」
シン、と静まり返った会議室内で、黙りながら聞き入っている兄上と眉なし、ジンバはすでに了解済みだったのだろう。
いや、了解せざるを得なくなった——と言うべきか。
「我々が作ろうとしている新しい戦力は、旧世紀における空母機動部隊。その先駆けになるものです」
俺が軍に提出したデータを、3人が見る機会はあったのだろう。
——そして、そこで知ったのだ。
俺が主導する
「……一つ良いかな?」
凛とした声が響き、会議室の喧騒が止んだ。
「ぼ……いや、私は君たちに言っておきたい」
全員の視線が声の主へ向くと同時に、また全員が居住まいを正す。
「まず、一番に希求するべきは平和である」
口火を切ったキャスバルは、会議室にいる面々に向かって告げた。
「もちろん、我々が対峙するであろう相手が巨大であり、いつその巨大な刃をこちらに向けてくるかは分からない。
しかし、それでも私は、人類にそこまで絶望を抱いていない。あくまでも平和裏に、地球から地球を汚染する人々を宇宙に上げ、宇宙移民政策を完遂することが、父であるジオンと余の望みである」
キャスバルが言葉を切ると、静かに兄上が立ち上がった。
「キャスバル様。我々はあなた様の父君の、古くからの同志が殆どであります。皆は、
「それを聞いて安心した。政府は出来る限り、連邦政府との交渉に努めてくれ。それから軍は、偶発的なものであっても衝突を回避するよう」
キャスバルからの御意を得た会議はそれで閉会となり、俺も席を立ち上がる。
「あぁ、ロラン大佐。すまんが少し残ってくれ」
ジンバによって呼び止められた俺はすぐに足を止め、他に残った面々を確認する。
兄上と眉なし。そして俺。
政治の話は他所でやってほしいが、俺は和やかな雰囲気を醸し出しながら呼び止めた理由を尋ねた。
「どうかなさいましたかジンバ殿」
もちろん、呼び止められる理由はいくつか考えられる。
今まで何度も政争に巻き込まれかけてきたのだ。今回もきっとそれ絡み。もしくは軍の統制か。それともモビルスーツの開発状況を聞きたいのか。
どちらにせよ俺を巻き込まないでほしい。そもそもモビルスーツの開発や軍艦の設計なんて俺の本業じゃないのだから。
俺の問いにジンバは、少し目を泳がせながら何故か兄上とギレンを見て助けを求めた。——が、意を決したかのように、申し訳なさそうに口を開いた。
「……うむ、世継ぎの話なのじゃが……その、キャスバル様が良いのであれば、すぐに……」
「お話はそれだけですね! では失礼します」
——今までのシリアス成分を返してくれ!
俺は逃げるように会議室を後にし、そのままの足でキャスバルの部屋へと向かったのだった。
読んでいただきありがとうございました。
登場キャラの絵を描いた方が良い
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描いても構わん
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描かんでもよろしい
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原作だけ描け
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オリだけ描け
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ロランの裸が見たいわ(どちらでも良い)