デギン・ザビの弟に転生したと思ったら、俺の知ってるガンダムの世界と少し違うんだが 作:TSしたとねり
三人称視点のお話になります。
少し読みにくいかもしれませんが、ご容赦ください……
——宇宙世紀0077年。この日、世間を震撼させる事件が起きた。
円筒形のコロニーの先端。そこには、細長い円形を何分割かにぶつ切りにしたような形の農業用プラントが稼働していた。
完全密閉型のコロニーに改装されたムンゾ——改め、ジオン王国の首都バンチもその例には漏れず、そこでは常時、数十人から百数十人の職員が働き、コロニーの食糧事情を支えていた。
「……なぁ、おい、あの船」
まず、異変に気が付いたのは、その農業用プラントで働く職員だった。
「ん? あぁ、連邦の軍艦だな。駐留艦隊だろう」
米粒程度にしか見えない細長いシルエットは、正しく連邦軍の軍艦であった。
ジオンのガーディアンバンチと首都バンチに連邦軍が駐留し始めてからと言うもの、毎日のように連邦の軍艦が行き来する光景は珍しくなく、アレもその一隻であろうと見ていた者は結論付けた。
「……なんだか……航路がおかしくないか……?」
職員が感じた少しの違和感は、次第に大きな不安感へと形を変える。
ゆっくりと、ゆっくりと。しかし、確実に。連邦軍の軍艦は、本来決められた、進むべき航路を守っていない事が確実に分かったのは、それから数分後の事。
連邦軍艦も異変に気が付き、航路を修正しようとしているのか、何度かにわたって推進剤を噴射させ、推進剤を燃焼させたことを示す青白い光を明滅させていた。
——だが、その判断は正しいながらにして手遅れだった。
米粒程度にしか見えなかった連邦軍の軍艦——サラミス級巡洋艦『イオニア』は、中途半端に進路を変えたことで徐々に農業用プラントに近付いて行く。
「警報を出せ!」
ある生き残った職員によれば、罵倒と怨嗟の言葉が
「くそったれ。どうなってんだ? ここの管制は! 昼寝でもしてたのか⁉︎」
「早く! 早くエレベーターに行け! 早く!」
「ノーマルスーツは⁉︎ ノーマルスーツはどこなの⁉︎」
——ジリリリリリリッ、とプラント中に鳴り響く警報音。
その音で慌てたあまり、転んだ職員もいた。
農業用プラント内部は、コロニーの自転により1Gに保たれている。
それが、今回の事件では悲劇を産んだ。
1G下で作業をしていた職員の殆ど全員が、ノーマルスーツを着用していなかったのだ。
衝突の瞬間、金属と金属がぶつかり合う嫌な音が、農業用コロニーの内部に響いた。
その音は、悲鳴と同時に上がった怨嗟の声と相まって、この世の終わりのような音を奏でていた。
小さな亀裂であれば、応急措置として淡いピンク色のゴムのような修復材で穴を塞げば被害は最小限に済んだことだろう。
だが、相手は軍艦。そしてもう一方はコロニーのプラント。
しかも、連邦軍が整備しつつあるサラミス級巡洋艦は、砲戦において被弾した時を考慮して艦首部分を特に頑丈に作られていた。
艦首によって引き裂かれたプラントの外壁は10メートル以上に及び、空気と共に宇宙空間へと職員が投げ出された。
100人にも及ぶ被害者の多くは一瞬で酸素を奪われ、身体中の水分を奪われ、宇宙線に晒された。
運良くノーマルスーツを着ていた者は、一瞬で生命活動を止めた同僚の姿を見ながら、漆黒の闇の中で救助を待つしかない。
それも空気残量を気にしながら、いつ来るかも分からない救助を待つのである。
スペースノイド。
つまり、宇宙に住む人類であっても、その恐怖に打ち克てる事ができた職員は多くなかった。
つまり、運良くノーマルスーツを着ていた職員の殆どは、無為に空気残量を減らしてしまい低酸素脳症にかかってしまったのである。
そして、事故発生から一時間後、ジオン王国軍の艦船によって被害者全員が回収、救助された頃には、既にジオン中のコロニーが反連邦の声を上げ始めていたのだった。
『連邦はこの国から出ていけ!』
『コロニーはスペースノイドの物だ! アースノイドは出ていけ!」
『ジーク・ジオン!』
数万からなる群衆が、思い思いの言葉を書いたプラカードを持ち、首都バンチのメインストリートを行進していた。
「……マズイですな」
眼下に広がる光景を見て、ギレンは表情をピクリとも変えずに言った。
ギレンが着ている服は普段着のように使っている軍服を模した礼服ではなく、テーラーで仕立てた一等物のスーツである。
ザビ家本邸からでも見える光景は、まだ統制を失っているようには見えなかった。
しかし、群衆の数は増えつつあり、その矛先がいつ周囲に振り向くか分からない。
事故発生当初、不満の声を上げる群衆は小規模だった。
それが一日経ち、二日経つと状況は一変した。
連邦軍艦長が管制とやり取りした記録が、
連邦軍の増長し切った横柄な態度と、放ったスペースノイド蔑視の言葉に、国民の堪忍袋は限界を迎える。1週間以上に渡って連邦軍の駐屯地の前で集会が開かれ、ムンゾのメインストリートを練り歩けばこぞって市民は列に加わった。そして、連邦の駐留部隊が群衆に向けて威嚇射撃をして以降、デモ行進が収まる気配は見られなくなった。
群集心理——という物は、何かの拍子で箍が外れてしまうと、野生に解き放たれた獣のように抑えきれなくなる。
普段は遵法精神に溢れた人間であろうとも理性のハードルが低くなり、容易く罪を犯すものだ。
「ギレン、まさかとは思うがお前の差金ではなかろうな?」
燕尾服に身を包んだデギンがギレンに問いかけると、ギレンは憮然とした表情で「まさか」と口を開いた。
「こんなものを奇貨とするには、情勢が足りませぬな。今の状況ではただ連邦の介入を招くだけで、我々には何の意味も利益もありません」
「ふん。意味がある時ならばやっていた、と」
「……父上、たらればの話です。もしも我がザビ家が強権を振るう立場にあれば。もしもダイクン家が権勢を失い、ダイクン派との習合が叶っていなければ……」
ギレンは忌々しそうに外を見て、溜め息を一つ溢した。
「……少なくとも、今日のような日に何かをしようなどと考えるほど、私は腐ってなどおりませぬよ」
「……まさか式の日にこうなるとは……ゆくゆくロランもツいてないな」
デギンはシルクハットを深く被りながら胸ポケットから葉巻を取り出し、マッチで火をつけた。
紫煙を燻らせながら、デギンが肺に煙を溜め込んで一息に吐けば、それを見たギレンは驚いたような表情を浮かべた。
「驚きましたな。止められていたのでは?」
「止めておったが、最近、な……」
「……あぁ」とギレンは納得した様子でデギンの向かいにあるソファへと腰掛ける。
「流石に式をこれ以上は引き延ばせませんでしたからな。事故の調査委員会の立ち上げ、遺族への補償、連邦への抗議。働きすぎてはお身体を壊しますぞ」
「そうも言ってられん。ロランの結婚式のためだ。それに、貴様の言う情勢が独裁と同義なら、それこそ儂は潰れておっただろう」
「良くも悪くも立憲君主制、と言ったところですかな。政府の運営は一握りのエリートだけではなく、集合知たる政党で、という。それでも、私は持論の優勢人類生存説は唱え続けますがね」
ジリッ、と葉巻が音を立て、デギンは葉巻の灰を灰皿の上に落とした。
「まだまだ父上には頑張っていただきませんと。サスロも私も、父上の地盤を引き継ぐには若輩と見られがちですからな」
「……そのためにも、お前とサスロは腹芸を覚えねばならん。政治の世界は闘争だ。相手の弱みにつけ込むこともそうだが、少しだけこちらの弱みを見せた方が、すんなりと決まる事もある」
デギンは葉巻の先を潰して火を落とした。
「……連邦から、これ以上デモが続けば治安出動をすると言ってきた」
「……それは、何とも急ですな」
「連邦が出張れば、民に死者も出よう。このギリギリで保たれている楼閣が、崩れ去るやもしれぬ。それだけは避けねばならぬ。防がねばならぬ。ジオン・ダイクンが望んだこの均衡を崩させてはならんのだ」
「我らが伯父上のためにも……ですな?」
ギレンの茶化すような物言いに、デギンは再び葉巻に火をつけた。
「ギレン、アレもいい大人だ。自分の身は自分で守ることができよう。だが、老い先短い儂よりは、長生きしてもらわねば困る」
「しかし、あまりにもタイミングが悪すぎますな……先日、連邦が我が国を名指しして、税負担の増額と資源割り当ての増加を言ってきたばかりです」
「しかもそれがニュースで国民の知るところとなった……か。誰の差し金やら……」
デギンのサングラスの奥に光る瞳が、昏い色を灯した。
「少なくとも、儂ら……ザビ家に喧嘩を売ったのだ。その落とし前は高く付く事を教育してやらねばな」
「怖い怖い。父上からの折檻は、あのサスロも泣いて逃げ出しますからな」
くつくっ、と笑うギレンは、懐に手を伸ばして折り畳まれた一枚の紙を取り出した。
「キシリアは既に目星を付けているそうです。あの跳ねっ返りの妹も、こういう時には役に立つ」
ギレンから手渡された紙を見て、デギンは再び葉巻に火を付けた。
「ルナリアンども……身の丈にあった商売に専念しておれば良いものを」
「アナハイムエレクトロニクス社がどうやらきな臭いようです。奴らは我々に触発されて、連邦軍にMSを納入しようとしているとか」
「……金臭いだけでなく、火薬の匂いも……か」
デギンは読み終えた紙をビリビリと細かく千切り、灰皿の中に入れる。
マッチに火を灯し、灰皿の中に落とすと千切った紙が勢いよく燃え出した。
「サスロには外交ができん。内政と広報に専念するよう、手綱をしっかりと握っておけ。奴は短気を起こしかねん。キシリアには……まだ大人しくさせておくのが良い。我が娘ながらロランに対しての行動だけは読めん。……ドズルは……まぁ大丈夫だろう。彼奴は頭は悪いが馬鹿ではない」
「わかりました。そのように手配します。ですが、父上も誰かに似て頑固ですなぁ」
揶揄うようなギレンの物言いに、デギンは煙を吐き出しながら辟易とした様子で口を開いた。
「馬鹿言え。皆が儂に似ておるのだ」
デギンは葉巻の先端を潰して灰皿の中に入れ、愛しい弟の結婚式会場に行くべく、ギレンを伴って部屋を後にしたのだった。
読んでいただきありがとうございました。
hoi4的に言えば、国際緊張度が一気に5%から20%くらいにまで上がって、選択肢を間違えると宣戦布告してしまうポップが出たような雰囲気です。
デギンにシルクハットと葉巻を付けたら、あのブルドッグ似の宰相に似ていると言う感想を見かけて出来心で書いてしまいました。後悔はしていません。
感想等おまちしています
登場キャラの絵を描いた方が良い
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描いても構わん
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描かんでもよろしい
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原作だけ描け
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オリだけ描け
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ロランの裸が見たいわ(どちらでも良い)