デギン・ザビの弟に転生したと思ったら、俺の知ってるガンダムの世界と少し違うんだが   作:TSしたとねり

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 お待たせいたしました。
 今回も三人称視点のお話です。暁の蜂起は長くなりそうなので、数字を振ってあります。
 推敲不足が否めませんが、書き上げたので投稿することにしました。
 いつも誤字報告、感想等ありがとうございます。


21 暁の蜂起1(宇宙世紀0077年)

 宇宙世紀0077年、ジオン王国士官学校の卒業式を間近に控えたキャスバルは、図書館で本を開きながら先日の結婚式を思い返していた。

 

 まさか自分が、華やかなドレスに身を包み、多くの人の前で式を挙げる事になるとは——夢には思っていたが——、思ってもいなかった。

 

 しかも、その式の様子はジオン王国中にテレビ中継され、中継されていた時間だけは連日続いていた連邦に対する抗議運動が止まったという。

 

 それほどまでに注目された結婚。今幸せかどうかと問われれば、おそらくキャスバルは臆面もなく「幸せだ」と答えるだろう。

 

 だが、夫になった男——ロランはあろう事か、初夜の寝室に女——タチアナ・クリピンスキーを伴って現れた。

 

 泣きじゃくり、当たり散らかしてしまえばどれほど楽だっただろう。

 

 床に伏して許しを乞うてきた夫——になったロランの姿は、哀れとしか言いようがなかった。

 その場で、キャスバルに対して——

 タチアナとの間に子供がいる事。

 タチアナには何の落ち度がない事。

 今まで黙っていて申し訳ないが、もしもキャスバルから許しを得られないのであれば、別居でも構わない事。

 ——等と、唐突に告白してきた。

 

 それに関して、何も思わないのか——と言われれば嘘になる。

 もちろん、黙っていた事には腹が立つし、結婚早々別居なんて事を言い出した男は殴ってやりたかった。

 しかし、男女の仲にあったと言うタチアナが、ロランの横で床に伏して許しを乞い、「もう二度とロランに近付かない」と言ってきたのを、キャスバルは咄嗟に否定してしまったのだ。

 

 それは、どこかで自分を、自分の両親に重ね合わせてしまったからだろう。

 

 ローゼルシアとアストライア。

 正妻と側室という、二人の女性関係を見てきたキャスバルが、それによってどれだけ自分と(アルテイシア)が大変な思いをしてきたか——。

 

 キャスバルは数瞬考え、モヤモヤと渦巻く感情に蓋をすることにした。

 

「仲良くしましょうタチアナさん。僕もタチアナさんも、平等にロランが愛してくれるのであれば……それで良いから」

 

 きっと、浮かべた笑顔はぎこちないものになっていたと思う。

 

 ——もしも、自分に子供ができなかったら。

 ——もしも、ロランが平等に愛してくれなかったら。

 

 きっと自分も、ローゼルシアのようになってしまう。

 側妻の子供に嫉妬して、辛い仕打ちをしたり心無い言葉を放ってしまう。

 

 それは予感というよりも確信に近かった。

 それほどまでに、女の嫉妬は根深く醜い。

 

 それを間近で目の当たりにしてきたからこそ、キャスバルは確信を抱いたのだった。

 

「キャ……シャルロット、少し良いかな?」

 

 物思いに耽っていたキャスバルは、唐突に現実へと引き戻された。

 

 突然話しかけてきたまだ少年の面影が残るガルマは、キョロキョロと周囲を確認しながらキャスバルに向き合うように机を挟んで椅子に腰掛ける。

 

「どうしたんだい? ガルマから話しかけてくるなんて珍しいこともある」

「ぼ……俺だって、周囲の目くらい気にするよ」

「別に気にする必要はないさ。僕はシャルロット・アズナブルなんだから」

 

 キャスバルが頬杖をついて伺うと、ガルマは声を落として話し始めた。

 

「噂……と言うか、聞いた話なんだけど……」

 

 深刻そうな面持ちで、ガルマの顔色からロクでもない事なのだろう、と見当をつけたキャスバルは、先ほどまでの戯けた様子を封印して真剣な面持ちで「それで?」と続きを促した。

 

「……どうやら連邦軍が近々治安出動をするらしい」

「それは! ……コホン、いや。それで?」

 

 思わず大きな声を出してしまった事で、周囲から視線を向けられたが再び声を落として続きを促す。

 

 ——自分たちにできることは何もない。

 

 キャスバルがそう思ったところで、果たして本当にそうだろうか——、と疑問が首をもたげた。

 

「シャルロット。今は抑えているけど、みんなの不満が限界だ。特に、コロニー出身者がヤバい」

 

 ガルマは天賦の才とも言えるコミュニケーション能力で、士官学校に在学している生徒の多くから慕われていた。

 もちろん、その後ろにある『ザビ家』という看板に、惹かれてきた虫もいる事にはいたが、それすらも許容する度量は、さすがとしか言いようがない。

 

 それに、人が集まれば自然と情報が集まり、多くのことを耳にする。

 その結果、これまで『良いとこの坊ちゃん育ちの世間知らず』という評価を一変させていた。

 

 対してキャスバルは、成績こそガルマよりも高い評価を得ていたが、そういったコミュニケーションを必要最低限に留めていたため、成績トップ2を独占する2人は均衡の取れたコンビとして、教官達からの評価は高かった。

 

 話を戻そう。

 ガルマがキャスバルに伝えた噂話は、ガルマの周囲に侍る者達が実しやかに話していた事だった。

 つまり、そのレベルにまで噂が広がるくらい、連邦軍の動きは活発化している。

 

『首都のデモに、連邦軍の駐留部隊が出動するとどうなるかなんて、みんな分かりきってる。向けられる銃口の先に、自分たちの家族がいない保証なんてない』

 

 噂話をしているスペースノイドの生徒は、皆がこの思いを同じくしていた。

 一部の生徒が過激化しているのかと言えばそうではない。

 

 ジオン王国士官学校には、サイド3からだけではなく、他のコロニーからも生徒が集まっている。

 

 ジオン・ズム・ダイクンの思想に感化された者。

 親戚がサイド3にいる者。

 出身地のコロニーでは連邦からの搾取が激しく、生活に困窮した者。

 

 多種多様な生徒は、現在——いや、約10年前から始まったサイド3への人口流入によって——のジオン王国内部の縮図と言えた。

 

 キャスバルとしてはようやく国の形が定まり、ザビ派とダイクン派が習合して纏まりつつあるのに、連邦の一挙手一投足で再び社会不安が再燃しかねない状況を看過できるはずはない。

 よって、行き着く答え()は当然の帰結だったと言えよう。

 

「……犠牲者を出さないためには、駐屯地を襲うしかない」

 

 キャスバルがそう呟くと、ガルマはギョッと表情を変えた。

 

「それは……あまりにも短慮だぞシャル。きっとこちらにも犠牲者が出る」

「でも、他に方法があるか?」

 

 ガルマはシャルロット呼びから、キャスバルが親しい者にしか許していない呼び方へと直し、翻意するように問う。

 しかし、シャルロットは首を横に振りながら自身の考えを伝え始めた。

 

 生徒の暴発を抑え、かつ、民衆の犠牲者を出さない方法は存在しない事。

 連邦軍の善意には期待できない。その事は、連邦の姿勢にも表れている事。

 どちらの犠牲者を出さないのが最善(ベター)なのか。

 

「民衆を守る僕たちが、民衆に武器を向けようとしている奴らに対峙しないで、何の為の軍か。何の為のダイクン家か」

 

 国家の体制を整えて間もないジオンに、その選択の余地はないだろう事。

 

 国家の体裁というものは、古来から『御恩と奉公』の関係に似ている。

 民衆を守り、権利を与え、民衆は義務を果たす。

 

 それらを守らない国家の行く末は、古来から星の数の如く消えていった国家の名前をあげる事に他ならない。

 

「……ガルマ。責任の取り方なら、ここにいる誰よりも僕は知っている。それは君ならば分かってくれるだろう?」

「……悔しいな。そう言われると、俺は何も言えない……」

 

 悔しげに顔を歪ませるガルマを見て、キャスバルは微笑んだ。

 

「本当に……君は得難い友人だよ、ガルマ」

 

 キャスバルが言った言葉は、心からのものだった。

 


 

 原作においてガルマは、将官としての資質に疑問が持たれていた。

 しかし、士官学校という場所は、親や兄弟の七光だけで卒業できるほど甘い場所ではない。

 

 連邦軍の駐屯地を襲う——。

 その目標をぶち上げたキャスバルをガルマはサポートし、現時点で万全と言える計画を立てた。

 

 ガルマとキャスバルは、士官学校の主だった生徒を集め、計画を告げたところ賛同を得ることができた。

 

 警戒網を突破するために、ランドムーバーを使う事。

 まず、いち早く司令機能を喪失させるために、司令官を拘束する事。

 増援を呼ばれない為に、無線設備等を破壊する事。

 一般兵士の起居する兵舎を抑える事。

 

 必要最小限の人数で行われる計画は、それでも最低200人は必要だ。その人数は、士官学校の生徒の数だけで十分に足りる。

 

 ——だが、そこで問題が浮上した。

 

「問題なのはロラン学校長と、当日の宿直のドズル教官だ」

 

 夕陽が差し込む室内で、リノ・フェルナンデスが問題となる人物の名前をあげる。

 

「ロラン学校長は、何故か最近、毎日のように学校に宿泊している。あの人に動かれると面倒だ」

 

 決行は明朝未明。

 時間が経てば経つほど熱は冷める。

 よって、計画は電撃的な行動が肝となるため、不確定な要素は可能な限り排除したかった。

 

「ドズル教官の引き留めは……ゼナ。君に任せたい」

 

 ガルマは士官学校で10本の指に入る才女を指名した。

 

「兄さ……いや、教官は情に熱い。君が今後の事について相談したいと言えば、教官は首を横には振らない。頼まれてくれないか?」

「わ、わかりましたっ」

 

 ゼナ・ミアは、手渡された自動式拳銃の弾倉を取り出し、予備の弾倉も含めて弾を込め始めた。

 

「そして、ロラン学校長には……シャルロット。君だ」

 

 ガルマの指名に、キャスバルは心底不機嫌な表情を浮かべる。

 

「おいガルマ。何だよこの人選。まさか……僕たち2人に色仕掛けしろってこと?」

「違う! しっかりと熟考した結果だ!」

「えー? ガルマ顔真っ赤ー。本当にこの手の冗談弱いよね」

 

 くすくすとキャスバルが笑えば、その場の雰囲気は弛緩した。

 

「ま、良いけどさ。でも、僕は納得できないな。君が現場で僕が後方なんて」

 

 ガルマは真っ赤に染めた顔をパタパタと手で仰ぎながら、まるでその場にいる全員に説明するように理由を答える。

 

「え、えー……す、少なくとも、ぼ、俺たちの中で一番の綺麗どころというのは否定をしない。えーと、だが、成績のトップ2人が現場に出ると、指揮官が2人並び立つということになる。そうなると、計画に支障を来たす可能性が高い」

 

 ガルマは目を手に持っている何か——カンニングペーパー——に向けたまま、書かれた内容を読み上げる機械に成り果てていた。

 

「えー、本来であれば、後方から指揮する人間も必要だが、無線は極力封鎖して実施するので、後方からの指揮は必要ない」

「ガルマ。でも、この計画を立てたのは僕だよ? 君が後方で、僕が現場の方が良かったんじゃない?」

 

 それは暗に、ザビ家が前線に出ることなどないのだから、下の者に任せておけと言う『挑発』。

 ガルマが嫌う言い方になってしまったが、演技というのは周囲の人間を騙せて初めて成立するのだ。

 

「それでも……俺はザビ家の男だ。切った張ったの世界に生きると決めた一人の男として、最初から最後まで今回の蜂起を見届けたい」

「……まぁ、そう言うことだな。シャルもそれで納得してくれ。兄として君には……後ろに下がっていてもらった方が良い」

 

 ガルマが語った内容は、本心からのものだった。

 そして、またしても何も知らないシャア・アズナブルが見せた、兄としての言葉でその演技は完成する。

 

「分かったよ。でも、僕が計画したんだ。だから、これは僕の我儘かもしれないけど、みんなの心に留めておいて欲しい」

 

 キャスバルは、部屋に集まっている10人の顔を見渡す。

 偽りの兄を演じ続けてくれた友人。

 その関係を知りながら、黙っていてくれた友人。

 そして、かけがえのない友人を。

 

「死ぬな。君たちの命は、これからの王国に必要なものだ。ここは命を投げ打つ場じゃない。無理だと思ったら引いてくれ。最終的に、責任は僕が取る」

 

 キャスバルの言葉に感じ入った者達は、心を一つにして、男女問わず拳を振り上げた。

 

「ジーク、ジオン!」

 

 その言葉を皮切りに熱い唸りが起こり、三唱が起こる。

 

「ジーク、ジオン!」

 

 自分達がスペースノイドの尖兵なのだ、と振り上げた拳を下ろす時が来たのだ。

 

「ジーク、ジオン!」

 

 キャスバルは願った。

 ここにいる全員が、再び生きてこの場所に戻る事を。

 そして、またこの士官学校で共に過ごした友人として、相見える事を。

 

「さ、紳士諸君、取りに行こう。勝利の栄光を!」




読んでいただきありがとうございました。
いつも感想等ありがとうございます。それを読んで、モチベーションに変えております。

今後とも感想等よろしくお願いします。

登場キャラの絵を描いた方が良い

  • 描いても構わん
  • 描かんでもよろしい
  • 原作だけ描け
  • オリだけ描け
  • ロランの裸が見たいわ(どちらでも良い)
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