デギン・ザビの弟に転生したと思ったら、俺の知ってるガンダムの世界と少し違うんだが 作:TSしたとねり
ちょっと短めです
ジオン・ズム・ダイクンとのファーストコンタクトで、某アイドル育成ゲームでいうところの見事なパーフェクトコミュニケーションを叩き出してしまった俺は、ようやく人も落ち着いてきたこともあってドズルの元へと行く事にした。
——流石に今日の主役に挨拶はしておかないといけないよね。親しき仲にも礼儀ありって言うし。
ドズルに挨拶をしたい人の行列は少なくなってきたとは言え、まだまだ続いている。
このペースだと、ドズルに挨拶するだけなのに30分近くは掛かるだろう。
——なんて事を考えながら列に並ぶと、俺が最後尾に付いた事に気がついた周囲の人間が、最初ギョッとした表情を浮かべて、列の順番を譲られた。
「ロラン殿、お先にどうぞ」
「あ、どうも」
短く礼を言うと、その人を皮切りに気を遣われて、あれよあれよという間に前へ前へと通されていく。
この光景は、見ようによってはザビ家の親族である事を傘にきて、無理矢理前に進んでいるようにも見えなくもない。だけど、俺の意思じゃない。
——忖度する方が悪いので、私には責任がないものと考える他ない。
そんなこんなであっという間に先頭に出た俺は、パーティの主役であるドズルに声をかけた。
「叔父上! 本日はありがとうございます!」
「あぁ、久しぶりだねドズル。そろそろ疲れてきたんじゃないかい?」
俺が労ると、ドズルは歳不相応に「あははは!」と高らかに笑う。まだ声変わり途中の少年がそんな笑い方をしても胡散臭い事この上ない。
ドズルはまだ12歳なのにも関わらず、身長だけは既に俺を追い越していた。
「俺はこう見えて、叔父上のような軍人になりたくて鍛えておりますからね! そうそう疲れはしませんよ!」
12歳とは思えない、良くも悪くも背伸びをしているような話し方に、俺は思わず眉を顰めた。
原作では32歳という若さで中将という階級にあったドズル。
原作の厳つい描写からは、この話し方に違和感はなかったが、今目の前のドズルは——たとえゴツくて厳ついとは言っても——まだ12歳なのだ。そういった話し方をしなければならない——つまりは周りに敵が多く、弱い所を見せれば自分の身が危ない事を理解しているのだろう。
「そうか、だが無理はしないようにな」
そんなドズルに、俺はありきたりな言葉をかける事しか出来なかった。
ザビ家という政治家一族に生まれなければ、きっとドズルは実直な軍人になれた事だろう。だが、周りの状況がそれを許さない。軍人を目指しているのに、政治一家のザビ家の一員として政治にも携わらざるをえないのだ。
「……そういえば、さっきからギレンさんの姿が見えないけど……さっきまで隣にいたよね?」
俺がそう言うと、ドズルは何故か困ったような表情を浮かべた。
「えぇ……大企業や政治の偉役の方々からの挨拶が終わると、兄貴はその人達とお話をすると言って……」
「そうか……じゃあキシリアちゃんは?」
「姉上は、母上の様子を見に行く——と、先程会場から出て行きましたよ」
なるほど。流石にギレン——政治屋らしい。が、そうか、もう少しでガルマが生まれるかもしれないのか。
ガルマはザビ家の中でも末っ子として、仲の悪かった兄弟間を取り持つ接着剤のようなものだった。
それは、ガルマが生まれた後にすぐ死んでしまった母親の影響もあるのかもしれないが、母親が遺したガルマをみんなで守ろうという共同認識が、ザビ家の中で生じていたのだろう。
だから、シャアによってガルマが謀殺された後、ギレンとキシリアの間に入っていた亀裂が埋まることはなかったし——。
あれ? と言うことは、もうすぐシャア——いや、キャスバルが生まれるのも近いのでは?(名推理)
ヤバいぞ。またザビ家滅亡フラグが生まれてしまう。
ガルマが生まれても、今後の政争でダイクンが死ねば、シャアのヘイトがまず間違いなくザビ家に向かうだろう。
ぐぬぬ、と呻る俺に、ドズルが悲しそうな表情を浮かべている事に気がついてしまった。いかんいかん。ちゃんと誕生日を祝ってあげないと。
「っ! いや、すまない。少し考え事をしてしまったようだ……ドズル、まぁ何にせよ、今日は誕生日おめでとう」
「……はい! ありがとうございます叔父貴!」
殊勝にも、ドズルはすぐに嬉しそうな笑みを浮かべる。
ヨシ! 完璧に取り繕えたな!
ムンゾがジオンとして連邦に牙を剥くまであと20年。その期間は長いようで短い。だから俺は、できるだけのことをしておこうと改めて誓ったのだった。
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「おかえりなさい。どうでしたか?」
「あ、いいね今の。何か新婚みたい」
茶化して答えると、タチアナは軽く俺の肩を小突く。いや、ちょっと! 小突くどころか殴る範疇に入る痛さ、痛い! やめて! そう何回も殴る必要ないでしょ?!
「これ以上茶化すなら私にも考えがあります。このくらいの強さでどこかを殴りますよ?」
どこを、とは言いませんが——と続けたタチアナの言葉に、おれの大事な場所がすくみあがった。
「やめて! 女の子になっちゃうから!」
「あら、丁度いいじゃないですか。丁度中性的な容姿をしているのですから、ナニがあろうがなかろうがよろしいのでは?」
何この娘。男の子の大事なところを何だと思ってるんだ。まだ俺はめすおちなんて特殊性癖を有していないぞ。
「ま、冗談はさておき、実際どうでしたか? そのお兄様とのお話は」
「冗談で良かったよ……今度、新興の建設機械を作っている会社に行って新しい作業用機械を見せてもらうことになった。それくらいかな?」
タチアナは不思議そうな表情を浮かべた。
「どうしたのですか? ついに、貴方は軍人を辞めて土木作業員になる心構えができたので?」
「いやいや、なんでよりにもよって土木作業員? そんなに俺が脳筋に見える?」
「あぁ、失礼いたしました。ガチムチな土木作業員の性の吐口ですか。納得いたしました」
「ちげーよ! どうして俺をメス堕ちさせたがるの?! 俺何かした?!」
どうしてか、タチアナがいつも以上に突っかかってくる。……って、よく見れば、タチアナの顔が真っ赤だ。
「……タチアナ……もしかして酔っ払ってる?」
「わらひが酔っ払ってる? 冗談もほろほろにしなさいばーか」
はい、アウトー!
一体誰だよこんな副官をほっぽり出していたのは……!
セクハラにならないように気を付けながら肩を抱いて介抱しようとすると、タチアナは俺の胸に頭を擦り付けるように引っ付いてきた。
「おーい、タチアナ准尉ー。少し酔いを覚ますためにどこかに移動するよー。ほら、立って立って」
「むーー」
酔っ払ってるからか、幼児退行しているようだ。何が不満なのか。
お酒が弱いなら弱いと言ってくれてもいいのに、タチアナ准尉のプライドが許さなかったのだろうか。
赤らんだ首筋の白い肌が目に映る。タチアナ准尉の吐き出した、荒い吐息が首筋に掛かった。
いや、可愛いんだけれども、こんな所を誰かに見られたら——
「おや、わざわざ挨拶をしようと来てみれば、叔父上殿も隅にはおけませんな?」
ほらーー! 眉無しが! あのオールバック野郎が‼︎
やせい の ギレン が あらわれた !▼
アニメで見たような黒い軍服のような服ではなくて、見慣れないスーツ姿のギレンは俺とタチアナの顔を見比べるように見て、「なるほど」とニヒルな笑みを浮かべた。
「何を勘違いしているかは知らないが、見ての通り酔っ払いの介抱をしているだけだよ」
「ふむ、ではそういう事にしておきましょう」
何でだよ。どこからどう見てもそうにしか見えないだろうが。
「叔父上、いえロラン殿。貴方もザビ家の一員なのですから、それに見合った振る舞いという物を身につけるべきですな」
「ご忠告どうもありがとう。兄上には迷惑をかけないようにしているのだけどね」
兄上にはね、と重ねて強調すると、ギレンは一本の毛も生えていない眉根を寄せ、眉間に濃い皺を作った。
「忠告はしましたからな。政治に関心がないと思っていましたが、邪魔立てするようであれば容赦はしませんぞ」
「邪魔なんてしないさ、私は身の回りを守ることで精一杯だよ。ただ、ギレンさん、貴方も兄上の立場というものを考えた方がいい。少なくとも兄上はダイクン首相閣下の側近で、貴方はその息子なのだから。
表向きには、ザビ家一党——派閥は、ダイクン首相閣下の元で団結している、と、周囲に見せておいた方が良いのでは?」
俺の言葉に、ギレンはフン、と一つ息を吐いた。
「だとよろしいのですが。では、叔父上。ここで失礼いたしますよ」
颯爽と去っていくギレンの後ろ姿を見ながら、俺は今度こそ深いため息を吐いた。
「さて、と」
直近の問題は去ってくれた。残されたのは、俺と一人の
「ほら、タチアナ准尉。頑張って立とうねー。ゆっくりと動くぞー?」
「んー……」
タチアナ准尉を横抱きに抱えると、甘えるように擦り寄ってきた准尉の大きな胸の膨らみが、俺の身体に当たった。
いや、やましい事はない。これは合法的な介助なのだ。
それでも俺は——ゴクリ、と生唾を飲み込む。
だって仕方がないだろう。前世では女性とは縁のない生活だったのだから。
いや、ダメだダメだ。こんな考えになってしまうのは、まさに童貞丸出し。中学生並み。
部下に手を出すなんてセクハラ通り越して銃殺物だろう。
こんな不埒な事を考えてしまうなんて、きっと少量でもアルコールを摂取したせいだ。何も考えるな、背中の柔らかい物が気持ち良いとか絶対に考えるな。
なんて事を考えているうちに、ザビ家の屋敷にあるだだっ広い客間にようやくたどり着いた。
俺が客間に設られているベッドにタチアナ准尉を寝かせ、そのまま離れようとすると、タチアナ准尉はきゅっ、と俺のスーツを掴んできた。
「おーい、タチアナ准尉ー? もしもーし。起きないなら、このまま襲っちゃうぞー?」「どうぞ」
「なんちゃって……って……えぇ……」
いつの間にか起きていたのか、タチアナ准尉はしっかりとした目で俺を見つめてきた。
顔はまだ赤いから、完全に酔いが覚めたわけではなさそうだ。
「あのー、離してくれませんかね……?」
「はぁ……襲うなら早くすればどうですか? タマついてないんですか? それとも、本当に屈強な男の方が……」
挑発するようなタチアナ准尉の物言いに、俺の中で何かがプツンと切れる音が聞こえた。
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——やっちまった……。
気が付けばもうお昼時。
後悔しても時既にお寿司。じゃない、遅し。
ザビ家の屋敷にある客間のベッドで俺は、ゴルゴ◯3に出てくるデュー◯東郷のように、ベッドの上で仰向けになりながら腕を枕にし、虚な目で寝転がっていた。
どうしてこうなったのか——なんて、分かりきっている。
少しのお酒で理性が崩れやすくなっていたのは疑いようはない。
だが、それだけで理性の糸が切れるわけはなく、俺が少なからずタチアナに好意を持っていたことを今更になって自覚した。
つまり、挑発してきたタチアナが悪い。
乱れたベッドとシーツに残る痕跡。さまざまな体液が染み付いた中に見える赤い色。
部屋の中に立ち込める匂いは、この部屋で何が行われたのかを如実に語っていた。
「……はぁーー」
何の気もなくため息が溢れた。
「いや、朝チュンどころかもぬけの殻ってどう言う事だよ……タチアナ……」
ようやく自覚した好意。それなのに、当の本人はどこにもいなかった。
昨晩はお楽しみでしたね——と言う間も、言われる間も無く、一人残された俺は唯一残された紙切れ一枚に目を通し、暗かった気持ちが一段と落ち込んでいた。
「婚約者に殺されないといいなぁ……」
俺に残されたのはタチアナからの置き手紙だった。
曰く——、来年結婚することになったので軍を除隊し、工業コロニーに引っ越す事になった。
昨晩あったことは夢と思って忘れてください。
もしも妊娠していても、気にする必要はありません。
——等と書かれていたタチアナの達筆な字が書かれたメモを、俺はクシャリと握りつぶした。
「グエン・サード・ワイズマン……ワイズマン工業の社長か……」
俺は噛み締めるように、タチアナの結婚相手となった男の名前を独り言ちた。
その名前は前世でどこか聞いた覚えのある名前。だけど、多少の差異はあるが確定的ではない。
「まさかとは思うけど……某同人サークル*1で描かれるような……あのグエン閣下じゃないことを祈るか……」
この思いが杞憂になる事を、俺は願うばかりだった。
「……あれ? ワイズマン工業……? んん? あれ?」
短かったですよね?
あとサークル名出してすみませんでした……
次は12/5のお昼頃に投稿します