デギン・ザビの弟に転生したと思ったら、俺の知ってるガンダムの世界と少し違うんだが   作:TSしたとねり

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初めて総合日間ランキングに載ることができたので、予定よりも早いですが投下します。一瞬だけでもいい夢見れました……
本当に予想以上に伸びててビックリしてます!
やっぱりみんなホモ好きなんやなって()

2次創作日間にも初めて乗らせていただいてありがとうございます。



5 政敵(宇宙世紀0060年)

 新しい年が明けて数日経った、宇宙世紀0060年1月某日。

 

 ワイズマン工業での契約の後、俺の貞操は守られ、タチアナは俺との連絡役として働く事になり、俺は私的にも公的にも忙しい毎日を送っていた。

 

 タチアナの連絡役としての任務はもっぱら、モビルワーカー開発に関しての意見聴取と、軍用に試作している機体に関する意見交換——となっているが、この肩書きなら、俺と頻繁に会っても不自然ではないだろう——という、ワイズマン工業(あちら)側からの配慮に俺が乗っかった形になる。

 

 まぁ、四六時中一緒にいる訳ではないが、思いを確認しあった男女が会って、ヤる事は一つ。

 

 まぁ、近いうちにタチアナは妊娠するのではないだろうか——とだけ言っておこう。

 タイトなスーツ姿のメガネツンツンクール女子……良いよね……

 

『ご覧ください。はるか彼方のアステロイドベルトに向かう、我らが開拓団の勇姿! 新型のチベ級と命名された深紅の艦に先導されて、16隻の探査船団の勇姿が今、ムンゾ宇宙港から新天地開拓へと進んでいきます!』

 

 寂れたクラブの端に置かれた、これまた年季の入ったテレビに映るアナウンサーが、興奮しきった調子で実況していた。

 

 それも、10年以上ぶりとなる比較的大規模なアステロイドベルト開拓団の出発となれば、ムンゾ全体がちょっとしたお祭り騒ぎになる事にも頷けるだろう。

 

 今回出発した16隻の内、ザビ家が出資している探査船は3隻。

 

 今回の開拓団には試作型であるモビルワーカー1式1型を1機ずつ、合計3機積み込む事に成功した。

 今頃はワイズマン工業で、工場がフル稼働している事だろう。

 しかも、剛毅な事にワイズマン工業から出向という形であの黒い三連星もくっついてきたのだ! これはしっかりと働いてもらうしかないね!

 

 ムンゾ国防隊が、連邦からようやく許可を得て新造したチベ級()()()一番艦チベ。

 

 一年戦争の時には既に旧式艦で、近代化改修や発展艦級の就役で命脈を保っていた艦級であるが、まだこの時点では新鋭新造艦だ。

 

 チベ級探査船の任務は、ただ探査する人員を送り出すためだけではない。

 

 宇宙を進む船舶にとって、最も危険視しなくてはいけないのが、人類がこれまで打ち上げてきた探査機の残骸——デブリと呼ばれるものや、音速を超える速度で襲いかかってくる大小様々な小惑星だ。

 

 アステロイドベルトに向かう航路上に存在するであろうそれらを、先導するチベが発見、可能であれば粉砕し、それがダメならば船団を一層安全な航路に誘導するのを任務としている。

 

 そのため、チベには連邦軍の持つ戦艦以下、巡洋艦以上の装甲と、旧式ではあるが炸薬式の実体弾の発射器——つまるところ艦砲を決して多くはない数だが積んでいる

 

 年内のうちに、公式にはもう一隻の就役を見込んでいるが、連邦の意見次第では建艦計画を中止か継続かを決めなくてはならない。

 

 少なくとも連邦政府は、コロニー側に戦力を所有してほしくない。

 チベ級探査船は、例外中の例外なのだ。

 

 コロニー建造の噂が広まり、実際に地球で資源関連の需要が逼迫していた。

 しかも、そのしわ寄せがコロニーに住まうスペースノイドに向いているのだから、皮肉としか言えないだろう。

 

 閑話休題。

 

 一年戦争開始時点でジオン公国が揃えた艦艇数は、戦艦8隻、重巡洋艦42隻、軽巡洋艦108隻、補給艦が240隻。

 

 ジオンの工業力を考えてみて、モビルスーツの生産も並行して行うとなると、連邦との関係がこじれた宇宙世紀0070年前後から艦隊を作るとなると間違いなく間に合わない。第二次世界大戦の米国とは違うのだ。

 

 艦を浮かべるだけなら一年やそこらで浮かべられる。だが、乗員や艦隊行動ということを考えると、最低3年の年月がかかる事を考慮すれば、探査船や旅客船をあらかじめ建造し、乗員もそこで養成しておくほか、間に合わせる方法はない。

 

 旧世紀——いや、前世日本の特設改装空母よろしく、優等な旅客船には補助金を出してでも建造して良いかもしれない——と思考が政治向きになってしまった。

 

 それらについては、IQ280の我が甥御様(ギレン)と、スキンヘッドなお兄様(デギン)に任せるほかない。

 

 ——それにしても遅いな。

 

 俺は場末のバー——クラブ・エデンで人を待っていた。

 

 その理由は、とある人物に会わせてほしい——と、俺が偉い人に声を掛けて実現したのだが、まさかこんな場所を指定してくるとは思わなかった。

 

 だって、クラブ・エデンってあそこじゃん。ジオンが浮気した場所。もとい、アストライアと出会った場所。

 

 そして、青い巨星と言われるほどのパイロットになる、ランバ・ラルの奥さん(未入籍)が働いている場所。

 

 つまりはザビ家にとっては敵地同然。後ろから刺されでもしたら笑えないね。

 

「……孤立無援……ってこんな気持ちになるのかな……」

 

 俺がそう呟き、カウンターの卓上に置かれたロックグラスに入った氷が、カラン、と音を立てた時だった。

 

「やぁ、待たせてすまなかったねロラン君」

 

 フードを深く被った人物が俺に声を掛けてきた。

 

「はい、いいえ、閣下。私も今来たところです」

 

 交わし合う社交辞令。

 グラスが空になっていることからもわかるように、俺がこの店に着いたのは数分前のことではないが、それを口に出さないのが大人の社交というものだろう。

 

「……ここで閣下はやめたまえ。私は連邦から追放された、無位無冠の身だよ」

 

 俺が待っていた人物——ジオン・ズム・ダイクンは以前とは違いどこかやさぐれた様子だった。

 

 連邦から追放されたとは言え、まだムンゾ自治共和国首相という肩書きは残っているので、無位無冠というわけではないのだが、衝撃はよほど大きいらしい。

 

「あれは、連邦議会から公職追放されただけではないですか。多くのムンゾ市民から、閣下はまだ支持されています」

「それでも、影響力の低下は免れていないがね? 今まで会ってくれていた人物からはけんもほろろに断られ、電話を架ければあから様に居留守を使われる。昔、共に思想を語り合った仲だというのに……だ。マスター、私にはバーボン。ロックで頼むよ」

 

 ジオンが独立宣言をして以降、地球連邦はコロニーに対する圧力を強めていた。

 

 反連邦と目された人物を公職に就くことを禁止したり、ムンゾ国防隊の軍備を法律で制限しようとしたりと、多かれ少なかれの影響を強めつつあり、それがまたコロニーに住む住民たちからの反発を招いている。

 

「そうだ、ロラン君。君に紹介しよう。私の支援者の一人、ジンバ・ラル殿だ」

「……よろしく」

 

 ジオンに紹介された小柄な老人は、言葉少なに会釈をしてきた。

 

 白髪が目立つ短髪。整えられた髭までもが白い。皺の刻まれた顔に張りついた双眸は鋭く、どこか警戒の色を湛えてこちらを睨んでくる。

 

「ジンバ、そうロラン君を警戒するものではない。彼はデギンの弟——つまり、同じくジオン党の協力者とも見れるではないか?」

「お言葉ですが、閣下。どこにでも虫はいるものです。ましてや、それが身内からとなれば身中の虫となり得るのですぞ」

 

 ジンバが言う身中の虫、という言葉はおそらく俺だけではなく、ザビ家の統括する派閥全体を指している。

 

 現時点でジオンが党首を務めるジオン党は、大きく二つの派閥が鎬を削っていた。

 

 一つは党首自らが率いるジオン(ダイクン)派。

 

 これらについては、比較的急進的なエレズムとコントリズムの早期実践を標榜していて、最右翼の派閥も内包しており連邦との対決も辞さず、テロリズムを許容すると息巻いている。ジンバ・ラルもそのうちの一人だ。

 

 もう一つはザビ家率いるザビ派。

 

 これらは急進的な実践を良しとせず、連邦とも付き合いつつエレズムとコントリズムをまず他のコロニーに広げ、その後地球に住う人たちへ、という考えを標榜している。もちろん、連邦との——現時点で——対決には消極的だ。

 

 必然的に、ザビ派は連邦とは融和姿勢を保っているし、連邦は取り込みたいがために付き合いが増える。

 それをもって身中の虫と言い切るのは容易いが、ジオン派の理念を早期に実践すれば、確実に連邦は軍事的なアプローチをムンゾに仕掛けてくることが目に見えていた。

 

「ジンバ殿、横から嘴を入れるのは無粋と承知していますが、少しよろしいでしょうか?」

 

 俺が言うと、ジンバはキッ、と睨みつけてくる。

 

「私は軍人として、政治の世界に首を突っ込まない。突っ込んでいけない事を理解しています。ですが、ジンバ殿が仰る身中の虫と言うのが、我々ザビ家を指すのであれば、異を唱えさせていただきます」

 

 一呼吸入れてジオンの顔を見ると、続けるように促されたような気がして、俺は再び口を開いた。

 

「まず、ジオン党は一つの目的を持った同志たちの集まりであることは、ジンバ殿も承知の上でありましょう」

「……もったいぶらんでも良いわい。それが政党というもの! だから何だと言うんじゃ!」

 

「で、あるならば……身中の虫と言うのはジンバ殿。あなた方のような急進的な方達こそ、ジオン党にとっての身中の虫と言えるでしょう」

 

 なんじゃとっ⁉︎——と声を荒げようとしたジンバを手で制したのはジオンだった。

 

「まぁ待ちたまえよ。議論というのはまず相手の言い分を聞いてから始まる。反論はそれからでも遅くはない。で? ロラン君、ジンバのいる派閥を身中の虫と言うからには、その意味はわかっているのだろうな?」

 

 そのとおり、ジンバを身中の虫と言い切ってしまえば、面前にあるジオンも間接的いや、直接的に罵倒したのと同義。

 このままジオンとジンバを納得させられなければ、これまで築いてきた信頼も水泡に帰してしまう恐れもある。それはまずい。

 

「はい、いいえ閣下。私が言いたいのは、あくまで硬直なまでにも連邦との早期開戦、テロリズムに走ろうとする者たちこそが、ジオン党の存立を脅かすと言いたいのです」

 

「仕方なかろう! 連邦が我が共和国に加えつつある経済制裁的懲罰を、ムンゾの市民は怒っておる! ゆくゆく人は飢え、赤子はミルクを啜ることもできず! 経済力のない者から死んでいくのだ! その受け皿になろうと言うのだ我々は!」

 

 矍鑠としたジンバの言葉も尤もだ。

 今回アステロイドベルトに向かった探査船の船員の内でも、元々別の職業に就いていて、職を失い食いつめた者も少なくない。

 

「ご私見は尤もです。私とて、ジオン党の理念……エレズムとコントリズムの実現を夢見る一人であります。ですが、テロリズムに走るのはあまりにも近視眼的です」

 

 そう、テロリズムに走るのは近視眼的すぎる。

 テロリズムといった行動に逸ってしまっては、得られる市民の支持さえも失いかねない。

 

 たとえ腐っていても連邦という組織は巨大で、戦争になればムンゾは敵地に飛び込んで戦う事を余儀なくされる。

 

 テロリズムにどんな大義があっても、他のスペースノイドからの支持を得られなければ意味がない。

 

 

「食糧危機については、一朝一夕でどうにかなるものではない。それについてはどうだ?」

 

 ジオンからも疑念の声が上がる。その問題は、共和国首相としても喫緊の課題だからだろう。

 

「今の連邦は、地球に住む者たちのことしか考えていない! その証拠が経済制裁と食料品の簒奪じゃ!」

 

「えぇ、仰る通りだと思います。ですが、まだ危機的な状況とまでは言えない。そうじゃありませんか?」

「何が言いたい! 危機的な状況ではないからと言って、すでに食糧危機は訪れている。経済力のない者たちには、飢えて死ねと言いたいのか⁉︎」

 

 ジンバは語気鋭く俺に食ってかかり、感情をあらわにした。

 

「そうは申していません。では聞きますが、政治家(あなた方)はそれらを解決するべくどうしていましたか? まさか、アジテーションにかかりきりになり、食糧危機について何の手立ても打っていないなんてことはないでしょうね?」

 

 物凄い剣幕だったジンバは、突如豆鉄砲を喰らったかのような表情を浮かべた。

 

「……そんなことは……!」

「ジンバ、良い。それは私の不徳の致すところだよ、ロラン君。つまり君は……ザビ派と和解しろと言いたいのかね?」

 

 さすがジオンは話が早かった。

 

「その通りです。ジオン党は一つの目的を持った同志の集まり。ムンゾの困難の前に仲間割れをしていては余計に連邦をつけ上がらせるだけでしょう」

 

 当然2人に俺の考えを押し付けるつもりはない。

 だが、ムンゾが困窮し過激なスペースノイド優性論に至った原因の一つに、政治的な混乱があるとするならばそれを少しでも緩和する必要があると感じていた。

 

「完全に和解するのは難しいでしょう。ですが、今回の国難の前に、互いの足を引っ張り続ける事は、ただ連邦を利するだけです」

 

「……うむ、君の考えはわかった。どうだジンバ、一時的にでも矛先を下ろす事はできないだろうか? 元々我々は同志として集まったのだ。思想の実践時期を巡って対立するより、やる事がある。ロラン君の言う通りじゃないか」

「……ワシからは何とも。首相閣下の言葉であれば、聞き分けの良くない者も聞きましょう。……ですが、ザビ家がどう出るかによりますが」

 

 ジンバが疑念に思うのも無理はないだろう。

 和解は一方の思惑で決まるものではない。双方の合意があって初めて達成できる。

 

「……それに関しては、ロラン君。君が責任を持てるのだね?」

「はい。兄上には、すでに……」

 

 そう、もう兄上(デギン)からは了承してもらっている。兄上が言えば、ザビ派最右翼筆頭のギレンも否とは言うまい。

 

 ふぅ、とジンバが溜息を吐いた。それは安堵からか、それとも別の物からかはわからないが、どこか呆れたような表情を浮かべていた。

 

「ふん。小生意気な若造かと思えば、全て貴様の思惑通りという訳か? 良いか忘れるな! 貴様の掌の上で転がされたのではない! ダイクン首相のためだと言う事を忘れるな!」

 

 どこかで聞いたことのある台詞を言いながら、ジンバは怒ったように席を立ち、そのままクラブ・エデンを出て行ってしまった。

 けれども、どうにか今日の目標は達成したと言える。

 

 政治的混乱を1日でも早く終息させ、限りあるムンゾの国力を食糧危機に向けさせる必要があったからだ。

 少なくともこの危機を乗り越えるまでの間、ジンバのいる急進派はジオンの顔を立てて大人しくしてくれる事だろう。

 

 その立役者——この会合をセッティングしてくれた本人に、俺は素直に頭を下げた。

 

「……閣下、ありがとうございました」

「いや、それを言うのは私の方だとも。私も今の事態を招いた張本人と言えるのだから……しかし、これで解決というわけではないぞ。それともロラン君、何か考えが?」

 

「……はい、実は……もう兄上が動いています。その発表は、おそらくザビ家としてではなく、政府からの発表の方がいいと思いまして」

 

 俺の言葉に今度こそ、ジオンは驚きの表情を浮かべた。

 

「……まさか……うぅむ……」

 

 ジオンは察したのか、言葉少なに呻くような声を出した。

 

「そのために、布石を打ってあります。優秀なオペレーターと新型の作業機械で、通常よりも早くその準備は整うでしょう」

 


 

MNNムンゾネットワークニュース

 ムンゾネットワークニュースからムンゾ共和国政府の発表をお知らせします!

 

 ムンゾ自治共和国政府首班、ジオン・ズム・ダイクン首相とジオン党幹事長デギン・ソド・ザビ氏は、昨今世間を賑わせつつある食糧危機に対して、政府一丸となって対策にあたる事を発表しました!

 

 1年以内に、食糧危機を回避するべく完全密閉型の食料プラントコロニーを建設し、事態に対処する模様です。

 

 今回の決定には、ジオン党重鎮のジンバ・ラル氏も賛同しており、本来建設に数年掛かる密閉型コロニーを数ヶ月以内に完成させると意気込んでいます!

 スペースノイドの優秀性はアースノイドの圧迫に屈する事はなく、輝き続ける事でしょう!




読んでいただきありがとうございました

ジオン派とザビ派の政治的対立は、一応の終息を見せましたが、あくまでこれは食糧危機という困難に立ち向かう上での一時的な共闘となります。しかも、それを主導したジオンはすでに高齢とも言っていい年齢で、その共闘はあくまでも不安定な、薄氷の上のものです。

ジオン・ダイクンは優れた思想家ではあったのでしょうが、優れた政治家ではありませんでした。思想の実践という目的の前では、政治家間の闘争については目もくれなかったのです。その結果がジオン派とザビ派の対立であり、ムンゾが困窮した一因となったのです。

主人公の取りなしもあり、ザビ家とジオン派はどうなって行くのかご注目ください

なお日曜日の投稿は、短い、本編とは関係がない(?)怪文書を投稿する予定です。
誤字報告助かります!
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