続きです。
それでは、どうぞ、
「で、知らないうちに故郷が滅ぼされちゃったから、暫くウチに置いて欲しいと。いやいいけどさ、何十年か振りに会って感動の再会的なのを日々想像してたのに、あんな登場はなくない?屋根突き破ってから土下座は斬新過ぎだって」
「てへぺろ」
「何それ!?」
故郷がぶっ壊れてから数日。とりあえず長い長い日本一周が終わり、次なる目的地も無くなったので、僕は第二の故郷とも言える『諏訪之国』へと赴いた。
道中は「諏訪子なら寛大な心で許可してくれるか」とたかを括ってたんだけど、途中から諏訪子の寛大さはどこまで大きいんだろうかと気になってしまい…。
とりあえずなんでもいいから懇願の意を含めた衝撃的な出会い方はなんだろうかと考えた結果が今諏訪子が言った通りの行動である。
反省も後悔もしていない。
「いや流石に反省はしろ???さっきの音で
「翡翠?え、赤ちゃんできたの?」
「私のじゃねえよ???いや縁が拾ってきた子だよ。二年前に」
「へー。そういえば縁は?」
「今中庭。鈴八から貰った刀で鍛錬してるよ」
「ふーん。…ちょっと行ってみよっかな」
「…あの、中庭壊さないでね?マジで」
あ、ちょっとやる気になっちゃったのバレちゃったかも。
でも、仕方がないじゃん?
こんな“滾るような闘気”、やる気にならない方がおかしいって。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
中庭中庭〜っと…この扉だっけ?
記憶の通りに中庭を目指して、目の前の戸に手をかける。
そして静かに引くと、目の前に映る立派な桜が鎮座する中庭。
そして…刀を構え、その身に宿る闘気を燃やしながら、瞑想する年老いた縁の姿があった。
蒸気の様に燃え盛る様はまるで業火の如く、荒々しい。しかし、その中に隠された洗練さが見え、それを見て分かる通り僕が見てきた中で一番の‘強者“であることがわかる。
…振るね。
数瞬前を察知した僕の予想通り、縁は瞑想した状態から刀を一振りした。
日輪を描く様に振るわれた刀は、一寸のブレもなく初動から終わりまでをゆったりと、空を裂いた。
張り詰めた息を吐き、闘気と共に刀を鞘に収めると、縁は目を開いてこちらを振り向いた。
そして一瞬目を見開くと、昔と変わったしわくちゃな顔を破顔させて笑う。
「お久しぶりでございます」
「うん。久しぶり」
「お元気で在らせられましたか?」
「生憎妖怪は風邪なんか引かないさ」
「羨ましい限りです。私は風邪を引くと辛く辛く…」
「人間だからね。仕方ないさ」
「そうですね。しかし、人間だからと甘えてばかりじゃありませんよ」
「分かるさ。君は強くなった」
「えぇ、私は強くなりました。人を斬り、岩を斬り、都を斬り、山を斬り、妖怪を斬った。そして、これから」
そう言って、縁は鞘から小太刀を引き抜き、構える。
同時に、先ほどまでとは桁違いの闘気が吹き荒れる。今度は技術のへったくれもないただの力任せな闘気だ。
「『貴方を斬って見せます』」
「やってみろ…ッッ!!!」
とはいえ、僕の拳に人間は耐えられない。これはどれだけ手加減しようと絶対だ。
だから僕も、刀を使う。
葉っぱの変化を解き、刀に戻す。
彼女の覚悟に応えよう、【紅黒】。
「では…ッッ!!!」
彼女が駆け出すと同時に、僕も縁側から飛び出す。
甲高い金属音と共に僕の手にずっしりと乗ってくる一撃。
そこから始まる二撃目三撃目と繰り出される攻撃を僕は捌き続けて対応する。
段々と早くなるそれを延々と捌き続ける。それだけじゃない、早くなるにつれ重くなってきている。これは闘気…じゃない、霊力だ。
いつの間にこんな力を身につけたのだろうか。余程の才能がなければ、感知すら不可能な程だというのに。
「考え事をする余裕がお有りですかッ!」
「っ!」
なんだ?今の。攻撃が同時に来た?
考え事に集中しすぎてよく見てなかった、なんだったんだ今のは。
「ッシ!!!」
「っ、なるほど!」
斬撃を増やしている…違う、同時の二連撃!寸分の時間の狂いもない、全く同時に降りかかる一撃なのか!
なるほど、本当に強くなった。人間の身でよくこれだけの絶技を身につけた。
でも、僕はそれの更に上を行こう。
「___シッ!」
「ぐっぅ…!?」
神速の“五連撃”。
縁と全く同じ速度で刀を振っただけだが、縁には同時に5回の攻撃が来たと思ったはずだ。
しかしまだ、
「まだ上はある」
「___ぁっ!」
少し速度を速くしての“八連撃”。
八回分の斬撃を受け止めた縁は、その衝撃を受け止めきれずに小太刀を弾き飛ばされた。
刀を弾き飛ばされたままの体制で無防備になる縁の懐に入り込み、その首に刀を添えようと、刀を振ろうと瞬間___。
縁の黒い目が、仄かに緑に輝いた。
「___『無刀』」
「っ!?」
キンッ___と、ある筈のない縁の刀と僕の刀が衝突した。
即座に追撃しても“見えない刀‘に阻まれ、僕の攻撃が捌かれる。
なんだ、縁に何が起きた?
「…これが、”神力“…いや、まだ至ってないですね」
神力…いや、違う。それにしては力が”薄い“。
その様な力、今まで見たことがない。
諏訪子に聞けば何か………いや、今はやめよう。
今は…縁の相手をしてあげないとね。
「…申し訳ありません、鈴八様。この力は相当消耗が激しい様で…次の一手で終わらせましょう」
「…分かった」
尻尾を一本顕現させて返事を返す。
縁はその力を操り、力を込める。その姿勢は居合に近い。
「『無刀流』」
なら僕もだ。
「『稲荷流』」
百鬼だけじゃなく、手加減用や人間の悪人相手に原型を保って斬る用に開発した、僕だけの流派にして型。
今回使うのは後者の方だ。
構えた僕に対して、縁は無音の踏み込みと共に今までで一番速く…神速に近い速度で迫ってくる。
「『無間』」
まさに僕との間が最初から無い様な、凄まじいまでの距離の詰め方だ。
しかし、それは“僕以外から見た視点”だ。
縁が近づいて抜刀した瞬間、僕も技を繰り出す。
「『梶原斬り』」
鞘から抜いた刃をブレさせず、速度を落とさず、ただひたすら相手をまっすぐに斬る。ただそれだけの技。
その技を以て繰り出された刀身は、僕の首元まで迫ってきていた見えない刀身を容易く“斬り”捨てた。
そして、縁の首に刀を添える。
「…参りました」
「…縁」
約束を果たしてくれた様で何よりだ。
「『強くなったね』」
「…全て、鈴八様の所為でございます」
伏せた目から涙を静かにこぼしながら、縁はそう言った。
Q.鈴八くんの【稲荷流】はいつ出来たの?
A.人里を巡って人の悩みを解決して回っていたりしていた時期に、誤って辻斬りを捕まえようとしたら拳で粉々にしてしまったため、殺してしまってもせめて原型が残るようにと開発された。型は五つあり、一刀両断の梶原斬りから始まって相手をサイコロステーキ(分子レベル)にする光明千切りという技まである。
Q.鈴八くんの最大連撃数は?
A.24