東方黒狐録   作:よるくろ

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 今回は戦闘シーンあります。

 結構わかりにくいところもあると思いますが、どうかご容赦を、

 では、ご覧あれ…


【ち】 異変

「八意様!急患です!妖力の過敏反応あり!」

「八意様!妖力の過敏反応が都市の三分の一全体に行き渡っています!現在原因を調査中です!」

「八意様!」

 

「これは…一体どういうことなの…!?」

 

 

 昨夜から続く、都市全体に広がる急性妖力過敏反応の患者が、都市の端にあるはずの永琳の診療所までに流れ来る事態に、永琳は忙しなく働きながら唖然としていた。

 

 原因は謎。発生源も謎。措置として狩り人の壁外の出入りを禁じたが、それでも収まることを知らずに患者は増えていく。治しても治しても次から次へとてんてこまいにやって来る患者の波に、次々と都市内の診療所は機能しなくなってきていた。

 

 

「8番から12番を余すことなく使って!調合は一回も失敗したらダメよ!一回の失敗につき一人死ぬと思いなさい!」

 

「「「ハイッッ!!!」」」

 

 

 少なからず居た永琳の診療所の助手達が、忙しなく手を動かし、薬を調合する。それを見届けた永琳は、次の調合へと手を伸ばしたのだった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 これは…ヤバいね。どんどん妖力に汚染されていってる人間が増えてる。

 

 僕は壁の上に『黒金狐』の姿で座りながら、冷や汗を垂らして“空気に溶けている妖力“を眺める。その範囲は都市付近を丸々包む位で、当然僕よりも妖力の量は多い。

 

 この妖力は人間にしか作用しないようで、妖怪である僕には何の影響もない。ただちょっと息苦しくはあるけど。

 

 それに…都市に一番近い山の頂上にいる存在から溢れ出る、あの妖力。底が知れないし、高みが見えない。まるで海、まるで空。どうして何をすればそんなに強くなるのかが知りたい。

 

 とりあえず、これ以上ここにいると都市の人間に見つかってしまう。見つからない内に僕は退散しようと、壁の外の方に身体を向けて…

 

 

「『よぅっ!』」

 

 

 吹き飛ばされた。壁の内側に。

 

 都市の中にある高層の建物を三件位突き破って、四件目にめり込むことでようやく止まった身体。腹部にはくっきりと拳の跡が残っていて、相当強い力で殴られたらしい。

 

 あれは何だ、いつのまにとかそんな事を言っている場合じゃ無い。早く体勢を立て直さないと___

 

 

「『また会ったな狐!』」

 

 

 また衝撃。今度は咄嗟に妖力で身体を包んだから衝撃は少なかったが、それでも都市を横断して吹き飛ばされる。

 

 っく、迎撃するにもこの姿じゃ戦いにくい!早く戻らないと!

 

 

「『遅えなお前、堕ちろ』」

 

「かふっ___!?」

 

 

 今度は見えた!でも掠って落とされた…!

 

 大きな轟音を立てて僕の身体は都市外の地面に叩き落とされて、大きな土煙を巻き上げた。クレーターの中で変化を終えて立ち上がる僕と、僕を一方的に叩きのめした謎の妖怪が土煙から姿を見せ合わせる。

 

 …練度が僕の比じゃない。相手の妖力もそうだけど、立っているだけなのに隙がない。これは僕のような鍛えた強さじゃなくて…実践の中で鍛えられた、殺し合いに慣れた強さだ…!

 

 それに姿も、赤い肌に大きな角。唯一青い、後ろで纏められた髪がその妖怪から滲み出てる妖力で揺れている。

 

 …永琳から聞いたことがある。都市以外の人里が壊滅した原因、百鬼夜行。数多の妖怪を束ね、その強さで頂点に立つ、妖怪最強の…

 

 

「【鬼】…!」

 

「『おぉ、俺の事を知っているのか。そりゃ自己紹介が省ける。そうさ、俺が鬼の百鬼、百鬼夜行の主とは俺のことよ!それよりも!』」

 

 

 と、鬼の百鬼は僕を指差して、

 

 

「『お前!俺の百鬼夜行に加われ!』」

 

「…え?」

 

 

 え?

 

 

「『今まで俺の五割の拳を受けて立っていた奴どころか、そんなにピンピンしている奴もいなかった!つまりお前は強い!俺の配下になれ!』」

 

「…断ると、言ったら?」

 

「『そりゃお前、当たり前な事だろ』」

 

 

 百鬼は鬼らしい、邪悪な笑いを浮かべて、

 

 

___殺す。

 

 

 僕は妖力を余す事なく身体全体に纏い、構える。相手はまだ動いていない、先手は打てる!

 

 一歩の踏み込みで鬼の前へ、そこからいつも以上の全力で拳を叩きつけるっ!

 

 

「『はっ、そんだけか、狐っ!』」

 

「ふぐっ…ぅ!?」

 

 

 そんな、僕の全力が通用しないなんて…いや、まだ僕には余力がある。まだ見せていない手札がある。

 

 

「『ふんっ!はっ!』」

 

 

 でも、相手の手数が多すぎて中々手札を切れない。全力で身体に纏わせているおかげで痛手を負ってないけど、そろそろ妖力が底を尽きそう。

 

 

「『オラオラ!守るだけか狐ェッッ!!』」

 

「くっ……はッッ!!!」

 

「『うぉおう!!?』」

 

 

 苦し紛れに放った拳が丁度顔面に入ったみたい。でもダメージは無さそうで、余計に煽っちゃったかもしれない。

 

 

「『クハハハハ!!!良いぞ!良いぞ狐ェ!人間の大虐殺の前にこんな戦いができて俺は満足しそうだァ!!』」

 

 

 は?今なんて…

 

 

「何を…」

 

「『俺は今日より、百鬼夜行を連れあの壁の中にいる人間を全て皆殺しにする!本当は今からの予定だったが、今はこの戦いが終わるまで!心置きなくやろうぜ!』」

 

 

 …。

 

 させるわけがないだろ。

 

 

「『おー?ようやく反撃の手数が多くなってきたな、だが効かんぞ!』」

 

 

 あそこには、僕の友達が、永琳がいるんだ。そんな事、させるわけがない。

 

 

「『どうしたどうしたァ!弱いぞお前ェ!』」

 

 

 でも、そろそろ妖力が底を尽く。拳に力が入らなくなってきた、足の踏み込みが弱くなってきている。僕の心が…折れかけている。

 

 

「『終わりだ!狐!』」

 

 

 僕の命を奪わんと、鬼が拳に膨大な妖力を纏わせる。その妖力は深く禍々しく、正に自分の存在を大きく表しているようだ。鬼にふさわしい、力強い力。

 

 対して僕は、大した実力を持たない半端者で、目の前の彼よりも妖力の使い方が下手。強者は彼で、弱者が僕。弱肉強食の理は深く成立していて、僕は彼に殺されるしかないのだろう。

 

 だけど…

 

 

「…い」

 

「『あん?』」

 

「負けられない…!」

 

 

 負けられない理由が…僕には、ある___!

 

 

『合格…いや、及第点じゃ、黒鉄鈴八』

 

 

 

 刹那。僕の妖力は、底から一気に満たされた。満たされても湧き上がる妖力は止まることは知らずに、僕の身体から溢れ出している。

 

 

「『お前…最っ高だなァ!この状況で、尻尾も増やして…どれだけ俺を喜ばせる狐ェ!』」

 

「…僕は、狐って名前じゃない。…」

 

 

 ___『黒金狐』黒鉄鈴八だ。

 

 

「『そうか、鈴八!俺は百鬼!百鬼夜行の主!』」

 

「…ここで、殺す!」

 

 

 両方の妖力が、極限にまで高まった瞬間(とき)、僕と百鬼は動き出した。

 

 両拳がぶつかり合い、遅れて妖力がぶつかり合い、それは、自分が操る妖力の動きを凌駕している事を証明していた。

 

 これじゃダメだ。妖力の使い方は、こうじゃない。もっと、早く、速く、疾く操作を、妖力と一体を。

 

 段々と激しさを増す中で、僕の妖力の操作性能は、著しく上昇し、彼の拳を少しずつ退けている。少しずつ、少しずつ…彼の拳が、少しずつ“砕け始める”。

 

 

「『っ!?』」

 

「まだ…まだだ…!」

 

 

 妖力の動きが、少し遅れた、少し早かった。その少しのズレを修正して、修正して…今この瞬間、ピッタリと、時計の針が十二時で合わさるような感覚を感じた。

 

 

「『くく…くあハハハハ!!!面白いぞ!だったら俺は“能力”を解禁だ!』」

 

 

 すると、砕け始める彼の拳は、“時が止まった“ように砕けなくなり、僕の拳とぶつかっても壊れなくなってきた。

 

 どういう能力なのだろうか。

 

 そう思っていると、彼が勝手に自分の能力のことを話し始めた。

 

 

「『俺の能力は、『固定』!空間から時間、更には己の肉体の損傷まで固定する強力な能力!突破法は…俺でも分からん!』」

 

 

 関係ない、どんなに硬くなっても、僕は殴って壊すだけだ…!





 次回は『修復』と『固定』の対決!

 勝利の雄叫びは、誰が挙げるのか!

 では、また次回…
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