スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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とうとう第100話まで来ました……数で言えば101話目ですけど。
ここまで突っ走ってこれたのも、読者の皆様に支えられてのことだと思います。
感想ももちろん全部読んで力にさせていただいてます。本当にありがとうございます!

物語も終盤ですので、残りわずかだと思いますが、頑張ります!

今回は長めな上、割と説明回な気がします。
第100話、どうぞ。




第100話 真実

 

 

Side.ミツル

 

 ……ええと、僕は……どうしたんだっけ?

 何か、体の感覚が……ふわふわしてて……記憶があいまいだな……。

 

 確か、そう……『闇の帝王』と戦ってたんだ。その戦いで、どんどん次元力を使えるようになって……若干調子に乗ってたような気も、する。

 何せ、出力がとんでもないだけじゃなく……知っている攻撃手段を、ことごとく再現できるもんだから。本当に、次元力って何でもありだな。

 

 戦いの中で、力を使えば使うほど……さらにどんどん力が増していく、体の奥からあふれ出てくるのを感じて……そして……

 

「……!」

 

 そして、意識が急激に浮上した僕は……自分が、得体のしれない空間にいることに気づいた。

 

 以前、アドヴェントと出会った時のような……不思議な宇宙空間のような景色だ。

 しかし、今回目の前にいたのは……アドヴェントではなかった。

 

「お前は……! ガーディムの指揮官……アールフォルツ……!?」

 

「それはすでに死んだ者の名だ。私自身は『アドミラル』と名乗っている……呼ぶのならそう呼んでくれたまえ……会えて嬉しく思うぞ、星川ミツル」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 気が付いたら謎の空間にいた僕は……そこにもう1人いた人物……本人が名乗ったところの『アドミラル』と相対したその瞬間……どういう仕組みかわからないが、色々なことを理解した。

 

 僕が意識を失っている間に起こった、『ガーディム第8艦隊』との戦いや、その後に現れた、『システム・ネバンリンナ』の出現。

 

 その後さらに姿を現した、この男……『アドミラル』が明かした真実。

 

 そして、アドミラルによって……僕やミレーネル、スターシャさんやアウラさん、エンブリヲやレナードといった『12の欠片』を使い、ヘリオースとプロディキウム、そしてなぜかソーラーストレーガーをも加えて行われた、『再臨』の儀式。

 

 そして……その結果として復活することとなった……『至高神Z』。

 

 ほとんど言葉も交わしていないにもかかわらず……まるで自分が実際にこの目で見たみたいに……頭の中に、すっとそれらの情報が入ってきた。

 

 そして、僕が理解したことを、アドミラルは同時に理解したようで……

 

「やはり『因子』の持ち主だけある……即座に状況を理解したようだな。説明の手間が省けて助かるというものだ」

 

「いやいや……まだまだ説明してほしいことならわんさかあるよ? ……お前、いったい何者?」

 

 今『理解した』情報だけでは……残念ながら全く情報が足りてない。

 

 どうやらこのアドミラルという男(アンドロイドだけど)は……ブラックノワールと似たような感じで……3つの世界に加え、『天の川銀河』を飛び出したその後すらも含めて……超文明ガーディムを裏から操っていた、システム・ネバンリンナ……の、さらに影に隠れる形で何やら暗躍していたようだ。

 

 そして、その目的は……たった今成し遂げた、『至高神の復活』。

 ネバンリンナとの会話の中で、ちょいちょいヒントになりそうなワードは出て来ていたものの……まだまだ全然足りない。単なるアンドロイドだったはずのこいつが、いかにしてあの『多元世界』の存在を知り……そして、『至高神』や『御使い』の存在に触れるに至ったのか。

 

 その復活を、己の『使命』と位置付けることになったのか。

 

「私が何者か……か。随分と含意の広い質問の仕方だな。察するに君は、私が何者かということよりも、私が『いかにして』『何者になり』……そして今回のこの事態にいたったのか……総合的に聞きたがっているように見える」

 

「……大体正解。頭悪くて申し訳ないね……今見えた情報だけじゃ、全然答えに結び付くには足りないんだよ……いくら『多元世界』の知識があってもね」

 

「無理もないことだろう。……そうだな、君には『儀式』に協力してもらった分の礼をしなければならないと思っていたところだ。私の知る情報で、おそらく君が理解していない点……知りたいであろう事柄について話すとしようか」

 

 ……協力、ね……人が寝てる間に勝手に生贄にするようなことをしておいて、よく言う……。

 というか、僕だけじゃなく、ミレーネルやミランダやココ……それに、アウラさんやスターシャさんまで取り込みやがって……。

 

 けど、だからってそれについて文句言っても、彼女達を助けることにつながるかと言われれば微妙だし……それに、僕がこうしてここで、この男と、きちんと自我をもって話してるってことは……他の面々も、取り込まれはしたものの、無事である可能性は高い。

 

 幸いにして、何やら色々と語ってくれるみたいだし……今はとりあえず、情報収集に集中させてもらおうか。

 

 今、自分が置かれている、異常どころじゃない状況を理解しつつも……その割に妙に冷静だな僕、なんて他人事のように思いながら……僕は、アドミラルの説明に耳を傾けた。

 

 アドミラルはどうやら、順序だてて話していくつもりのようだ。

 この『至高神Z』復活という目的が、いつ、どうやって、何のために立ち上がり……そしてそのために、彼がどこで何をしてきて……どのようにしてそれを成し遂げたのか。

 

 

 

 アドミラルはもともと、『システム・ネバンリンナ』によってつくられた、アールフォルツのオリジナルを元にして作られた、アンドロイドのうちの1体だった。

 

 彼は『ガーディム第8艦隊(を、ネバンリンナが作り直したレプリカ)の司令官』として、超文明ガーディム再建のために、様々な勢力を観察し、技術サンプルを手に入れ、実証実験を繰り返し……データを集めていた。

 同じようにして作られた他のアンドロイド……グーリーやジェイミーに指示を出し、率いて。

 

 しかしそんな中、ある任務の途中で……アドミラルは、『多元世界』から流れ着いたのであろう、残骸から再生したと思しき『プロディキウム』を発見し、それに触れた。

 

 その瞬間、単なるAIに過ぎなかったはずのアドミラルは、突然変異を起こし……ネバンリンナによって設定、ないし再現された以上の、確固たる『自我』を獲得した。

 

 それと同時に……この『プロディキウム』を通して、『多元世界』で起こった様々な出来事や……1億2千万年の円環の中で起こった、『高次元生命体』の戦いの歴史。

 そして……その世界全ての頂点に君臨していた、『至高神』と『御使い』の存在についても。

 

 アドミラルは、『プロディキウム』の中に残っていた『御使い』の因子の1つ……『怒り』の因子をその身の内に取り込むことで変質し、次元力を操る資格を得た。

 それによってネバンリンナの管理下から脱却し、独自に行動を開始した。

 

 因子を取り込むと同時に目覚めた、『至高神復活』という、自らの使命を果たすために。

 

 ネバンリンナの操るガーディムとは別に、独自に兵力を動かし……情報を集めるとともに、あちこちに種をまき、『再臨』に向けた準備を進めていた。

 

 かつて存在した『至高神ソル』は……その身が死を迎えた際、その残骸は大きく5つの要素……『核』『抜け殻』『心の欠片』『記憶の欠片』『残り火』に分かれ、数多の次元世界。ないし並行世界に散らばった。

 それらのうち、至高神の『再誕』のために必要なものは、『核』『抜け殻』『心の欠片』『残り火』の4つ。『記憶の欠片』は、あればそれに越したことはないが……なくても問題はない。

 

 現に、『多元世界』で行われた最終決戦では……アドヴェントは、それらを集めて、『至高神Z』を誕生させた。

 

 『核』……これは、もともとソルの核から作られた存在である存在、神器『ヘリオース』。

 

 『残り火』……これは、御使いの本拠地である惑星エス・テランに存在する……『黒い太陽』。

 

 『抜け殻』……これもまた、ソルの抜け殻から作られた神器『プロディキウム』。

 

 そして最後に『心の欠片』……これは、12に分かれて砕け散った、ソルの心の結晶『スフィア』を指して言うもの。

 機動兵器に組み込むことで、使用者……『スフィア・リアクター』の意思に応えて無限の次元力を生み出し、限定的ながら事象制御すら可能にする、まさしく次元の秘宝だ。

 

 しかし、この『スフィア』12個のうち、4個を当時の主人公部隊が所有しており、それを奪い返すことができなかった。

 そのためアドヴェントは、その代用として、永遠の存在である4人……ドクトリン、テンプティ、サクリファイ、そしてアサキムを生贄にした。自分の仲間だったはずの『御使い』3人を含む、4人の超越存在を。

 

 それによってアドヴェントは、『至高神Z』を作り出したわけだが……今回、アドミラルはこれに倣う形で『至高神の復活』をなすことを考えた。

 

 以前、スターシャさんが行っていた通り……すでに、その時使った『至高神の材料』となる要素は……その大半がすでに失われてしまい、手に入らない。

 故に、『代用』することになったのだ。この3つの世界でも手に入るもので。

 

 『ヘリオース』と『プロディキウム』はいい。片方はすでに手元にあるし、もう片方も、既に見つけている。

 アドミラルが発見した当初は、まだ僕がその力を使いこなせず、『アスクレプス』のままだったが、成長を待てばいずれば『ヘリオース』に至るだろうと見ていた。

 

 『残り火』についても、既にあてはついていたらしい。なぜか説明は後回しにされたが。

 

 一番の問題になっていたのは……『心の欠片』。すなわち、12のスフィアである。

 既にこの世界に――というか、どの並行世界をどのように探そうとも――12の欠片がそろうことは、もう、ない。至高神Zに取り込まれた8つは、その消滅と共に永遠に失われた。

 

 ゆえにアドミラルは、かつてアドヴェントがそうしたように、それに値する力、あるいは因子を持つ者を『生贄』にすることで、その代用とするやり方を採用した。

 そしてそのために、『生贄』となる人物ないし存在を探し始め、あるいは『育て』始めた。

 

 まず例を示せば……先ほど言った通り、アドミラル自身は『怒りのドクトリン』の因子を持っていた。

 

 この『因子』というのは、あくまでも御使いの力の残照のようなもので……次元力を操る存在として覚醒するきっかけになったり、存在そのものの力を大幅に増すことにはなるものの……御使いそのものではなく、意識なんかもとくには存在しない。

 ゆえに、それによって人格を乗っ取られるようなことはない。……多少なり影響を受けるケース程度なら、なくもないらしいが。

 

 自分すらも生贄の1人として数えたアドミラルは、長い時間をかけて、残り11人を見つけた。

 

 まず、僕。

 そうじゃないかとは思っていたけど……僕は、『喜びのアドヴェント』の因子を持っていた。

 

 次に……ココとミランダ。

 この2人は、『楽しみのテンプティ』の因子を持っていた。

 

 2人が同時に1人の因子を持っているのか、という疑問があるかもしれないが……あらゆる点で膨大な力を持つ『御使い』という存在からすれば、特に不自然なことではないらしい。

 特にテンプティは、健在だったころから、4人の中でも、複数の存在に自分の意識や因子を宿らせることが一番得意だった。複数の『エル・ミレニウム』に意識を宿して強化し、戦わせるとかのやり方も使ってたし。

 

 そもそも、テンプティの因子を持つ存在は、この2人だけですらなく……この2人を起点に、アルゼナルにいた多くの者達がそれを持っていたそうだ。まるで、感染するかのように。

 中でも『生贄』足りうるほどに因子が強かったのは、この2人くらいだったらしいが。

 

 そして、実はこのテンプティの因子を持っていたことこそが、ココや年少部の子供達が、一度死んだはずなのに、その後『完全に』生き返ることができた理由だったりする。

 

 人間にとって死は不可逆だ。一度死んだ後生き返るなんてことは、普通はできない。

 仮にエンブリヲがそうしたとしても、その命は不完全。エンブリヲが『生きているように見せる』ことをやめたり、あるいは何かのきっかけがあれば、また死んでしまう程度のものだったはず。

 

 しかし、死を超越した存在である『御使い』の因子を持っていたからこそ、不完全ながらもその力を使うことになり……彼女達は、『完全に復活する』ことになったのだった。

 生き返らせた張本人である、エンブリヲ自身の制御や支配すら振り切って。

 

 そして、ミレーネル。

 彼女は、『悲しみのサクリファイ』の因子を持っていた。

 

 しかし、サクリファイの因子は、何らかの形でその力を示すことはほとんどなかったため……彼女は、自分が因子の保有者であることや、その力の片鱗を自覚することすらなかった。

 

 健在だったころのサクリファイ自身、いくつかの例外を除いて、積極的に他者に対して干渉するようなことはなかったからな……。

 その分、というべきか……やるとなった時には、地味にやばい形での干渉はいくつかあったが。烙印とか、時の牢獄とか。あと、勝手なことをした部下の粛清もかな。

 

 そのサクリファイの因子が力を発揮したのは……確認できる限り、たったの2回。

 

 1回目は、ミレーネルが……それも、まだガミラスの軍人であり、『地球艦隊・天駆』の敵だった頃の彼女が、ヤマトの拿捕作戦に失敗した時。

 

 精神体の状態で空間の狭間に飲み込まれた彼女は、そのまま次元流の中を流されていくうちに、耐え切れず消滅するはずだった。しかし、サクリファイの因子が宿っていたからこそ、精神体のみの存在であるにもかかわらず、長い期間の漂流を耐えきることができたのだ。

 その空間からはじき出されて、2年前の西暦世界にたどり着き……僕と出会うまで。

 

 そしてもう1つは……惑星フェルディナで、カリーニン少佐と決着をつけた宗介が、惑星の脱出に間に合わない……と、思われたあの時。

 

 もう、宗介は助からない……そんな風に考えてしまった、かなめちゃんやテッサ艦長の『悲しみ』に呼応する形で、半ば偶発的に力を発揮し……局所的な次元震を起こした。

 それによって、宗介の進行方向上にあった障害物が一掃され……彼は脱出に成功したのだ。

 

 アドミラルが見つけることができた因子保有者は、この4人のみ。

 ゆえにアドミラルは、残る7つの生贄は、因子によらない力で用意する必要があった。

 

 個として超越的な力を持つ、闇の帝王(冥府神ハーデス)、ブラックノワール、エンブリヲ、龍の始祖アウラ。

 

 ウィスパードとしての特異な力を持ち、時空融合を発動させたことにより、ある種の特異点的な存在となったレナード。

 

 イスカンダルの後継者として、『エレメント』による時空を超えた波動をその身に宿す、星の象徴……イスカンダルの女王・スターシャ。

 

 そして、それら全てに、観測・観察をはじめとした何らかの形で関わりを持ったことや、自我に目覚めたことをはじめとする数々のイレギュラーで、こちらも特異な存在となった……システム・ネバンリンナ。

 

 これらのうち、まだ要素として不足ないし不安があったものに対しては、アドミラルは、気づかれないように陰から力を貸す形で成長を促した。

 

 エンブリヲやブラックノワールに次元力を貸し与えたり、ほんの僅かにドクトリンの因子の欠片を植え付けて特異な存在としての位階を底上げしたり。

 彼らやその下僕が使っていた次元力が、どこかとってつけたような形だったり、その自覚がなかったこと。また、エンブリヲの性格が急に粗暴な方向に変わったりしたのは、この影響だった。

 

 ネバンリンナに対しても、彼女自身は気づいていなかったが、因子保有者であるアドミラルとの繋がりがあったことで、その力が引き上げられていた。

 

 また、レナードと闇の帝王に関しては、並行世界の同一人物があの『多元世界』にも存在したことにより、ある程度の『御使い』とのつながりがあり、その影響も受けていたそうだ。……生贄として有用、という点で。

 

 そうしてようやく『12の欠片』……の、代用品を揃えることに成功したアドミラルは、満を持してその姿を現し……そろった全ての材料を使って、儀式を実行。

 

 その結果、『至高神Z』が復活した……それが、ここに至るまでの全てだ。

 

 

 

「代用品を使ったことによる影響は小さくない。おそらく今の『至高神Z』の力は、全盛期のそれには及ばないだろう……だが、至高神としての存在そのものが、その力を引き上げる。長い時間をかけ、やがては全盛期の力を取り戻す。もっとも……今の力でも、その権能そのものにはほとんど変わりはないため、この宇宙を支配すること程度は問題なく行えるだろうがね」

 

「それを使って、大マゼラン銀河だけでなく……全宇宙を支配する、ってわけか。……因子を手にして変質しても、その独善と傲慢は変わってないみたいだな」

 

「支配ではない、『管理』だよ。むしろ……私という、ガーディムの残照がこの因子に触れ、新たなる至高神の使徒としての役割を与えられたことは……ありふれた物言いだが、運命とすら言える」

 

 僕が半ば挑発するような形で言ったことに対しても、全く心を動かされた様子はなく、そう返すアドミラル。

 

「我々『超文明ガーディム』にとって、規模こそ異なれど、社会そのものを管理するということは最も得意とする分野だ。この点において我々は、かつての『御使い』をも凌駕する形で、全宇宙、全並行世界を完璧に管理し、等しく平和で不安のない、豊かな生活を与えられるだろう」

 

「その割には……過去のあんた達は失敗したらしいじゃない。ネバンリンナ曰く、ガーディム崩壊の直接の原因は、内乱による瓦解だったんだろ? 窮屈すぎる社会管理に嫌気がさして民衆の不満が爆発しちゃったって、自分で言ってたよ」

 

「それについては認めよう。だが、その過去の過ちから学ぶこともまた、社会をより完璧な形にするための有用なプロセスだ。私は過去と同じ過ちを繰り返しはしないさ」

 

 アドミラルがぱちん、と指を鳴らすと、何もない空間に、ホログラムのモニターのようなものがいくつも現れ……ここではないどこかの映像を映し出していた。

 

 それらは、見たことがある場所から、全く見覚えのない場所まであり……中には、西暦世界の地球の『ミスルギ皇国』や、宇宙世紀世界のスペースコロニー群、新西暦世界の避難民用アーコロジーもあった。

 

 そして、僕の見間違いでなければ……その3つの世界のいずれとも違う……『多元世界』の景色もその中には含まれていた。

 神聖ブリタニア帝国・帝都ペンドラゴン、暗黒大陸のカミナシティ、マクロス・フロンティアの移民船団、アクエリア市、アルテアの鋼の大地、翠の地球の海とガルガンティア船団……そして、新地球皇国(ガイアエンパイア)の帝都ラース・バビロン……

 

「『プロディキウム』に残されていた断片的なそれだけでも、様々な都市環境における膨大な種類の統治機構と、その成功と失敗のデータがある。与えられることに慣れて堕落した民……母星と袂を分かった宇宙移民達……滅びかけた地球で懸命に生きる者達……圧政と差別政策を行った帝国……1人の象徴に対する衆愚の憧れと手のひら返し……新天地を目指して旅する者達の統率ノウハウ……革新的な技術が仇となり、結果として置き去りにした文明を羨望することとなった失敗……遅れた技術水準しかないがゆえにこそもたらされる平穏……これらを分析し、トライアンドエラーを繰り返せば……やがては超文明ガーディムの統治政策は、より完璧なものとなるだろう」

 

「その途中でまた頓挫しなきゃいいけどね。内乱とか、暗殺とか」

 

「仮に何か不測の事態が起こって私が倒れても、アンドロイドである私にとって、体など入れ物に過ぎない。すぐに全ての経験を受け継いだ新しい私が作り出され、実験を繰り返すだけだ……必要に応じて制裁や粛清を伴ってね。何も問題などないさ。何せ私のバックアップの保管場所は、ほかならぬこの『至高神Z』そのもの……何者も侵さざる絶対存在なのだから」

 

 そこまで言うと、『さて……』と、アドミラルは続けて切り出す。

 

「思いのほか長く話してしまったな。そろそろ時間だ、失礼させてもらうよ。私はこれから、外にいる者達の相手と……その他にも、やらなければならないことがある。……君とこうして話すのも……これが最初で最後になるだろうな」

 

「どういう意味だ?」

 

「君は至高神再誕の生贄として吸収された。ほどなくしてその意識は永遠に失われ、完全に至高神Zの一部となるだろう……既にほかの者達の吸収も始まっている」

 

 ……つまり、ミレーネル達もいずれは……『至高神Z』に食われて消滅するってことか……! まずい、何とかして助けないと……いやでも、このよくわからない空間で一体僕に何ができる……? 目の前にいるこいつをにらみつけたり、罵倒する以外で……。

 次元力も……少し前まではあんなに絶好調に使えていたはずなのに、今は全く、ほんのわずかにすらも使える感覚がないし……

 

 ここに至ってはさすがに、僕の表情は怒りにゆがんだと思うんだが……アドミラルはやはりというか、全く何の反応も示すことはなかった。

 

「結論から言おう。君にできることは何もないよ。もはや吸収された存在である君は、『本体』である至高神Zを押しのけて次元力に干渉することなどできはしない……諦めて最後の時を穏やかに過ごしたまえ。もともとかりそめの命、かりそめの人格として生み出されたのだ、もう十分だろう」

 

「僕がヘリオースに生み出された存在だってことを言ってるのか? 生憎と、僕自身からしたら、そんなこと関係ないんだよ……僕がどんな生まれだからってさ……僕は、今の僕が大事にしているもののために、絶対諦めないって……何が相手でも抗ってやるって決めてるもんでね……!」

 

 そう……スターシャさんに僕の正体を聞かされて……その後しばらく、色々な自問自答を繰り返して……とっくに答えは出したんだ。

 僕の正体がなんだろうが構わない。今の僕を……『星川ミツル』を大切にしてくれている皆のために……僕はこれからもぼくであり続けようって。つまりは……いつも通り、何も変わらなくていいじゃないか、って。

 

 そして、そんな皆のためにできることがあるなら、全力でやろうって……決めたんだ。

 

「………………」

 

 そう言い放った僕に、なぜかアドミラルは……何か言いたげな視線を向けてきた。

 しかし、何も言わないままにしばらく経ち……その果てにようやく一言、『なるほどな』と口を開いて言った。

 

「やはり、な……薄々そうではないかと思ってはいたが、私の予想は当たっていたか」

 

 ? 何を言ってるんだ? 予想が当たった、って……?

 

「ひょっとして……僕の正体に気づいていたわけじゃない? さっきの、カマかけたのか?」

 

 僕が、ヘリオースによって生み出された、ある種の『呪われし放浪者』という存在だってことを……こいつは、予想はしてたけど確信はしていなかったんだろうか、と思って、そう聞いた。

 

 しかしアドミラルは、『そうではない』と首を横に振り……

 

「星川ミツル……そして、お前にそのことを伝えた、イスカンダルの女王・スターシャもか……。お前という存在は、全うな人間ではなく……孤独を癒すためにヘリオースによって生み出された、オペレーターという名の欠けたパーツである――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――そのように『勘違い』をしているのではないか……と、予想していた通りだと言ったのだ」

 

 

 

 

 

 ……何だって?

 こいつ一体、何を言って……スターシャさんが告げた、その事実が……勘違い?

 

 真実は違うっていうのか? 僕が……アサキム・ドーウィンと『シュロウガ』の関係のような、ヘリオースによって『作られたパイロット』というわけじゃない……と?

 死ぬとヘリオースのコクピットで復活するっていう点からも、僕はてっきり、その想像が当たってるとばかり思ってたのに……

 

 そう言うと、アドミラルはため息をついて、

 

「呆れたものだ。今の話の中に、既に指摘すべき点があるというのに……それに気づかんとはな」

 

「え……?」

 

「そもそも、君は一体、どういったメカニズムで自分が『死んでも復活する』体を手にしていると思っていたのかね?」

 

「それは……僕が死ぬたびに、ヘリオースが新たに僕をコクピットの中に作り直して……」

 

「それだと矛盾が生じるだろう。君が覚えているうちの1回である自分の死……『火星の後継者』の拠点で、崩落する瓦礫の中で圧殺された時だ。あの時君が死んで、ヘリオースがそれを作り直したのであれば……君は、バースカルのドックにあったヘリオースの機内で復活したはずだ」

 

 ……何か今の言い方だと、まるで『僕が覚えていない死』があったみたいに聞こえるんだけど……それはともかく。

 

 言われてみればそうだ。あの時僕は、崩落に巻き込まれて死んで……しかし、そこにアスクレプスが次元を超えてやってきて……その中で復活した。

 その時はまだ、僕は次元力のコントロールが全然ダメで……次元を超えてアスクレプスを呼び出すようなことはできなかったはずなのに。

 

「じゃあ……僕自身が『リザレクション』を使って……自力で?」

 

「それも無理がある。当時、次元力の行使において、素人に毛が生えた程度がせいぜいだった君が、事象制御の到達点の1つと言っていい難易度の『リザレクション』を、しかも無意識で? そんなことをできるはずがないだろう。だが……その予想は偶然にも。半分ほど当たっている」

 

「半分……ってどういうこと?」

 

「アスクレプスではなく、君自身にもともと『復活』の理由、ないし能力が備わっているという点だ。あの時君は、アスクレプスがやってきてその中で復活したのではない。自力で復活し、同時にアスクレプスを呼び寄せたのだ」

 

「けど、僕は『リザレクション』を使えないんだろ? 未熟だから。今、自分でそう言ってたぞ」

 

「君は『リザレクション』を使って復活したわけではない。そもそも君という存在が、不死ないし不滅の理を宿していたがゆえに、当然の結果として蘇ったのだ」

 

 ……ますますわからなくなってきた。僕が、『もともと不死身』だったって……?

 

 少し前に何度も思い浮かんでいたフレーズが、また脳内に呼び起こされてるよ……『一体、僕は何者なんだ』? こいつは……アドミラルは、何を知ってる?

 僕自身や、スターシャさんも気づいていなかった……僕の『本当の正体』を……こいつは、本当に知ってるのか? というか、そんなものが本当にあるのか?

 

 ……本当本当言いすぎて、余計に分かんなくなってきた……さっさと答えが欲しい。

 

「結論を急ぐのは、論理的思考が得意ではない者の特徴だな……まったく、疑似的な自我とはいえ、人間のこのような不完全な部分まで真似なくともよかろうに。そんなことだから、君は一度……いや、言うまい」

 

「何だって? 疑似的な……え?」

 

「……私が君に説明した……この『至高神Z』の復活に用いた材料のことを思い返してみたまえ。私は、何を用いてこの神の復活を成し遂げたと言った?」

 

 ええと……『核』『抜け殻』『残り火』『心の欠片』だよな。

 そのうち、『心の欠片』は代用品でそろえた。『核』と『抜け殻』は、それぞれ『ヘリオース』と『プロディキウム』をそのまま使った。

 

 ……あれ、そういえば……

 

「気づいたようだな。今回の再誕において、『残り火』は何を使ったのか……という点に」

 

 Z世界において『至高神Z』が生み出された時、『残り火』は……それそのまま、『至高神ソル』の残り火である『黒い太陽』が使われたはずだ。

 しかし、今回……それに該当するものは、どこにもなかったはず……

 

 いや、ひょっとして……なぜかそれらと一緒に取り込んだ『ソーラーストレーガー』が……?

 

「あれは単に、『儀式』の際の次元力制御のための補助……いわば、媒介として利用したにすぎん。今回の儀式は代用品が多かったからな。『残り火』として使ったのは……君自身だよ、星川ミツル」

 

「……は?」

 

 ……いや、どういう意味だ? 僕が何で、『残り火』に……『黒い太陽』の代わりになるんだよ?

 僕は、アドヴェントの因子を持っているから、『12の欠片』の代用品として使われたんだろ?

 

「それと兼用でだ。君は元より、『残り火』として機能するだけの力を持っていた。そういう存在だったのさ……ゆえにこそ、死を迎えた後に即座に、自力で再生することもできた。ヘリオースについてもそうだ……逆なのだよ。ヘリオースが君を作ったのではない、君がヘリオースを作ったのだ」

 

「…………?」

 

「そして『死』に限らず、何かきっかけがあるごとに次元力の扱いを巧みにしていった。それは、君が元々知っていたやり方を、徐々に思い出していったからだ。何せ君は……元々、『御使い』すら超えるレベルで次元力を運用していた張本人だったのだからね」

 

「……? …………!?」

 

 それについてまた聞き返そうとしたが……できなかった。

 声が、出なかった。

 

 ショックで絶句したとかじゃなく……声を出そうとしても、なぜか、口から声が出てこない。

 

 ……さっき、アドミラルが言っていた……『至高神Z』に吸収される、っていうのが始まったのかもしれない。僕の体が、この謎空間で……徐々に透けて、薄れていく。

 

 その様子を見ながらも、アドミラルは何の反応も示すことなく……ただ、口だけを動かす。

 

 僕はそれを、黙って聞いているしかない。それしか、もう、できない。

 

 

 

「恐らく君の正体に気づいた者は、私以外にはいないだろう。私とて、『抜け殻』であるプロディキウムに触れ、ドクトリンの因子を宿していたことで、かろうじて悟ることができたのだから」

 

「それを知ったところで、君がそれを生かしてどうこうする機会は最早訪れることはないがな。……もう気づいているだろうが、君の吸収……本格的な同化はすでに始まっている。ほどなくして、君の意識は永遠に消え……二度と浮かんでくることはないだろう」

 

「しかし、それを嘆く必要はない。君はもともと、『使う』存在ではなく、使われる存在だった……今の君の意識は、星川ミツルとしての自身を運用するために、『ヘリオース』と共に君が自分で作り出した偽物なのだから」

 

「君の死は無駄にはしない。その力は、『至高神Z』と共に、我々新生ガーディムが、至高神の使徒として、全並行世界を等しく、完璧に管理するために有効に利用することをここに約束しよう」

 

「何より君は、かつて一度、自らその道を……『死』を望み、そして己を滅ぼしているのだから……今更未練もあるまい。そうだろう? 星川ミツル? いや―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――至高神ソル

 

 

 

 

 

 




ようやくミツルの正体が明らかになりました。
……以前、感想欄で言い当てていた人がいてびびったのを覚えています。

そして、例によってというか、この作品、30~40話ぐらいで当初は終わるかなと思ってたんですけどね……また三桁超えちゃったよ。
自分にはやはり、物語をコンパクトにまとめる才はないのかもしれません。
何か書くたびこれだもんな……前のヒロアカの時も、その前のSAOの時もそうだった。あと、よそで書いてるやつも……

まあ書きたいように書くのが信条なので、このまま突っ走っていきます。より楽しく、より面白く、皆様に楽しんでもらえる作品が出来上がるように。

今後ともよろしくです。
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