「ソーラーストレーガーとヘリオースの反応は!?」
「だめです、現在位置を把握できません! ラピュセルとアントワネットは、パイロット不在で宇宙空間に放置されているところを回収できましたが……」
「ミツルやミレーネル同様、ココとミランダも行方不明。あの光景からすると、あのデカブツの中に取り込まれたんじゃないかと思われるが……」
沖田艦長や新見情報長、総司ら仲間達が、状況の把握と……突然の失踪を遂げたミツル達の行方を必死で追っていた。
しかし、その結果は芳しくはない。ミツル達も、ソーラーストレーガーとヘリオースも……既に感知できる範囲にはどこにも存在していなかったのだ。
その報告を聞きながら、ヤマトの艦橋で、古代進はぎり、と悔し気に奥歯を噛みしめて鳴らしながら、悪態をつくようにつぶやく。
「そもそもあれは一体何なんだ!? 生物か、あるいは兵器なのか……ガーディムの奴ら、いったい何をしたんだ……!?」
「……知りたいかね!?」
そんな声が、突如として聞こえた。
返事が返ってくるなどとは思っていなかった、古代本人にとっても予想外だったその声は……間違いなく、ガーディムの指揮官である、アールフォルツ……の姿をしたアンドロイド『アドミラル』のものだった。
「先ほど述べた通りの内容ではあるが、必要であればもう少し詳しく……そうだな。君達が最低限理解できる範囲の背景説明も交えて説明しよう」
こちらを見下した挑発的な物言いではあったが、『地球艦隊・天駆』のメンバーは、文句を言いたいのをぐっとこらえて続きを待った。
今は情報が少なすぎる。この後どう動くにせよ、まず何よりも情報が必要だった。
アドミラルが語ったのは……『地球艦隊・天駆』の者達が知る、いずれの平行世界とも違う……『多元世界』と呼ばれる世界で起こった、壮絶な戦いの歴史からだった。
ある次元災害により、いくつもの並行世界が混線ないし融合してできたその世界には、全ての平行世界を支配下に置く絶対的な存在『御使い』と、その上位者……という立ち位置である人造の神『至高神』が存在していた。
しかし、支配され、虐げられ、時に気まぐれ同然に滅ぼされる状況を、地球にいた者達はよしとせず……その力を結集した精鋭部隊を結成し、敵の本拠地『カオス・コスモス』に……そしてそこに存在する、その世界における地球に該当する惑星『エス・テラン』に殴り込みをかける。
その『御使い』達や、その他の高次元生命体達との戦いの末、見事に敵の最終兵器……ほかならぬ『至高神Z』を打倒。
ゆがんで壊れかけている宇宙を元に戻す『超時空修復』を行い……全ての宇宙を滅びの危機から救った。
そして宇宙には平和が訪れたが、その残滓とも呼ぶべき力を、あるきっかけからアドミラルは手にし……その時同時に生まれた『至高神復活』という使命を果たすため、今まで暗躍していた。
そのために、3つの世界を巻き込んだ戦いの裏で暗躍を続け、材料、あるいは生贄となる力を集め、あるいは育て続けた。
そしてついにそれを実行に移し……今こうして、『至高神Z』が復活した。
「……スケールがでかすぎていまいち理解しづれえが……つまりてめえは、その、別の宇宙で倒されたはずの『至高神』とやらを復活させたってわけだな? そのために、俺たちやネバンリンナ……その他にも色々な奴らを利用していたと」
「その認識でおおむね間違いではないよ。流竜馬君」
「……で、その物騒な神様とやらを復活させて、お前は何をしようってんだ?」
「決まっているだろう。この力をもって、今度こそ我々ガーディムの手により、全ての宇宙を管理することで……」
「ああそうかよ……なら結局、今までと同じってわけだな!」
アドミラルの言葉を遮って、竜馬は咆哮するように言った。
それに続けて甲児や勝平も、
「本物のアールフォルツやネバンリンナと同じだ……結局お前も、力で宇宙を支配しようとするってことなら……俺達の敵だな!」
「ああ、だったらその結末も同じってことだ!」
「け、けどよ……あんなとんでもない化け物相手に、勝てんのか私ら?」
「見間違いじゃなければ、地球より大きいよ、アレ……」
ロザリーとクリスが、『至高神Z』のあまりの大きさと……そしてそれ以上に、見ているだけでも伝わってくる、想像を絶するその強さを悟って、思わずそんな弱気な言葉をこぼす。
無理もないだろう。それまで戦ってきた中で最大の敵である、巨大ELSやコーウェン&スティンガーをも上回るほどの巨体なのだ。
「だとしても……ここで逃げるわけにはいかない!」
「そうだな、こいつを放っておけば、どの道その独善と傲慢を振りかざして、地球にもその魔の手を伸ばしてくるに違いないのだから。ならば……僕達が立ち向かうしかない」
「これまでだって、どんな相手にも勝ってきたんだ……今更諦めるもんか!」
舞人が、万丈が、シンジが……仲間たちが口々にその覚悟を言葉にしていく中、アドミラルは驚きと呆れが入り混じったような声音でつぶやいた。
「……驚いたな。この姿を目にして尚も、抗おうという意思が残っているのか?」
「はっ、生憎だったなアンドロイドヤロー! 戦っても勝てないから降伏すると思ってたんなら、悪いが期待にゃ応えられねえよ!」
ヒルダがコクピットの中で中指を立てて挑発しながら言い返す。
「なるほど……3つの地球の希望を背負って戦い続けた部隊……『地球艦隊』の名は伊達ではないか。ネバンリンナがほめていたのもうなずける、不屈の闘志を持っているようだ……素晴らしい。できることなら、君達にはこれ以降、地球の管理のために手を貸してもらいたいと思っていたのだがな……」
「そんな命令に従う私達じゃないってことくらいわかるでしょう? ずっと私達のことを観察していて……ネバンリンナのデータも取り込んだのなら、なおさらね!」
「ふむ……では仕方がない。力ずくで従わせるとしよう」
アンジュが言い切ったのを聞いて、アドミラルはあくまで冷静に、実力行使を宣言する。
それを聞いて、その言葉すら鼻で笑い飛ばすのは……アキトと、総司。
「結局、悪党というのはどいつもこいつも考えることが同じだな」
「それができると思ってんなら大間違いだ! お前の野望こそ、今ここで終わらせてやる!」
だがそこに、千歳が待ったをかける。
「で、でも総司さん……ミツル君達はどうするの!? あの『至高神』とかいうのに取り込まれちゃったのよね!?」
「似たようなことなら前にもあっただろ! 使徒からアスカちゃんやレイちゃんを助け出した時と同じだ!」
「けどその時は、『ヘリオース』が次元力を使ってどうにかしたのよね!? 今はミツル君達は……」
「だがどの道、彼らを助けるにしても、まずはあの『至高神』とやらを黙らせなければならないことに変わりはない! 方法を探すのはその後……いや、この際戦いながら同時進行でだ!」
ロッティとヴェルトも加わっての話を、今度はナインが強引に割り込んで断ち切る。
「それについてはアナライザー達と協力して、私達が分析を進めます! 皆さんはとにかく、あの巨大兵器の破壊を!」
地球を守るため、そして仲間を救うため。
不安を抱えながらも、意思を一つにして再び『至高神Z』に向き直った彼らを、アドミラルは……どこまでも冷めた目で見ていた。
「……いいだろう、『地球艦隊・天駆』の諸君。君達がそれを望むなら、私と『至高神Z』はその力を君たちに示そう。……だがその前に、1つ……試しておかなくてはな」
そう言うと、不意に至高神Zが、その手をゆっくりと持ち上げ、顔のない頭部の前で掲げるようにした。
思わず身構える面々だが、その瞬間……彼らの脳裏に、不思議なイメージが浮かんできた。
それはまるで……巨大な銀河を、遠くから見ているかのような光景だった。美しく、神秘的ではあるが……どこか不吉な予感が漂っている。
「あれは……大マゼラン銀河?」
「そうなの、ユリーシャ?」
「ええ、間違いない。でもなぜ……っ!? まさか……」
ヤマトの艦橋で、何かに気づいたユリーシャが青ざめるが…………すでに、遅かった。
『至高神Z』は、掲げた手をぐぐっ、と力を込めて、握るように動かしていく。
それに伴って、頭の中に浮かんでいる銀河……ユリーシャの予想が正しければ『大マゼラン銀河』であるらしいそれが……軋んで、歪んでいく。
その歪みは止まらず……まるで紙に描かれた絵が、くしゃくしゃに丸められていくように、銀河はその形を保てずに……圧縮され、引き伸ばされ、砕かれ、つぶされ……
最後には……音にならないような不思議な音を響かせて……消滅した。
「……おい、何だ、今の……?」
「ま、まさか……大マゼラン銀河を……」
「馬鹿野郎、そんなわけないだろ! そんなことができるわけがない……ただのハッタリだ!」
声を張り上げてジュドーは否定するが……その一方……心のどこかで、なぜかそれが真実だと確信できてしまえることに、気づいていた。
ジュドーだけではない……『地球艦隊・天駆』の面々は、今起こったことが真実であると……こちらを困惑させるためのフェイクでも何でもないと、なぜか理解できていた。できて、しまった。
すなわち……たった今、『大マゼラン銀河』は……丸ごと消滅したのだと。
イスカンダルも、大ガミラス帝星も……その他の全てを巻き込んで、この宇宙から消え去ってしまったのだと。
もう、あそこには何もない。誰もいない。
ガミラスの立て直しのために奔走するヒス副総統やディッツ提督も、傷心をいやしているはずのセレステラも、心を通わせたELSも、その他、大ガミラス帝星の民たちも、レプタボーダにいた難民たちも…………誰一人、何一つ残っていない。全て、消えてしまった。
「『至高神Z』の力の試射と、過去の清算とを兼ねたものだったが……今のでおわかりいただけたのではないかな? ……この『至高神Z』に挑むことそのものが、間違いなのだということが」
ユリーシャが絶望を顔に浮かべて……腰を抜かし、へたり込んだ。
(お姉さま……もしかしたら、あなたは心のどこかで、こうなることを悟っていて……私を、逃がすために、ヤマトに……?)
艦隊全体を未曾有の衝撃が襲う中、自らも頭の中に激しい動揺を抱えながらも……沖田艦長は、ヤマトの艦橋で声を張り上げた。
「総員、戦闘配置に移れ! あれをこれ以上好き勝手に動かせてはならん……今ここで何としても仕留める!」
「し、しかし艦長!? 今見えた光景が本当なら、あの『至高神Z』なる兵器は、銀河そのものを消してしまうような……」
「馬鹿! あんなものが真実なわけないだろ! 精神攻撃の類だよ!」
動揺を隠せない島と、それを否定しつつも……自身もまた、声が震えている南部。
その2人の口論を視線だけで黙らせて、沖田艦長は続けて言い放つ。
「今の光景が真実なのか否か、それを観測し確かめる術を我々はもたない! だが1つだけ確かなことがある……今ここで奴を止めなければ、地球は終わりだということだ! 時空融合を食い止めていたアウラまでもが奴に吸収された以上、もはや一刻の猶予もない!」
それを聞いて、はっとする者も多かった。
3つの地球の融合は、アウラによって阻止されていた。しかしアウラは、アドミラルの『儀式』によって生贄にされ、『至高神Z』に吸収されてしまったのだ。
ならば、今……時空融合は。本来のスピードで急速に進んでいるということになる。
沖田艦長の言葉通り、もはや一刻の猶予もない。早急にこの状況を打開し、『コスモリバース』で地球を救わなければならない。
それを理解した『地球艦隊・天駆』のメンバー達は、恐怖を振り切って前を向き、『至高神Z』を……そしてその向こうにいるアドミラルをにらみつける。
「愚かな……だが、その諦めの悪さ、不屈の闘志……それらもまた、君達地球人を素晴らしい存在たらしめる要因なのだろう。ならば私もまた、君達のやり方にならうとしよう……その不屈の闘志をもってしてなお、届かない存在がいることを……この戦いで学びたまえ」
「総員……かかれぇ!」
沖田艦長の号令と共に、『地球艦隊・天駆』は……あまりにも絶望的な戦いの中に、身を投じて言った。
この戦いを乗り越えた先に、きっと地球を救うことができるのだと信じて。
おまけ 今回出てきた機体について
【至高神Z】
元ネタは、第3次スパロボZに出てきた敵勢力の機動兵器。というか、Zシリーズ全てを通してのラスボス機体。
一応人型っぽい構造はしているものの、頭部がない長い首や天使の輪のような角?、6枚の翼や鋭い爪など、神々しくも禍々しい姿を持つ異形の存在。サイズは惑星レベルの大きさ。
無から有を生み出す、単独で銀河1つを破壊する、『真化』の領域に至っていない攻撃は全く通用しない、傷を負ったとしても瞬時に修復するなど、想像を絶する力を持つ。仮に宇宙そのものが滅んだとしても、それを乗り越えられるだけの力を持つ存在。
ゲームにおけるボスとしての性能も凶悪そのもので、難易度ノーマルでも装甲値4000超え、HP500000オーバー、パイロットに至ってはLv99の上にエースボーナス込みで4回行動という恐ろしいことになっている。