スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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第102話 『至高神Z』(後編)

 

 

 相手は惑星級の巨体。

 通常の機動兵器の攻撃では、多少打ち込んだところで意味などなさないだろう。パラメイルやエステバリス、ASといった小型の機体の力など、豆鉄砲以下だ。

 

 ゆえに、戦力の主軸となるのは、一定以上の火力を持った機体に限られる。

 小型の機体は、彼らの支援のために、『至高神Z』のかく乱のために動くこととなる。

 

 パラメイルやASに乗る者達は、決死の覚悟で至高神Zの周囲を飛び回る。腕や足の1つ1つが、大陸を超える大きさを持っているのだ。当たったらどうなるかなど考えたくもない。

 しかし、肝心の至高神Zは、それを一切気にする用はない。

 というよりも、こちらから何をしても、反応を見せる様子がないのだ。防御も、反撃も。

 

 こちらをなめているのかと、一部のメンバーはいら立ちを募らせるが、それはそれで好都合なのに変わりはない。

 

 挑発するように、真正面でエネルギーを練り上げていく真ゲッター1。その掌の間に生まれた光球が、担ぐほどに巨大になったところで……投擲。

 放たれた『ストナーサンシャイン』は、『至高神Z』に直撃するも……

 

「ちっ……ろくすっぽ効いてやしねえ」

 

「なら、次は俺だ! 光子力ビィィイィ―――ム!!」

 

 『マジンガーZERO』に変容し、その両目から十重二十重に放たれた極大威力の光子力ビームが襲い掛かる。

 手加減など一切なしに放たれたそれらは、至高神Zの全身に降り注ぐ。

 

 だが、それに対するリアクションを待たずに、その後方からさらに出てきた3機……シン化したエヴァンゲリオン初号機に、マジンエンペラーG、ガンナーと合体したグレートマイトガイン。

 それぞれ、衝撃波を、サンダーボルトブレーカーを、パーフェクトキャノンを放つ。

 

 畳みかけるように、ザンボットとダイターンもそれぞれの必殺技を放つ。

 

 それに加えて、アンジュとサラマンディーネが並んで『ディスコード・フェイザー』と『収斂時空砲』を放ち、次元の暴風の中にその巨体を巻き込んでいく。

 

 さらに、『地球艦隊・天駆』の、ヤマトを除く(・・・・・・)全艦が、それぞれの主砲と呼べる装備を惜しげもなく放つ。

 ビーム兵器や実弾のミサイルが飛び交う中、相変わらず無抵抗でそれらの集中砲火にさらされ続ける『至高神Z』。しかし……

 

「これでもダメなのか!?」

 

「宇宙を支配できると豪語するだけあるってことか……半端じゃねえな」

 

 タスクと総司は思わずといった調子でそう呟き、『至高神Z』の、その理不尽なまでの耐久力を前に歯噛みする。

 

「ディビニダドの核弾頭、ちょっとくらい回収しておけばよかったですかね?」

 

「やめとけトビア。仮にあったとしても……それだって焼け石に水だろうさ」

 

「だったらこいつでどうだ!」

 

 するとその直後、真ゲッタードラゴンの頭の上に真ゲッター1が着地し……両機から放たれる、膨大なゲッター線のエネルギーが1つになる。

 それを手元に凝縮した真ゲッター1。その手には……超圧縮したエネルギーによって刀身が形作られた、巨大なトマホーク……『ファイナルゲッタートマホーク』が形作られていた。

 

「うおおぉぉぉおおっ!!」

 

 コーウェンとスティンガーを真っ二つにしたそれを、咆哮と共に大きく振りかぶり……一気に振り下ろす。

 小型の天体すら両断するその威力を、しかし……『至高神Z』は、身じろぎすらせずに、その身で受けきった。

 

 ちっ、と舌打ちの音を響かせる竜馬だが、そのあとすぐにトマホークを手放し――もともとエネルギー体だったためか、手放すと同時に消滅した――真ゲッタードラゴン共々、素早くその場から離れた。

 

 いや、もっと正確に言えば……射線を開けた、だろう。

 

 真ゲッタードラゴンの巨体が飛び去った、との背後には……『地球艦隊・天駆』の最終兵器が、今まさにその発射準備を終えた状態で待ち構えていた。

 

「誤差修正、プラス2度」

 

「対ショック、対閃光防御!」

 

「発射まで、3、2、1……」

 

 艦そのものを『コスモリバース』に改修した後、もはや不要だと判断された、波動砲の基幹システムは、取り外された。その位置に、今は『コスモリバース』が据え付けられていた。

 しかし、万が一のことを考え、波動砲の基幹システムは、ナデシコCに積み込んで持ち帰ってきていた。

 

 それをボソンジャンプでコスモリバースと入れ替えることにより、ヤマトは再び、波動砲を撃つためのシステムを取り戻していた。

 

 『コスモリバース』の受領条件の1つであった、波動砲の封印。それを破ることになってしまうが、沖田艦長は『全ての責任はわしが持つ!』とまで言い切って、使用を断行した。

 『第二バレラス』を超えるこのサイズの敵に通用する可能性があるとなれば、それはもう、波動砲をおいて他にないのは明らかだったからだ。

 

 艦橋にいるユリーシャも、それを理解してくれているのか、それについて何も言うことはなく……むしろ、全てを託して信頼するかのようなまなざしを沖田艦長に送っていた。

 

 今までの攻撃は全て……それこそ、今のファイナルゲッタートマホークすらも、この一撃を確実に決めるための布石。

 

 発射準備はすでに完了。味方の機体達も、既に射線および影響範囲から脱出している。

 

 そして、絶対に逃がしようのないタイミングで……

 

 

 

「波動砲……発射!」

 

「てぇ―――い!!」

 

 

 

 放たれた青白い破壊の閃光が、直線状にあった全てを破壊しながら……『至高神Z』の胸部分に、吸い込まれるように命中した。

 

 惑星1つをも破壊する威力の一撃は、着弾と同時にすさまじい爆風を発生させる。

 まき散らされる膨大なエネルギーは、宇宙の真空空間にも関わらず、その闇を押しのけるような巨大な火球となって……まるで新たな惑星が誕生したかのような輝きを放っていた。

 

 ともすれば、あの中に吸収された、ミツル達や、アウラやスターシャといった面々にも届いてしまうのではないかという懸念はあった。

 しかし、何度も繰り返すように……波動砲でければ太刀打ちできないのは事実だった。

 

 最悪の場合は、それも含めて自分の責任とするつもりで、沖田艦長はGOサインを出した。

 

 そして、爆炎が収まり、その向こう側がようやく見えるようになった時……そこには……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……気は済んだかね?」

 

 

 

 

 

 ……絶望が、待っていた。

 

「も、目標……『至高神Z』……未だ、健在です……!」

 

「嘘……だろ……!?」

 

「波動砲が、直撃したのに……無傷……!?」

 

 新見の、総司の、古代の……それぞれの愕然としたような声が、通信に乗って響いた。

 その他の面々も……目の前の光景が信じられずに、絶句するしかない。

 

 今の波動砲は、確実に『至高神Z』を仕留めるため……ヤマトがその使用に耐えうる最大威力で発射されたものだった。

 それでも、反動で機関部が何カ所もダメージを受け、異常を起こしている。行ってみれば、『壊れない限界ギリギリ』ではなく、『多少壊れてもいいから行動不能にだけはならない限界ギリギリ』というところを攻めた一撃だった。この一発で、なんとしても仕留める覚悟で放たれた一射だった。

 

 ともすれば、あれほどの巨大構造物であっても、その威力で跡形もなく消し飛ばしてしまうのではないか、とすら思えるような。

 先にも述べたように、ミツル達ごと葬り去ってしまうのではと危惧し……しかし、万が一にも仕留め損ねることのないように、正真正銘の全力で放たれた一射だった。

 

 それが、しかし……

 

「そんな……アレで通じないんじゃ、手の打ちようがない……」

 

 ヤマトの艦橋で、思わず南部がつぶやいた言葉は、『地球艦隊・天駆』の全員の心の中に浮かんできていたものだった。

 

 波動砲は正真正銘、彼らの持ち出しうる最終兵器。星一つを破壊する威力を誇るそれは……沖田艦長が『メギドの火』とまで称した、うかつに使うわけにはいかない力。

 しかしその分、その威力は絶対的。ひとたび振るえば、今まで訪れたどんな危機をも貫き、未来を切り開いてきた。

 

 しかし、それが……まるで通じていない。

 

 その状態を見る限り、『至高神Z』には破損らしい破損は一切ない。

 

 同時に、今までこちらの攻撃に対し、攻撃も防御も一切行ってこなかった理由も明らかになった。

 

 こうなると、わかっていたからだ。

 こちらの攻撃は、一切通じない。それこそ……ガーディムの歴史を知る以上は、『アドミラル』もその威力はわかっていたはずの『波動砲』すら、警戒するに値しないものでしかなかった。

 

「心中は察する。だが、これは私からすれば、当然予測できていたことだ……単純な性能もさることながら、そもそも君達が扱うような通常の兵器では、この『至高神Z』には傷一つつけることはできない……もはや次元が違いすぎて、攻撃として成立しないのだよ。『波動砲』すらね」

 

 何をどれだけ撃ち込もうとも有効打足りえない。それどころか、ダメージがまともに通っている様子すらない。

 それを見せつけることで、『至高神Z』が真に絶対的な存在であると実感させ、絶望で心を折る……それが、アドミラルの作戦だった。

 

 さながら、お釈迦様の手のひらの上で遊ばれていた孫悟空のような状況。

 

 正真正銘の絶対者としての力を、何もすることなく見せつけられた『地球艦隊・天駆』だが……それでも、幾人かはまだあきらめていなかった。

 

 何か具体的な作戦があるわけではない。しかし、だとしても諦めることなどできない。

 

 衰えぬ、とは言えないまでも、はっきりとした戦意の乗った視線を感じ、アドミラルは『まだあきらめないのか』と呆れたように溜息をつくが……その直後。ふと、『そうだ』と何かを思いついたように言う。

 

「ここまでしてもわからないのなら……いっそ、君達が心の支えとしているものを取り去ってみようか」

 

「何……どういう意味だ?」

 

「君達は、地球を救うために、16万8千光年もの彼方へ旅立ち、そしてここに帰ってきたのだろう……ならば、その重荷を取り去ってやろう、ということだ」

 

 言いながら、至高神Zはその掌を……地球に向けた。

 その様子を見て、ぞっとするような嫌な予感がした古代は、

 

「何をする気だ!? まさか……」

 

「心配は無用。破壊するわけではないよ。……ただ、時計の針を進めて……来るべき時を今ここで迎えさせてあげるだけだ」

 

 その掌から放たれたエネルギーが地球に届いた直後……状況を観測していた新見情報長が、ヤマトの艦橋で悲鳴を上げた。

 

「これはっ……時空融合の進行スピード、急速に加速! こ、このままじゃ……」

 

「おい、何してやがる!? 今すぐやめろ!」

 

 総司の、いや『地球艦隊・天駆』の面々が次々に浴びせる怒号に一切耳を貸さず、アドミラルは力を贈って『時空融合』を急速に進めていく。

 

 3つの地球は、今まさにそれぞれの表面が触れ合わんばかりの距離にまで近づいており……その境界面に生じているエネルギーの乱流が、まるで竜巻のように荒れ狂っている。

 あれがおそらくは、『時空融合』の進行・完成に伴って成長し……衝撃波となって全てを破壊するのだろう。

 

 その凶行を止めようと、次々に機体ごとの必殺の攻撃を浴びせるが……先ほどアドミラルが言っていたように、それらの攻撃は全く効果があるようには見えない。

 かざされている手に集中して、何が撃ち込まれようとも、わずかに体制を揺るがせることすらできない。

 

 そうしている間にも、融合は進む。

 

 ついに、三角形の位置取りで1つ並んだ地球同士の表面が触れ合い……お互いに重なっていく。重なった部分から、まるで台風のように次元の嵐が吹き荒れ……地球上の全てを薙ぎ払っていく。

 

 誰かの悲鳴が上がる。

 『地球艦隊・天駆』の誰かの悲鳴だろうか。それとも、地球にいる者たちの悲痛な叫びがここまで聞こえてきたのだろうか。

 

 答えは、わからない。

 

 見ていてわかるほどのスピードで融合は進み、それに伴って次元の暴風は強まり……地球全体を何百何千もの台風が、地表も海表も全てを覆いつくしているような……地獄絵図になった。

 あの白く見える風の下では、全てが破壊され、人々の命が奪われているのだ。

 

 ついにはその暴風は地球表面にとどまり切らず、大気圏を突破して宇宙にまで吹き荒れ始め……地球近海に設置されていたいくつもの宇宙ステーションやスペースコロニーが、それに巻き込まれて崩壊し始めた。

 

 

 そして……彼らにとっては永遠にも等しいだろう時間は、ついに終わり……

 

 

 

「やめろぉぉぉおおぉおぉ―――っ!!」

 

 

 

 総司達の叫びもむなしく……3つの地球は、1つに重なった。

 

 

 

 3つが重なってできた地球は……見た目は、青い海を持つ美しい惑星……のように見えた。

 しかし、その地表にはもはや、一切の命が生きてはおらず……人類が今まで築き上げてきた輝かしい文明も、その全てが破壊されつくしてしまったはずだ。

 

 地下のアーコロジーも、陣代高校も、第三新東京市も、光子力研究所も、ヌーベルトキオシティも、オーブも、アルゼナルも、ミスルギ皇国も……全てが、消えた。そこにいた人々ごと。

 

 それを理解して……皆、言葉が出ない中……

 

 

 

「今までご苦労だった……『地球艦隊・天駆』の諸君。君たちの闘いの日々は……今日、終わった」

 

 

 

 アドミラルが、一切感情のこもっていない声で、そう告げて……

 

 至高神Zの、もう片方の手のひらを、彼らの方に向けて……その瞬間、『地球艦隊・天駆』は……光に包まれた。

 

 

 

 




アドミラルのイキリタイムがもうちょっと続きます。
……もうちょっとね。
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