スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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第106話 真化融合

 

 

 『地球艦隊・天駆』が、

 アドミラルの乗る『至高神Z』が、

 それぞれ見上げる前で……今まさに誕生した、新たな『至高神』が産声を上げる。

 

 白金の鎧をまとった体をゆっくりと動かし……背中に生えた、天使のような6枚の翼を大きく広げる。

 

 ただそれだけの、ゆっくりとした動作。しかし不思議と、目を離すことができなかった。

 それほどまでの存在感……そしてそれ以上に感じる『目を離してはいけない』という、直感ないし強迫観念にも似た何か。

 

 『至高神Z』よりもより人型に近い……しいて言えば、『アスクレプス』をより有機的に、より重厚に、より神々しくしたような姿となった姿の『次元将ソル』。

 

 その翼がふわりと羽ばたくと、それを中心に、まるで宇宙が波打っているかのように、不可視の、しかし確かにある『何か』が広がっていく。

 それが何であるかを、戦場にいた者達が知るのは……もう少し先のこと。

 

「……そんなに死にたいのならば、まずは貴様から消してやる……!」

 

 その直後、至高神Zの手元に次元力が収束していき……稲妻となって迸り始める。

 しかし、単なる電撃ではない。そのように見えるが、それよりもはるかに危険な……次元をも超えて周囲へ伝わり、対象を焼き尽くし消し飛ばす、膨大なエネルギーの奔流だ。

 

 そしてそれは、『貴様から』などと言っておきながらも、『次元将ソル』を狙って放たれたわけでは特にない。

 解き放たれた雷光は、周囲の宇宙に光の波紋を広げながら、無差別に暴れまわる。その向かう先には、『地球艦隊・天駆』の他の機体群もあり……このままいけば、巻き込まれて致命的なダメージを受けるのは確実だった。

 沖田艦長をはじめ、各艦の艦長達が防御や退避の指示を出すも、到底間に合わない。

 

 しかし、彼らの機体がエネルギーの奔流に焼き滅ぼされる最悪の未来は、訪れなかった。

 

 その先頭に立つように降り立った、『次元将ソル』が、その6枚の翼を大きく羽ばたかせた瞬間……宇宙に暴風が起こり、迫ってきていた雷は全てそれに相殺され、全て消し去られてしまった。

 

 さすがにこれには、アドミラルも絶句する。

 手加減などしなかった。その怒りのままに敵を全て焼き滅ぼすべく、確実に仕留められるだけの一撃を放ったつもりだった。

 

 それがまるで、ろうそくの火を吹き消したかのように、あっけなく消滅させられた。

 

(馬鹿な……これほどのレベルの次元制御をいともたやすく……!? ありえない、材料も何もかもありあわせの、不完全でしかない『至高神』が、この『至高神Z』を上回ったのか!? 星川ミツルがもともと『至高神ソル』だったとはいえ……いや、そもそもあれは『至高神』なのか!?)

 

 疑問を抱きながらも、アドミラルは次の手に出る。

 

 天使の輪の部分から次元力を放出し……それらは目の前で形を成す。

 一瞬空間がゆがんだかと思うと、そこには、何体ものクリスタルの怪物が……惑星レプタボーダで猛威を振るった『エル・ミレニウム』が出現していた。

 

 さらにはそれと同時に、『エル・ミレニウム』以上の存在感を放つ、左右で体の色が違う、クリスタルの巨人までもが形作られていた。こちらも、1体と言わず何体も。

 

「あれは、レプタボーダの……」

 

「『エル・ミレニウム』……レプタボーダの古代文明ではなく、『至高神』とやらに由来する存在だったのか!?」

 

「おまけに、何かそれよりやばそうなのもいるんだけど……」

 

「……どこからか呼び出した? それとも、今この場で……無から有を創造したのか!?」

 

「そんなの……まるで、神の所業……」

 

「看板に偽りなし、ってことか……」

 

「この程度は、至高神Zの事象制御能力をもってすれば造作もないことだ……私はハッタリでものを言うことはしない主義なのだよ」

 

 惑星1つを容易く滅ぼせる『エル・ミレニウム』に加え……その上位種であり、恒星間に展開して発達した文明をも容易く崩壊させられる力を持つ『ゼル・ビレニウム』。

 優に数十体にも及ぶ軍団をものの数秒で作り上げたアドミラルは、それらを前面に押し出すことで、わずかに心の余裕を取り戻していた。

 

 無言で、思念によって彼らに指示を出せば……恐怖など覚えないかりそめの魂しか持たない彼らは、一斉に『次元将ソル』に襲い掛かっていく。

 

 次元転移によって瞬く間にその距離をゼロにし、ある者は腕を変形させて直接殴り掛かる。

 ある者は中距離から次元力の光炎を吹き付けて相手を焼き尽くす。

 ある者は機体を無数に分裂させ、クリスタルの槍の軍勢となって降り注ぎ、貫かんとする。

 

 いかな強固な兵器、いや戦艦、いや艦隊だろうと、次の瞬間には木っ端微塵になっているであろう暴威を前に、次元将ソルは身じろぎ一つしない。

 

「―――相克・滅」

 

 だが、真っ先に到達したクリスタルの槍の先端が、その機体を貫こうとした瞬間……その全身が太陽のように輝いて、膨大なエネルギーの奔流が発生する。

 上下左右前後に放出された破界の波動は、槍も、炎も、殴りかかってきた機体をも……全てを洪水のような勢いで飲み込んで、圧壊・消失させていく。

 

 宇宙全体を照らすような光が収まると、そこにはすでに、『次元将ソル』以外の存在は全て焼失した空間が広がっていた。

 

 さらに『次元将ソル』の腰のあたりから延びた副腕のようなそれがうごめき、蛇のように伸びて前に出ると……先端が蛇の、いや龍の頭のように変形。

 

「フォールディング・ブレイザー……発射」

 

 そしてその口から、今の意趣返しのように放たれた光炎は、展開していた『エル・ミレニウム』と『ゼル・ビレニウム』の軍勢を一瞬で飲み込み、消滅させた。

 

「ばかn―――」

 

 『馬鹿な』と言い終えるより先に、その光炎はそのまま伸びて『至高神Z』にまで届き……着弾の瞬間、その巨体が大きく揺れ、苦しむように悶えてぐらついた。

 『地球艦隊・天駆』のいかなる攻撃も通さず、『波動砲』すら無傷で受け切った『至高神Z』に、初めて明確にダメージが通った。

 

 それは、見ていた『地球艦隊・天駆』の面々にとっても……自分は絶対に負けない位置にいると確信していたアドミラルにとっても、大きな衝撃だった。

 

「馬鹿な……馬鹿な!?」

 

 所詮は余波ということなのか、ダメージ自体はそこまで大したものではなかった。

 至高神Zの事象制御能力で十分カバーできる範囲内であり、事実、意識を向けて力を使いさえすれば、即座に全快状態に戻すことができた。

 

 しかし、絶対の存在であったはずの『至高神Z』が、その絶対を崩され……勝利が約束された戦いであるはずだった前提が、崩れていることが浮き彫りになった。

 0と1とは天と地ほど違う。アドミラルは、認めざるを得なかった。

 

 目の前にいるこの存在は……自分を、そして『至高神Z』を害しうる存在なのだと。

 

「ありえん……なぜ、なぜ全てにおいて劣っているはずの貴様が、この『カオス・コスモス』で……私が支配しているはずの宇宙で、この『至高神Z』に傷をつけられる!? 『高次元生命体』の頂点に立ち、『真化』の到達点に立ったはずの『至高神Z』と同じ地平に立っている!? こんな……こんなことは、あってはならない!」

 

「……今のセリフだけでも、あんたがそもそもひどい勘違いをしてるってことがわかるな」

 

「何……どういう意味だ!?」

 

「あんたは何もわかっちゃいない。『真化』の意味も……そこに至るまでに、本当に必要なものが何であるのかも。ホント、つくづく『御使い』連中と同じような道を歩んでるもんだ」

 

「どういう意味だと聞いている!」

 

「よぉミツル。その話、俺達にも詳しく聞かせろよ」

 

 唐突に、後ろの方からそう声がかかった。

 その声の主は、真ゲッター1のコクピットにいる流竜馬だ。

 

「さっきから聞いてると、どうもその『シンカ』とかいう奴が、お前があのデカブツに攻撃を当てられるようになった秘訣なんだろ?」

 

「ユリーシャや真田副長、それに奴自身が言っていた言葉から察するに、さしずめ俺達には、何か『資格』のようなものが足りないがために、奴に攻撃を届かせることができていないようだった。ならそれを得ることができれば……俺達も戦えるということだ」

 

「だったらさっさとそいつを教えな! ここまで好き勝手にやられた借りの分、熨斗つけて返してやらなきゃいけねーんだからよ!」

 

 弁慶や隼人も加わってそう言ってくる。

 いや、言葉にしたのが彼らだというだけで、どうやら同じことを皆が思っていたようだった。

 

 目をやれば、真ゲッターに続くような形で、マジンガーZEROやマジンエンペラーG、エヴァンゲリオンにレーバテイン、ヴィルキスにブラックサレナ……

 他、『地球艦隊・天駆』全ての視線が自分達に集まっているのを感じた。

 

 その光景に、『まあ考えてみれば当たり前か』と納得するミツル。

 それとは対照的に、理解できないものを見るような目を向けるアドミラル。

 

「馬鹿な……至高神である星川ミツルだけならまだしも、なぜ貴様らがまだ戦うつもりでいる!? なぜ……なぜ今の戦いを見て心が折れていない!? あらゆる希望が潰え、守るべきものすら失い、なぜそれでもそんな目をすることができる!?」

 

「それが理解できないからこそ、あんたはどこまで行っても『真化』を理解できないんだよ」

 

 ばっさりとそう言ってのけるミツルに続けて、

 

「絶望だの何だの、これまで何度もそんなもんは経験してきた……でもな、そのたびに立ち上がって、這いずってでも前に進んで……その繰り返しで俺達はここまで来たんだよ」

 

「希望を捨てず、俺達を信じて、地球で待っている人達のため……俺達自身が願う、希望に満ち溢れた未来のために!」

 

「どんな強敵が現れても、どれだけの窮地に追い込まれようとも……仲間達と一緒に、それを乗り越えてきた!」

 

 総司が、古代が、トビアが、

 

「希望がない? 守るべきものを失った? 勝手に決めつけるな!」

 

「ユリーシャ達からこの宇宙の仕組みや、それがもたらすものについては聞いている……まだ希望が潰えていないことも……俺達には、地球にはまだ未来があることも!」

 

「だったらそれを信じて、僕らは最後まで戦う!」

 

「道はすでに彼らが示してくれた……もうお前の言葉に惑わされたりなんかしない!」

 

 甲児が、宗介が、シンジが、バナージが、

 

「結局今までと同じよ。あんたが全部悪くて、全ての元凶なんでしょ?」

 

「ならばもうやることは決まっている……諸悪の根源を倒して、あとは大団円へ一直線だ……!」

 

「その障害として貴様が立ちはだかるというのなら……」

 

「俺達が必ず、それを打ち倒してみせる!」

 

 アンジュが、アキトが、刹那が、舞人が、

 

 それぞれに思いのたけを、真正面からアドミラルにぶつけていく。

 その声音に、もはや迷いも恐れもありはしなかった。

 

「……あの、キャップ? 皆さん流してますが、さっきのアドミラルの言葉の中に、結構衝撃的なものが混じっていたと思うんですけど」

 

「わーってるよそんなことは! でも後回しだ! つーわけでミツル、どうすりゃいい? どうすればその……何だ、『シンカ』ってのが手に入るんだ?」

 

「無駄だ! 貴様らごときが何を聞いたところで、『高次元生命体』に至るための、この宇宙の真理にぐわっ!?」

 

 言い終える前に、ミツルが放った無数の結晶の槍が『至高神Z』の全身に突き立てられた。

 ダメージ自体は大したことはなさそうだが、動きなどを阻害されているのか、『至高神Z』がこちらに何かしてくるようすも……アドミラルの声すら聞こえなくなっている。

 

 一時的にではあるが、邪魔者を黙らせたミツルは、

 

「あんたも理解してないだろ……っと。じゃあ時間もないし、さくっと説明しますね」

 

「なんか、宇宙の真理とかなんとか、すごい重大な情報のはずなんだけど……」

 

「あまりにいつも通りっていうか、口調とか扱いとか諸々軽いね」

 

 かなめやユリカがそんな風に率直な感想を述べていた。

 他の多くの者もそう思っていたし、実際その通りなのだが、今はそんなことを気にしている時間も惜しいので、スルーして説明に入る。

 

「本来は色々と専門用語やら何やらあって、もっと時間をかけてゆっくり説明する……というか、長い時間をかけて自力で色々『気付いて』『理解する』べきものなんですが……非常事態なのに加えて時間がないので割愛します。カギになるのは、あらゆるものの『意思』です」

 

「『意思』……あらゆるもの、って?」

 

「『意思』とは、人だけが持っているものじゃない。あらゆるものに宿っている。生物・無生物を、有機物・無機物を問わず、ね。これはある宇宙では『霊子』と呼ばれていたものです」

 

 万物に宿る『霊子』は、原子レベルで存在する、それそのものの『意思』。

 人間のように明確な自我を持ち、何かをしようとしているわけではないが……確かに存在しており、そしてそれには、外部から干渉することもできる。

 

 必要になるのは、これもまた『意思』の力であり……月並みな言い方をすれば、あらゆるものに対して自分の意思で干渉し、それを自在に制御することができるようになる。

 

 次元力の行使による事象制御の仕組みがこれにあたる。次元力は単純なエネルギーではあるが、それを介して万物の『霊子』に干渉し、それを自在に操ることで、そこに連なるあらゆる事象を制御することが可能になる。

 すなわち、『極めれば何でもできる』という次元力の極意に連なる力として発揮されるわけだ。

 

 しかし、『真化』の本質はそこではない。

 

 『真化』の本質とは、『他者を理解し、受け入れ、共に歩む』こと。

 言葉にしてみればありふれたものではあるが、万物に宿る『霊子』の存在を念頭に置いてこれを考えた場合、それは……この宇宙に存在するあらゆるものを理解し、受け入れ、そして共に歩んでいく、ということに行きつく。

 この真理を正しく理解し、扉を開けることに成功したものが、『高次元生命体』へと至る資格を手にしたことになる。

 

 そしてそれを戦闘において行う場合の手法として、いくつかの宇宙、ないし並行世界で提唱されていたのが『真化融合』である。

 機動兵器や戦艦の『霊子』すなわち『意思』と、それに乗るパイロットの『意思』を呼応させることで、両者の境界線をなくし、ダイレクトにその意思を伝えるというものだが……これは単なる思考による操縦とかそういうレベルではない。

 

 意思を一つにしたパイロットとマシンは、スペック上の限界を超えたすさまじい力を発揮することができる。

 かつて『多元世界』で戦った戦士たちは、この力を手にしたからこそ、『天の獄』で行われた壮絶な戦いを勝ち抜き、御使いによる宇宙の支配に終止符を打つことができたのだ。

 

「なるほど……つまり、その『真化融合』ってのが、あの野郎に勝つためのカギなわけだな?」

 

「『高次元生命体』の領域に立つモノと対等に戦うための、ある種の資格のようなもの……同時に、俺達が、俺達のマシンが手を伸ばしてつかみ得る可能性そのもの、とでもいうべきものか」

 

「そのためには、パイロットの意思が必要になる……って、でも、そんなのどうやって……?」

 

「乗り手の思考を機体に伝えるなんて、そんな機能、一部のマシンにしかついてないわよ?」

 

「いや、機能とかそういうのに由来する力じゃないって言ってたじゃん」

 

「それはそれでどうしたらいいか余計にわからない……」

 

「気合で何とかなるのか、ミツルの兄ちゃん?」

 

 口々にそう聞いてくる『地球艦隊・天駆』のメンバーの疑問に、ミツルは少し考えて、

 

「イメージしづらいのはわかるけど、そこまでかしこまって難しく考える必要はないよ。こっちで手伝いはさせてもらうし……何より、既に皆はそういう経験というか、感覚を知ってるはずだし」

 

「知ってる、って、どういうことだ? 俺達がマシンと意思を1つにした経験があるってことか? そんな経験……」

 

「ホントにないですか? 一度も?」

 

 総司の言葉を遮って、ミツルは問いかける。

 

 例えば……どう考えても、もう動けない、戦えないほどのダメージを負った時に……必死で操縦桿を握った自分の意思に応えて、相棒が動いてくれたこと。

 

 思いを乗せて放った一撃が、破れないはずの相手の防御を貫いて決定打になったこと。

 

 絶体絶命の危機に、距離も、次元も飛び越えて、来れるはずのないところまで相棒が駆け付けてくれたこと。

 

「何度もそういう奇跡みたいな瞬間を経験してたはずですよ。その感覚を、皆、知っているはずです。それを思い出すだけでいい。そうすれば皆さんにも……いや、皆さんだからこそわかるはずです。自分の相棒にも、自分達と同じ心が……『意思』があるんだってことが」

 

「俺達の相棒に……」

 

「機体に、意思が……」

 

「恐怖をこらえて、勇気を振り絞って強敵に立ち向かった時……勝利の喜びに沸き立った時……悲しい別れに涙をこらえた時……絶望を振り払って前に進む覚悟を決めた時……それらの思いを抱いていたのは、皆さんだけじゃない。握りしめた操縦桿越しに、一番近くでその思いを共有していた相棒がいた……その相棒を今一度……いや、あえてこう言いましょう。いつも通り、信じるだけでいいんです」

 

 言いながら、ミツルは自身もまた、自身の乗る『次元将ソル』に意識を向ける。

 

 『次元将ソル』は、ミツル自身が作り出した分身である『ヘリオース』を素体としているため……言ってみれば、それ自体がミツル自身、もう1つの体でもある、とも言える。

 しかしミツルにとっては、そうだとしても、自分にとっての『相棒』であることに変わりはない。真実を知らなかったとはいえ、ともに戦場で戦い、喜びも怒りも、悲しみも楽しみも、全て分かち合ってきた大切な相棒だ。

 

 そして同時に、融合し1つになっている『次元獣ソーラーストレーガー』や、それと自らの意識を融合させたミレーネルやネバンリンナに対しても。

 

「信じて、受け入れて、共に歩む、それこそが……たったそれだけのことが……」

 

 その思いを強くし、さらにそれを……次元力に乗せて、宇宙に広げていく。

 大きく広げた6枚の翼が輝くと、ミツル自身の思いに加えて……彼の『至高神』としての記憶の底に眠っていた、別な記憶が……『真化融合』を果たし、相棒と共に戦い抜いた鋼の戦士達の記憶とその思いが宇宙に広がっていく。

 

 それらは、『カオス・コスモス』にあまねく広がり、『地球艦隊・天駆』が、今まさに至ろうとしている領域への道しるべとなって、彼ら、彼女らを後押しした。

 かつて、太陽の名を持つ戦艦が、それに搭載されていたシステムと、それが背負った人々の思いがそうしたように。

 地球を救いたいと願う戦士達に、力を与えるために。

 

「マシンと意思を1つにするための……最初で最後の一歩なんですよ」

 

 その瞬間、

 

 混沌に包まれ、絶望に覆われるはずだった宇宙の……その中心とも呼べる場所で、

 

 宇宙を変える、1つの奇跡が、あるいは単なる必然が顕現し―――

 

 

 

「さあ皆さん、行きましょう……『真化融合』!

 

 

 

 希望の未来への扉は、ついに開かれた。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 アドミラルは、『至高神Z』の中で……もはや平静を保つことはできていなかった。

 

 自分が動けないでいる間に、目の前で、『次元将ソル』を中心に広がっていく得体のしれない力……しかしそれが何であるかを、『至高神Z』の中に眠っていた記憶から、アドミラルは認識していた。

 

(馬鹿な、あれは……『あの時』と同じ……!)

 

 まるで自分の記憶のように思い返されるのは、おそらくはかつてこの『至高神Z』を作った者の記憶、ないしは感情なのだろう。

 あれをやらせてはならない、止めねばならない。

 

 アドミラルは、『至高神Z』の全身を貫くクリスタルの槍に全力で抵抗し、わずかにその妨害が揺らいだタイミングを見逃さず……次元力を放出する。

 事象制御によって、また何体ものエル・ミレニウムやゼル・ビレニウムを即座に出現させた。

 

 今ならまだ間に合う。『次元将ソル』を除いて、これに対抗できる力を持つ者はいない。

 『地球艦隊・天駆』が、『あの力』を手にする前に、全力でもってこれをせん滅するため、生み出した兵隊達に即座に突撃指示を出す。

 

 わずか数体で1つの文明を完全に滅ぼし尽くせるほどの存在が、数十体、群れを成して襲い掛かってくるという、絶望どころではない光景。

 

 いかに地球圏最精鋭の部隊と言えども、数秒後には彼らは宇宙の藻屑と消えるだろう。いくら彼らでも、これを防ぐ術はない。

 そう確信しつつも、アドミラルは背筋が冷える感触をぬぐい切れないまま、その瞬間を今か今かと心待ちにし……

 

 ……しかし、その瞬間は……ついに訪れることはなかった。

 

 真っ先に彼らの懐に飛び込み、その爪をふるおうとした数体のエル・ミレニウム。

 しかして次の瞬間……ほとんど同時に、それら全てが、爆散した。

 

「……馬鹿、な……!」

 

 そこに広がっていた光景は、アドミラルが期待していたものとは180度逆。

 

 崩壊し、宇宙に消えていく結晶の怪物達。

 それをやってのけたのは……とうとう『真化』の扉に手をかけた、鋼の戦士達。

 

 トマホークを振りぬいた姿勢の真ゲッター1。

 

 握りこぶしを突き出しているマジンガーZERO。

 

 振り下ろした動輪剣を構え直しているグレートマイトガイン。

 

「これは……悪い夢か……?」

 

 その光景はすなわち、たった1体にも複数で当たり、なお苦戦していたはずの彼らが……今の一瞬で、エル・ミレニウムを一蹴してのけたのだということを示していた。

 

「おいおいおい……何だよこの力は!?」

 

「すごい……体の中から、力が湧き出してくる!」

 

「それだけじゃない。これは……そうか、ガイン! これが!」

 

『ああ、わかるぞ舞人! 私も……私と舞人は今、1つになっている!』

 

 パイロットと機体の境界線を取り払い、互いに理解し、受け入れ、共に進む。それが『真化』の真理であり、『真化融合』の強さの根源。

 そこに至ったことを、『地球艦隊・天駆』の面々は……それぞれその心で理解していた。

 

「すげえ……すげえし、不思議だ……。今までずっとザンボット3と一緒に戦ってきたのに……今俺、ようやく本当にお前のことが分かった気がするよ」

 

「これが君なんだな、ダイターン3。いつもと同じ……しかし、それでいて全く新しい世界を、今僕は体感している……」

 

「けど不安とかは全然ないよ。びっくりはしたけど……それも含めて、ただただ頼もしい……君もそう思ってくれるの、フリーダム?」

 

「これも、1つの『対話』なのかもしれないな……クアンタ、俺と、お前の……」

 

「皆はああ言っているが、お前はどうだアル? 何か新鮮味のある経験でもできたか?」

 

『どうでしょうか? 軍曹殿との間にあったある種の『境界』が取り去られたことは確かですが、別段新しいことを知ったわけでもないでしょう。それが私とあなたの元々の在り方でしたから』

 

「肯定だ。なら……改めて目的遂行のために集中できるな、行くぞアル」

 

『了解』

 

「ノリ気じゃない……頼もしいわよヴィルキス。いいわ、一緒に行くわよ! このまま……神様気取りのスットコドッコイをぶち殺して、この変な宇宙をぶっ壊す!」

 

「あの時お前に言ったこと、忘れちゃいないし、心変わりもしてないぜ! 行こう、マジンガー! 神にも悪魔にもなれる、俺達の力で……地球を救って、未来をつかむ!」

 

「甥がやる気になってるのに俺が後れを取るわけにもいかないな……そういうわけだ。もう少し、付き合ってくれよエンペラー!」

 

「ごちゃごちゃ難しいこと考えるのはここまでだ! おら、ここからは今まで足踏みした分、全力でド派手に行くぜ! ついて来いよゲッター!」

 

「おーおー、皆気合入ってんなあ……こりゃ俺たちも負けてられねえぜ、ヴァングネクス……それにもちろん、ナイン、お前もな!」

 

「はい、キャップ!」

 

 それぞれの乗る機体との対話を経て、今、己の体にみなぎる力を理解する戦士達。

 

 その様子を艦橋の座席から見ていた沖田艦長は、ふと目を閉じる。

 

(これが、『真化融合』……機体と1つになるということか。だとすれば。ヤマトよ……これが、君なのだな……)

 

 『真化融合』は機動兵器に限って起こるものではない。

 ヤマトの艦橋に立つ彼もまた、自身にとっての機体である『宇宙戦艦ヤマト』との間にあった境界が取り払われたのを感じていた。

 

 艦橋にいる者達の中には、突然の未知の感覚に困惑している者も多いようだが、沖田艦長はというと……彼自身も意外なほどに落ち着いていた。

 

(……1年、か……付き合いとしては長いと見るか、短いとみるか……だが、時間など関係ない。今ならわかる……ヤマトよ、君もまた、地球のことを思ってくれているのだな……。ならば……私にもはや一片の迷いも不安もあろうものか。地球を救うまで、共に歩もう……戦友(とも)よ!)

 

 瞬間、カッと見開かれた沖田艦長の両目。

 そこにはもはや、戦いへの迷いはもちろん……強大な敵へ挑むことへの不安も、得体のしれない感覚に対する戸惑いも、かけらも残ってはいなかった。

 

 すぅぅ……と大きく息を吸い込み、

 

「『地球艦隊・天駆』……総員、傾注!!」

 

 ヤマトの艦橋全体に響いた……だけではない。全体通信に乗って、全戦艦、全機動兵器のスピーカーから響き渡ったその声に、それを聞いた者達全員の注意が集まった。

 

「星川の助力によって我らが今しがた至った境地……『真化融合』。これに対して各々、戸惑うところもあろう。未知の感覚に不安を覚えたり、あるいは逆に高揚を覚えていることと思う」

 

 だが、と続ける。

 

「何一つ不安になることなどない! 我らが今、見えざる手と手を取り合って結び付いているのは……今までの戦いでも、常に、自分と一番近くでともに戦ってきた、自らの戦友だ! それと心を通じ合わせ、己の魂をも響き合わせたことの何に怯えることがあろう! 何を怖がることがあろう! 彼らの頼もしさを、強さを、一番知っているのは……自分自身であると思い出せ!」

 

 ヤマトから聞こえてくるその声は……まるで、沖田艦長のみならず、『宇宙戦艦ヤマト』もまたそれに同意し、同調してその意思を響かせているかのように感じられた。

 

「その戦友と互いを理解し、手を取り合った我らがなすべきことは1つだ! 今、目の前に立ちはだかっている最後の敵を倒し、地球に平和を取り戻すことである! この一点において、今までと何も変わりなどありはしないし、それは『彼ら』も当然理解していよう!」

 

 指し示すかのようにヤマトの主砲の砲身が向く先には、『至高神Z』の巨体。

 

 全員の視線がそこに向き……そして沖田艦長は、そして『宇宙戦艦ヤマト』は……最後の戦いの始まりを告げる大号令を響かせる。

 

 

 

「『地球艦隊・天駆』総員、戦闘態勢! これが我らの……最後の戦いである! 最終攻撃目標……『至高神Z』!」

 

「「「了解!!」」」

 

 

 

 




すでに逆転ムードだったところをさらに強化していくスタイル。倍プッシュだ。

次回、蹂躙。
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