「打ち方、始めぇ!」
「打ちー方ー、始めぇー!」
沖田と古代の号令と共に、ヤマトの主砲であるショックカノンが一斉に火を噴く。
何条にも拡散して放たれた光線が、飛ぶ途中で螺旋を描いて1つの巨大な光線になり、その先にあった標的……今にも襲い掛かってこようとしていた『エル・ミレニウム』に直撃。
本来ならば戦艦の砲撃などものともしない強度を誇っているクリスタルの獣は、しかしその一撃で大きくたたらを踏み、そのボディに幾筋ものひびを走らせた。
さらに続けて2発、3発と命中し……宇宙に進出した文明すら滅ぼす次元の兵器は、崩壊して宇宙に散った。
「あれだけ手強かった、あのクリスタルの怪物が、あんなに簡単に……」
「いける……これならいけますよ!」
自分達がやったことではあるが、あっけにとられる島。
その隣で、興奮と喜びを隠せない様子の南部。
他の者も多種多様な反応を示しているが、多くはまだ理解が追いつかないのだろう、島と同じように驚いているばかりの者が多いようだ。
そんな2人を後ろから見ていた真田は、波動砲の試射を行ったときのことを思い出していた。
突如として手にした超兵器。そのあまりの威力に唖然とするしかなく、不用意に使うわけにはいかないと皆が直感した――そんな中でも今と同じようにはしゃいでいた者が1人いた気がしたが――その時を。
呼吸を整え、後ろから一喝する。
「気を抜くな。あの程度は敵にとっても今や雑兵扱いにすぎん。向こうは何せ、無から有を生み出して攻撃するなどという素っ頓狂なことまでやってくるわけだからな」
「ですが、こちらも負けてはいませんよ。俺達にも……ここまで一緒に戦ってきた仲間がいる」
横からそうはっきりと、自信たっぷりに言ってのける古代。
その、自信と決意の炎を宿した瞳を見た真田は、一瞬その姿が、その兄であり……自身の旧友である男とかぶって見えた。
「……ああ、そうだな。何も、何一つ恐れることなどないさ」
「敵、『至高神Z』、さらに手勢の兵器を創造して戦線に投入! 飽和攻撃を仕掛けてきます!」
「航空隊に出動要請! しかし前に出すぎるな、あくまで艦の直衛を優先任務とする。切り込むのは……彼らがやってくれる」
ヤマトの砲声を皮切りに、敵味方が一斉に飛び出していく。
新見の報告通り、アドミラルは『至高神Z』の事象制御能力によって、追加で何体もの『エル・ミレニウム』と『ゼル・ビレニウム』を作り出し、全体に突撃させる。
そしてそれを迎え撃つべく、『地球艦隊・天駆』の機動兵器部隊は各々飛び出していく。
真っ先に飛び出したザンボット3の振るった日本刀状の刃が、エル・ミレニウムを袈裟懸けに断ち切って半壊させる。
続けざまにそこに、拳と蹴りの連続攻撃を放って叩き落し、とどめに三日月の光線『ムーン・アタック』が炸裂。向こう側が見通せる三日月の大穴を開けて、エル・ミレニウムは崩壊した。
「すっげぇや、あんなに強かったクリスタルの怪獣が……もう何も怖くねえ!」
「ちょっと勝平! 気持ちはわかるけど……」
「あんまり調子に乗って前に出すぎるなよ! 確かにすごいパワーだけど、相手だって弱くなったわけじゃないんだから、油断しちゃだめだ!」
「わかってるって2人とも! でもな、こういうのは気持ちで負けちゃだめだ! この力は、俺達とザンボット3の意思がもとになってるって、さっきミツルの兄ちゃんも言ってたからな! さあ……もう一丁いくぜザンボット!」
勝平の号令にこたえるように、ザンボット3がその目を光らせる。
その隣で、勝平達に襲い掛かろうとしていた『ゼル・ビレニウム』。
体を無数のクリスタルの槍に変えて降り注がせようとしていたそれはしかし、立ちはだかったダイターン3の2つの扇に受け止められ、弾かれてしまう。
それらを集結させて機体を再構築したと同時に、ダイターン3の放った『サン・アタック』によって粉々に爆散する。
バラバラになった欠片達は、当たり前だが、今度は再生することかなわないまま消えていった。
「おっと、後ろにもいたのか……サンキューな万丈の兄ちゃん!」
「どうしたしまして! さあ……宇宙の支配者を気取る悪党ども、ダイターン3が相手だ! この日輪の輝きを恐れぬのなら、かかってこい!」
そこから少し離れたところで、宇宙空間を縦横無尽にモビルスーツ達が飛び回っていた。
放たれる虹色の光炎やクリスタルの槍の雨をかすらせることすらなく回避し、飛び込んでいくクアンタとデスティニー。
敵の懐に飛び込んで、目にもとまらぬ連続攻撃で、堅固なはずのクリスタルの鎧を微塵に切り裂いて爆散させる。
フルクロスがマントのような装甲で炎を打ち払い、ストライクフリーダムと∞ジャスティスがレーザーの雨を降らせてクリスタルの槍を1本残らず撃ち落とす。
さらに、攻撃の間を縫うように飛ぶΞガンダムのファンネルミサイルが奥の敵を打ち据える。
その隙に飛び込んだスカルハートがゼロ距離でビームライフルを放って打ち抜き、Ζガンダムがウェイブライダーで突撃して粉砕する。
直後にモビルスーツ形態に戻ったΖガンダム。それに乗るカミーユは、自分の機体を包む不思議な光を見ながら、
(この感覚……俺とゼータが1つに……。いや、それだけじゃない! あの時と同じ……ゼータには俺以外にも、皆の……人々の思いが集まってきている!)
「カミーユさん! それ……」
ΖΖに乗るジュドーが、焦ったような不安がるような声音で通信を飛ばしてきた。
恐らく、今、自分が感じているのと同じことを察し……かつて死者達の怨念を受け止めた結果、自分の精神が壊れてしまったときのことを思い出しているのだろう。
「ああ、わかってるジュドー。だが大丈夫だ……俺はもう、皆の心に押しつぶされたりはしない……いや、皆もそんなつもりはないんだ、きっと。だったら、一緒に戦うだけだ! 同じ……地球の未来を、平和を願う者として!」
「わかった……その覚悟、信じるぜカミーユさん! そうと決まれば、俺も一緒に行く!」
そして、それぞれの持つハイパービームライフルやハイメガキャノンをフルパワーで放ち、反撃に動こうとする敵機を一度に打ち抜いていく。
自分達と機体の、そしてそれに思いを集める者達の願いを載せたビームは、艦砲射撃をも無効化するはずの結晶の鎧をいともたやすく粉砕していった。
「いつでも!」
「どこでも!」
「ロックンロォール!!」
マオとクルツの乗る2機のM9に加え、宗介の乗るレーバテインによる一斉掃射。雨あられと殺到する弾丸。
本来なら『エル・ミレニウム』に傷一つつけられないはずの、小型機動兵器のそれは、今は容易くその体を打ち抜いて火花を噴出させる。
敵側が総崩れになったところでレーバテインが突貫し、それをさらにクルツが狙撃で援護。
体勢が崩れた敵に、『ラムダ・ドライバ』によって破壊の意思をエネルギーに変えた砲弾がゼロ距離で何発も炸裂し、えぐり取るような傷を刻んで、それらをまとめて破壊した。
『エル・ミレニウム』とレーバテイン。身の丈実に100mを超える怪物と、10mに満たない小型の機体。
その差がありながらもたやすく敵をねじ伏せる光景は、ある種痛快なものではあるが……立場を逆にすれば絶望でしかないだろう。
現に、
「なぜ、なぜ奴らがこれほどの力を……『至高神Z』の力がありながら、なぜ我らが押されている? たかだか劣等文明の軍勢1つ、なぜ押し切れない!?」
『エル』も『ゼル』も、生み出した端から次々に落とされていく。
その光景を目の当たりにして、愕然とするしかないアドミラルは、それでもあきらめ悪く、さらに多くの手勢を作り出そうとして……失敗した。
『ようやくつかんだぞ、アドミラル……!』
『至高神Z』による事象制御のための機構に手をかけたアドミラルだが、その力をふるう直前になって……何者かがそれを妨害してきた。まるで、ハッキングのように。
しかし、『至高神Z』のシステムにハッキングをかけて割り込むなど、並大抵の機体にできることではない。それができるとすれば、同等の存在のみ。
そして、今しがた聞こえた声は……
「なっ、これは……貴様なのか、ネバンリンナ!? ばかな……貴様今、その機体に!?」
『見ての通り、この機体は次元獣化した『ソーラーストレーガー』と『ヘリオース』が合体している。当然、前者の一部になっていた私も組み込まれているということだ……それと、星川ミツルはこれを『次元将ソル』と呼んでいるようだ。参考までに覚えておくといい』
「次元将……!? かつて身の程知らずにも『至高神』と『御使い』に挑んだ野蛮人共の名か! その名を今になって、至高神の身である星川ミツル自らが名乗るなど、何の当てつけだ!」
『当てつけだと? ふ、くくっ……!』
「!? 何を笑う……何がおかしい!?」
『これが笑わずにいられますか! 傲慢も自意識過剰もここに極まれりね、アドミラル……この名前はただあくまで、彼がそうしようと思ったからよ。細かいとこは省くけど、彼は宇宙全体を力で抑えつける『至高神』であるよりも、押さえつけてくるものに抗う『次元将』のようにありたいと思っただけ。それとも何、あんた自分と『至高神』を同一視して、あくまで彼が自分を見ていたと仮定した上で、そんな名前は自分への当てつけだーとか思っちゃったわけ? プークスクス、このおじさん恥ずかしっ』
「それは誰を参考に作った部分よ……? 『地球艦隊・天駆』にそんな人いたっけ?」
『さあね? ……もしかしたら、今合体して1つになってるミツルの中から流れ込んできたデータに由来してるかもね』
「余計に誰よ。そんな知り合いいたか……?」
唐突に、割り込んでくるように聞こえ始めたミレーネルの声。
状況を理解していないかのような、緊張感も何もないそのやり取りに、アドミラルはまたしても激昂しかけるが、直後、それどころではない事態になっていることに気づく。
「これはっ……!? 『カオス・コスモス』が……私の領域が、書き換えられていく!? 馬鹿な、こんなことが……『至高神』の事象制御による絶対の優位性が……貴様の仕業か、ネバンリンナ!?」
『気づくのが遅いわよクソジジイ。腐っても不完全でも『至高神』だけあって、プロテクトは厄介だったけど……こんなんでも超文明(笑)の希望を託されたシステムですから? このくらいのことはできるわ。……もうこの宇宙は、あんたの味方じゃない。絶対に負けない位置で戦っていると思っていたところを、盤をひっくり返された気分はいかが?』
アドミラルが何か言い返すより前に、異変は次々と現れていく。
呼び出したばかりの『エル・ミレニウム』や『ゼル・ビレニウム』が急激に弱体化していき、動きも鈍くなり、装甲ももろくなる。
存在そのものの強靭さゆえにかろうじて消滅を免れているような状況だが、それらもしかし、『地球艦隊・天駆』の各艦から飛んでくるミサイルや砲撃の掃射によって、掃除するかのようにたちまち消し飛ばされていく。
アドミラルはこちらも負けじと、再度宇宙を書き換えて自分の領域を取り戻そうとするが、
「ばかな……できないだと!? 『至高神Z』の事象制御能力が、ネバンリンナに……『次元将ソル』に劣っているというのか!? 不完全な材料しかもっていないはずの、まがい物などに……『真化』の極致にあるはずのこの神の力が、なぜ及ばない!?」
「さっきも言った気がするけど……それが理解できないようじゃ、お前は『真化』の『し』の字も知らないってことだよ。『御使い』と同じで」
今度聞こえてきた声は、星川ミツルのそれ。
それと同時に、『次元将ソル』の両隣の空間がゆがみ……次元力の光が収束していく。
ちょうどそれは、『至高神Z』が下僕を創造する時と同じような光景だった。次元力が形を成し、『エル・ミレニウム』や『ゼル・ビレニウム』が、無から形作られる時と。
しかし、作り出されたのはそれらではない、2つの機体。
1つは、絶対値的に見れば絶大な戦闘能力を持つとはいえ、御使いの下僕のうち、最下位の力しか持たないはずの量産機……『アンゲロイ・アルカ』。
もう1つは、ネバンリンナと共に『至高神Z』に取り込まれたはずの、彼女が作り出した自らの肉体にして機動兵器……『アーケイディア』。
顕現するや否や、弾かれるように飛び出した2機は、それぞれ反対方向から『エル・ミレニウム』と『ゼル・ビレニウム』の残りめがけて襲い掛かる。
そして、もはや抵抗する力もないと思しきそれらを、刈り取るように葬り去っていった。
アーケイディアとアンゲロイ・アルカ。それぞれ、エネルギーを収束させて作りだした光の剣を振りぬいて、一刀両断。あるいは、エネルギー砲を放ってまとめて蹴散らしていく。
見ていたアドミラルは、それら2機に乗っているのが、急増のAIやイドムではなく、先程まで自分が話していた、ネバンリンナとミレーネル・リンケ……『次元将ソル』の中にいたはずの2人であるとすぐに察した。
恐らく、ヴァイオレイションの際に失われた彼女たちの肉体の代わりに、星川ミツルか彼女達のための肉体兼機体としてあの2機を作り出したのだろうと。
わずかに残っていた下僕たちを1機残らず刈り取ると、アーケイディアとアンゲロイ・アルカは再び『至高神Z』に向き直る。
「これでもう家来はいなくなったわね」
『星川ミツル、私の体を取り戻してくれたこと、感謝する。……っていうかコレ、何気にオリジナルより強いわよね絶対……なんか複雑』
「いいじゃんネバンリンナ、何か損したわけでもないし。さて、そんじゃお待ちかね……そろそろ終わりにしようか? アドミラル」
その言葉と共に、『次元将ソル』をはじめ、アーケイディアやアンゲロイ・アルカ、
それだけでなく、『エル』や『ゼル』を全て倒し終えた『地球艦隊・天駆』の面々がその視線を、あるいは手にした武器をそのまま向ける。戦場に残った、自分達の最後の敵に。
「っ……舐めるなよ劣等種族共……! この程度のことで、宇宙のごはがっ!?」
と、何か言うのを待たず、『至高神Z』の顔面――と言っていいのか微妙ではあるが、頭があるのであろう位置――に、レーバテインが放ったエネルギーの弾丸が直撃し、大きくのけぞった。
『軍曹殿、『獲物を前に云々』のいつもの決め台詞はよろしいので?』
「わざわざ言ってやる必要も時間もないし、言っても仕方ないだろうからな。しかしアル、さっきの奴らと戦っていた時から思っていたが……この宇宙は『意思』が力を持つ、という言葉を実感できる光景だな」
『ええ。ASのような小型機体の攻撃が、惑星サイズの『至高神Z』に通用しているというのは、なかなかどうしてシュールな光景ですが、我らに有利なことが起こっている分には歓迎しましょう』
「そうだな。それに……どうやら俺達以外にも、もう待つ気がない奴らはあちこちにいるようだぞ」
宗介がそう言うと同時に視線をやると、ものすごい勢いで飛び出したブラックサレナが、ディストーションアタックで至高神Zのみぞおちに激突するところだった。
漆黒の流星となったその一撃を受けて、巨体を『く』の字に折り曲げる黄金の巨神。
「確かにシュールだな」
『でしょう?』
しかもそれで終わらず、ブラックサレナはまるでピンボールのように超高速で動いて四方八方から激突し続ける。
それに業を煮やした至高神Zが、受け止めて握りつぶそうと手を伸ばし……しかしその瞬間、宇宙空間に迸った雷が至高神Zの脳天を直撃し、その動きを強制的に止める。
その電撃……『サンダーボルトブレーカー』を放ったマジンエンペラーGは、続けてエンペラーソードを抜き放ち、一直線に至高神Zめがけて飛ぶ。
そしてその反対側からは、ダブル動輪剣を腰だめに構えたグレートマイトガインが飛来し……
「魔刃……一閃!」
「ダブルゥゥ……」
『動輪剣ッッ!!』
凄まじいまでの威力の一撃が、無防備に突き出したその腕に叩き込まれ、深々とそれを切り裂いた。
惑星サイズの巨体に見合った大きさ・太さの腕が切り裂かれ、その傷は近くで見れば絶壁の谷間のように見えるだろう。
いかにスーパーロボットがパワフルな機体だとは言え、サイズからすればそれは、地形を変えているのと同じ規模の破壊。あまりにも非常識極まりない光景だった。
それを可能にするのが、『意思』が力になる宇宙『カオス・コスモス』であり、そこでのみ可能になる『真化融合』という名の次元の奇跡なのだ。
その光景に歯ぎしりしながらも、アドミラルは次元力でそれを修復し……しかしそれが完了するまでに、また別な方向から巨大な衝撃が撃ち込まれる。
(今度は一体……っ!)
そこに立っていたのは、全身から禍々しい赤い光を放つエヴァンゲリオン初号機と、全身から澄んだ緑色の光を放つユニコーンガンダムだった。
突き出された光の腕と、構えられたビームマグナムが、今の衝撃の出元を物語る。
「これ以上……もう何も、お前の好きなようにはさせない!」
「お前みたいなやつがいるから……オードリーが……皆が悲しみを背負わされるんだ、だから……」
「「今、ここで!」」
瞬間、弾丸のような勢いで飛び出した初号機が、至高神Zのみぞおちに飛び込んで、両腕にATフィールドの光の手甲をまとい、すさまじいラッシュを叩き込む。
同時に、サイコフレームの光を纏ったユニコーンガンダムの飛び蹴りが肩口に直撃し、さらに続けて拳に蹴りにと連撃を打ち込んでいく。
とどめとばかりにタイミングを合わせて撃ち込まれた拳は、至高神Zの巨体を大きく弾き飛ばして後ろに押し込めた。
そこに間髪入れずに、真上から急降下しながらヴィルキスが強襲。
体勢を立て直せていない至高神Zの背後、翼めがけて、エネルギーを注いで大剣にしたビームサーベルを構え……急降下する勢いに乗せて一気に、振り下ろす。
「どぉお――りゃああぁぁあああ!!」
雄々しいと言っていいまでの咆哮と共に振り下ろされた光の刃は、6枚ある翼のうちの1枚を、豪快になんと根元から切り落とした。
切り離された翼は、少しの間、光の粒子をまき散らしながら宇宙空間を漂っていたが、その後、自らの存在を保てなくなったかのように崩壊し、消滅する。
「このッ……矮小な羽虫がぁ!」
これまでで一番明確に痛打となったその一撃を受けて、アドミラルは怒りのままに次元力を開放し、虹色の光炎を放ってヴィルキスを焼き滅ぼそうとする。
が、それがヴィルキスに届くより前に、
「誰が羽虫だって!?」
「じゃあその羽虫一匹殺せないおじさんは、ミジンコか何かかなぁ?」
間に割り込んできたラピュセルとアントワネットの弾幕がそれを相殺し、防ぎきる。
さらに、取って返して飛来しするヴィルキス。
その背後には、付き従うようについてくる他のラグナメイル達……テオドーラにクレオパトラ、レイジア。それに加えて、焔龍號もそれに続いた。
「私たちも一緒に行くぜ、アンジュ!」
「OKみんな! そんじゃ、せっかくラグナメイル(っぽいの含む)がこれだけ揃ってるんだし……一丁みんなでコレいってみるわよ!」
それと同時に宇宙空間に響き始めるアンジュの歌声。それに呼応して、ヴィルキスの……いや、ヴィルキスだけでなく、テオドーラを含む他のラグナメイル達の両肩の兵器が目覚めていく。
「こっ、これって……え、何で……? アレクトラ、確かこれは……!?」
「『ディスコード・フェイザー』が……ばかな、あれは血と指輪がなければ使えない兵装のはず……」
「何言ってんだよお前ら! 今の私達は、こいつらと1つになってるんだぜ? システムに鍵がかかってようが、そのシステムそのものが協力してくれてんのに、今更ってもんだろ!」
「なるほどな……つくづくとんでもない力だ。だが、それなら……好都合!」
「わかった! つまりもう難しいこと考えないでなるようになればいいのね!」
若干のやけくそや思考放棄が入っているサリアも含め、ヒルダ、ジル、そして今まさに歌っているアンジュとサラマンディーネはそろって精神を集中し、それに応えてラグナメイル達は力を高めていく。
『真化融合』によってパイロット達と心を一つにしたラグナメイル達は、エンブリヲによってかけられた封印をいともたやすく振り切り、全ての力を彼女達に差し出していた。
そして次の瞬間、次元を破壊する嵐が……5つ同時に放たれる。
「受けてみろ! これが私の……」
「私たちの……」
「「「全力……全開!!」」」
次元破壊兵器『ディスコード・フェイザー』の一斉掃射という、その力を知る者からすれば悪夢のような光景。
5つの嵐はしかも、収束して力を大きく増し、惑星をも飲み込む大嵐となって至高神Zを飲み込んだ。暴走しているに等しいエネルギーがその巨体を傷つけ、砕き、振り回して削り取る。
それに耐えるのに精いっぱいで、翼の再生もできないでいる至高神Zめがけて、さらなる災厄が襲い来る。
なんとその、至高神さえ振り回される次元の暴風の中を突っ切ってくる者がいた。
ゲッター線の光をまとって眼前に突撃してきた巨龍……真ゲッタードラゴン。
そしてその頭の上に腕組みをして仁王立ちで乗る深紅の鬼……真ゲッター。
「よぉ、いいザマじゃねえか、至高神様よ。散々見下してた相手に好き放題されるってのは……一体どんな気分だ?」
「流……竜馬……っ!」
真ゲッターと真ゲッタードラゴン、2つのエネルギーが収束し……真ゲッターの手の中にまばゆい光となって形を成していく。
まるでさやから引き抜くかのような動きの後に、真ゲッターのその手には……ゲッターのエネルギーで形作られた巨大な武器……トマホークが握られていた。
「うおぉぉぉおおおぉぉぉおっ!」
咆哮と共に、頭上高く――宇宙空間を突っ切って伸びるそれは、もはや高いだの大きいだのの領域ではない気もするが――振り上げられるその刃。
先程は容易く受け取め、傷一つ負うこともなかった武器。
しかし、今目の前にあるそれは、先ほどまでとは段違いの威圧感を放っており……考えるまでもなく『危険』であると、アドミラルの機械の脳内に警鐘を鳴らす。
が、わかっていてもそれを防ぐだけの力すらもはやなく、
「ゲッタァァアアァァ……トマホォォオォオオォク!!」
裂帛の気合と共に振り下ろされたその一撃は、受け止めて防ごうととっさに掲げたその腕と……その向こうにあった、ヴィルキスが切り落とした1つを除く、片側残り2枚の羽根、さらにはその延長上にあった片足に至るまでを……一気に断ち斬った。
一瞬にして左右非対称極まりない姿になってしまった至高神Zに、あろうことかさらに追い打ちをかける真ゲッター。
振りぬいてなお健在だったトマホークをさらに構えなおし、今度は横一線にそれを振るう。
「もう一丁……もっていきやがれェ!!」
胴体を横なぎに真一文字に。
両断こそされなかったものの、深々と大きな傷を刻み、あまりのダメージに至高神Zの体がきしみだす。
「お、の、れぇぇえええぇ!!」
しかし、そこまで好き放題にやられた結果としてアドミラルは我を忘れ、残ったもう片方の腕を掲げて真ゲッターに向けると、その手元に次元力を収束させる。
今度は光炎ではなく、無数の隕石を顕現させてすさまじい速さで射出し、真ゲッタードラゴンもろとも粉砕しようとする。
先程、アントワネットやラピュセルが迎撃したものよりもはるかに強力なそれを、しかし、次の瞬間四方八方から放たれたビーム砲が打ち抜いた。
「そうは……させん!」
爆炎の中を縫うように飛ぶのは、コの字型の移動砲台……サイコミュ兵器『フィン・ファンネル』。
それを操るアムロ・レイの指示する通りに、複雑な動きで攻撃をかわしながら隕石を迎撃し、誘爆させていく。
その針の穴を通すようなコントロールに戦慄しつつも、アドミラルは負けじと追加で隕石を放ち、面制圧爆撃ばりの量で圧殺しようとする。
だが今度はアムロに加え、ナデシコやダナン、ネェル・アーガマやラー・カイラムといった戦艦の掃射により、こちらも面制圧で隕石の豪雨に対抗して来る。
それに混じる形で機動兵器達までもが迎撃に加わり、物量で押しつぶすはずが逆に押されるまでの状況になる。手元で顕現させたばかりの隕石が打ち抜かれて誘爆し、こちらの視界がふさがれ……
「ぬああぁっ!?」
その隙を逃がさないとばかりに放たれた攻撃が、弾幕を打ち抜いて至高神Zに届く。
立ち込める煙の向こうから弾丸のような勢いで現れたのは、暗い灰色の機動兵器……ヴァングネクス。
グランヴァングにヒュッケバイン、グルンガストにアーケイディアも続いて現れる。
「絶対に……逃がしませんから!」
放たれたミサイルと陽電子砲に続く形で5機が飛翔し、途中で散開。
グランヴァングのアンチプロトンスマッシャーとアーケイディアのエネルギー砲が放たれ、ロングレンジから直撃。
それと時を同じくして、突撃するヴァングネクスが無数のミサイルを放ってけん制しつつ至高神Zの動きを止め、視界も再び封じる。
周囲を旋回しながら電磁加速砲の連射を浴びせ、至高神Zのをハチの巣にするヴァングネクス。それをさらに援護射撃にする形で、グルンガストとヒュッケバインが飛び込む。
「正面から飛び込む!」
「こっちも! 計都羅候剣……暗剣殺!」
連撃を叩き込むヒュッケバインと、一刀両断のグルンガストの刃をそれぞれ叩き込まれて怯んだところに……その2機の横を猛スピードですり抜けたヴァングネクスが、自分を弾丸にするかのような勢いで突撃し、その右手に構えた大型陽電子砲の銃口を突き付け……否、叩きつける。
「こいつで……ぶちぬけええぇぇえっ!!」
そしてそのままそれを発射。ゼロ距離で殺到する破壊光線に押され、大きく後退。
そこにさらにまたヴァングネクスが、今度は両手の陽電子砲を同時にチャージする。
いや、ヴァングネクスだけではない。
グルンガストは胸部のパーツを展開し、グランヴァングとヒュッケバインは砲撃機構と機体を接続し、アーケイディアは背部のエネルギーフレームを変形させて砲口に変える。
そして合図もないままにタイミングを揃え……それぞれの全力砲撃が一斉に放たれ、至高神Zを直撃。
陽電子砲に反陽子の弾丸、破壊光線に重力崩壊の砲弾……全身に様々な一撃を受けてその巨体を軋ませる至高神Z。
そして、そこに……とどめとばかりに死を突き付ける存在が歩み寄る。
どうにか体勢を立て直そうとするアドミラルの眼前に……いつの間にそこに現れたのか、背中に『0』の文字を背負った終焉の魔神が仁王立ちしていた。
「お前の野望もここまでだ……覚悟しろ、アドミラル!」
直後、その凶悪な双眸がぎらりと光ったかと思うと、背部の『ZEROスクランダー』が変形し、巨大な紅蓮の翼……ジェットスクランダーに姿を変えた。
それが、魔神パワーによってさらに巨大になり……そして、胸部の放熱板共々赤熱し始める。
まるで太陽のように力強い光と熱は、アドミラルからしてみれば、自らに死を宣告する死神の鎌のきらめきだった。
『至高神Z』からしても冗談としか思えないようなエネルギーを練り上げたマジンガーZEROは、次の瞬間、何の迷いもためらいもなくそれを爆発させる。
「こいつで終わりだ……ダイナミックファイヤァァアアァァッ!!!!」
胸部の放熱板と背部の翼から放たれた熱線は、いきなり太陽が5~6個出現したのではないかと思うほどの光と熱。
アドミラルが必死で展開した次元力による防御を、濡れた和紙を刃物で突くかのようにあっさりと、容易く消し飛ばし……惑星を貫き火の玉に変える熱量が『至高神Z』に殺到する。
「
形容のしようもないほどの暴虐的な熱を浴び、全身を焼き尽くされていく至高神Z。
その中にいるアドミラルの断末魔の悲鳴と共に、ついに限界を迎えたその巨体は、節々から炎を噴出して軋み、割れ、砕け……崩壊していく。
宝石のように輝く宇宙の中心で……産声を上げて間もない至高神は、その全身を炎の中で朽ち果てさせ……崩れ去る砂上の楼閣のように、後に何も残すことなく、あっけなく次元の粒子となって宇宙に溶けて消えた。
「ま だ だ……!」