当然のことながら、彼らは喜びに沸いた。
一度は絶望的な状況に叩き落とされながらも、起死回生の一手たる『真化融合』によって力を得て、見事にアドミラルと『至高神Z』を打倒すことに成功した。
これまでの一連の出来事の黒幕だと自ら明かした奴を倒した以上、正真正銘、これでもう自分達を阻む者はいなくなったのだと。
後は、ユリーシャが言っていた通りに奇跡を起こし、地球を救うだけだと。
「なんか僕、最後の方出番なかったね。皆を『真化融合』させる後押ししたら、なんかもう皆勝手に大暴れしてあっという間に終わった感じ」
「そう言われればそうだな」
「いいじゃない。楽できたんだと思えばそれで」
「ああ。それに、君の助力がなければ、俺達は活路を切り開くこともできなかったんだ。その意味を考えれば、君は見事に大役を果たしているさ」
「それに俺らの方だって、あの野郎にはさんざん好き放題やられて言われてた分をどの道返さなきゃいけなかったわけだしな。それで納得しとけや」
ぽつりとつぶやいたミツルに、総司やミレーネル、アムロや竜馬がそう返し、それを聞いたミツルも『まあいいか』と納得することにした。
すると、ふと気づいたようにココが、
「それにしても、きれいだねこの宇宙……戦ってる途中は見てる余裕なかったけど」
「そうだね。っていうかそもそも、最初の方、私もココもあのでかいのに取り込まれて全然わかんなかったし……こうして見てみると、すごく幻想的で……ほんとに、きれい」
「それをバックに据えて、青い地球がそこにあるっていうこの光景も重ねていいもんだよ。景色を肴に勝利の美酒でも飲みたいくらいだ」
「同感ね。私たちの世界では、もう見られなかった景色なわけだし」
マオとミサトがいつも通りの調子でそんなことを言い、2人と飲み仲間であるスメラギもくすりと笑って同意する。
しかし直後には、気を引き締めて、
「けど、まだ最後にやることが残ってるわ。……いくら外見はきれいでも、あの地球には……もう生命は残されていないのだから」
「ああ、そうだな……ユリーシャさん? それで、ここからどうすればいいんだ? アドミラルは倒したけど……どうすれば地球や、大マゼラン銀河を復活させられる?」
「っていうか、今更だけど……そんなこと本当にできるのか……? 失われた命をよみがえらせるだけでなく、惑星や宇宙すら元通りにするなんて……」
「ここまできて無理、じゃしまらねえだろうが。さっさと教えてくれよ、イスカンダルの姫さん」
いつも通りと言えばそうなのだが、ガラの悪い調子で急かす竜馬に、ユリーシャは1つ1つ、口にしながら自分でも確かめるように話していく。
「さっきも言ったけど、この宇宙は因果が混濁した特殊な宇宙。この宇宙で起こったことは、意思によって引き起こされる超常的なものであると同時に、通常のあらゆる法則にとらわれない性質を有する。そしてそれには、時間や事象そのものの不可逆性も含まれる」
「時間を……巻き戻せるというのか?」
信じられない、といった様子で真田が思わずつぶやいた言葉を、ユリーシャは頷いて肯定する。
「過去にはそれを可能にした者がいたという記録もある。けど、今回やるのはそうじゃなく……宇宙そのものの修復と同時に、それと同期させる形で周辺の空間の事象を巻き込んだ回帰を行う」
「ええと……ユリーシャ。もうちょっと優しく説明したり、できない?」
言いづらそうに森が言った言葉に、ユリーシャは苦笑しつつ言い直す。
なお、声には出さなかったが、同じように理解に窮していた面々も少なからずおり、心の中で『森船務長GJ』と親指を立てていた。
「要するに、この『カオス・コスモス』は……宇宙空間の状態としては異常な状態なの。さっきまで言ってた、『原因と因果が混濁云々』なんていうのは、普通の宇宙じゃ絶対に起こらないことだから、当然よね。そして、異常な状態であるのなら、元に戻さなければならない。ここまでわかる?」
頷く森。それにつられてか、他のヤマトクルー達の幾人かも同じように首を縦に振った。
「その『異常』を元に戻す時、この空間で起こったことを選択的に巻き込んで『異常』として認識させ、元の状態に戻すの。宇宙を直すついでに、起こったことをなかったことにする、といえば……わかりやすいかな」
『補足、ないしさらにかみ砕いて説明するなら……ゲームのリセットボタンだ』
そこにさらに、ネバンリンナが割り込むようにして続ける。
いきなり方向性の違う単語が出てきたことに、思わずといった様子で勝平が聞き返す。
「リセットボタン? どういう意味だ?」
『神勝平、お前くらいの年頃の子供なら、ゲームの1つくらいはやったことはあるだろう。その時、ボス戦の手前でセーブして、負けたらリセットしてやり直す、というやり方をとったことはないか? あるいは、お目当てのモンスターをゲットしようとして間違って倒した、でもいいが』
「そりゃまあ、あるけど」
『今のこの宇宙が、まさにそれが可能な状態だと思えばいい。至高神Zの誕生と同時にカオス・コスモスが展開……それがゲームのスタート地点として、そこから後、地球やら銀河やらが大変なことになった。けど幸いにまだセーブはしてないから、全部リセットして元通りにする』
「なるほどわかりやすい」
「けどそれだと、事象ごと元通りにするのよね? あいつも復活しちゃうんじゃないの?」
かなめがそう聞くと、『普通ならそうだ』と肯定するネバンリンナ。
『そのために、ユリーシャが言っていたように『選択的に』事象を復活させる。地球や銀河は復活させるけど、至高神Zやアドミラルは復活させない、といった具合にな。そしてそれを行うには、至高神Zと同じレベルの事象制御能力が必要になり……それが可能なのは、奴だけだ』
そう言ってネバンリンナは、アーケイディアを動かして、ミツルの乗る『次元将ソル』に視線をやる。
自然と、他の面々の視線もそちらに集中する中、ユリーシャは、
「宇宙の書き換えや事象の選択と回帰……それは最早、事象制御のレベルではないわ。いうなれば……かつて別の世界で起こった次元の奇跡……『時空修復』」
「時空……修復……」
「至高神Zが消え、彼こそがこの『カオス・コスモス』における絶対者となった今……彼ならば、それができるはず」
「……そういえば、先ほどは流してしまいましだが……」
「アドミラルの野郎、妙なこと言ってたよな? ミツルが『至高神』だとか何とか」
ナインと総司が思い出したように問いかける。
他の者も、覚えていたが流していた者、言われて今『ああ、そういえば』と思い出した者、そもそも聞いていなかった者と様々だが、その当のミツルはというと
「あーはい、なんかそうみたいです。実はかくかくしかじかで」
「ほうほう……お前人間じゃなかったんだな」
「ミツル君が神様かー……何か実感ないね」
「そのくらいすごい力を持ってるっていうのは今目にしたばっかりだけどね」
「権能や信仰の対象という存在としてではなく、超常的な力を有する者としての呼称なわけだな。いや、その気になれば近いことは可能なのだったか」
総司に続けて、千歳、ロッティ、ヴェルトとそう続くが……ある意味では予想通りというべきか、それを知ってなお、特に何も……いい意味でも悪い意味でも気にしたような様子はなく、普通に語り掛けてくる。
そしてそれは、『地球艦隊・天駆』の他の面々も同様だった。
そうなるだろうと予想はしていたものの心のどこかでまだ不安があったミツルは、それを聞いてほっとしたように、
「まあ、なんとなくわかっちゃいたけど……全然驚きもしなければ気にした様子もないですね、皆さん」
「いやいや、驚いてはいるぜ? ただまあ、今更人間じゃないってわかったところでなあ」
「そうそう、宇宙人からアンドロイドまでもともと色々ごちゃまぜになってる部隊だしね、私達。今更神様が増えたところで何も問題ないわよ」
「問題ない、んですかね……?」
「いいんじゃないの? たかだかちょっと呼び名が変わった程度のもんでしょ。……今思うと、そのいきなり髪色が変わったのも神様パワーの影響なわけ?」
「でも、仮にも神様なんだし……拝んどいたらご利益とかあるかな?」
「……。(パンパン)……」
「おい、誰だ今柏手打った奴?」
「神様、今度のテストで100点取れますように!」 ← 勝平
「ナンパが成功しますように!」 ← クルツ
「アキトと一生一緒にいられますように!」 ← ユリカ
「アンジュと私に子供ができますように!」 ← ヒルダ
「はいそこ、具体的な願いを述べない……っていうかヒルダは生物学的に無理な願いことをするな。僕だけじゃなくアンジュも困ってるだろ」
「なんだよ、神様なんだからそんくらいできるだろ!? 生むのは私でもいいからアンジュとの……っていうかそうだ、一時的にアンジュを男にして私をにn……」
「ストップ! 何をすごいこと考えついて言っちゃってんのヒルダ! やめなさい、子供も聞いてるのよ!」
『小じわが減って肌年齢が若返りますように』 ← スメラギ
『世にはびこる転売ヤーが絶滅しますように』 ← クルーゾー
(お二方、なんで秘匿回線でそんなこっそり願い事を……クルーゾーさんの方はちょっと真剣に検討しちゃったじゃないか。気持ちわかるから)
実は結構な衝撃の事実だったはずの『星川ミツル=至高神』という部分をあっさりと流した上、そんな緊張感のないやり取りを繰り広げる『地球艦隊・天駆』の面々。
それをどうにか振り切り、話を前に進めようとした…………
……その時だった。
「ま だ だ……!」
―――バ キ ン
「「「!?」」」
突如として宇宙空間に響いた、何かが割れるような音。
はっとして皆がそちらに目をやると……カオス・コスモスに、一条の亀裂が入っている。
さらにそこから二度、三度と音が聞こえ……そのたびに亀裂が大きくなる。
まるで、卵の殻を破って中から何かが生まれようとしているような光景。
しかも不吉なことに……その、聞こえてきた声には、皆、聞き覚えがあった。
空間の破片をまき散らして広げられた亀裂。その奥から2つの手が伸びてきたかと思うと、その亀裂を強引に左右に押し広げ……滅んだはずの『至高神Z』が、そこから再び姿を現した。
「至高神Z……アドミラルか!」
「野郎、生きてやがったのか……どっかの大魔王最終形態みたいな登場しやがって!」
「完全に消滅したように見えたのに……」
「至高神は、不滅の存在だ……『真化』の境地に至り、同じ地平に立つことができた貴様らでも……その根源たる権能そのものを破ることはかなわなかったようだな……!」
そう話すアドミラルの顔は、かつてのアールフォルツ(のアンドロイド)と同様に大きく損傷していた。人工皮膚と思しき部分がはがれ、その下の機械がむき出しになっている。
「だったら何度でも消し飛ばしてやるだけだぜ! 偉そうに不滅だとか言ってやがるが……」
「その姿を見るに、貴様も無傷で済んだわけではないようだし……『至高神Z』自体も完全に復活できたわけではないらしいな」
竜馬と鉄也の言う通り、アドミラルのみならず、至高神Zもまた、復活したとはいうものの、その姿はひどく傷ついた状態。
大まかには再生しているものの、6枚あるはずの翼は右側に2枚、左側に1枚の計3枚しかなく、しかも右側のそれの片方は半ばから折れてしまっている。
左腕は半ばから、右足はひざ下から先が焼失しており、頭部の天使の輪も欠けている。その他にも大小の破損があちこちに見て取れた。
登場時ですでに満身創痍といったその有様に、一度は身構えた『地球艦隊・天駆』の面々は、大部分がやや空気を緩めるが……逆に幾人かは、その状態でなぜ出てきたのかと、アドミラルの考えを読み切れずにいぶかしんでいた。
「……ふふ、ふふふ……ふふふふふ……」
「な、何だアイツ、いきなり笑いだして……」
「気持ち悪い……」
唐突に聞こえ始めたアドミラルの笑い声に、率直に感想を言葉にしたリョーコとアスカ。
「認めよう、確かに私とこの、不完全な至高神Zでは、貴様らに勝つことはできないようだ……まさか『真化』の極致に、ほんのわずかとはいえ手をかけて見せるとは思わなかった……貴様らを甘く見ていたつもりはなかったのだが……見通しが甘かったということか」
だが、と続ける。
「それでも……そうだとしても、勝つのは私だ……!」
「言ってろ機械人形野郎! またもう1回、跡形もなく消し飛ばして……」
「……まて、様子がおかしい」
その瞬間、何かに気づいたアキトが竜馬を制する。
なぜ止める、と竜馬が聞き返すより先に、至高神Zはその全身から黄金の光を放ち……同時に、宇宙空間越しにそのプレッシャーを肌で感じ取れるほどの膨大な次元力を練り上げ始める。
「まだこれほどの力を……」
「野郎、最後に一発逆転でどでかいのを一発かますつもりか!?」
「いや、これは……まさか!」
計測された数値その他のデータを見ていた真田が、何かに気づいたように口にする。
同時に、各機各艦で同じようにデータを見つつ至高神Zを観察していた面々……テッサやスメラギ、ルリやナインといった面々がその表情を引きつらせる。
「ナイン、何かわかったのか!? あの野郎は一体何をしようとしてる!?」
「キャップ、これは……」
だが、絶句するナイン達よりも先にそれを、予想という形ではあるが口にしたのは……宗介とアキトだった。
「……追い詰められた悪党が苦し紛れにやらかすことと言えば、相場は決まっている」
「そうだな。ある種のお約束ではあるが……実際に目にするとそれどころではないか」
「どういうことだよアキト!? あの野郎いったい何を……」
「今宗介が言った通りだ、奴は最後の悪あがきに及ぼうとしている……こういう場面で悪党がやらかすことと言えば、逃走や命乞いを除外して考えれば……大きく分けて2つだ。1つは、せめて一矢むくいんがための、破れかぶれの特攻。そしてもう1つは…………
……自爆だ」
それを聞いて、異常なまでに……それこそ、制御可能なのかどうか怪しくなるほどに高まり続けるエネルギーの意図を察して青ざめる面々。
「野郎……俺達を道連れにするつもりってことかよ!?」
「冗談じゃないわ! せっかくここまで来たってのに……こんなところで死んでたまるか!」
「各艦、距離をとって! 爆風に巻き込まれないように……巻き込まれない、ように……?」
いち早くそう紙字を出したスメラギだったが、その、言っている途中で……自分の言葉の中からふと、恐ろしい懸念に突き当たって青ざめる。
そしてそれは、彼女のみならず、他の面々も同時に考えついていた。
「お、おい……巻き込まれないようにって、どのくらい離れればいいんだ?」
「あの大きさだぞ!? エネルギーを暴走させたとしてどれだけの規模の爆発になるのかなんて、想像も……」
「アル! 計算できるか!?」
『当機では演算機能が足りません。こういった方面は、ナイン嬢かアナライザー、あるいはネバンリンナが適任でしょう』
「今、計算中デス」
「ですが、不確定要素が多すぎて……しかし、あの大きさですから、仮に同等の大きさの惑星の超新星爆発に換算した場合、単純計算で少なくとも……」
『……計算の必要などない。する意味もない』
ナインの言葉を遮って言い放たれたネバンリンナの言葉。
「どういう意味です、ネバンリンナ? そちらはもう計算が終わったのですか?」
『今言った通りだ、そんなことをする意味はない。忘れたのか、至高神Zは、自爆だのなんだのをする以前に、単体でふるう力として、銀河1つを破壊するだけのそれを発揮したということを』
「っ、そういや……じゃ、じゃあまさか、あいつが自爆するとなると、威力はそれに匹敵するか……それ以上ってことか?」
「それ以上ってなんだよ!? 地球がある銀河の消滅だけじゃすまないってことか!? 直径どんだけの爆発が起こるってんだ!」
「天の川銀河の直径は、約10万6千光年です、それ以上となると……」
「いや、いい。単位がすでにえぐすぎる……ネバンリンナが『計算する意味がない』って言った理由がよくわかった。そんなもんワープしても逃げるのは無理だ」
「それに仮に逃げられたとしても、それじゃ地球がなくなっちまうじゃないか! いや、それどころか太陽系とか銀河も消えるんだけどさ……どうすりゃいいんだよ! その後に『時空修復』すれば、それも元に戻るのか!?」
「ユリーシャさん!?」
「わ、わからない……そこまでの規模になると、『カオス・コスモス』自体が崩壊してしまう恐れも……もしそうなったら、起こってしまった事象を修復することができなくなる……!」
「じゃあつまり、何が何でもあいつの自爆を止めなきゃいけないってことだな!」
「どうやって!? すでにとんでもないエネルギーが渦巻いてるんだぜ! 攻撃でもしたら暴発しちまうんじゃ……」
「その通り……もう手遅れだ地球人達よ! お前達にはもう、滅びの運命しか残されてはいない!」
話を遮る形で言い放つアドミラル。
その崩れかけの顔には、アンドロイドとは思えないほど……悪い意味で人間的とでも言えばいいのか、狂気的な笑みが浮かんでいた。
「大人しく我らの支配を受け入れて恭順していれば、こんなことにはならなかったものを……この滅びを呼び込んだのは、貴様ら自身の選択と知れ!」
「黙れ、どいつもこいつも責任転嫁ばっかり……それに、そんなことしたらお前も死ぬだろうが! 自爆してまで俺達に一矢報いたいかよ!」
「何を言う? 私は滅びぬよ……いや、一度死にはするだろうが、その後また復活する! 言っただろう、至高神とはそもそもが不滅の存在なのだと! 全エネルギーを放出して次元ごと破壊する以上、それがいつになるかはわからないが、私と至高神Zは必ず蘇り、この宇宙に再臨する! そしてその時こそ、新たな宇宙の支配者として君臨す……っ!?」
「それをさせると思ってんのかお前は……!」
その瞬間、『次元将ソル』が放った光が『至高神Z』を丸ごと包み込み、光でできた多面体のようなもの……次元牢の中に閉じ込めた。
「星川ミツル……いや、『次元将ソル』……! 無駄だ、貴様とて、同等の存在であるこの至高神Zの自爆を止めることは最早不可能だ!」
(……っ……そう、みたいだな……なんとなくわかる。これはもう、止められない……!)
「だが貴様も恐らくは、死を経ていつか復活するだろう。貴様とはその時に雌雄を決してやる……今からその時を楽しみにしているがいい!」
「そんな時は来させないよ……」
次元牢を破ろうと内側から押し広げる至高神Z。
その力を外側から必死で押しとどめる次元将ソル。
2つの力が拮抗するがゆえに、双方身動きが取れないが、さすがに自爆の時が来てしまえばそれは破られるだろう。そういう意味では、時間は至高神Zの、アドミラルの味方だった。
「ふはははっ、どうやってだ? 私を封印するか? それとも他の銀河に転移させるか!? それもこの次元力の乱流に阻まれて不可能であることくらいは貴様でも分かるだろう! 貴様こそ無駄なあがきはやめて、運命を受け入れろ!」
「そういうことを言われて、僕ら地球人が諦めたためしがないってことくらい。お前も知ってるだろうが……! ネバンリンナ! これどうすればいいとか演算できる!?」
『さっきからやってるわよ! けど、銀河を破壊する規模のエネルギーをさらに暴走させるようなバカげた威力の爆発なんて、そうそう防ぐ手段があるわけないでしょうが! 現存するどんな宇宙規模災害より対処難しいっつーの!』
「出た、ネバンリンナのやさぐれバージョン」
「相変わらず豹変度合いえぐいわね」
『そこ、うっさい! 同等のエネルギーをぶつけて相殺……無理、そんな力発揮できない。できるとたら『次元将ソル』だけど、そんなことしたらどっちみち天の川銀河くらいは余波で滅びるから意味がない……。エネルギーごとどこかに飛ばしたり、封印する手も使えない……爆発を止めるのも、押しとどめるのも無理……やばい、詰んでる……』
ネバンリンナの、アンドロイドみをもはや感じさせない悲痛そうな声に、ますます不安になる面々。
そんな中、悔しさをこらえきれないとばかりに、勝平が叫ぶ。
「くっそぉぉっ! せっかくイスカンダルまで行って『コスモリバース』持ち帰ったっていうのに、こんなところで全部無駄になるなんて嫌だぞ俺は!」
「あんただけじゃなくて全員いやよ、落ち着きなさい勝平!」
「16万8千光年の旅だもんな。地球じゃ絶対に作れないものを、イスカンダルまでもらいに行って……3つの世界を救うために、本当に大変な旅路だったもんな」
「それを……その道のりを、僕らを信じて送り出してくれた皆の思いを、無駄にしちゃ絶対にだめなのに……コスモリバースさえ使えれば、地球は救われるのに!」
「その前に地球とか諸々元に戻さないといけないけどね! 真っ赤な海とか干上がった海とか時空融合とか、そういうの問題じゃないレベルでおかしなことになってるから……それもどうしたらいいのかって結局まだ……」
『……それだ』
ぽつり、と、ネバンリンナがつぶやいた。
「……!? ネバンリンナ、何か思いつ……」
『話は後だ! ナイン、アナライザー、手を貸せ! いや、他の演算機能を持つコンピューターも全て接続して演算を手伝え! 他、メカニックや有識者もありったけ集まって手を貸せ! イスカンダルのユリーシャ、お前もだ! 星川ミツル、お前はもう少しの間アイツを抑え込んでくれ! その間に必要な計算と解析を終えて結果を導き出す!』
「何か突破口が思いついたのですか、ネバンリンナ!」
「俺達も何か手伝えることなのか!?」
『ああ、うまくいけば状況を打開できるだけでなく、一気にすべて片付くかもしれん! そのためにも力を貸してくれ! 鍵となるのは、『次元将ソル』と、コスモリバース、そして……
『波動砲』だ!!』