この後のエピローグと合わせて、2話同時投稿になります。
【☆月☆日】
3つの世界が『時空融合』により破滅の危機に陥り、しかし『地球艦隊・天駆』の活躍によってそれは阻止され、世界が救われた……と、いうことになっている。
実際は一度滅んでから復活させられた形なんだが、まあ細かいことは言いっこなしだ。
そんな記録は世界のどこにも……それこそ、その場にいた者達の頭の中にしか残っていないわけだし、過ぎたことをわざわざ蒸し返して不安をあおる意味もない。
ゆえに、あの日、世界は滅びず救われ、悪は滅びた。
ただ単に、それだけが歴史に残され……これからも地球は回っていくことだろう。
―――とまあそんなわけで、
3つの地球が救われてから、しばらくの時が過ぎ……それぞれの世界は、国々は、徐々に元通りの生活を……あるいはそれ以上に改善された状態にまで、取り戻しつつあった。
3つの世界を渡り歩いて仕事をしていると、それがよくわかる場面に出くわすことが多いんだよね。
ついでにじゃないけど、一緒に戦った仲間達ともよく会って、話を聞けたりしてるし。
そうだな……せっかくだ。あの後のことを振り返る意味でも、順序良く書き連ねていってみようか。
死者の領域でアドミラルと『至高神Z』にとどめを刺した後、僕は何事もなかったかのように通常空間に復帰。そこでは、『地球艦隊・天駆』の皆が待っててくれていた。
そこできちんと、全部終わらせてきた旨を伝えて……今度こそ、ようやく戦いが終わったことに、皆喜んで歓声を上げていた。
その後、役目を果たした『地球艦隊・天駆』はそこで解散し……それぞれの世界へ戻っていくことになった。それぞれ、やるべきことをやるために。
世界は3つともきちんと修復され、『時空融合』の危機も去っている。
しかし、今回のことで、自分達の世界と隣り合う別な地球という『並行世界』の存在が明らかになったため、その関係で色々と対応すべきことが出てくるだろう。
具体的に何が必要かなんて、上げ連ねればきりがないから省略するけど……その対応のために、僕らにもきっとできることがあるはず。
仮にそれがない、あるいは終わったとしても、今度は僕らは僕らで、その世界でやるべきこと、あるいはやりたいことをする番だ。平和になった世界で、戦いばかりだった今まではできなかった……やりたかったことを。
そんな希望も胸に抱きつつ、『地球艦隊・天駆』は、すっぱりそこで解散となった。
なお、それぞれの世界には、『パラレルボソンジャンプ』で帰る手もあったけど……準備が面倒だし、艦隊各艦かなりダメージ受けてる状態だったので、僕がそれぞれの世界に『次元転移』で送ってあげました。
今の僕なら、これくらいちょろいもんである。もともとの『至高神ソル』としての力に加えて、とどめ指した時に『至高神Z』の力もまるっと取り込んだからね。
また、生贄にされた面々は、『至高神Z』が倒されたことで無事に解放された。
そのうち、アウラさんは自力で『宇宙世紀世界』に帰った。
レナードやエンブリヲ、闇の帝王やブラックノワールは……もともと死んでたからかな、戻ってくることはなかった。
ただ、最後の瞬間、テッサ艦長が……少しだけ、レナードの声を聴いた気がした、らしい。
そして、スターシャさんについては、移動手段がないとのことだったので、僕が送った。
どこにって? もちろんイスカンダルに。
……自分のことながら、マジででたらめだよね『至高神』パワー。ちょっと集中して空間を跳躍するだけで、別な銀河にまで秒で行けるんだから。
16万8千光年もなんのその。これにはさすがにスターシャさんも唖然としていた。
そして、生贄最後の1人……ネバンリンナは、そのまま僕らに同行することを選んだ。
というか、『ソーラーストレーガー』と一体化しているので、なし崩し的にそのままついてきた、という感じになるんだけどね。
まあ、別に構わんけどね。もともとは敵だったとはいえ――その時僕意識なかったから、正直そのへんの意識もそもそもないんだけど――最終決戦では協力して戦ったわけだし。
さて、最終決戦直後の皆はそんな感じだったわけだが……ここからは、『地球艦隊・天駆』が解散になってからの、それぞれの様子というか暮らしぶりの説明でも書いておこうか。
まずは、勝平君達ザンボットチーム。
彼らは、ザンボット3を封印し、西暦世界で普通の生活に戻ることを選んだ。
『ガイゾック』とやらとの戦いが一度は終わって、その時にはもう引退したはずだったんだもんな、彼らは。
今度こそ。家族皆で仲良く、穏やかに暮らしていくんだそうだ。
もっとも、もしもまた何か良からぬことが起こったら、その時はまた、ザンボットを復活させるのもいとわないみたいなことを言ってたけど。相変わらず見ていて気持ちいいくらいに迷いない子達である。
続いて、同じく西暦世界の、破嵐万丈さんや舞人社長。
こちらは、勝平君達と同じように、それぞれの仕事……『破嵐財閥』や『旋風寺コンツェルン』の方をこなしつつも、正義の味方も続けていくつもりだそうだ。
正義の味方として広く知られている『勇者特急隊』は、これからも正義の味方として悪と戦うのはもちろん、災害時や事故の時の救助活動なんかにも幅広く活動していくことだろう。
その『悪』の側である面々……ウォルフガングやショーグン・ミフネ、カトリーヌ・ビトンについては、きちんと罪を償ってまっとうに人生を歩んでほしいもんである。マジで。
ちゃんとまともなスキルも持ってることが、今回の旅できちんと明らかになってるんだからさ。
あと、舞人社長の『旋風寺コンツェルン』については、この世界と並行世界とをつなぐ『パラレルボソンジャンプレールウェイ』の基幹企業でもあるわけだし、その意味でもこれから一層忙しくなっていくことだろう。
そして、そんな舞人くんを、サリーちゃんや浜田君はこれからも支えて、共に歩んでいくんだろうし。
オーブやプラントについては、戦いが終わって世界全体が復興に歩んでいくことになったから、その手伝いをしていくんだろうな。
今回の戦いで、直接戦火にさらされることのなかった国、ないし地域だから、余力はあるだろうし。その分、各地での様々な活動に精力的に取り組んでいくんだと思う。
何より彼ら自身にとっても、今まであった色んなものにケリがついて、これからは前に進むための時間になるはずだから。
共に戦いを乗り越えて、お互いを理解しあったシンやキラも、エンブリヲの打倒によって『古の民』との長い付き合いとその因縁に決着がついたラクスさんも……
そうして表舞台で活躍していくこととなったオーブやプラントに対して、ソレスタルビーイングはまたこれからも、世界の裏側で紛争や悪の組織と戦い続ける日々に戻るそうだ。
けど、既に連邦軍も彼らのことは、危険なテロリストの組織なんかじゃないことは理解してくれている(最初の頃の彼らはちょっとアレな部分はあったけども)。
必要に応じて、こっそり情報提供し合ったり、連邦軍やその他の組織と連携しながら様々な騒乱への対応を行っていくことになるだろう。
特に、並行世界や……別の銀河やら外宇宙との交流がこれから始まるって時には、刹那とクアンタの持つ『対話』が必要になる場面もあるだろうし。
刹那自身、今からその時を楽しみにしているようなことも言ってたし。
ナデシコチームは、主軸になっていた『独立部隊』もその役目を終えたってことで、西暦世界の地球連邦軍に復帰。
しかし、今回の戦いのために臨時で復帰していたメンバー達――オペレーターの娘達とか――は、元通り軍を離れてそれぞれの生活に戻っていったみたい。
そしてそれはもちろん、アキトさんやユリカさんも同じ。
5年もの間お預けにされていた新婚生活を、今度こそ満喫するんだって言ってた。アキトさんのリハビリも並行して行っていくつもりだってさ。末永くお幸せに。
同じ『地球連邦軍』でも、宇宙世紀世界の方のそれはというと。
ネオ・ジオンとの戦いも終わったことだし、ここからは官民協力して、世界全体で復興に向けて歩み始めていくことになりそうだ。
決して楽な道のりじゃないだろうけど……これまで戦いに向けざるを得なかったリソースをそっちに使うことができるわけだから、よっぽどやりがいもあるし有意義だ、って言ってる人が大半だそうだけどね。逞しくて結構。
また、それと同時進行で、外宇宙への進出もプロジェクトとして考えられているそうだ。
スペースコロニーのみならず、人類がさらに外側の宇宙へ、人間が居住可能な惑星へと進出し、またそこで出会うかもしれない新たな種族たちとの交流やら何やら……そういった部分にロマンを見出しているとのこと。
アムロさん達もどうやら、軍として戦うことよりも、そういう未来につながる仕事の方にやりがいを見出しているみたいだ。もともと好きだった機械いじりや、後進の指導をしていくことになるんじゃないか、って言ってた。
あるいは、バナージ達みたいに、アナハイムのテストパイロットを続けつつ、自分のできること、やりたいことを探していく道も。
同じく宇宙世紀世界で、甲児や竜馬さん達もまた、それぞれの道を歩み出した。
Dr.ヘルやミケーネといった面々との決着もついたことで、甲児やさやかちゃんは、弓博士や兜博士達との元通りの日常に戻った。
甲児君は特にというか、せっかく父親と母親とも再会できたわけだし、これからは家族仲良く暮らしていってほしいもんである。なんか、お父さんと同じように研究者の道にも興味あるみたいなことをちらっと言ってたしね。そういう進路で協力していくのも悪くはないだろう。
ゲッターチームは、隼人さんは研究のため、弁慶さんは渓さんたちと一緒にいるために地球に残るそうだけど、竜馬さんはまだ未定っぽい。軍が進めている外宇宙の開拓事業に参加するとか、ブラックゲッターで武者修行の旅に出るとか、色々考えてみてるらしいけど……どれをとっても荒事のにおいがちらついているあたり、彼らしいというか何というか。
もし開拓に同行ないし協力してもらえるなら、そりゃ心強いだろうな。
シンジ君や宗介君達は、元通り学生としての生活に戻り、学友達と楽しく過ごし始めた。
シンジ君はもともと、普通の中学生だったところをある日突然使徒との戦いに駆り出されてたわけだし……ひとまず訪れた平和な世界を、鈴原君達と一緒に堪能してほしいと思う。
ロボットに興味津々な学友たちとも多いだろうが、何せ別の銀河まで行ってきたんだ、土産話に苦労することはないだろうし。
一方の宗介君はマオさん曰く『傭兵が学生をやってる』っていう立場らしいけど、そんなのは関係ないとばかりに、学友の面々達とは仲いいみたいだしね。
ツッコミ役のかなめちゃん共々、限りある学生生活、存分に青春していってもらいたい。
幾度もの戦いを乗り越えて強くなったとはいえ、彼ら・彼女らの戻るべき場所は、やっぱりこういう平和で穏やかな日常なんだろうと思うし。
本業が学生だろうが傭兵だろうが、そんなの関係なく、ね。
アンジュ達『アルゼナル』の面々は、もうドラゴンと戦う必要もないってことで、こちらは本格的に、それこそ組織ごと新しい人生を歩みだす形になるようだ。
聞けば、海の真ん中にある孤島であることを利用して、アンジュ主導で『アルゼナルリゾート計画』なるものを立ち上げているとか。読んで字のごとく、アルゼナルをリゾート施設ないし観光地として活用するつもりらしい。
パラメイル第一中隊の面々も総じてノリノリで、こりゃ期待できると今から見ている。全員パワフルだからな……ひょっとしたらすごいのができるかもしれない。
また、『龍の民』との交流も今後続けていくつもりだそうで……もしかしたら、『龍の民』が西暦世界に、今度はここでの娯楽目的で遊びに来る……なんて未来もあるかもね。
ちなみに、多くのノーマやらメイルライダーがこの計画に賛同して協力していくつもりらしいが……ごく一部、『アルゼナル』の所属を抜けてよそに移った者もいたりする。
それが誰と誰なのかに関しては、後で書く。
そして、『新西暦世界』では、逞しく立ち直りつつある地球連邦軍と、木星帝国という敵のいなくなったトビア達が手を取り合って復興へと全力で動き出している。
環境汚染については、『コスモリバース』……もとい、それを使って行った『時空修復』のおかげで急速に改善が進んでるし、これからそう時間をかけずに、地球は青い星としての姿を取り戻すことができるだろうと見込まれている。
西暦世界や宇宙世紀世界みたいに、新西暦世界の人達が、新鮮な自然の食材を復活させて食卓に並べることができる日も、そう遠い未来じゃない。
そして、その日を1日でも早く来させるために、地球連邦軍はもちろん。様々な組織やら企業が協力して取り組んでいるわけだ。
あと、それと並行して……宇宙世紀世界と同じように、外宇宙に進出する事業にも。
といってもこっちは、『開拓』っていうよりは……すでにイスカンダルやガミラスといった、外宇宙の文明との交流が今もうあるわけだから、それらとの今後の付き合いを模索していくっていう方向性になっている感じだ。『開拓』じゃなくて『外交』だな、どっちかというと。
まあ、どちらも人類のこれからのために重要であることには変わりないけどね。
……それと、新西暦世界で起きたことについて……もう1つ。
『地球艦隊・天駆』の帰還から少しして……沖田艦長が、この世を去った。
もうずいぶん前から『遊星爆弾症候群』……だったかな。アレに含まれるガミラスの植物の胞子が原因で引き起こされる、その病に体を侵されていたらしい。
本来なら安静にしていた方がいい所を、地球の未来のために意地でヤマトの艦橋に立っていたんだって。すべてが終わった後に、ブライト艦長と佐渡先生が教えてくれた。
最後の最後まで『地球艦隊・天駆』の総司令官として僕らを引っ張ってきてくれた沖田艦長には、皆、感謝でいっぱいだったと思う。
最後のお別れ、ないし見送りの際は、予定があろうがなかろうが、『地球艦隊・天駆』に参加したメンバーがほぼ全員揃って、沖田艦長にお別れを言った。
けど、無意味に湿っぽい感じにはならず、むしろ『あなたの分もこれから立派に3つの地球を守っていきます』的な、決意表明みたいな感じだったかも。
こっちの方が僕ららしいし、沖田艦長も悔いなく、心配せず天国に行ってくれるだろう。
そして、ここまで『地球艦隊・天駆』の皆のその後について話してきたわけだが……最後に、僕らについてだが―――
☆☆☆
「ミツルさーん! そろそろ時間だよ、準備してー!」
「こ、こらココ! 会社では『会長』だってば!」
「あっはっは、いいよいいよ好きなように呼んでくれれば。アットホームな社風が自慢だからねうちは……っていうか、もうそんな時間か」
会長室のデスクで、気分転換に日記を書いていた僕を、元気な声で呼びに来たココ。
それを注意しつつ、同じように僕を呼びに来たらしいミランダ。
2人とも今となっては、アルゼナルからここ『サイデリアル』に籍を移し、正式にうちの社員になった、優秀なテストパイロットである。
そして同時に、僕の直属として、付き人みたいなことも一緒にやってもらっている。
秘書は相変わらずミレーネルで、彼女にはもちろん今も僕は世話になってるけど、最近は彼女1人じゃ手が足りない場面もちらほら出て来てるんだ。
というのも僕、主に会長としてこの『サイデリアル』本社に普段はいるものの、割とフットワーク軽くあちこちにふらっと出かけたりするんだよね。
何せ、地球の裏側だろうが銀河の果てだろうが、次元力でどこでも一瞬で行けるから、視察とか訪問とかも『よし行くか』でノータイムで行けるし。
そして、その急な出張(笑)に、色々な意味でついてこれる人材となると、ミレーネル以外だと彼女達2人……『地球艦隊・天駆』に一緒に参加した彼女たちが適任ってわけ。
加えて彼女達は、古巣であるアルゼナルとの橋渡し役にもなってくれてる。
あそこ今『リゾート計画』進めてるわけだけど、そこにうちからも援助とか投資とかいろいろやって絡んでるからね。やっぱりというか、なんだかんだあそことわが社は縁があるな。
とか何とか考えてる間に、2人の後ろからミレーネルも入ってきた。
「ミツル、そろそろ準備して。今日も忙しいわよ」
「了解。じゃ念のため、今日の予定確認していい?」
「ええ。まずこの後は本社505会議室で定例会議に出席。議題は主に今後の『旋風寺』と『ネルガル』との業務協力について。その後アルゼナルの開発現場の視察と、そのままそこで向こうの責任者……アンジュ達と会食という名の食事会。これが昼食ね。午後からは宇宙世紀世界のサイデリアル支部の視察と、セイナさんから各種報告事項を聞いて……その後は、新西暦世界の地球連邦軍の開発計画会議に出席。開始前にそっちに行ってるネバンリンナから概要の説明があるらしいわ」
「……相変わらず1日にこなすスケジュールじゃないですよねそれ……」
さらさらとよどみなく教えてくれるミレーネル。
それを隣で聞きつつ、呆れつつミランダはつぶやいていた。
うん、ホントそうだよね。僕もそう思う。
1日で違う国を行き来するどころか、並行世界3つを行き来するスケジュールって、滅茶苦茶どころじゃないよね完全に。
過労死コースというかそれ以前に、物理的・時間的に無理だって誰でも思うだろうし。
まあ僕の場合は、さっき言った通り、『次元転移』を使えば『移動時間』ってもんがおよそ必要ないと言ってすらいいから、こんな無茶苦茶なスケジュールも立てられるんだけどね。
そしてそれに付き合ってくれるのが、主にここにいる3人というわけである。いつもお世話になってます。
けど実際、『多次元企業』としてすでに本格的に動き出せている会社は、今は3つの世界においてほとんどおらず、その中でもノウハウ的にずば抜けてるのがうちこと『サイデリアル』だから、3つの世界それぞれからアホほど需要、というか仕事は舞い込んでくるんだ。
新西暦世界には、復興のための資材やエネルギーの提供や、都市の再開発計画や防衛戦力その他にかかる兵器輸入や技術協力。
あと、人々の腹を満たすための食糧支援などなど。
宇宙世紀世界では、並行世界との交流や物資のやり取りもそうだけど、それと同時に、宇宙にあるコロニーなんかとの物資のやり取りも盛んにおこなわれている。
ネオ・ジオンとの和解も成立したとあって、技術協力も今後は増えてくるだろうし。
西暦世界は、他2つほど物資やら何やらには困ってないだろうけど、だからこそ新たな可能性を求めて、外宇宙の開拓やらに使う力が必要とされるだろうし、未だに解析できていない部分が多い『火星極冠遺跡』やら何やらに回す力も要るだろうし。
それに、全く復興関係の仕事がないわけでもないしね。『始祖連合国』をはじめとした、最近まで紛争が続いていた国や地域の復興も、もちろん必要なわけだから。
そんな感じで、ちょっとした遠距離運送業じみた手軽さで3つの平行世界を簡単に、安全に行き来できる僕ら『サイデリアル』の技術は、今や引っ張りだこというわけだ。
忙しいけど、嬉しい悲鳴である。今後ともご愛顧ください。
まあもっとも、もうしばらくすれば『ネルガル』や『旋風寺』も、『パラレルボソンジャンプ』や『レールウェイ』の技術で追いついてくるだろうな。少なくとも、会社としては。
そうなったら、僕らの儲けは減るかもしれないけど……その分より多くの人に、並行世界間貿易の恩恵がいきわたるだろう。別に忌避する理由はないな。
どちらもぜひ頑張って、この『並行世界事業』に参入してきてほしいと思っている。……できれば謀略とかしかけてこずに、ちゃんと穏便に。
それに、ひょっとしたらこの先、今現在確認できている3つの平行世界以外にも、他の平行世界との交流を持つ機会だって出てくるかもしれないし。
そんなバカな、なんて切り捨てることはできないだろう。それを言ったら、今存在がはっきりしている、他2つの平行世界だって、最初は想像もされていなかったんだし。
それに、僕こと『至高神ソル』や『御使い』の記録の中には、それこそ無数の平行世界がまじりあった『多元世界』の存在が記録として残されているわけだし……今は観測こそできていないけど、今後何かの形で関わり合いを持つことになる可能性だってゼロじゃない。
その時のために、色々とできる準備もあるだろうからな。やれることはやっておくべきだ。
そうすることが、きっとこの先……
「ミツル、どうかしたの? ほら、早く準備しないと……」
「……! ああごめん、今やるよ」
と、いつの間にか考え込んでしまっていた僕に、少し心配そうに声をかけてくるミレーネル。
「疲れてるなら、無理しなくても……」
「大丈夫大丈夫、そういうんじゃないから。じゃ、行こうか……最初は会議だったね」
とりあえず今は、目の前にある仕事から片付けていかないとな。
この先の未来のために、やれること、やるべきことは、それこそいくらだってあるだろうから。