スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

15 / 113
第14話 再会

 ヤマトが大規模な時空震動に巻き込まれた後、叢雲総司と如月千歳は、この世界に流れ着き……偶然2人を発見した男性、神宮司辰ノ進の家に厄介になっていた。

 

 ヌーベルトキオシティにある家に1人で暮らす彼は、仕事は既に定年退職し、子供達は既に独立していた。一昨年には妻に先立たれ、1人気ままな暮らしをしていたと語り……行くあてがない2人を快く家に迎え入れ、いくらでもここにいてくれていい、と言ってくれたのだ。

 

 行く当てどころか、この世界――総司達から見れば異世界、ないし並行世界にあたる――では、戸籍すら持っていない彼らは、ひと呼んで『タツさん』に深く感謝しつつ、そのご厚意に甘えることにした。

 

 ……なお、彼は総司と千歳のことを、『心中に失敗した若夫婦』だと思っており、その勘違いを抱えたまま、2人を慮るがゆえにそれを口には出さず見守っていたりする。

 どちらにとっても、知らぬが仏、という話であった。

 

 そのまま穏やかな日々が数日過ぎたある日、謎のロボットが町を襲撃してきた。

 

 しかし、機体も何もないのでは戦えないと歯噛みしていた総司の元に、突如として謎の少女と、この世界に来てから行方のしれなかった愛機・ヴァングレイが現れた。

 よくわからないことの連続に困惑しつつも、総司は今一度ヴァングレイに乗り、同時にやってきた『勇者特急隊』なるロボットや戦闘機達と共に戦い、見事に悪のロボットを撃退することに成功する。

 

 その後、『未登録のロボットで市街地で戦闘を行った』として、一時警察のお世話になることになってしまった総司だったが、そこで助け船を出してくれたのは、その時ともに戦った『勇者特急隊』の一員にして、巨大企業『旋風寺コンツェルン』の社長である、旋風寺舞人だった。

 

 もともと『旋風寺コンツェルン』の従業員であり、彼とつながりがあったタツさんの紹介で会うことになった総司と千歳は、紆余曲折の末に『勇者特急隊特別隊員』となったのだった。

 

 それから、再び襲って来たロボット軍団……今度は、首領であるらしい『ウォルフガング』なる男との戦闘も無事に乗り切った総司達。

 

 もっとも、千歳の方は、もともと機体がないゆえに戦いに参加することはなく、それに加えて、何やら思いつめた様子で、『勇者特急隊』としての活動にも消極的だったのだが……今はそれは省くこととする。

 

 そして戦いの中で、ヴァングレイとの合流と同時に出会った謎の少女……後に『ナイン』と名付けられた彼女が、ヴァングレイのOSである、『システム99』であることが明らかになったりもした。この方がコミュニケーションが取りやすいと考え、アンドロイドの体を作ったのだと。

 

 そして、そんなある日のこと。

 

 その日、総司と千歳、そしてナインは、『旋風寺コンツェルン』の本社に呼ばれていた。

 

 今日これから舞人は、協力関係にある企業である『サイデリアル・ホールディングス』の会長と会談するのだという。

 

 社長である舞人らしい重要そうな業務だが、どうしてそこに自分達が呼ばれたのかがわからず、3人共が首をひねっていた。

 それを察してから、舞人からその理由が告げられる。

 

「相手方から俺達を同席させてほしいって言われたって?」

 

「ええ、お2人の名前を名指しで……それに加えて、一緒にいるであろう女の子も、可能であれば同席させてほしいと」

 

「ナインのことまで知ってたってこと?」

 

「そのようでした。お2人とは知り合いであるかのような口ぶりでしたよ」

 

 呼ばれた理由は分かったが、どうして舞人の仕事相手が自分達に会いたがっているのか、そもそも自分達のことを知っているのかがわからない。

 

 そして、今舞人に言われた『知り合い』というのもピンとこない。

 

 総司達は、つい最近この世界にやってきた、言うなれば異邦人だ。その事情を知る者は、世話をしてくれていたタツさんや、今の雇い主兼仲間である舞人、そしてその関係者数名しかいないが。

 ゆえに、そもそも彼らにはこの世界に知り合いなど皆無に近いはずなのだ。

 

 もし自分達の知り合いだと言うなら、それこそ、自分達と同じ世界から来た者くらいだろうが……しかし、それならそれで、巨大企業のトップであるはずがない。

 

 わからないままでいると、執事の青木さんが、その客の来訪を告げた。

 舞人が『通して』と言うと、扉の向こうから、まだ若い男女2人が入ってきて……

 

「な……っ!?」

 

「う、そ……!」

 

 そのうちの1人の顔を見た瞬間、総司と千歳は絶句した。

 当然だろう。今、彼らの目の前にいるのは……確かに、2人にとって、知り合いと呼べる男だ。

 

 しかし同時に、ここにいるはずのない……いやそれどころか、この世にいるはずのない人間だったのだから。

 

 しかし、いくら待ってみても、目の前の光景が変わることはなく……恐る恐る、といった調子で、総司と千歳は、その名を呼んだ。

 

「お前……あの時の……」

 

「ミツル、君……なの……!?」

 

「はい、お久しぶりです、総司さん、千歳さん」

 

 あの日、ガミラスの攻撃によって……ミサイルの爆風と、瓦礫の山の中に消えたはずの少年。

 記憶の中にある姿よりも、幾分大人びて見え、背も伸びている様子の……星川ミツルは、そう答えてにっこりと笑った。

 

 

 

 それからしばし、時間は過ぎて、

 

「じゃあ、ミツル君はあの時死んだんじゃなくて……この世界に飛ばされてきてたってこと? しかも、今よりさらに過去に……時間まで超えて!?」

 

「あの白い機動兵器の中身って、お前だったのか!? おいおい、マジかよ……さっきから驚きっぱなしだぜ」

 

 2人が驚愕から復帰するのを待ってから、ミツルは一通り、ないし最低限の説明を終えた。

 ただし、話す順序を考えて、意図的に飛ばしている部分はあるが。

 

「では、星川会長はお2人と同郷……つまり、あなたも並行世界から来た人間だったんですね」

 

「そうなります。すいませんね、舞人社長、変な形でこんなカミングアウトをすることになって」

 

「いえ、そんな。というか、よかったんですか、僕にもそんな……重要そうな身の上について話したりして」

 

「構いませんよ、あなたなら信頼できます。そのくらいには、僕としてもあなたの人となりも知っているつもりだし……総司さん達も、あなたのことを信頼してるようですから」

 

 『勇者特急隊』を率いて、自らも前線に出て戦う、正義の心を持つ舞人のことを……彼が信頼できる男であるということを、ミツルはよく知っていた。

 

 加えて、総司達もまた、舞人のことを信頼し、自分達が並行世界から来た人間だと言うことまで含めて、その身の上を全て打ち明けて話している。そのこともまた、ミツルが舞人と秘密を共有することを決心させた理由、ないし根拠になっていた。

 

 事実、舞人もそうして信頼してもらえたことを光栄に思うと共に、その信頼に応えることを、何の迷いもためらいもなく約束するのだった。

 総司達同様、いたずらにその身の上を吹聴するようなことは一切しない。これからもよき友人として、そして協力企業としてよろしく頼む、と。

 

「にしても、驚いたわよ……あの白いモビルスーツ……モビルスーツ? に乗ってたのが、まさかミツル君だったなんて……あの空間で私達を助けてくれた上に、冥王星の基地を落とすまで、地球のことも守ってくれてたんでしょ?」

 

「あ、やっぱそれ知られてるんですね……」

 

「沖田艦長が言ってたからな。地球で連邦軍の指揮を執ってる、土方中将から聞いたらしい。もう何度も、部下の命を救われてるから、見つけたらお礼を言っておいてくれってな」

 

「それは、なんというか……完全に成り行きと言うか、流れに任せた感じだったんですけどね」

 

「そうなの? ガミラスの襲撃にさっそうと現れて、戦いの後は何も言わずに去って行くって話だから、まるで正体を隠したヒーローみたいだって皆言ってたのに」

 

「別に正体隠すことにこだわってたわけじゃないなら、何で名乗り出なかったんだ?」

 

「いや、その……何となく出て行き辛くて。ネコババ同然の機体に乗って好き勝手やってたわけですし……ほら、別に何も悪いことしてなくても、町でパトカーとかお巡りさん見つけるとちょっとビクッてなる感じで」

 

「お前な……その割には行動力あり過ぎだろ」

 

「偶然拾った宇宙船で宇宙まで、あんな空間まで来ちゃうんだもんね」

 

「それ、7割以上事故の結果ですから。ぶっちゃけ、帰りたいのに地球からどんどん離れていくから、怖くて怖くて。一度死んだも同然の身でも、やっぱ死ぬのは怖いです」

 

「その割には無茶苦茶やってるよな……」

 

 緊張もほぐれ、単なる雑談を楽しむ場になりつつあった応接室だが、そこで、舞人の執事の青木さんが、傍によって舞人に耳打ちした。

 

「社長、そろそろ……」

 

「おっと、そうだった。星川会長、総司さん達と久しぶりに会えて、話が弾むのもわかりますが、そろそろ仕事の方のお話も……」

 

「あ、すいません、そうですね……じゃあ、あと1つだけ、総司さん達がいるうちに。これは、総司さんと舞人社長……というより、旋風寺コンツェルンの両方に関係があることなので。それと……そちらのお嬢さんにも」

 

「「「?」」」

 

 そう言われて、どういう意味かと首をひねる一同。

 どうやら仕事に関係ある話のようだが、なぜそこで、総司や千歳、そしてナインが関係してくるのかがわからない。

 もちろん、さっきまで蚊帳の外だったためか、少し面白くなさそうにしているナインも同様だった。

 

 が、この後聞く話では、むしろ彼女が話の中心になることになるということを、まだ、ナイン達は知る由もなかった。

 

 今までミツルの座るソファの傍で控えていた、秘書の女性……ミレーネル・リンケが、おもむろに鞄から、最新型のタブレット端末(自社製品)を取り出した。

 

(今更だけど、随分色っぽいおねーちゃん秘書にしてんだな……流石、大企業の会長サマ)

 

(私と同い年くらい? ううん、ちょっと年下かもだけど、礼儀作法完璧だ……やり手のキャリアウーマンって感じ? うう、なんか負けた気分……)

 

(……? 何でしょう、この人……本当に人間でしょうか? 何か、違和感が……)

 

 総司、千歳、ナインが、彼女を見て三者三様の感想を抱く中、ミレーネルはタブレットを操作して、何やら1つの動画ファイルを開く。

 その様子を横目で見ながら、ミツルがおもむろに口を開いた。

 

「実は、先日……サイデリアルの日本支社のとある工場で、窃盗事件が発生しまして。これは、その時に監視カメラで撮影していた映像なんですけどね」

 

 窃盗、と聞いて、悪を許さない舞人をはじめとした数人の表情がわずかに強張る中、ミレーネルは動画を再生しながら、タブレットの画面を総司達の方に向ける。

 そこには、犯行の一部始終が記録されていた。

 

 休日で誰もいない、稼働していない工場。

 そこは、大型の機械類の製造用ドックのようだった。

 

 そこに……画面の端に、突如現れる機動兵器……ヴァングレイ。

 

「「「!?」」」 ← 総司、千歳、舞人

 

「……っ……!」 ← ナイン

 

 独りでに動き出す工場の製造ライン。

 どうやら、何者かが外部からハッキングして製造機械に指示を出しているらしい。

 

 各所の機械が稼働し、順調に何かのパーツが作られていく。

 

 そこに、ヴァングレイから持ち出されたいくつかの部品のようなものが、あるいはその工場に保管されていた資材類が無断で使用され(窃盗)、何かが組み上がっていく。

 生産ラインの機械類を十全に使い、時に、想定されていない動き方までさせて。

 

 加えて、その合間に、という調子で、ヴァングレイの修理や改造まで、別な機械を使って、そしてやっぱり資材やパーツを無断で使って(窃盗)仕上げていく。

 

「「「…………」」」 ← 総司、千歳、舞人

 

「…………」 ← ナイン

 

 ほどなくして、1人の女の子にしか見えない見事な体が、服まで全部作って着せられた状態で出来上がった。

 その少女……に見えるアンドロイドは、手や足を動かしてみたり、周囲を見回したりして、体の機能に不足がないかどうか確認しているようだ。

 

 一通り確認を終えると、そのアンドロイドの少女……ナインは、映像からではわからないが、再びコンピューターにハッキングして、ここで行ったことのデータやログを削除し(証拠隠滅)、ヴァングレイに乗り込んでその工場を後にした。

 この間誰も来なかったことを鑑みると、警報装置なども事前にハッキングして無効化しておいたのだろう。

 

 加えて、元々ここは生産ラインがロボット等でかなりの割合自動化されており、人が少ない工場だったという点も、誰も気づけなかった理由であると思われる。

 ましてや休日なのだから、休日出勤している社員もいなかった。サイデリアルはホワイト企業です。

 いたのは警備の人間くらいだが、見事にその見回りの間の時間を突かれていた。

 

 …あるいは、そういう条件の工場を選んで、犯行に及んだのかもしれない。

 

 が、資材泥棒等の対策に、ネットワークに繋がずに独自に稼働させていた監視カメラには気付くことができず、この映像が残ったというわけだ。

 

「「「…………」」」 ← 総司、千歳、舞人

 

「…………」 ← ナイン

 

 もの言いたげな目でナインを見る総司。

 目を反らすナイン。

 おろおろと慌てる千歳。

 呆れる舞人。

 

 そんな彼らに対して、今日初めて、ミレーネルは口を開いて……あえてだろうか、特に感情のこもっていない平坦な口調で言った。

 

「……何か言いたいことはございますでしょうか」

 

「「うちの子がすいません!!」」

 

 瞬間、総司と千歳はそろって頭を下げた。

 総司はナインの頭も手でぐいっと抑えて下げさせた。

 

 その姿はまさしく、子供が悪いことをしてしまって、揃って相手方に謝罪する両親そのものだったと、見ていた者達は後に語ったのだった。

 

 

 

 




感動の再会…しかしきっちりオチもつけさせてもらいました。
個人的に原作の『スパロボV』で気になってた点です。
ナインのあの体、どこでどうやって作ったのか。明言されてなかったはずなのでネタにしました。

初期のナインって、命令書偽造したり、都合の悪いことには答えなかったり、割と好き勝手やってるんで……

もしかしたら無人の廃棄工場とかでやったのかとも考えたんですが、ある程度の設備がないとあのレベルのアンドロイドなんて作れないですよね、絶対。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。