感謝感謝です。これを励みに一層頑張ります!
【○月△日】
無事、総司さんと千歳さん、あと、窃盗犯……もとい、アンドロイドの少女にも会って、きちんと挨拶と説明をすることができた。
その際、今は総司さん、何でか『勇者特急隊』の特別隊員になってるらしいので(何があったんだよ)、その雇い主であり、ビジネスパートナーでもある舞人社長にも事情は一緒に話した。
信用できる人だからね、それはもう、愚直なくらいにまっすぐで、正義感の塊で。
ただ、全部の事情は説明はできていない。
思い切って、あの『白い機動兵器』こと、アスクレプスのパイロットが僕であることまでは話したけど、その詳しい事情とかバックグラウンドまではね。
あくまで、気が付いたらアレに乗っていた、なぜか使い方が分かった、とか、そのくらいの範囲にとどめた。
僕に前世の記憶があることとか、それで知っている『スパロボZ』の世界に出てきた機体だとか……並行世界云々以上に信じてもらえないであろうことについては、話していない。
あと、あの空間内で見つけた『バースカル』その他についても。
話そうとすると、どうじてもアスクレプスの次元力云々の話を交えなきゃいけないし……それに加えて、バースカルはうちの企業運営に絡んできてるので、企業秘密にも抵触するし(多分)。
そのあたり、ちょっと心は痛んだけど……ひょっとしたら、いつか話せる時が来るかもしれないということで、今は保留ね。
あ、当然ミレーネルの正体についても話してない。これは関係ないからね、今回の件とは、少なくとも直接は。
それから、ナインによるうちの工場からの窃盗事件(証拠隠滅までして非常に計画的かつ悪質)については……まあ、被害額もそこまでじゃないし、総司さん達のためになることなら、ってことで……今回は厳重注意にとどめて、おとがめなしとした。
舞人社長は、『雇い主である自分の責任でもある』って、被害額分を保償してくれようとしたんだけど、それは断っておいた。
2人が無事でいてくれたお祝いってことで、資材とかその他分は、僕のおごりってことで、プレゼントさせてもらうよ。そうすれば、名実ともに事件性なしってことになるでしょ?
……ただ、何も見なかったことにしておくのは流石にダメだと思ったので、今回はコレを見せただけなので。
きちんと謝ってもらえたし、反省してくれたなら何も言うことはありません。
その際に、総司さんと千歳さんが、なんか夫婦じみた息ぴったりの謝罪を見せてくれて(ナインもきっちり頭下げさせられてた)、それが結構面白かったので、うん、チャラで。
ミレーネルは『甘いですね』って感じの視線を横から送ってきてたけどもね。
ごめんね、身内びいきで。
その後は、総司さん達には退席してもらって、舞人社長と仕事の話をきちんとした。
内容は……まあ、そこそこややこしい上に長いので省く。
後その際に、ちょっとした情報提供も一緒にさせてもらった。
こないだ町を襲って来た、『ウォルフガング一味』って連中についての。
少し考えて思い出したんだけど……僕、以前にあの連中のボスの、『ウォルフガング』って奴と会ったことがあるんだ。
というか、一時期ではあるけど、雇い主、ないしスポンサーだったことがある。
うん、よく覚えてるよ。
そこそこ年いってるにもかかわらず、なんかやたらガタイがよくて、肩幅も広くて……人間なのにやたら耳が、福耳とは逆の方向に長い、へんな人だった。
鼻息荒く、最強のロボットの研究を進めるために金が要る! とか何とか言ってたっけ。
それでその時は、研究資金を援助する代わりに、こっちで研究しているロボットや機械類の開発にも協力してもらったんだよね。
機動兵器じゃなくて……生産系の事業に使う、部品製作用や掘削用、食料生産用のやつを。
戦闘用のロボットじゃないことに面白くなさそうにはしてたけど、その仕事自体はきちんとまじめにやってくれてたっけ。
予想以上、期待以上にいいマシンができたから、奮発して報酬と、彼の研究に対する融資も多めに支払ったこともまた、覚えてる。うん、腕は確かな人だったな。
……その時の金が今、犯罪に使われてるとなると……ちょっとやるせないけど。
真面目に働けば、普通に社会に大きく貢献できるだけの頭脳と技術を持っている人だと知っているだけに。
それを説明すると、舞人社長も驚いていた。
それと同時に、残念がっていた。僕と同じように、『まともに働いてくれれば……』って、思ったんだろうな。
そんな感じで、舞人社長との会談も無事に終わった。
はー……緊張した、色々。
【○月◇日】
なんだかなあ……再びというか、世界全体がきな臭くなってきた空気を感じる。
日本を離れて、本社のある国に戻った後も、ヌーベルトキオシティ近辺で色々な犯罪者が次々に湧いて出たという話が聞こえてきたから。
総司さん達に色々説明して挨拶もしておいてなんだけど、僕やミレーネルの拠点はここ……東南アジアのある国に構えている『サイデリアル・ホールディングス本社』と、その近くにある邸宅――そして、バースカルに設けている居住スペース――だから、基本的に国単位で離れてるんだよね、『旋風寺コンツェルン』のある、日本とは。
まあ、いざとなれば割と早く、ひとっ飛びで行ける距離ではあるんだけど。性能も乗り心地もいい移動用の機体もあるし。
で、聞こえてきた限りでは、宝石強盗やら何やらやらかす女盗賊や、古き良き江戸を取り戻すとかなんとか言いながら町を破壊しようとするろくでもない侍、割と普通にヤバそうな死の商人的なアジアンマフィアなど、玉突き事故起こしそうなくらいにわらわら悪人が湧いて出ているらしい。
勇者特急隊も結構な頻度で出撃してるって聞くし、大変だな舞人社長達も。
ただそんな戦いの中で、どうやら総司さん達は、味方も増えたらしいことを言ってた。
地球連邦軍の独立行動部隊と、外部の協力者団体?らしいけど、詳しいことはまだ聞いてない。
頼りになる奴らだ、ということは言ってたので、まあ総司さんが言うならその通りなんだろう。
それはいいんだが……今述べた連中と比較しても、特にヤバそうな奴らがいる。
『火星の後継者』とかいう、テロリスト集団と思しき連中だ。
先日、総司さんや舞人達がそいつらに襲撃されたらしい。ロボットに乗っていない、生身の時に……しかも、平気で一般人を巻き込むような形で。
その時は、何やら助っ人が現れてどうにか撃退できたそうだけど……その直後に、全世界に向けて、その『火星の後継者』の首領であり、元・地球連邦軍の軍人である、草壁なる人物が犯行声明を出したのである。
車の中のテレビでそれ、ちょうど僕も見てたんだけど……何でも、『ボソンジャンプ』という技術の危険性が云々かんぬん、それを一元的に管理することが必要どーたらこーたら、私利私欲のために使う奴らには任せておけないあーだこーだ……
……ま、速い話がそういう大義名分を振りかざして色々と違法行為やテロ行為やりますっていうことなんだと思うけど。
随分と派手にやるなあ、テレビでこんな風に、世界中に痛い演説を届けるとか……劇場型の犯罪者だろうか?
いい年してよくやるなあ……ほうれい線半端ない顔しといて。
こういう連中が調子に乗ると、普通の犯罪者よりよっぽど質の悪いことになりかねないんだよなあ……統計上。
大義名分を盾にして、無関係の人を巻き込んだり、違法行為そのものにも躊躇いなくなるから。
あと、嫌な話……活動資金確保のためとかなんとか言って、金持ちを狙って誘拐したり脅したりするんだよね、こういう連中って。
『火星の後継者』じゃないけど、何度か僕もその手の連中に狙われたことある。
幸いにして、一応今まではどうにか切り抜けられてきたけども。
一応僕も、大企業の会長として割と有名になりつつあって、その分トラブルに巻き込まれることもあったりしたから、軽く護身術程度は身に着けてる。
プロの暗殺者を相手にできるとかいうほどじゃないけど、そこらのチンピラくらいなら、1人でも問題なく対処できるくらいには強くなった……と思う。
体力や身体能力の向上は、機動兵器の操縦にも重要な要素だからね、そのへんはこの2年、きちんと妥協せずに頑張ってきたつもりだ。
ただまあ、最善はやっぱり、そういうトラブルを『未然に回避する』『巻き込まれない』ことだ。
ミレーネルが時々、心を読む能力を生かして、そういうのを未然に防いでくれたりするから、マジで助かってるよ。
ああもう、考えてたらますます気が滅入ってきた……
ホント勘弁してほしいよ……せめて、無関係な一般人や善良な一企業は巻き込んでくれるなよ、テロリストさんよ。
【○月●日】
巻き込むな、って言ったのになぁ……!!(怒)
やられたよ。『火星の後継者』に。
僕がじゃないけど、僕の会社に勤める社員が。
連中どうやら、『A級ジャンパー』なる人物を狙っているらしいんだ。
連中がことあるごとに言ってる『ボソンジャンプ』についてなんだけど、『A級ジャンパー』っていうのは、それに関係して重要な立場にある、ごく一部の素質を持つ人間のことらしい。
何でも、火星のテラフォーミング用のナノマシンの影響を、母親の胎内にいる時から受け続けていた人間は、『ボソンジャンプ』を使う際に、思い通りの行き先に安全に飛べるようになるという素質ないし能力を持っているらしい。
『火星の後継者』は、そのA級ジャンパーを独占しようとして、手段を択ばずあちこちから誘拐している。
あるいは、他の勢力の手に渡らないように、暗殺までしているらしい。
その条件に合致する者が、偶然うちの会社にもいて……連中に狙われたのだ。
警備部門が対応しようとしたんだけど、連中、何のためらいもなく銃火器類まで持ち出した。
結果、警備部門の人達の奮戦もあり、死者こそ出なかったものの、重軽傷者多数。
狙われた社員に加えて、巻き込まれた社員や、守ろうとした警備部門の人達、そして何の関係もない、周囲にいた一般人まで……
よーしわかった、喧嘩売ってんだな、うちに。
いいだろう、『火星の後継者』……正式にお前らは、敵認定だ。
……ところで、『ボソンジャンプ』関連のことや、『火星の後継者』の内情について、何で急にそこまで詳しいことがわかったかというと。
聞かされたからだ。情報提供ってことで……『ネルガル』のアカツキ会長から。
毎度、事業協力ついでにうちの会社の取り込みや買収を画策してくるあそこだけど、どうやら今回は毛色が違うらしく……どんどん活発に、ドンドン過激になる『火星の後継者』への対策として、ここはひとつ協力したい、という申し出があった。
といっても、会社として何かやるというか、連中と事を構えるわけじゃない。
あいつらへの対処には、専門家と言うか、そういうのに対処するのがメインの、連邦軍の『外部独立部隊』なる面々が動いているそうなので、その人達のバックアップを行いたいということだ。
その部隊には、ネルガルにも縁のある人達が参加していて、その縁でずっと支援をしたり情報提供をしたりしてるそうだ。旋風寺コンツェルンと同じように。
そして、そのバックアップ要員に、東南アジアで大きく勢力を伸ばしている、僕らサイデリアル・ホールディングスにも加わってほしいと。
ネルガルや旋風寺と違い、企業の規模で見れば五歩も十歩も劣っているけど、その分フットワークは軽いし、技術力も確か。また、傘下にある業種の種類も多彩で、様々な面でのバックアップ要員になれるだろうから、と。
何より、これ以降彼らが行動する範囲においては、僕らサイデリアルが動けた方がより手厚く、確実に、サポートの手を届けることができる、という見通しらしい。
なおこの見解については、『旋風寺のご老公』こと、旋風寺裕次郎氏も賛同してくれているとのこと。舞人社長のお祖父さんだったな、たしか。
あくまで『見解』だけであり、どうするかについてはノーコメントだそうだが。
そして、この申し出については、受けることにした。
地球連邦軍の『外部独立部隊』……それってたしか、今『勇者特急隊』と行動を共にしているチームの1つだったはずだ。
何でも、『ナデシコ』なる名前の戦艦を中心にして組まれたメンバーらしいけど……詳しくはまだ聞けていない。
ナデシコ……戦艦……機動戦艦……? うーん、聞いたことあるようなないような……
ネルガルからは『それだけ知ってれば十分だ』と言われて……あとはプライバシーとかにも関わるからと、あんまり情報は渡されなかった。
その部隊の責任者であり、戦艦の艦長が、『ホシノ・ルリ』少佐という人物で、『電子の妖精』と呼ばれている有名人だと言うことは教えてくれたけど。
あ、この人は僕でも名前は知ってる。割と有名人だし。
例によってそんなに詳しくは知らないけど……後で調べてみよう。今後協力することになる人だし。リサーチは大事である。
それからもう1つ、『勇者特急隊』『ナデシコ』と、残る1つの協力者達について。
これについてもネルガルはなぜか知っていて教えてくれたんだけど、なんとそれが『ソレスタルビーイング』だというのだ。マジか……そうか、彼らが。
いや、面識あるわけじゃないけども。しかし、それは心強い。
ともあれ、そんなわけで、僕ら『サイデリアル・ホールディングス』も、『ネルガル重工』『旋風寺コンツェルン』と同様に、彼らをバックアップすることになった。
他にも、協力してくれそうな組織や、国や地域はいくつかあるそうだが、メインでというか、表に立って動くのは、連邦軍以外はこの3社になるだろうとのこと。
近いうちに、連邦軍のお偉いさんも交えて、詳しい内容の打ち合わせと、協定締結のための書面の作成に移るらしい。