スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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第17話 ドラゴンとパラメイルとアスクレプス

 遡ること数十秒前。

 

 なんか、前衛と後衛、そしてその更に後ろのぼけーっと見てる数名の間で、随分空気も動きも違うなー、と観察していた、ミツルとミレーネルだったが、見ているうちに、明らかに後方の3名……アンジュ、ココ、ミランダの3名の動きがおかしいことに気づいた。

 

 完全に戦闘に、緊張あるいは委縮して……というか、率直に言ってビビっており、特にアンジュは今すぐにでも逃げ出さんばかりだ。

 戦闘形態『アサルトモード』に変形もせずに、素顔がよく見える状態だったため、表情から丸わかりだった。

 

 というか、逃げ出した。

 

 いとも堂々たる敵前逃亡。しかも、それを追うように他の2名も来て……しかし、次の瞬間、そのうちの1機が撃墜されてしまう。

 

 あっコレ見てる場合じゃない、と思ったミツルは、すぐさまアスクレプスを起動させてグラーティアを発艦、全速力で現場に急行した。

 あの様子だと、後ろにいた3名は、ともすればまともな戦闘ができない。それでは、たちまちやられてしまうだろうと考えてだ。

 

 案の定、恐慌状態に陥ってアンジュは逃げ出し……その後ろについていたミランダは、ドラゴンの攻撃で突き落とされ、今まさに3匹ものドラゴンの牙にかかろうとしていて……

 

 そこに間一髪、アスクレプスに乗ったミツルが間に合った。

 

「えっ……? 私、生きて……な、何これ……!?」

 

 ミランダは、死ぬ未来が回避された状況と、突如現れた、パラメイルよりもはるかに大きな機体――それこそ、スクーナー級のドラゴンよりも大きい――の両方に困惑していた。

 

 その彼女を慮るかのように、ミツルはスピーカーで、務めて優しく声をかける。

 

『あー、そのー、無事そうで何よりだ。とりあえず、ちょっとの間ジッとしててくれる? すぐに安全なところに避なのうわっ!?』

 

 が、しかし、そこに水を差す、というか、思い切り邪魔してくる者が。

 

 それは、今しがた獲物をとられた、スクーナー級のドラゴン達……ではない。

 彼らは、突如現れた、パラメイルと比較してかなり大型の機動兵器を警戒してか、一旦距離をとって様子をうかがっている。

 

 では何が来たのかと言うと……恐慌状態のアンジュであった。

 

『お、お願い! 助け、助けて、私もっ!』

 

『ちょ、ちょっと待て! 待って! わかったから待ってって君、動きにくいからまとわりつくのやめ……』

 

 アサルトモードに変形し、わきの下あたりにしがみつくようにして助けを求めてくる。

 

 憔悴しきった少女が必死に助けを求める、痛々しい光景ではあるのかもしれない。が……いくら何でも場所と状況、そしてやり方をちょっと選んでほしいと言うのが、ミツルの本音だった。

 よりによって機体の胴体部分、それも腕との連結部分近くに組み付かれたせいで、動きにくいことこの上ない。腕の駆動範囲も制限されるし、暴れられると今助けたばかりのミランダが危ない。

 

 しかし、冷静になるよう声をかけても、アンジュの耳には届いている気配がなく、より必死で、いつのまにか両手両足を使ってしがみついてくる。もっと動きにくくなった。

 

 そして、泣きっ面に蜂。その様子を隙、ないし好機と見たドラゴンが襲って来た。

 

 片手がミランダでふさがれ、胴体にはアンジュ(の、グレイブ)がしがみつき、大幅に戦力ダウンしている状態ではあるが、泣き言は言っていられないと、アスクレプスのブレードを抜いて片手で応戦しようとするミツル。

 

 しかしその瞬間、

 

『い、いやああぁ―――!!』

 

 襲ってくるドラゴンに再び恐怖が湧きあがってきたアンジュが、素早く手足を離してその場から離脱した。……アスクレプスと、ミランダを置き去りにして。

 

『えっ、ちょ、この状況作っといて逃げんの君!? えー……ま、まあ動きやすくはなったけど』

 

 釈然としないものを感じつつも、先程までより大幅に動きやすくなったアスクレプスを動かし、襲ってくるドラゴンに立ち向かうミツル。

 

 ブレード1本でも、油断しなければ十分に渡り合える。アスクレプスの防御力なら、多少の被弾は……直撃さえ避ければ耐えることが可能だ。

 

 機動力を生かした立ち回りや、『D・フォルト』を使った防御ができればさらに盤石だろうが、片手に生身のミランダを握って守っている状態ではそれも難しい。

 上下左右の激しい動きが厳禁なのはもちろん、機体周囲の空間を歪ませるバリア機構である『D・フォルト』は、彼女への影響を考えると使えない。巻き込まないように使えば大丈夫だとは思うが、もしものことを考えての配慮だった。

 

 なお、そのミランダはと言うと、邪魔にならないようにか、はたまた怖くてそうなっているだけかはわからないが、アスクレプスの手の内側にすっぽりと隠れるように、体を丸めてじっとしていた。正直、非常に守りやすいので助かる、とミツルは思った。

 誰かと違って、とも。

 

 そして、その『誰か』はというと、

 

『お、お願い、開けて! 乗せて! ここから逃げて!』

 

『待て、待って、待ちなさい! いきなり何、ちょっと、やめ……開けようとしないで!? こら、こじ開け……ホント待ちなさいマジで! 訴えるわよこらぁ!?』

 

 今度は、ミレーネルの操縦する輸送艦『グラーティア』にとりついていた。

 

 アスクレプスから離れた後、近づいてくるそれに気づいてしまった彼女は、一直線にそこまで飛んでいき、保護してもらおうと壁、ないし装甲をドンドン叩くわ、艦載機出入り口のハッチをこじ開けようとするわ……突然のことに頭が追いつかないミレーネルを困惑させていた。

 

 そして、そこに群がってくるドラゴン達。

 逃げるアンジュ。どこかで見た展開だ。

 

『何なのよ一体っ……ああもう、こっちくんな!』

 

 うんざりしたような声音で、艦に搭載されている機銃やその他武装を使ってドラゴンを迎撃するミレーネル。

 

 それを見ていたミツルは、こちらもうっへりとした表情になって、

 

(必死なのも怖いのも察するけど、タチが悪すぎる……MPKかっての)

 

 MPKとは、ネトゲ用語の1つであり……自分を追いかける大量のモンスターを引き連れて移動してきて、それを他人に押し付ける迷惑行為、及びそれによって他のプレイヤーをキルする行為である。略さずに言うと、『モンスタープレイヤーキル』。

 

 要は、今のアンジュである。

 

 そのアンジュはと言うと、しっちゃかめっちゃかに逃げ回り、またしてもこっちに突っ込んで来ようとして、しかしドラゴンに襲われている最中なのを見て諦めたようだ。

 そのドラゴンは君が先程引き寄せた連中ですがね。

 

 ふと輸送艦の方を見ると、格納庫のハッチが開き、そこから1機の機動兵器が出てくるところだった。

 

 出てきたのは、細身のフレームに、全体的に丸みを帯びた装甲を各所に纏った人型の機体だ。

 関節部などにはまるで布か、包帯のようなものが巻き付いているような見た目である。

 

 ミレーネルが乗っているのであろう、その機体……『アンゲロイ』は、襲ってくるドラゴン達をたった1機で相手取っていた。

 

 『サイデリアル・ホールディングス』の新型機体(の、試作品)であるそれは、稼働フレームを軸にして、変形可能な柔軟な装甲で全体を覆うことで、攻撃力・防御力・機動力の全てにおいて高水準な能力を発揮している。

 その戦闘能力は、試作機ながら、現在連邦軍で通常配備されているモビルスーツなどの機動兵器を上回る性能だ。

 

 こちらもパラメイルよりかなり大きく、それでいて機動力も高い。背部と脚部に備わったブースターが火を噴いて加速すると、一瞬で接敵して、腕が変形した剣ですれ違いざまに斬りつける。

 あるいは、腕を変形させた砲身からビーム砲を放って撃ち抜いていく。いずれの武装も、展開して攻撃するまでがかなり早く、持ち換える動作がない分隙も少なかった。

 

 そのような柔軟な装甲にもかかわらず、防御力もきちんと高い。スクーナー級程度の牙では、装甲で受ければほとんど傷もつくことはなかった。

 

 1匹、また1匹とドラゴンを撃ち落としていく。

 

 そして艦の方は、迎撃機能付きのAIに切り替えて、直接ドラゴンを落としに来たようだ。大型でも機動力があり、生物特有のトリッキーな動きも見せるドラゴンの相手をするには、流石に艦に乗ったままでは厳しいと判断したらしい。

 

 そして、ドラゴンを蹴散らす姿を見て、再度アンジュが……

 

『た、助け……』

 

『こっち来たら撃つ!』

 

『ひっ……!?』

 

 飛び込もうとしたところを、割と本気の殺気と共に、ミレーネルがアンゲロイの砲身を向けたことで、あえなく退散していった。

 流石にMPK二度目はないらしい。声音からも、ミレーネルのうんざりした感じが怒りと共に伝わってきた。

 

 しかし直後、行き場を失ったアンジュは……

 

『よし、これで残るはあの大物だけだな……っ!? な……し、新兵!?』

 

『た、助けて……助けてええぇぇっ!』

 

『何しやがる、離れろ!』

 

 今度はなぜか戦場の方に舞い戻り、今まさに、親玉と思しき『ガレオン級』のドラゴンと戦おうとしていた、パラメイル第一中隊隊長・ゾーラの方に突っ込んでいっていた。

 

 彼女の乗る指揮官機『アーキバス』の腰にしがみつき、またしても見事なまでに邪魔になっている。

 

『だ、だからあの子は……なんでわざわざロボットでしがみつくなんて、器用で迷惑な真似を……って、んなこと言ってる場合じゃ……』

 

 少し前の自分のように、格好の餌食状態になっている、指揮官と思しき機体(と、アンジュ)。

 

 助けに行こうにも、片手にミランダを持っている今の状態では無理だ。

 

 しかし幸運にも、ちょうど周囲のドラゴンをどうにか追い払い終え、さらにミレーネルのアンゲロイも追いついてきた。

 

『ミレーネル、この子お願い!』

 

『お願い、って、ミツルは?』

 

『あれ、どうにかして助けないとやば……』

 

 『やばい』と言い切るよりも先に、それは起きた。

 おそらく、抱き着かれていたことでよけきれなかったのだろう……ガレオン級のドラゴンの攻撃が、2機のパラメイルに直撃し……大破して海に落ちて行くところだった。

 

『そんなっ!?』

 

『ゾーラ隊長ォ!?』

 

 その場面を見ていた他の隊員……サリアとヒルダの悲鳴が響く。

 

 ドラゴンはさらに、確実にトドメを刺そうとでも思ったのか、着水した2機目掛けて、スクーナー級を率いて襲い掛かろうとして……

 

『あ゛ー、も゛ー! 仕事初日から働きすぎじゃないかなぁ僕!?』

 

 次元力の緑色の光を背部から噴き出して急加速し、アスクレプスがガレオン級目掛けて突っ込んでいき、頭に思い切り蹴りを放つ。

 そのままの勢いて、両手に持ったブレードで何度も斬りつけ、さらに周囲のスクーナー級にも、縦横無尽に飛び回って攻撃する。

 

「な。なんだよありゃ……あんなにでけえのに……」

 

「は、速い……」

 

 後方から見ていた、ロザリーとクリスが呆然と呟く。2人と並んで、いざと言う時は援護のために狙撃しようとしていたエルシャもまた、呆気に取られていた。

 

 ドラゴン達は、落ちた2機よりも、今確実に脅威になっているアスクレプスを相手取ろうと決めたようだが、その機先を制するように、アスクレプスは背部のうねる砲身から光弾を放って牽制。

 怯んだ隙に、

 

『リベレーター展開! 来い!』

 

 その掛け声と共に、異空間から巨大な砲身が転送されてきて、アスクレプスの目の前に出現。

 機体と連結し、膨大な次元力がチャージされ始める。

 同時に、後方からアンカーが伸び、何もない空間に打ち込まれて機体を固定した。

 

 そして、出力が最大になったところで、蛇の頭を思わせる形状の大砲が火を噴いた。

 

『Gディメンション・シュート!! 往・生・しやがれぇえええっ!!』

 

 ミツルの叫びと共に、アスクレプスの身長以上あろうかという極太の、純白の破壊光線が放たれ、それが薙ぎ払うように戦場をなぜる。

 光に飲み込まれたドラゴン達は、ほとんどが消し飛んで消滅し、ガレオン級など一部も、形はわずかに残したものの、絶命して力なく落ちて行った。

 

 自分達の扱う武器類とは全くレベルの違う威力の武装の数々に、驚愕が収まらない第一中隊の面々。

 

 そんな彼女達に対して、アスクレプスが向き直る。

 今放った大砲・リベレーターは、再び亜空間に消えた。

 

 思わず体をこわばらせる彼女達に対して、ミツルは、害意はないことを示すかのように、手にしていたブレードをしまう。

 

 それを見て、幾分緊張をやわらげたサリアが、ゾーラ不在の今、第一中隊の副隊長として尋ねる。

 

『助けてくれたことには礼を言う……それで、あなたは誰? ここに何の用?』

 

『ええと……どうも、『サイデリアル・ホールディングス』の者です。こちらに滞在してるはずの、ナデシコ……外から来た部隊に、補給物資を運んできました、あー……ただの運送業者です』

 

 嘘つけ。

 ヴィヴィアン以外の心の声がそろった。お前のような運送業者がいるか。

 

 なお、ヴィヴィアンは『外の世界の運送業者って強いんだなー』と、間違った知識を頭の中で形作りつつあった。違います。誰か教えてあげて。

 

 とはいえ、物資を運んできたのは事実であるし、加えて言えば、近々そういう者が来るという話は、サリアも聞いていた。

 

『……司令から話は聞いてるわ。『アルゼナル』に案内するから、ついてきて』

 

『ありがとうございます。それと……負傷者を1名、こちらで保護してるんですが』

 

『……基地についてから引き渡してもらうわ』

 

 言いながら、サリアは……撃墜されたゾーラの救出に向かう、仲間達の機体を一瞥した。

 その後は、ココが撃墜された場所にも、ちらりと視線を向け……悔しそうに下唇を噛む。

 

 パラメイル4機大破、パイロット1名、あるいは2名死亡の大損害。

 恐らくは生きていない、生きていても重傷であろうゾーラに代わって、自分が司令にこのことを報告すると思うと、彼女は気が重かった。

 

 

 ☆☆☆

 

 

(以下、日記に戻る)

 

 襲って来たドラゴンは撃退して、約1名人命救助とかもしたものの……初日からハードだった。

 いやまあ、あんな場面に出くわした運が悪かっただけだとは思うんだけどね……。

 

 ともかく、補給関係のチェックその他と……あと、これからお世話になる『外部独立部隊』の皆さんとの顔合わせその他は、明日ってことになった。

 

 総司さんとか、一部の留守番メンバーを除く、戦艦その他の部隊は、『火星の後継者』関連の捜索に出てて、今日はまだ戻ってないみたいだしね。

 

 それまでに、寝て疲れをとらないと。仕事にはきちんと取り組めるように。

 次元力を使った武装を使うと、なんか疲れるんだよなあ……意志の力とかそのへんを引き出すからかな?

 

 

 

 




おまけ 今回出てきた機体について


【アンゲロイ】

元ネタは『第三次スパロボZ』に出てくる敵勢力のロボット。
分類としては下っ端、もしくはAIを搭載して使われるザコ敵。作中での扱いも、基本的には数で勝負の量産機とされている。しかしそれでも地球連邦軍が正規採用している機動兵器よりかなり性能は上である。実際、ザコ敵の割には結構堅い。
部隊ごとにカラーバリエーションが存在するが、基本的に性能は同じ(ある例外を除いて)。

ちなみに、元ネタ世界では大きさが42mもある(マジンガーZの倍以上)のだが、この世界ではミツルのアスクレプスに合わせて、ほぼ同じくらいのサイズに小型化されている設定。バースカルが頑張りました。
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