スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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本作品は、二次創作およびクロスオーバーという性質上、『スーパーロボット大戦V』及び『スーパーロボット大戦Z』シリーズのネタバレを随所に含みます。

もし未プレイの方がいらっしゃいましたら、あらかじめご了承ください。


第1話 蛇使い座の神器

 

 

【○月×日】

 

 今日から日記をつけることにする。

 

 社会人になってからずっと続けてる趣味ないし習慣でもあるし、単なる暇つぶしでもあるし……後から読み直して、『ああ、この時僕、こんな風に思ってたんだっけなあ』と振り返るための記録にもなる。

 

 あと、文面だと冷静に見えるかもしれないが、今現在僕はかなりテンパってる状況なので、今のこの状況をあらためて整理する意味でも、こうして文章に起こしてみるっていうのはいい手なんじゃないかと思っている。

 

 そんなわけで、今言った通り、まずは今現在の状況を認識するところから始めようと思う。

 

 今僕は、見覚えのない操縦席というか、コクピット的な空間に1人で座っている。

 

 車の運転席とか、ゲーセンのレースゲームの筐体とか、そんなちゃちなもんじゃ断じてなく……視界一杯に広がる全天モニターと、色々あってわけがわからないほどならんでいる、操縦桿やらスイッチやらダイヤルやら……うん、やっぱり『コクピット』っていう表現が一番しっくり来る、来てしまう光景だ。

 

 当たり前だが、僕は今までの人生、そんなもんに乗り込んだことは一度としてない。

 僕の職業は普通の公務員だった。毎日夜10時近くまで残業して、へとへとになって帰ってベッドに倒れこみ、そのまま気が付いたら朝だった……みたいな、ちょっとよろしくない生活サイクルの中で必死に頑張って働いていた、どこにでもいる事務職だ。公務員が定時で帰れる? はっ、誰がそんなこと言ったんだかね。

 

 そんな感じなので、決して僕はこんな、飛行機のパイロットでもなければ一生縁のないような、複雑な操作が必要そうなコクピットに縁はなかったはずなのだ。

 

 しかもなんか、ただのコクピットじゃなく……なんか近未来じみたデザインに見えるのは、気のせいだろうか? 僕がただ単にアニメとか漫画の見過ぎ・読みすぎなんだろうか。

 

 まあ、それはいい。考えても仕方ないことだ。

 

 そんな感じでテンパっていた僕は、ふいに『ああ、そうか、さては夢だな』と、現実逃避じみた方向に考えを進ませたわけだが……その直後に、頭が割れるような頭痛に襲われた。

 

 そして、その痛みの中で頭の中に流れ込んできた……あるいは、呼び起こされたのは、『星川満』という、1人の少年の短い人生だった。

 

 普通の一般家庭に生まれ、9歳まではすくすくと育っていった彼だったが、宇宙からの侵略者『ガミラス』が地球を攻撃し始めたことで、その人生は狂っていった。

 学校をやめて働き始めなければならなくなり、将来の夢だったモビルスーツのパイロットも諦めなければならなくなった。

 そして、ついさっき……本当についさっき、その『ガミラス』の攻撃と思しき爆風によって、17年という短い生涯に幕を下ろした……という記憶だった。

 

 それら全てを見終えたところで、頭痛は嘘のように収まった。

 

 あまりにいきなりのことの連続で、またしても混乱しかけたが……そこでようやく、僕は今、自分のこの体が、二十数年間つきあってきた、ブラック労働でボロボロの体ではなく……やや小柄でまだ十代後半あたりと思しき、若い体になっていることに気づいた。

 モニターを鏡代わりにして映してみれば、顔も違う。目の下に隈ができた不健康なアラサーの顔ではなく、童顔だが整っていてハリのある肌の、美少年の顔になっていた。

 

 というか、どう見ても、さっき頭に流れ込んできた『星川満』の顔と体だった。

 黒かったはずの髪の毛が、真っ白になっている点を除けば、だが。

 

 この辺で僕は、これが夢でも何でもなく、そしてただならぬ事態が起こっていると理解して……また現実逃避したくなるのを我慢して、しばらく考えてみた。

 そして、今わかる範囲で状況をまとめてみた。

 

 どうやら僕は今……ネット界隈で流行りの、『異世界転生』みたいな状況にあるようだ。

 過労で死んだのか何なのかはわからないけど、元の世界から、この妙ちきりんな世界の、『星川満』という、これまた死んだはずの少年の体に転生というか、憑依したらしい。

 

 そしてこの世界も、普通の世界じゃない。あきらかに前の僕がいた世界とは異なる……フィクションじみた世界だ。

 

 なにせ、『モビルスーツ』である。

 おそらく、日本で最も有名なロボットアニメであろうあのシリーズに出てくる機動兵器。あれが実在している世界である。というか、この『星川満』くんは、そのパイロットが夢だったようだし。

 

 つまり、この世界はガンダムの世界なんだろうか、という考えに至るのは至極当然ではなかろうか。

 少なくとも、僕の残念なおつむではそう考えることしかできず……同時に僕は、今自分が座っている謎なコクピットについて思い出した。

 

 仮にだが、この世界がガンダムの……あのシリーズめっちゃバリエーションあるんだが、そのうちのどれかの世界だとしよう。

 そうなると、このコクピット、というかこの機体は、ガンダム、あるいは何かのモビルスーツなんだろうか?

 

 とっさに僕は、コクピットから外に出て、振り返って機体を見てみた。

 しかしその瞬間、僕は、余計にわけがわからない状況に突き落とされた。

 

 目に飛び込んできたその機体は、ガンダムではなかった。

 その他のモビルスーツですらなかった。

 

 しかし、僕はこのロボットを知っていた。

 そして、思わず呟いてしまった。

 

 

 

 『アスクレプス』じゃん…………と。

 

 

 

【○月△日】

 

 昨日はもうなんか、機体を確認して、そして日記を書いたところで力尽きてしまったが、今日はもうちょっと頑張って現状の整理を進めたいと思う。

 寝て起きて、やっぱりまたこのコクピットの中だったことで、『夢であってくれ』という、昨日の僕の望みも見事に木端微塵になったことだし。

 

 とりあえず、この世界が何ガンダムなのか、はたまたそれ以外の世界なのかについて、特定するのは諦めた。

 

 手掛かりがあまりに少なすぎるし、僕はガンダムシリーズは、まともにアニメで見た作品が1つもないので……無理だ。『ガミラス』なんて敵勢力が出てくる作品、あるのかどうかもわからん。

 

 なのでもう1つ重要なこと……僕が今乗っているこの機体、『アスクレプス』について、色々考えて整理してみようと思う。

 

 『アスクレプス』は、スーパーロボット大戦シリーズの1つに出てくる、スパロボオリジナルの機動兵器の1つだ。

 知名度は……そんなにない気がする。有名どころである、『グランゾン』や『ヒュッケバイン』あたりと比べると、そこまで知られてはいないんじゃないかと思う。僕が知る限りでは、こいつが出てきたのは、6作品が一続きになっている『Zシリーズ』のうちの、後半3作品だけだし。

 

 しかし、結構重要な役どころで出てくる機体であるし、コレの操縦者であるアドヴェントは……ネタバレになるが、同シリーズのキーパーソンの1人である。

 というか、ラスボスである。そいつが操る機体なのだ。

 

 作中でもかなり強力な機体の1つであるとされている上、この機体は実は仮の姿であり、真の姿に戻って本気を出すとさらにヤバいことに……という設定があったりするが、まあ今はいい。

 

 ……問題は、何で僕が今、そんな機体に乗っているのか、というところである。

 

 現代日本から異世界転生? 憑依? した現状についても不明なら、その憑依先である星川少年がなぜかこの機体に乗っているという現状もまた不明である。二重にわけがわからない。

 

 この機体が目の前にあるもんだから、ガンダムでなければスパロボZの世界なのかとも疑ったが……あのシリーズには、『ガミラス』なんて敵勢力は出てきていなかったはず。

 

 あるいは、数多ある『多元世界』の1つなのかもしれないとも思ったが、それならそれで、何でこいつの本来の持ち主であるアドヴェントがいなくて、僕が乗っているのかって話だ。

 

 考えてもやはり答えは出ず……そんなことをしている間に腹が減ったので、カロリー○イトみたいな携帯食料と水で空腹を満たす。

 

 外に出た時に気づいたんだけど、今僕(と、アスクレプス)がいるここは、撃ち捨てられた連邦軍の基地の1つらしい。

 

 ガミラスの攻撃で破壊されて使えなくなった……というわけではなく、単に放置されてるだけっぽい。掃除も何もされていなくて埃だらけだが、物資とかが割とそのまま残ってる。

 さっき食べた携帯食料や水も、ここに残されていたものだ。勝手に申し訳ないとは思ったけど、昨日から何も食べていなくて空腹が限界だったので。

 見つかって怒られたら、誠心誠意謝ろうと思う。

 

 もっとも……ここに人が来ることは多分もうないと思われるが。

 

 おそらく、『星川満』としての記憶、ないし知識だと思うんだけど……連邦軍は、ガミラスとの戦いで大きく力をすり減らしてしまっているため、基地とか施設のいくつかをリソース的に維持できなくなり、やむなく捨てたというのがいくつもあるらしい。

 恐らくこの基地もその1つ。『棄てられた基地』ってわけだ。予想だけどね。

 

 ……連邦軍は来ないだろうけど……アドヴェントはどうだろ?

 仮にこのアスクレプスが、何かのはずみであの人(人じゃないけど)の手元を離れて、探しているのだとしたら……自分に黙ってコレに乗り込んでいる僕を見て……どう思うかな?

 

 あの性格、ないし性質だから、怒るとかはしないかもしれないけど……『それは私だけの機体だ、返したまえ』とか言って、天から降り注ぐ光で焼却処分とかされないだろうか。

 

 あの人、笑顔は爽やかだけど、内面はシリーズ屈指の外道とまで言われる人だからなあ……もしそういう状況だったらと思うと、この上なく不安である。

 

 よくて放逐、あるいは洗脳して手駒に……悪ければ救済と言う名の焼却処分だろうか。

 いや、あの世界、死ぬよりつらい仕打ちみたいなのもゴロゴロあったりするからなあ……次元獣……呪われし放浪者……イドム……ガクブル。

 

 ……考えていたら怖くなってきたので、この話はここまでにする。

 

 さっき考え事をしていた時に気づいたことだが、どうやら僕はこの体の元の持ち主である『星川満』少年の記憶を引っ張り出して参照することができるようだ。

 

 それによると、この世界は……まあさっきも話した通り、『ガミラス』なる侵略者によって地球が滅亡の危機に瀕している。

 『遊星爆弾』とかいう、隕石みたいなおっかないのが次々撃ち込まれたせいで、海が干上がり、未知の植物によって環境が汚染されている。

 

 資源もエネルギーもじきに底をつくと言われ、まさに滅亡の瀬戸際だ。

 

 研究者達が導き出した結論では……この地球において、人類に残された時間はあと1年。

 それが、人類滅亡までの猶予であると、いつか、何かで発表されたらしい。

 

 ……おいおい、いきなりクライマックスですか、それも世界規模で。

 

 いやホント、なんか……色々とんでもない世界に転生?したもんだな、僕……。

 状況的に、どう転んでも死ぬ未来しか見えない展開、フィクションでも早々ないだろうに。転生して即、人生終了のお知らせって……ひどくないか?

 

 それまでの時間、僕は一体どうやって過ごせばいいんだろう。

 

 記憶の中にある、彼の家に戻って、『星川満』として暮らす?

 いや……ダメだなコレは。体が彼でも、中身が違う。僕だ。記憶があっても、生まれてからずっと一緒だったであろう肉親を騙せる気はしないし、第一そんなの僕の良心的にも咎める。

 そもそも、記憶の通りなら、彼は既に死んだ扱いになってるはずだし。

 

 なら、『星川満』とは全く別人である『誰か』として、職を見つけて暮らす?

 それも難しいだろう……労働力はどこでも歓迎されそうな世の中ではあるけど、戸籍も何もない身だからなあ。さっきも言った通り、『星川満』の戸籍は今、死亡扱いになってるだろうし……というか、戸籍とか役所とか機能してんのかな、この世界。

 

 ふと、考える。今僕がこうして……というか、目覚めた時に僕が、この『アスクレプス』に乗っていた意味について。

 

 これからの僕の人生をどうするか、どうすべきか……その選択みたいなものに、ひょっとしたらこいつが関わってくるんだろうか?

 

 Zシリーズの、あの混沌とした世界で巻き起こった戦いの中で……それこそ、宇宙を、銀河を、並行世界を股にかけた戦いの中で。

 真の姿を含めれば、ホントに最終版まで、時に敵として、時に味方として戦い抜いたこいつが?

 

 それってひょっとして、こいつで『ガミラス』と……

 

 ……いやいや、んなあほな。

 こちとら、戦闘なんて経験したことない一般人だよ。それをそんな、宇宙からの侵略者相手に、操縦したこともない機動兵器でとか……ないない。

 

 そういうのはそれこそ、主人公であるガンダムとかに任せておくべきだって。……いるのかわからんけど。

 

 

 

 とまあ、そう結論付けて今日の日記も終わろうとしたんだけど……そしたらふいに、胸の奥から悲しい感情が湧きあがってきた。

 同時に脳裏に、僕……というか、この『星川満』が死ぬ直前に言葉を交わしていたと思しき、1人の青年と、1人の女性の姿が……楽しそうに笑う笑顔が浮かんだ。浮かんで、すぐに消えた。

 

 ……いや、何だよ、今の?

 

 

 

 

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