スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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お知らせ

第16話と第17話のあとがきに、その回で登場したメカの元ネタや設定的なものを付け加えましたので、もしよかったらご覧ください。

それでは第20話、どうぞ。


第20話 納豆と平和とこれからのこと

 

【○月+日】

 

 日本に戻って早々、旋風寺コンツェルンから、発注したいものがあるとの連絡を受け、ミスマル中将に報告を終えた後、その足で商談に行った。

 

 鉄道用の資材とか、あるいはパーツその他の加工・納品依頼かな、と思って行ったんだけど……発注されたのは、なぜか納豆。

 

 ……え、何で? おたく、鉄道関連の産業がメインだよね? 飲食とか小売業もやってたっけ?

 

 しかも話を聞くと、今、日本各地で納豆が品薄になってるとかなんとか……ますます何で?

 

 別に今年は異常気象とかもなかったから、原料である大豆の品薄や価格高騰も起きていないはずだし……。

 現に、他の大豆製品……豆腐や醤油、味噌なんかは普通に流通してんのに、なんで納豆だけ?

 

 ……よくわからんけど、まあ……ほしいって言うなら作るし、売るけども。

 うちには食料品の製造や加工を扱ってる部門もあるから。

 

 

 

【○月¥日】

 

 一昨日注文を受けた納豆を、早速納品させてもらった。

 そしたら、舞人社長にめっちゃ驚かれた。『この短期間でこれだけの量、よく用意できましたね』って。

 

 まあ、こういう発注に関してはうちの会社、結構強いんだよね。

 

 材料になる大豆を発注して、それをもとに納豆を作ったわけだが……うちの食品加工工場にある製造ラインを使い、今回は結構な量の発注だということもあるので、通常稼働させているよりも規模を大きくして納豆の生産に当たったのだ。

 予備用のラインと、普段は他の食品の加工のために回しているラインの一部も、一時的に納豆の生産に充てる形で。

 

 え、そんな風に生産するものをコロコロ変えられるのかって? 変えられるんだなコレが。

 

 確かに普通、食品の加工って言ったら、それ専用のラインを用意して作るわけだから、そう簡単に他の食品の加工用に変えたりとかできるわけがない。

 

 しかし、うちの食品加工部門には、『万能食品加工マシーン』とでも言うべき、設定次第で様々な食品加工に利用可能な、超便利な機械があるので、それも可能なのだ。

 

 これ1つあれば、納豆や味噌みたいな発酵食品も、かまぼこやはんぺんみたいな練り物も、たくあんやピクルスみたいな漬物も、スモークチーズやビーフジャーキーみたいな燻製も……何でも作れるという、魔法みたいな機械が。

 小麦からパスタをつくることも、肉をミンチにしてハンバーグに加工することも、米から日本酒を、ブドウからワインをつくることすらできる。同じ機械でだ。すごいだろ。

 

 ……このマシン、名前を『グルメキッチン5252』と言うのだが……名前で察した人もいるかもしれないが、作成者はウォルフガングである。

 前に話した、一時期うちが彼のスポンサーだった時に作ってもらった機械である。ホントマジで助かってます。

 

 彼にはこの他にも、様々な種類の農作物を作れる万能有機物栽培マシン『ファーマー0831』や、硬い岩盤も難なく堀り進められる上、掘りながら鉱物資源の種類分けができる掘削・選別同時進行重機『ゴールドラッシュ2684』などを作ってもらっており、またこれらはうちの製作部門で設計図や特許権ごと買い取ってある。

 おかげで、これらが配備されている採掘部門や生産部門では、日夜巨額の利益が生み出されていて……今回もこれらに活躍してもらったわけだ。

 

 ……いや、ホントこんなもん作れる腕があるんだから、ウォルフガング……真面目に働けよ。

 そっちの方がいい意味で歴史に名を残すレベルになれるって絶対。

 

 実際、このことを舞人社長に話したら、それはもう驚いていた。

 

 けど同時に、なぜか嬉しそうにもしていた。

 

 どうしてか聞いたら、『今は悪党でも、心を入れ替えることができれば、きちんと社会のために役立つ力を発揮できる奴だってことがわかったから』だそうだ。

 

 ……ホント、この人はかっこいいな。相手が悪党であっても、いやある意味『悪党だからこそ』……そいつのこともきちんと考えて、心配して、そして明るい未来や、そこに至れる可能性が見えた時には、それを喜ぶことができるんだから。

 いつの日か、ウォルフガングにもその気持ちが伝わってほしいもんである。

 

 もしそんな時が来たら……僕も何かしら、後押しはさせてもらいたいと思ってるから。彼の手腕に、どんな形であれお世話になってる者として。

 

 ……しかし、納豆の品薄はひとまず解消ないし緩和しそうだけど……原因は何だったんだろう?

 

 舞人社長の話では、まだわかってないらしいが……風の噂では、ロボットが現れて納豆を次々に奪ってる、なんて話も聞けたっけ。

 ……そんなに納豆が好きな奴なのかな? ロボット使ってまで強奪って……買えよ、普通に。

 

 ちなみに、雑談の中で舞人社長に聞いた話なんだけど、なんか舞人社長のお爺さんが納豆が大好物なんだって。

 それなのに最近では手に入らなくて元気がなさそうにしてたから、これで喜んでもらえる、って嬉しそうにしてたよ。

 

 ……そういや、タツさんも納豆好きだっけな。

 

 総司さんの話だと、千歳さんは今もタツさんの家でお世話になってるそうだから……後で挨拶に行かなきゃ。……手土産、納豆でいいかな?

 

 

 

【○月@日】

 

 千歳さんとタツさんに挨拶に行ってきた。

 

 その際に聞いたんだが……やはりというか、千歳さん、もう戦いに加わるつもりはなさそうである。

 それこそ、ヤマトが見つかっても見つからなくても、元の世界に戻れても戻れなくても。

 

 もともと千歳さんは、海が干上がり、食べ物もろくに作れず、自然の食品やきれいな景色なんてどこにもなくなってしまった……極限状態の地球で暮らしていた。

 1年後には人類は滅びてしまうだろうとまで言われた、末期も末期の惑星で。

 

 それでも、歯を食いしばってそれに耐え、かすかな希望を目指して戦い続けた。

 

 それが、この平和な世界で数日生活して……自然の食品とかを食べて、穏やかな時間を過ごして……何と言うか、緊張の糸が切れちゃったみたいだ。

 

 もう、ヤマトに戻れたとしても、日程の遅れは致命的だし、あきらめた方がいい。

 こんな平和な世界で穏やかに暮らせるのなら、あんな地球に戻らなくても、もうここで仕事を見つけて暮らせばいい……そんな風に考えた。

 

 それが、生まれ故郷の地球を捨てる決断だとわかっていても。

 

 ……彼女を責めることはできないだろうな。

 当然と言えば当然の考え方だ。苦難が待っているとわかっている道に、それも苦労して戻るくらいなら、今目の前にある、手を伸ばせば届く幸せに縋りたいと思うのも、無理はない。

 

 けれど、総司さんやトビアはそうしなかった。

 あくまで自分達は、あの地球を救うために地球を旅立ったんだと、その使命感を未だに胸に抱き続けている。それはそれで、正しいことだろう。

 

 そして、僕はというと……どうなんだろう?

 

 思えば今の僕は、ここにきちんと社会的地位も生活基盤もある。

 もともとは『ひとまず』的な感じで取り組んだものだったけど、予想をはるかに超えて上手くいって……元の世界より盤石なものが出来上がったと言えるくらいだ。

 

 加えて、ここに来てから仲良くなった人達もいる。僕を慕ってくれる社員たちもいる。

 

 ……そう考えると、僕も、ここを離れて、ここでの全てを棄ててあの世界に戻るのは……嫌、かもしれない。

 

 けど、あの世界を捨てるっていうのも……それはそれで嫌だな。

 多少ではあるけど、思い入れもあるし……僕ももともとは、あの地球を助けようと思って色々と動いていたわけだし……最初の方のガミラスの撃退以外は、ことごとく上手くいかなかったけど。

 

 ここでの自分も捨てたくないけど、あっちの地球を助けられそうなら、それはそれで頑張る……なんだか、僕は僕でどっちつかずで中途半端な考え方を、いつの間にか持ってたもんだなあ。

 

 理想は、こっちに永住したままあっちを助ける……とか?

 我ながら無茶苦茶なことを言ってると思うけどもね。

 

 あ、ちなみに、千歳さんに会ったことは、通信で総司さんに報告しました。

 ……やっぱり、この世界に住む気っぽい、とも。

 

 あの分じゃ、ヤマトが見つかってもダメだろうな、と言ったら……総司さんもちょっと残念そうにしていたけど、やはり千歳さんの意思を尊重するつもりのようだ。

 

 それともう1つ。

 総司さんから通信の時に一緒に聞いたんだけど、向こうでは結構大変なことが起こってた。

 

 なんか、アンジュが行方不明になってるんだって、今。

 僕が帰った少し後の出撃の時に、機体の不調だか何だかでロストしてしまい、今、皆で捜索中なんだそうだ。

 無事でいるといいけど。

 

 あと、毎日そんな風に頑張って探していたら、なんかヴィヴィアンに『なんで皆アンジュを探してくれるの?』って聞かれたらしい。

 

 なんでも、自分達はノーマだから、こんな風に人から心配されたり……いやそもそも、思いっきり使い捨ての消耗品扱いで、人間扱いされないのが普通だった。

 いつ死ぬかもわからず、死んでもすぐに忘れられ、補充される。いつまでも悲しんでるなとばかりに、喪に服す暇なんて当然与えられず、敵が来たらはい出撃、の毎日。

 

 だから、総司さん達がヴィヴィアンに『仲間だからだよ』って何の迷いもなく答えた時も、『仲間』として扱われることが逆に新鮮で、というか理解できなくて、本気で戸惑ってたんだって。

 

 言ってみれば、『ノーマあるある』……なんだろうか。

 ブラックすぎていまいち笑えないけど。ほんとにあの国は……

 

 

 

【○月;日】

 

 納豆の品薄の一件、解決したそうだ。

 

 犯人は、宝石強盗ピンクキャット、そしてその首領、カトリーヌ・ビトン。

 今までも幾度となく舞人社長、ないし『勇者特急隊』と戦って来た犯罪者である。

 

 なんでも、夕食の時に納豆を頭からかぶって激怒した彼女は、この世から納豆を消し去ろうとして、納豆へのネガキャンもかねて日本中から納豆を奪っていたという。

 

 …………うん、ひとっつもわからん。

 

 わからんけど、まあ解決したならいいか。

 

 そんなわけで、品薄は解消になる見込みだし、今回が最後の納品ということになったんだが……その時に、舞人社長のお爺さんである旋風寺裕次郎氏と会った。話に聞いていた、納豆大好きの。

 

 品薄で納豆が食べられず、絶望していた時に、いち早く納豆を供給してくれた僕に、ぜひ一度お礼を言いたいと思っていたらしい。

 ……まあ、喜んでもらえたのならよかった。うん。

 

 

 

 

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