【○月_日】
アルゼナルから、というか、そこにいる外部独立部隊から『また物資もってきて』と発注があり、正式に地球連邦軍からも通達があって、また届けに行くことになった。
予定より早いな……計算では、まだしばらくは持つはずだったんだけど。
総司さんに聞いてみたら、ここのところ連日のアンジュ捜索やら何やらで、地味に燃料その他の消費が激しかったらしい。
……そう言われちゃ責められないね。仲間のためだもの。
それに加えて、ドラゴン相手にも結構出撃してて、そっちにも弾薬とか色々使ったし、機体の修繕にも資材が必要だから、と。
そしてさらに、色々あってまた仲間が増えたから、その分資材が減るペースも増えた、と。
またか、今度はどんな人が加わったんだろうな。
それから、今回はなんか……アルゼナルの方でも物資を欲しがっているらしい。
独立部隊に渡す分とは別に、金は出すからアルゼナルにも物資を売ってほしいそうだ。総司さんとのとは別に、ジル司令からそう相談された。
なんでも、普段は定期的に『始祖連合国』からやってくる『定期便』でそういう必要物資の補充はされるんだけど、ここ最近、定期便が来る時期が乱れがちになっていて、予定通りにこないことがあるそうだ。
最近、以前までよりも頻繁にドラゴンが現れるようになって、定期便が思うように運航できないのが原因だという。
中には、到着前にドラゴンに襲われておじゃんになったケースもあるそうだ。
しかし、ダメになった分が早急に補填されるなんてことはなく……『始祖連合国』側からは、お前らがきちんと受け取らないのが悪いとか何とか言われたそう。やっぱ滅茶苦茶だなあの国……。
結果、必要物資がぼちぼち品薄になってきており、最近はドラゴン退治にも頻繁に独立部隊の力を借りているそうだ。大変だな、組織の運営も……上の方がバカだと、特に。
そういうことなら、色々と多めに持っていくか。
ジャスミンさんに頼まれてたものも含めて……グラーティア一台で足りるかな?
いざとなったら、亜空間に収納して持ってくか……『こんなに積んでこれたのか?』って疑われるかもしれないけど。
追記
アンジュはあの後無事に見つかったらしい。
けど、ヴィヴィアンやエルシャは再会を喜べたのはいいとして……やはりヒルダやロザリー、クリスやミランダは面白くなさそうで、依然として空気は険悪だとのこと。
今回の遭難騒ぎ……アンジュの機体『ヴィルキス』の不調が原因らしいけど……それ、ひょっとして人為的なものだったりしないっすよね……?
【×月○日】
月も変わりまして本日、またやってきましたアルゼナル。
ご要望通り、独立部隊の残留組の皆さんへの補給物資はもちろん、アルゼナルに引き渡す物資もきちんとたんまり用意してきましたとも。
今回は到着後すぐに受け渡しができたので、その後丸々時間ができた。
ジル司令も『まあゆっくりしていけ』と言ってくれたので、2~3日ここに滞在したら、また帰ろうと思う。
……しかし、前にも思った気がするけど……性格とか立場、普段の方針とかを考えるとちょっと違和感があるというか……なんかジル司令、想定以上に僕やミレーネルに色々よくしてくれる気がするのは気のせいだろうか?
単に親切でしてくれてる……? あるいは、何か狙いがあって……?
まあいいや、今のところ実害はないし。
その後は久々に皆に会ったわけだけど、なるほど、見覚えのない面子が増えてる。
……いや、見覚え……ない、こともない。
アスランさんがいました。
Z時空では、諸事情から有害扱いされてしまったアスランさんが。
うん、そういや『オーブ』あったもんね、この世界……それも、ここから割と近くに。
オーブは実は、元々この施設の存在を知っていて……しかし、被差別階級の人々を強制的に戦わせる非人道的なものだっていうことで、よくは思っていなかったのだと。
今回、ドラゴンによる襲撃の頻度が増えていて手が足りなくなり気味だし、いい機会だから介入するかということで、戦力上の応援ということで派遣されてきたらしい。
しかも、アスランさん以降にも追加で人員が来る可能性もあるそうだ。
SEED世界からくるとなると……ええと、あのスーパーコーディネーターさん? それとも赤い目の運命さん? あるいは両方だろうか……たぶんそうだな。
で、もう1人、メイドさんが増えてた。
メイドさんが、なぜかアンジュをかいがいしくお世話していた。
なんでもこの人、アンジュが『アンジュリーゼ』だったころのお付きの侍女で、モモカさんというらしい。
アンジュに会いたい、お仕えしたい一心で、少し前にここに来た定期便に密航してアルゼナルに侵入したんだそうだ。行動力あるメイドだな……
当のアンジュからは、なんか煙たがられてるっぽいけど。
アンジュを『アンジュリーゼ様』と呼んで、あくまで『アンジュリーゼ』として扱おうとするからか……過去を吹っ切ったアンジュからすれば、自分を慕ってくれることは嬉しいけど、複雑な気分になる、ってところだろうか。
……いや、それにしては何か……また違った雰囲気が、所々に……。
気のせいかな、アンジュが彼女に対して、苛立っていると同時に、心配しているように見える……かも?
そして、モモカさんの方は……こっちはあくまでアンジュに『お仕えします』的な感じだけど……やはりこっちがこっちで、何かを押し殺して、それでも笑ってる、って雰囲気が……。
……なんだか、あまりいい事情は隠れていなさそうだな、と、何となく思った。
……その理由は、そのすぐ後にわかった。
『お久しぶりです!』と、会いに来てくれたミランダと一緒に、食堂でちょっと遅めのランチを食べていた時に、こっそり彼女が教えてくれたのだ。
ここ『アルゼナル』の存在は、僕らみたいな『例外』を除いては、基本的に秘匿事項である。
そのため、その存在を知った者は……生きてここから帰ることはできない。密航なんかして忍び込んできた者であれば、なおのこと。
つまり、モモカさんは……近く、処罰されることになるとのこと。
……処刑、と言い換えても問題ないらしい。
そして、モモカさん自身もそれを承知の上、覚悟の上でアンジュに会いに来たんだそうで……なおかつ、そういう罰が下されることから逃げるつもりもない。最後の瞬間までアンジュの侍女であり続け、そしてそのまま、時が来ればお別れする……と。
……行動力もあるけど、それ以上に覚悟決まりすぎだろ……。
なお、このことは総司さん達も聞かされていて、よくは思っていないものの……アルゼナルの秘匿に関しては『始祖連合国』の問題であり、内政干渉にもなりかねないから強くは言えないし、言ったところでこの決定は覆らないらしい。
……あー、もう、なんか色々聞いて、かえって気分悪くなっちゃったな……。
追記
夕方、ジル司令に呼び出されて、もしできれば、ってことで頼みごとをされた。
件のモモカさんの処分だが、当初の予定では、次に来る『定期便』の時にモモカさんも乗せて行って……海の上で『処理』して、そのまま捨てる、という予定だったらしい。
しかし、定期便はどうも当分来なさそうである。
そこで、僕が帰る時に変わりにモモカさんを乗せて行って……定期便がやるはずだったように海の上で適当に処理してほしいと待て待て待て待て。
運送業者に何させようとしてんだ。
さらっと殺人教唆すんなや。うちではそんなサービスはやってません。当然断った。
大人しく次の『定期便』とやらを待ってください。いつになるかは知らんけど。
【×月△日】
モモカさんの一件、片が付いた。
しかし、彼女の命が絶たれたわけではなく……死なずに済んだ。
アンジュの必死の行動の結果である。
……けどそれとは別に、今日はちょっともうなんか、それ以上にインパクトのあることがまあ色々と起こったので……それに直接かかわってない僕まで、なんか疲れた。
いや、あまりにも忙しくて、慌ただしくて、そしてカオスな1日だった。
具体的に何があったのかと言うと、だ。
話は、今日またドラゴンの襲撃があり……しかし何を考えたか、アンジュがヒルダとロザリー、クリスとアスランを連れて、たった5人だけで出撃したことに端を発する。
ここんとこもう何度も話題になっていた話であるが、ヒルダ達3人とアンジュは、それはもう仲が悪い。部隊運用上問題になるくらいに悪い。
嘘か真か、戦闘中に後ろから狙われたとか、巻き添えするような軌道で撃ったとか、真っ赤なパンツとブラジャーで殺されかけたとか……(最後の何だ)。
で、そのたびにアンジュが反撃したり、それにさらにヒルダが反撃したり、みたいな繰り返しがいい加減うんざりだってことで、決着つけようってことでアンジュがこの3人を連れ出したそう。
しかしもちろん、パラメイルで対人戦なんかしたら問題行動どころじゃない。罰金で済むようなことでもなくなってしまうので、本日のドラゴン相手の戦果で競う、とのこと。
アンジュがよく思われていない理由は、もちろんメインは、前隊長の死に関わっているからだが……最近では、アンジュがヴィルキスでめっちゃ活躍するから、っていうのもあるらしい。
アルゼナルのメイルライダーの給料は、ドラゴン討伐による出来高だ。戦えば戦っただけ、狩れば狩っただけ『キャッシュ』がもらえる。
しかし、最近のアンジュは、襲撃してきたドラゴンをほとんど1人で落とすくらいの、凄まじい勢いで狩るそうで……しかしそうなるとつまり、ヒルダ達にまで獲物が回ってこない。
当然、報酬はアンジュがほとんど全部持っていく形になっている。ヒルダ達からすると、それも面白くないのだそうだ。皆お金大好きだもんね。買い物に必要だもんね。
アンジュはその部分の不満を逆手に取って、『だったらそのドラゴン狩りの腕で白黒はっきりつけようじゃないの』『私は1人、あんた達は3人がかりでいいわよ』『あ、不正がないようにアスランに審判やってもらうから』とまあ、まとめるとこういうことなわけだ。
ちなみにミランダが入っていないのは、彼女は確かにアンジュをよく思ってはいないものの、つっかかってはこないし、任務は任務で私情は持ち込まずに真面目にやってるからだそう。
随分と喧嘩腰なのがちょい気になるが……彼女なりに、長引くこの嫌な空気に1つの決着をつけようとした結果、行き着いたのがこの勝負なのだろう。
まあ、色々とツッコミどころはあるが、これで問題にきちんとケリがつくのなら、問題はない。
そう思ったからこそ、ジル司令もこのメンバー出の出撃を許したんだろう。
……そう、ちゃんとケリがつき、これ以上問題が酷くならないのなら……問題は、なかった。
が、結果は見事に失敗。
現れる無人機部隊。さらにドラゴンの増援。
それを前にしてなおギャーギャーと言い争うアンジュとヒルダ。
落ち着きなさい、と諫めようとして、しかし無視されるサリア。
エルシャとヴィヴィアンは『やっぱりこうなったか』と他人事。
ロザリーとクリス、ミランダはおろおろしている。
敵がそこまで来ているにもかかわらずのこの醜態を前に……ついにスメラギさんが切れた。
そして、テッサ艦長とジル司令と共謀し、横から割って入って、とんでもない力技でこの問題を強引に解決してしまった。
『これよりパラメイル第一中隊は、ソレスタルビーイングが買い上げます!!』
アルゼナルで映像越しにその場面を見ていた僕は、その瞬間飲んでいたお茶を噴き出した。
その後すぐにテッサ艦長が『今後の第一中隊は給与制にする』『普段の素行も査定の対象にする』旨を告げる。
つまり、今までと違ってドラゴンの撃墜が少なくても一定の給料は貰えるが、問題行動が多い場合はその限りではない。
例えば、敵が来てるのそっちのけで喧嘩したりとか、戦闘中に足の引っ張り合いとか……そういうバカなことをしたら、そのぶん報酬を減らす、と。
とどめにジル司令からも『喜んで売る』と承諾は貰っている旨を伝え、これにてスメラギさんが無事(?)、第一中隊の支配者となった。
ものすごい強引なやり方だけど……よく考えてみれば、これ以上ないくらいに効果的でわかりやすい方法でもあるな、これ。特に、彼女達メイルライダーに対しては。
他ならぬ彼女達が一番知ってることだからな。『金は命より重い』『金を持ってる奴が強い』ってことは。
今回のいざこざの理由の1つでもあった、彼女達にとって絶対のルールにのっとってねじ伏せた……言ってみれば、札束で盛大に横っ面を張り飛ばしたスメラギさんのやり方は、強引ではあるものの、だからこそ彼女達は何も文句を言うことはできなかったわけだ。
そして、あまりのインパクトに、この騒動の途中で助っ人的に合流してきたシンとルナマリアもきょとんとしていた。
いや、頼もしい味方なんだけどね? 間が悪かったよ……完全に出番食われてたし。
とりあえず……何か致命的なことが起こる前に、強引にでもケリがついたのは……まあ、よかったんじゃないかな。
で、もう1つ。
その後、アンジュがモモカを助けた方法について。
これも、アルゼナルらしく、金を使ったものだった。
やったことは単純、モモカを『買った』のである。
ここ最近のドラゴンの討伐報酬(ヒルダ達に恨まれるレベルの独り占め)に加え、スメラギさんに給料の前借りまでして作った大量のキャッシュをジル司令に叩きつけ、モモカ自身をアンジュが買うということで助けたそうだ。
よくもまあ思いつくもんだ……まあ、それで丸く収まったのならよかったけど。
うん、やっぱり人死にはない方がいいからね。ただし悪人除く。