スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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第28話 素直に喜べない成長

(日記、続き)

 

 ミレーネルに助け出されて、逃げようとしたところで……これは後からネルガルの皆さんに聞いた話も合わせて知ったことなんだけど、連中、機密保持のためにこの基地を丸ごと破壊したらしい。

 連中が主に機動兵器に搭載して使っているディストーションフィールドとかいう、バリア的なやつを使って。

 

 ……コレのせいで、連中が使うロボって、ザコ構成員が使う量産機でも妙に堅いんだよな。

 

 それの戦艦版を使い、最大出力で展開したことによって、真下にあった基地を押しつぶした、と。

 

 ……逃げ遅れた自分達の仲間や、侵入していたネルガルの捜査員ごと。

 

 そして、僕とミレーネルもそれに巻き込まれそうになったものの、間一髪、僕が召喚……というか、遠隔で次元転移させて呼び出した『アスクレプス』に乗って、そこを脱出した。

 

 その後、残念ながら草壁達は取り逃がした。

 

 北辰を筆頭にした機動兵器部隊が、ネルガルと僕らの両方を相手にして時間を稼ぎ……その間に準備を整えて、敵の戦艦はボソンジャンプしてその場から消えたのである。

 直後に北辰達も同じようにして消えた。

 

 一応、構成員はいくらか逮捕できたそうだが、主だった幹部クラスには逃げられた形だ。

 

 こうして、僕の誘拐から始まり、『火星の後継者』の拠点の1つの摘発に至ったこの事件は、幕を下ろしたのだった―――

 

 

 

 ―――ってことになってる。表向きは。

 

 

 

 実際は違うのかって? まあ、大枠はあってるんだけど……一部に嘘が混じってます。

 もっとも、その嘘の部分も……本当にそうだったのかどうか、自分でもわからない。ただ単に、『恐らくこうだったんだろう』って僕自身が予想してるだけだから。

 

 そのことについても、一応記しておこう。

 僕の予想とか推測が多分に含まれていることだって点をきちんと了承した上で聞いてほしい。

 

 

 

 話は、連中が基地を押しつぶして、証拠隠滅やら口封じやらのために、僕らを圧殺しようとした時にさかのぼる。

 

 その時、僕とミレーネルはどうにかアスクレプスで脱出した、と説明したが、実際は違う。

 

 あの時、僕とミレーネルは、脱出が間に合わず……それどころか、アスクレプスを呼び出すことすらできずに、死んだ。

 

 そもそも僕……少なくとも、あの時点での僕は、自分の意思ないし思念でアスクレプスを次元を超えて呼び出すなんてこと、できなかったからな。

 できたら超便利だっただろうけど。その気になれば逃げられるわけだし。

 

 『亜空間にしまっておいた』状態のアスクレプスなら取り出せるにしても、それとはまた似て非なる能力だしね。残念ながらあの時、アスクレプスは『バースカル』のドックにあったはずだし。

 

 話を戻そう。

 

 ミレーネルは、何度も言うように、あの体はかりそめのものなので、『バースカル』でリスポーンしていた。

 

 そして僕は、あの時本当に死んだ。

 とんでもない重量……というか、勢いがありすぎて、実質あれは巨大な鈍器だったと思うけど、ともかくあの瞬間、自分の体が破壊され、骨が折れ、肉が千切れ、全てが押しつぶされて凄惨なことになって死んだ。

 

 ……走馬灯って奴かな。妙にはっきりその時のこと、覚えてるんだよね……嬉しくない。

 

 けど、その後……生き返った。

 

 どういうわけか、間違いなく死んだはずの僕が……アスクレプスのコクピットに乗った状態で、復活したのである。

 

 あの時は、よく頭が働いてなくて、なるほどギリギリ助かったのか、って勝手に納得して『死ぬかと思った』なんてことを呟いてしまったものの……冷静になって考えてみると、間違いなく死んでるんだよな僕。

 

 もちろん、その時の記憶が、パニックになった僕の脳が見せた幻覚って可能性もなくはないだろうが……ミレーネルも同じようなことを記憶してるし、違うと思う。

 

 それに……この現象、見覚えがある。

 

 メタフィクショナルな発言をさせてもらうが、『Z』世界でこのアスクレプスの持ち主だったアドヴェントには、『リザレクション』という能力があった。

 それは、次元力を使うことにより、自分が死んでも……それこそ、骨の欠片1つ残さず、完全に消滅してしまった状態からでも、甦ることができるというものだ。

 

 色々と制限はあるので、いくらでも際限なく使えて復活できるようなものじゃなかったと思うけど……今回のこれは、それに似ている。どうしてそれを僕が使えたのかは知らないが。

 

 しかしあの瞬間、僕は死んで……そして復活して、さらに次元力でアスクレプスを呼び寄せ、あの瓦礫の山を突き破って脱出したんだと思う。

 

 そこからはまあ、さっき言った通りだ。北辰達と戦って、しかし逃げられた。

 

 そしてその後、ネルガルの皆さんと一緒に帰還。簡単に事情聴取とかその辺を受けた上で、解散になった。

 

 あとその際、隙を見て次元転移で『バースカル』にミレーネルを迎えに行った。

 ミレーネルは僕が無事だったってことを泣くほど喜んでくれた後、すぐさま口裏合わせをして、僕と一緒にアスクレプスに乗り、その状態でネルガルに合流したのだ。

 それで出来上がったのが、さっき話した『表向き』のストーリーってわけだ。

 

 これが、表裏合わせた、この事件の顛末である。

 

 両陣営、死傷者多数。決して無事とは言えない幕引きになったけど……どうにか僕は生きて帰ることができた上、今回の件をきっかけに、企業としても対『火星の後継者』の立ち位置で、今後ネルガルとは協力していくことになった。

 

 ……もっとも、その戦いも、そんなに長くは続かないと思われるけども。

 

 戦いの終盤、ミレーネルがちょっと面白い思念波をキャッチしててね……それがもしかしたら、連中を追い詰める決定打になりそうなんだ。

 

 

 

【△月△日】

 

 あんな事件があった後なので、ちょっとの間だけど、休みをもらった。

 

 ひとまず仕事から離れてのんびりしてるけど、その間に、色々とあの事件について……

 いや、あの事件の時に起こったことや、その前後で見られるようになった、ある『変化』について記しておこうと思う。

 

 いや、どうも『復活』する前と後で……僕の体が、色々と変わっているみたいなのだ。

 

 まず、出来ることが増えた。

 

 以前までできなかった、アスクレプスを次元転移で呼び出すことができるようになっていた。

 離れた場所にいても、僕の意思一つで呼び出せるし、僕自身が転移してアスクレプスのコクピットに搭乗することもできるようになった。

 

 残念ながら、僕自身が自由自在にどこにでも転移できる、ってわけじゃないけど……いやそれでも十分便利すぎるな、この能力。

 普段はドックに置いといて、必要な時に呼び出したり、その逆、降りてからドックに転送したりとかできるわけだし。

 

 そしてもう1つ。

 気のせいじゃなければ……前より僕、強くなった気がする。

 

 北辰達と戦った時に、アスクレプスをより素早く、より精密に、思った通りに動かせて……いやそもそも、その『思った』っていう部分が前と違ったな。

 こう動けばいい、こう動かせばいい、っていうイメージがすらすら頭の中から出てきて、前よりずっと上手く立ち回ることができたのだ。

 

 それこそ、操縦の腕では明らかに僕より上だったはずの、北辰の乗る機体に、機体性能で多少ゴリ押しした部分があるとはいえ、1対1で食い下がれたくらいだもの。

 明らかに以前と違うレベルの戦闘能力に、僕だけでなく、通信の向こうで奴が珍しく困惑していたのが聞こえた。

 

 それでもすぐに、『面白い……』って気を取り直して、終始圧倒され続けたけど。

 馬力や防御力は僕が上だったけど、トリッキーな動きと機体そのものの小ささを上手く利用した戦い方に翻弄され続けた。

 

 ディストーションフィールドも硬かったし、どうにか奴が使ってた錫杖?みたいな武器をへし折るまではできたものの、そこでちょうどタイムアップ。逃げられた。

 

 ……まあ、つい語ってしまったけど、戦闘の内容とか結末については置いといて。

 

 そんな風に、僕の体は色々と変わっていた。

 

 予想としては、今回のこれは、『リザレクション』が……次元力を使った復活が原因だと思う。

 

 『Z』でも似たような形でパワーアップした奴、いたし。

 次元力の流れの中に身を置いたり、あえて敵の、強力な次元力を使った攻撃を食らって死に、そして復活することで、次元力の扱いやその本質を体で覚える、というとんでもない方法で……。

 

 僕も、無意識というか自動的にというか、『リザレクション』を発動して……あれって次元力を使った能力の中では最高峰の1つだったはずなので、そこで強力な次元力にさらされたことで、それに引っ張られて、僕自身の次元力の扱いも急激に成長した……ってことなのかも。

 

 ……まあ、結果だけ見れば、色々と便利になったし、戦闘も強くなれたみたいなので、今のところ僕に損はない。

 

 けどまあ流石に、コレを利用して強くなろうとは思わない。

 

 死んでも生き返れるかどうか不確かだっていうのはもちろん、仮に確定で生き返れるとしても、わざわざ自分から好んで死にたい奴なんていないだろう……少なくとも、僕は違う。

 

 それに……よくわからないうちに自分の体がどんどん変わっていくという感覚は、ちょっとその……怖くもあるし。

 

 これを繰り返したら、最初のうちはよくても……どんどん自分が自分でなくなっていくような気がしている。

 既に僕は、人間には不可能な形で次元力を行使できるようになっている。

 

 もしこれ以上『死んで』『甦って』『成長して』……強くなると同時に、人間からかけ離れていったとしたら……僕は、どうなるんだろうか。

 僕は、僕のままでいられるんだろうか。

 

 ……怖いこと考えちゃったな、やめよう。

 ひとまず今日はゆっくり休養して、それからまた仕事を始めよう。

 

 ……近く、昨日日記に書いた例の『決定打』もどうにか使えるようになりそうだし……ね。

 

 だから、今は、休もう。

 

 

 

 追記

 

 午後になってから、ミレーネルが早上がりで会社から戻ってきてくれて、なんかその後、かいがいしくお世話とかしてくれた。

 

 手作りで料理作ってくれたり、掃除とか洗濯もしてくれて。

 会社の仕事の方も、溜まってる案件で、僕の決済が必要じゃないものはほぼ全部片づけてくれたって。やだ、知ってたけどこの子、超ハイスペック。

 

 まあいろいろと甘やかされて……嬉しいし楽でよかったけど、なんかこのままだとダメになりそうだ、ってぽつりとつぶやいたら、『そしたら私が養ってあげるから安心して』と言われた。

 

 相変わらず美少女なミレーネルがそんなこと言うもんだから、ちょっとくらっと来たけど、それってよく考えたらあれじゃん、『ヒ』で始まって『モ』で終わる2文字の奴じゃん。

 流石にそれはちょっと男としてないわー、と思ったので、逆に早いとこきちっと復帰する決意が固まった。

 

 ……ミレーネルがちょっと残念そうにしてたのは見なかったことにしておいた。

 

 

 

 

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