スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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第34話 混沌inミスルギ皇国

【□月×日】

 

 ゆっくり起きて、遅めの朝食をとっていたら、なんか慌ただしく皆が走り回っていた。

 

 何事かと思って、ちょうど通りがかったサリアに聞いてみたら、なんと、アンジュとヒルダが脱走したという。

 

 思わず『えっ、今更!?』なんて思ってしまった。

 

 いや、だって……ここに来てすぐの頃ならともかく、最近は普通にアンジュもここの生活になじんでたし、ドラゴンの相手だってガンガン出撃してじゃんじゃん倒してボーナス稼いでたし。

 

 そもそも待遇だって、『独立部隊』の一員になっている今なら、決して悪いものじゃなくなってるわけで(あくまで比較的、かもしれないけど)……今更脱走するって、理由は何?

 しかも、ヒルダまで一緒になって……あ、モモカもいないの? ついていったか。

 

 ちょうど食べ終わったところだったし、探すのに協力しようか? って申し出たんだけど、サリア曰く、ヒルダはともかく、アンジュの行き先には見当がついてるらしい。

 

 先日、サリアとアンジュが一緒になって、ジル司令と色々話をしたらしいんだけど(話の中身については教えてくれなかったが)、その時にジル司令から、ある情報がもたらされたらしい。

 

 ミスルギ皇国皇女・シルヴィア……アンジュの妹に当たるその子が、処刑されることになったと。

 

 それを聞かされた時、アンジュは驚いた様子だった。

 その後は平静を装っていた風だったけど、恐らくあの時すでに、脱走を決めていたんだろう、とサリアは言う。

 

 なるほど、妹を助けに行ったわけか……モモカもそれに同行したと。

 

 しかし、ヒルダもそれと一緒に行ったのか? アンジュを助けるために? ……言っちゃ悪いけど、あの2人そんなに仲よかったっけ……?

 たまたま彼女の方にも、何か脱走する理由があって、一緒に逃げたって考えた方がまだ納得いくな……具体的にはわからんけど。

 

 サリア曰く、『気持ちは察するけど、れっきとした脱走行為だから、捕まえて罰を与えなければならない』とのこと。ヒルダにもアンジュにも。

 

 罰ってどんな? え、たしか敵前逃亡が極刑なんだよね……あ、そこまでにはならない?

 でも、財産没収や禁固、乗っているパラメイルの没収もあり得る? いや、パラメイル没収したら戦えないんじゃ……新人用のノーメイクの量産機からやり直させるの? うわ、結構過酷。

 

 ところでサリア、そんな目の前で衝撃情報聞かされたの見てたなら、今回の脱走、予想できなかったん? あ、いや、攻める意味で言ってるんじゃなくてさ。

 

 あ、予想はしてたし注意してみてたつもりだったけど防げなかった? 夜中にこっそりヴィルキスで出てった……ああ、そっか、ヴィルキスってワープできるもんね。

 しかも、『買い上げ』以降、パラメイルにはいつでも全力出撃できるよう、常に燃料は満タンで入ってるからな(以前までは出撃の時に、一戦分だけ入れてた)……それが裏目に出たか。

 

 それなら仕方ないか、と思ったところで…………さらに事態が動いた。

 

 さっきまで僕は、昼食を食べてたわけなんだが……携帯でネットニュース見ながら食べてたんだよね。ここ、テレビとか置いてないから(ノーマに外の情報は与えられない的な理由だと思う)。

 

 それがつけっぱなしになってたんだけど……サリアと話してる最中、そこからこんな音声が聞こえてきたんだよ。

 

 

 

『ここで臨時ニュースです。ミスルギ皇国皇室から発表があり、ノーマだったアンジュリーゼ元皇女の処刑が執り行われることとなりました』

 

 

 

 サリアと一緒に携帯の画面を二度見してしまいました。

 

 ほわっつ!? 何、アンジュリーゼ……え、アンジュ!? アンジュが処刑!? 妹じゃなくて!?

 

 すぐさまこの情報を、ジル司令とかスメラギさんとかに話して共有したところ……スメラギさんの推測では、『シルヴィア皇女の処刑』という情報そのものが罠だったんじゃないかとのこと。

 助けようとして乗り込んでくるアンジュをおびき寄せて、とらえて処刑することこそがメインの目的だったんじゃないかと。

 

 マジかよ……えぐいこと考えるな、ミスルギ皇国。

 そしてそうなると、主犯はあの小物っぽい皇帝……と、ひょっとしたら妹もグルかもしれん。

 

 処刑は明日の昼に行われるらしい。

 殺すのが目的なのに、なんかやたらゆっくりしてるなと思ったけど、スメラギさんはその理由にも見当をつけていた。

 

 おそらく、公開処刑という形にして、国民も大勢集めてさらし者にする気だろうと。

 

 ……それが当たってるとしたら、マジで腐ってるな、ミスルギ皇国。

 

 当然、独立部隊の皆さんはこれを黙ってみているつもりはないそうで。

 スメラギさんの戦術予報を軸に、早速作戦を立てていた。

 

 何かできることがあれば僕も手伝う、とだけ言っておいた。

 プロの作戦家に意見できるほど頭よくないからね。

 

 

 

【□月△日】

 

 アンジュ、無事に救出成功。

 ついでにじゃないけど、ヒルダも一緒に帰ってきた。

 

 あと、なんかよく知らないけど、タスクとかいう男性のパラメイル乗りも一緒に来た。誰?

 

 

 

 今日は中々の激動の1日――僕自身はあんまり関わってないけど――だったので、そのへんを順番に述べて行こうと思う。

 

 まず、今日の昼に予定されていたアンジュの処刑は、ご丁寧にテレビ中継までされて、全世界に垂れ流されていた。普段は外部との情報連携、テレビどころか国同士のホットラインすらほとんどシャットアウトしてるくせに、こんな時だけ。

 

 処刑の準備段階からその生中継は始まってて、拘束されてるアンジュに対し、妹と思しき車椅子の女の子が、罵声を浴びせながら鞭で打っている様子が映し出されていた。やっぱグルだったか。

 

 同じ車椅子の妹でも、どこぞの神聖帝国生まれの第12皇女とはえらい違いである。立派にナンバーズ……じゃなくて、ノーマに対する差別意識が根付いていらっしゃる。

 

 普通に痛々しい光景なんだが、こんなん見て誰が喜ぶんだか……と思っていたら、処刑を見に集まっていた群衆の皆さんが大喜び。マジかよ、国単位で屑なの?

 というかこれなら、むしろアルゼナルにいるノーマの皆さんの方が全然……よくこんなんで、ノーマは反社会的で凶暴などーたらこーたら言えたもんだな。

 

 反社会的も何も、社会の方がダメなんじゃないのか。

 

 しかも、特別ゲストとして招いた……ええと、『パープル』とかいうミュージシャンがそれを煽る煽る……何あいつ? パンク系とかビジュアル系とか、そういう感じの人か?

 最近名前をよく聞く気はするけど、言ってることが中学二年生じみたセリフの羅列だから、ぶっちゃけテレビとかで見て『うわぁ』って思ってたんだよね。

 

 しかし、いざアンジュが吊るされて処刑されそうになったところで、さっき話した青年……タスク君が乱入して彼女を救助。

 しかもそこに、無人のはずなのに転移してヴィルキスがやってきて、それに乗ってアンジュ達は(タスク君も、モモカも)その場を離脱。

 

 ジュリオ皇帝は、そのまま逃げようとするタスク君のアーキバスとアンジュのヴィルキスを、無人兵器を投入して仕留めようとしたが、今度はそこにボソンジャンプでナデシコCが出現。

 ルリ艦長が『脱走兵はこちらで回収します』と告げて、アンジュを連れ戻そうとした。

 

 が、そこでジュリオ皇帝、よせばいいのにルリ艦長達を挑発するようなことを言った上、『せっかく来てくれたのだから模擬戦などいかがかな』って、そのまま無人機をけしかけてくる始末。

 これにはさすがにカチンときたらしく、かなり辛辣なセリフとともに、ルリ艦長はその『お言葉に甘える』ことにしたようだった。

 

『かしこまりました、ジュリオ陛下。そちらは実弾を使用されるようですから、こちらも同じ条件でお相手します』

『では戦闘開始です。ジュリオ陛下にミスルギ皇国の防備が完全に足りてない事と、自信満々で上から目線でいたところをコテンパンにやられる格好悪さを教えてあげてください。徹底的に

『あ~あ……あのボンボン陛下、ルリちゃんを怒らせちゃった……』

 

 あ、最後のはユリカさんね。

 

 ちなみに僕は、『ナデシコ』で現地に行ってはいない。

 僕はあくまで支援者の立ち位置であって、『独立部隊』には所属してないので、彼女達と一緒にあそこに行くと、色々まずいんだよね。会話を聞いていたのは、通信越しで、である。

 

 そしてまあ、ミスルギ皇国が投入してきた、人型無人機と、なんか円盤みたいな無人兵器との戦いが始まったわけだが……正直、いまさら無人機なんぞが相手になるような面子じゃないよね。

 それはもう圧倒的というか、一方的というか……そんな言葉すら生ぬるい勢いで駆逐されていっていました。

 

 途中から、別行動だったらしいアキトさんと、彼が連れ戻してきたヒルダも加わってたし、見事なまでのワンサイドゲームだった。

 

 

 ……が、今回の混乱、そこで終わらなかった。

 今の状態でも、十分に大騒動だと思うんだけど、これがさらに悪化したのである。

 

 

 

 ちょっと話が変わるというか、時間を数時間ほど巻き戻すんだけども。

 どのくらいかっていうと、ナデシコが出撃した直後あたりに。

 

 その頃、僕らはここアルゼナルで留守番していたわけなんだが、タイミング悪く、ドラゴン襲撃の警報があったんだよね。

 ここを目指しているわけじゃないけど、近くに出たみたい。しかも、結構な規模で。スクーナー級に加え、ガレオン級も結構な数確認されたそうだ。

 

 第一中隊も独立部隊も出てしまっているので、他の部隊で対応するしかないわけだが……もしよかったら僕も出ようか、と申し出ておいた。

 相手がドラゴンなら、独立部隊じゃなかろうが、迎撃する分には問題ないだろうし。

 

 しかし、ジル司令からの返答は、『不要』。

 しかもどういうわけか、僕の出撃に関してだけでなく、ドラゴンの迎撃自体を不要だと言って、どの部隊も出撃させず、見逃してしまった。

 

 いいのかそれ、と思ったけど、『問題ない』と言い切った。

 

 

 

 ……というのが数時間前であるわけだ。

 では、時を戻そう。

 

 ミスルギ皇国の宮殿前の広場で、独立部隊の面々と、ミスルギ皇国がけしかけた無人兵器部隊の戦いが繰り広げられているわけだが……そこに、乱入者が現れた。

 そう、ドラゴンである。さっきアルゼナルが、というか、ジル司令が見逃して素通りさせたドラゴン達が、ミスルギ皇国に襲来したのだ。

 

 ……ひょっとしてジル司令、コレを狙って?

 独立部隊の面々の離脱を助けるため? あるいは、また別な目的が……?

 

 そしてそこにさらに、ガーディム(全部無人機)がどこからともなく現れて暴れ出し、

 

 さらに宇宙からインベーダーまで降りてきて暴れ出し、

 

 どんだけのことになってんだよ、と、テレビ中継の画面を見ながら唖然とするような、混沌極まりない光景が繰り広げられていました。

 つか、リポーターとカメラマン、こんなことになってまで中継続けるって……根性あるな。

 

 ナデシコ部隊に、ミスルギ皇国の無人機軍団、ドラゴン、ガーディム、インベーダー……一般人の方々からしたら、さぞかし生きた心地がしない空間だっただろう。

 

 というか、ガーディムはまだしも、インベーダーまで出てくるとは……いやまあ、『新西暦世界』と『宇宙世紀世界』の両方にいたわけだから、この『西暦世界』にいてもおかしくはないのかもしれないけど……

 

 三つ巴を通り越して、『五つ巴』となった戦場で、ミスルギ皇国の無人機軍団は早々に壊滅し、さらにその後の戦いで、宮殿前広場……と、それに隣接している、王宮の庭園やらは、見るも無残なまでに破壊しつくされ、無茶苦茶な有様になっていた。

 

 降り注いだ敵味方のミサイルやビーム砲で耕され、めくり上がり、庭木や花壇の花は燃え落ち、池の水は蒸発。まともに歩ける道は一つもなくなり……というか平らな地面がそもそも皆無に。

 加えて、破壊された無人兵器の残骸やら、インベーダーの体液やら肉片やらが降り注いで、もうなんか地獄絵図である。

 

 見物に来ていた一般市民に、死傷者も出たらしい。あんだけ広場を埋め尽くすような勢いで集まってれば、そりゃまあ、そうだろうな……。

 流石に不謹慎だから、『ざまあみろ』とかいうつもりはないが。

 

 その映像のラストで、『我が国の防衛部隊が……』と唖然としていたジュリオ皇帝のアップが映し出されて、ジル司令が爆笑していた。気持ちはわかるけども。

 

 そうして、向かってくる者全てを蹴散らして、ナデシコCと独立部隊の面々は撤退。

 ミスルギ皇国は、処刑失敗をはじめとした大恥をかいた挙句、防衛設備も宮殿前広場も大惨事になるという、悲惨な結末を迎えたのでした。ちゃんちゃん。

 

 

 

 しかし、ドラゴンはともかく、何でガーディムやインベーダーまで、狙ったようなタイミングであそこに集まってきたんだか……。

 

 ガーディムは何か狙いがあったんだとしても、インベーダーは……あれは、指揮官になる奴がいなければ、ただひたすらに暴れて食らう『飢える破壊魔』だ。

 それこそ、ゲッター線みたいな、何か餌になるようなものでもなければ、あんだけ集まって現れることはほとんどないはず……。

 

 ……何かあるのかな? あの、ミスルギ皇国の宮殿に。あるいは、その近くに。

 

 そしてそれは、ひょっとしたら……ガーディムやドラゴンが現れたことと、何か関係がある、とか……?

 

 

 ☆☆☆

 

 

Side.???

 

「……あの国の、あの場所から、膨大な力が垂れ流されているのを感じて、調べてみたが……どうやら違ったようだな。興味深い力ではあるが……別物だ」

 

「しかし、この汎用性や利便性の高さは有用だ。我々の宿願の一助となるやもしれぬ」

 

「だが、まがい物の力では到底足りぬ。見つけなければ……手に入れなければ……」

 

「『黒い太陽』の残照を……『源理の力』をこの手に収め、『天の獄』へ至る鍵を……!」

 

 

 

 

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