スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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第38話 覚醒

「やめろ、やめるんだジョー! こんなことをしている場合じゃないんだ!」

 

「泣き言など聞くと思うな、旋風寺舞人! 今日こそ俺が、お前と、お前の語る正義を倒す!」

 

「クソが! この非常時にどいつもこいつも余計なことばっかりしやがって!」

 

「うっさいわね、あたしたちだってやりたくてやってるわけじゃないのよ今回は!」

 

「思惑に乗らねば、この行く当てもないような世界で放逐され、帰れぬやもしれん……となれば、致し方なし!」

 

「悪く思ってくれるなよ、マイトガインとその仲間達!」

 

「思うに決まってんでしょうが! ああもう、腹立つ!」

 

 第三新東京市。

 対『使徒』の戦場となる……と思われていたそこは今、混沌極まる戦いの場となっていた。

 

 宇宙から『落ちてくる』使徒迎撃のため、3機の『エヴァシリーズ』と、火力の要である宇宙戦艦ヤマトを中心に、当初は布陣していた。

 落下してくる使徒に対し、ヤマトの集中砲火によってその勢いを殺し――『ATフィールド』があるため、それで破壊することまではできない――そして落ちてきた使徒を、エヴァ3機が受け止めて倒す、という作戦だった。

 

 しかしそこに、西暦世界にいるはずのエンブリヲが、『DG同盟』の機体群を率いて現れ……こともあろうに、こちらの作戦の妨害をし始めたのである。

 

 『DG同盟』は、ここが自分達のいた世界とは別な世界であると認識すると、ここでエンブリヲに逆らえば帰れなくなるかもしれないと考え、その命令通り攻撃を開始。

 やむなく独立部隊も機動部隊を発進させ、これを迎え撃つ。

 

 特に『エースのジョー』は、『マイトカイザー』に乗って舞人が出撃すると、常と同じように敵意をむき出しにして襲い掛かる。1つの世界の存亡がかかった作戦の最中であることなど、知らないとばかりに、一方的に。

 

 上空では、ドラゴンとグレートマジンガーが現れ、少しでも使徒を足止めしようと戦ってくれている。しかし、あまりにも質量的に巨大な上に、やはり『ATフィールド』に阻まれて効果は薄いとのこと。

 

 短時間でジョーを含む『DG同盟』を片づけて作戦を開始しなければ危ない。持てる全ての戦力を持ちだし……当然、アスクレプスも出撃して戦っていた。

 

 しかしそれを嘲笑うかのように、再び、今度は自らの機体である『ヒステリカ』に乗って現れるエンブリヲは、地上と上空の両方に『ピレスロイド』……ミスルギ皇国で使われている、円盤型の無人兵器をばらまくように投入し、妨害をよりひどいものにした。

 

 NERV本部にあるマザーコンピューターである『MAGI』の算出する、この作戦の成功確率……当初は50%だったそれが、どんどん下がって行く現状に、本部では悲鳴が上がっていた。

 

 さらに、泣きっ面に蜂とばかりに異常事態は続く。

 突如としてヤマトの機関室に侵入者が出現したのだ。

 

 それは保安部によって倒されたものの、その者が行った細工によって波動エンジンが動作不良を起こし、出力が上がらなくなってしまう。かつての『次元断層』の時のように、攻撃はおろか、自力での航行も、波動防壁による防御もできなくなってしまった。

 

 その不調もすぐには直せない。火力の要であったヤマトが動けなくなったことで、いよいよ絶望的になり始めた状況の中……それでも妨害をやめないジョーと『DG同盟』に対して、舞人や総司、ミツルが吼えて……冒頭に至る。

 

 無人機はものの数ではないし、DG同盟の攻撃にも対応できてはいるが、今回の戦い、時間は自分達の敵なのだ。

 

 しかもここにきて、

 

「エンブリヲぉっ!? あんたは……余計なことばっかりして!」

 

「ふふっ、このような状況でもその闘志はゆるがない……やはり君はいいな、アンジュ」

 

「気持ち悪いことを言ってんじゃないっ!」

 

「アンジュは俺が守る!」

 

「出てきたのなら好都合……今度こそ、ここでッ!」

 

 ついには前回のアルゼナル出の戦い同様、自分も『ヒステリカ』で参戦を始めエンブリヲに対し、アンジュ、タスク、サラマンディーネが3人で応戦しようとする。

 

 が、カスタム機とはいえ所詮は量産機の派生に過ぎないタスクはまるで相手にならず、アンジュとサラマンディーネも防戦一方だった。

 

 するとそこに、かつては敵だった巨大な角の黒い龍……『ビッグホーンドラゴン』が現れる。

 彼らは直接攻撃したり、重力を発生させて『ピレスロイド』や、DG同盟の機体を動けなくして墜落させるなどの形で、先程から加勢してくれていた。

 同様にして、エンブリヲにも重力をかけて動きを封じようとしたのだろう。

 

 しかし、それでもエンブリヲの『ヒステリカ』を止めることはできず、むしろその妨害で邪魔だと思われたのか、エンブリヲの矛先はビッグホーンに向いた。

 

 手にしたビームライフルが放たれる。

 その威力はパラメイルのライフル(実弾)とは比較にならない威力で、たったの数発当てただけで、ドラゴンの中でも特に大型であるビッグホーンに致命傷級のダメージを与え、重力攻撃の要である角もへし折れてしまった。

 

 そのままトドメを刺そうとしたところに、

 

「やらせません!」

 

 仲間の危機を救おうと、サラマンディーネが『焔龍號』で突貫。それを追う形でアンジュも飛びかかって剣を振るうが、軽くあしらわれてしまう。

 その強さは、先の戦いでは手を抜いていたのだと実感するには十分なもので。

 

 苦戦するアンジュを助けようと、タスクがアーキバスで援護に向かうも、

 

「君に用はないのだよ、私とアンジュの語らいを邪魔しないでくれるかな? ……失せたまえ」

 

 ヒステリカの頭部にある、女神像のようなパーツから細い、しかし高い貫通力を誇るらしいビームが放たれ、タスクの乗るアーキバスの装甲を貫いて反対側へ抜けた。

 コクピットを狙った一撃だったそれを、間一髪で交わしたタスクだったが、背中の推進機関がダメージを受けたのか、機動性ががくっと下がり、次の動作に続かない。

 

 その直後、振るった剣でアンジュとサラマンディーネをはじき飛ばしたエンブリヲは、トドメの一撃を叩き込もうと、タスクの乗るアーキバスにビームライフルを向けるが、その直後に自分目掛けて飛んできたエネルギー弾を察知してそれを回避した。

 

「おや、誰かと思えば君か」

 

「タスク、下がれ! こいつは僕が引き受ける!」

 

 ブレードを薙ぎ払うように振り抜きながら突貫してくる白い機体……アスクレプス。

 それに乗るミツルに、『すまない……!』と悔しそうな声で返したタスクは、護衛として駆けつけてくれたミランダに付き添われて後ろに退いていく。

 

 二刀流で斬りかかって息つく暇のない連撃で攻めるミツル。それを1本の剣と、機体の小ささと機動性を生かした動きでさばききりながら、エンブリヲは余裕そうに語り掛ける。

 

「なるほど、以前よりもさらに剣のきれが増しているな? 大したものだ、この短期間で……戦いの中で成長するタイプなのかな?」

 

「そんな正統派主人公じみた属性持った覚えはないけども……ねっ!」

 

 剣2本を弾かれた状態で、自分に向けられるビームライフル。

 そこから放たれたビームはしかし、アスクレプスの表面に張られたD・フォルトを貫くことはなく、斜めに受けて表面を滑るように後ろに逸れていく。

 

「やはり、守りは相当に堅牢だな……攻撃面の脆弱さから見て、不自然なほどに」

 

 そのまま加速してヒステリカを蹴り飛ばすが、腕のビームシールドで受けられたため、ほとんどダメージは通らなかった。

 

 ヒステリカは、後ろに押し込まれながらも体勢は崩さない。

 すぐさま空中で姿勢を正すと、『ではこれはどうかな?』という言葉と共に……ヒステリカの方のパーツがスライドして展開した。同時に、エンブリヲの聞きたくもない歌声が聞こえ出す。

 

 あのやばい竜巻みたいな武器……『ディスコード・フェイザー』がくると直感したミツルだが、その射線上に、町や他の戦っている機体が見事に含まれているのを確認して舌打ちした。

 

「避けたら全部巻き込まれるってか……あの野郎……」

 

「下がってミツル、私達がやるわ。サラ子!」

 

「ええ!」

 

「おい待てアンジュ! お前らがあれで受けたらまた次元震が発生するんじゃないのか! それだとこの辺り一帯が最悪転送されるぞ!」

 

 前回のアルゼナルでの一件を思い出した総司が割り込んでそう言うも、

 

「それしか手はないでしょ! 皆手塞がってるし、こっち来てもらうにしても、時間がない!」

 

 あの火力に対抗できるであろう武装は、戦艦クラスの兵装か、スーパーロボットに搭載されているもの……真ゲッターのゲッタービームや、マジンガーのブレストファイヤーくらいだろう。

 しかし、それらいずれも離れたところにいて、既に発射準備に入っているエンブリヲの攻撃を受け止めることはできない。

 

 戦場に響き渡るアンジュとサラマンディーネの歌声。それに応えるように、ヴィルキスと焔龍號も変形し、エネルギーが収束していく。

 

 そして、両方から放たれる次元を破壊する竜巻は、衝突してどうにか相殺された。

 

 が、危惧した通りにその衝突は次元震を起こし……しかし今回、周囲を巻き込んだ転移は起こらなかった。

 その代わりに、とでも言えばいいのか……

 

「これは……!?」

 

「どうしたんですか、ハリー君?」

 

「次元震を中心に……ボース粒子反応!? 何かがここに転移してきます!」

 

「え、ボソンジャンプで!?」

 

 こちらが飛ばされるのではなく、その次元震の向こうから、何かが現れた。

 

「何だ、あれは……?」

 

「戦艦、みたいに見えるけど……」

 

 ヤマトの艦橋からその光景を見ていた古代と森が、思わずと言った様子で呟いた。

 

 現れたのは、緩い流線型のフォームにいくつもの装甲を装着した、戦艦のような何かだった。

 ヤマトやナデシコ、ラー・カイラムやネェル・アーガマなど、自軍部隊のどの戦艦とも異なる造形をしているそれは、何の前触れもなく表れて周囲を驚かせたが……次の瞬間、その戦艦から、オープンチャンネルで聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「よし、成功みたいね……ミツル! 皆! まだ無事!?」

 

「その声……ミレーネル!?」

 

「え、ミレーネルさんって……」

 

「ミツルの秘書か!? なんだってそんな戦艦……戦艦? に乗ってんだ!?」

 

「ミレーネル! それ『アルデバル』だよね!? いつの間に完成させたの!?」

 

 ミツルが割り込んで言って来た言葉通り、それは、ミツルの中では、『バースカル』で建造中の、しかしまだ完成していないはずの機体だった。

 

 高機動戦艦『アルデバル』。

 アンゲロイなどと同じく、アスクレプスの中のデータバンクに設計データが残っていた、ある並行世界で使われていた兵器。

 

 その世界において、銀河最凶の戦闘狂集団『ハイアデス』が運用していたそれは、操縦者と機体を直接つなげることによって、機動兵器に匹敵する機動性を発揮する機体であり、なおかつ1人で動かすことができるという、戦艦としては破格と言う他ない性能を持つ。

 もちろん戦艦として、機体を搭載・運搬したりすることも可能という汎用性の高い機体だった。

 

 欠点として、単独もしくはごく少人数での運用を前提としているため、武装はシンプルで数も少ないのだが、その分を装甲などの強固さに回しているため、多少どころでなく無茶な運用にも耐えうるという形になっていた。

 また、上記の通りの操作方法ゆえに、乗員の体にもコネクタ等を埋め込む外科的処置が必要なのだが、ミレーネルは『ゴーストリンク』の応用でそれをせずに運用を可能にしている。

 

 動力には『Dエクストラクター』を用いており、機体は8割方完成、その制御システムの構築を残すのみ、という状態までは進んでいたはず、とミツルは記憶していた。

 

「ここ数日超がんばって突貫でなんとかね……いやそれは今は置いといて、ええと……ウリバタケさんから聞いてるけど、とりあえず修羅場ってことでいいのよね?」

 

「はっ? なんでそこでウリバタケのおっさんの名前が出て……いやまあ、合ってるけども」

 

「この『アルデバル』なら、パラレルボソンジャンプにも耐えられる強度があるからね……お届け物を持ってきたのよ。じゃ、ハッチ展開! 行っといで!」

 

「舞人! すまない、待たせたな!」

 

「っ!? その声は……」

 

 アスクレプスの隣まで飛んできてから、アルデバルの後方に着けられていたハッチが開き、そこから……修理を完了して復活したガインと、ロコモライザーが姿を現す。同時に、舞人が乗る戦闘機も無人操縦でマイトカイザーの元へと飛んでいった。

 

「ガイン、復活したのですね」

 

「ああ、遅くなって済まない、アル。そちらも新しい力を手に入れたようだな……また共に戦えることを嬉しく思うぞ!」

 

「同感です。遺憾ながら余裕がありませんので、今はこのあたりで。彼が待っています」

 

 AI同士の語らいを切り上げ、戦闘機に乗り換えた舞人の元に急行するロコモライザー。

 そして皆の視線が集まる前で、待ちに待った光景が……マイトガインの復活が実現した。

 

 その場にいた全員が歓喜に沸き、士気も高まるが……無粋と言うには酷ではあるが、その空気に盛大に水を差す言葉が続けて叩きつけられた。

 

「急いでください! 使徒到達予想時刻まで残り5分を切りました!」

 

 もはや悲鳴そのものといった、NERV本部の伊吹マヤからの声が戦場に届き、独立部隊の面々は改めて、帰ってきたマイトガインと共にその脅威に立ち向かおうとする……のだが、

 

「ようやく本来の力を取り戻したようだな……それでこそ俺が決着をつけるにふさわしい相手だ、旋風寺舞人!」

 

「ジョー! お前は、まだそんなことを……今の話が聞こえなかったのか! もう本当に時間がないんだ、この作戦に失敗すれば、この世界が滅ぶんだぞ!」

 

「世界がどうなろうと関係ない! 俺の使命はただ一つ、お前を、正義を打ち倒すことだけだ!」

 

 そこにさらに、

 

「絶体絶命の危機に駆けつける仲間、か……ふっ、素晴らしく陳腐な演劇をありがとう。お返しと言ってはなんだが、私からそこに花を添えてあげよう」

 

「「きゃあぁぁああっ!?」」

 

「っ!? ナーガ! カナメ!」

 

 隙を突かれてか、エンブリヲの攻撃により、サラマンディーネに随伴して戦っていた2人……その乗機である『蒼龍號』と『碧龍號』が撃墜されて落ちて行く光景に、サラマンディーネは息をのみ……それをやったエンブリヲを殺気を込めて睨みつける。

 

 しかし、そんなものはどこ吹く風と言わんばかりに、エンブリヲは時空をゆがめ……さらに手勢を召喚してきた。

 

 今度はピレスロイドだけではなく、『始祖連合国』で使われている、モビルスーツを主軸とした無人機部隊も加わっている。

 しかもその中には、『火星の後継者』や『ガーディム』の機体、さらにアマルガムが使う『AS』までもが混じっていた。

 

「何だありゃ、なんであの野郎、ASを!?」

 

「ガーディムの機体もか……大方、鹵獲するか何かしたのを改造して使ってんだろうさ。こないだのボンクラ皇帝といい、節操のねえこった」

 

 困惑するクルツに対し、『奴らならやりかねない』と総司はそう当たりをつける。

 それに答えることはなかったが、エンブリヲはそれらに『行け』と指示を出し……先程までと同じか、それ以上の大混戦が再び始まった。始まってしまった。

 再び自軍部隊の手はそれらの迎撃にとられ、ヤマトやエヴァ3機の防衛にもろくに手が回らなくなる。

 

 エースのジョーは相変わらず舞人と決着をつける姿勢を崩すことはなく、DG同盟は。彼らは彼らで必死になってではあるが、こちらに向かってくる。

 そして、遊び半分としか思えない軽い態度で攻めてくるエンブリヲ。アンジュとサラマンディーネがどうにか2人がかりで止めているが、それも本気でないがゆえだろう。

 

 これでは使徒の迎撃に到底間に合わない。

 もはや絶望的かと思われたその状況の中……

 

 

 

 ―――ぶちっ

 

 

 

 何かが切れる音を、ミレーネルは聞いた気がした。

 機体の位置的にも、そして人間同士の距離的にも、『彼』と一番近くにいた彼女が、それに一番最初に気づいた。

 

 そしてそれに少し遅れて、ニュータイプとして高い精神勘能力を持つアムロやカミーユ、ジュドーやバナージが、次々とそれを感じ取って行く。

 

「な、なんだこの……凄まじい……怒り?」

 

「これは……こんなにも大きな感情を、1人の人間が発せるものなのか……!?」

 

 戦場に滞空し、不気味なほどにぴくりとも動かない、アスクレプス。

 その中に乗っているミツルが発している……途方もない怒気を。

 

「どいつも……こいつも……」

 

 先程までも、妨害に次ぐ妨害でただでさえ苛立ってはいたが……次元震の向こうから現れたミレーネルと『アルデバル』の衝撃、さらにそこからのマイトガイン復活と言うイベントで、一旦忘れたように蓋をされていたその怒り。

 

 しかし、エンブリヲのさらなる妨害と嘲笑、こちらの話を聞かずに襲ってくるDG同盟やエースのジョー。倒れて行く仲間達。

 世界の危機を前にしてそれでもふざけたことをやめようとしない彼らのふるまいを、それによる犠牲を前にして、蓋をしていた怒りが再燃し……一気にメーターを振り切った。

 

「どいつも、こいつも……この非常時に馬鹿ばっかりしやがって……! そんなに……そんなに、この世界を滅ぼしたいか……!」

 

「おや、怒ってしまったかな? ふふっ、優しいことだ……だが、君にはわからないだろうが、そうまでして守らなければならないほど、価値のあるものでもないよ、こんな世界など」

 

「それはあんたが決めることじゃないでしょうが!」

 

「世界1つの行く末すら軽んじるその傲慢……伝承の通りですね、調律者を語る悪漢よ!」

 

 反論するアンジュとサラマンディーネ。

 

 しかしその時、彼女達を含め、それぞれの機体に乗って戦場に立っていた者達全てが……それこそ、マイトガイン以外眼中に入っていなかったジョーや、余裕の笑みを浮かべていたエンブリヲすら含め、全員が異変に気付いて手を止めた。

 

 何もせず、ただ空中に浮かんでいるだけになっていた、アスクレプス。

 それを中心に……凄まじいエネルギーが渦巻いていることに。

 

「な、何だこのエネルギーは……今までのアスクレプスとは、まるでけた違いだぞ?」

 

「いや、桁違いなんてレベルじゃないわ……こんなの、戦艦に匹敵……いや、それ以上の出力よ」

 

「まだ、これほどの力を隠していたのか? いや、そんな素振りは微塵も……」

 

 ヤマトの艦橋でその様子を観測している南部や新見、真田が困惑して言っている前で、一体何が起こっているのか……あるいは、これから起こるのか。

 それを見逃してはならないと、沖田は、長年の経験から直感し、目の前で澄んだ緑色の光を放ち始めるアスクレプスを凝視していた。

 

 そして、その眼前で……その時は訪れた。

 

「そんなにかまってほしけりゃ……全員まとめて相手してやるよ……!」

 

 あふれ出した光の中で、『アスクレプス』はその身を変容させる。

 

 装甲の一部が変形し、あるいはパージされ、僅かに細身で引き締まった印象を受ける形になり、

 

 顔を隠していた赤い仮面のようなパーツがはがれ、その下に隠されていた顔と、鋭く光る2つの目があらわになり、

 

 下向きに折りたたまれていたユニットが上向きに展開され、緑色の光……『次元力』で構築された、三対六枚の翼が展開。さらに背後に光背のごとき光輪が現れたその姿は……不思議な神々しさを感じさせる異様な存在感を振りまいていた。

 

「何だ……それは……?」

 

 余りの出来事に……明らかにこけおどしとは違う、謎の変容を遂げたアスクレプスを前にして、エンブリヲすらも呆けた様子で、思わずと言った様子でそう問いかけた。

 

 が、その問いにまともな答えが今更返されるはずもなく、

 

 

 

「閉じた世界で神を気取る、もの知らずで哀れな愚者……お前を、今ここで救済しよう。その力を示せ……『ヘリオース』!!」

 

 

 

 その操縦席で、白かったはずの髪が、鮮やかな『金色』に染まったミツルが咆哮。

 暴虐的なまでの力を持つ、太陽の化身が……とうとう顕現し、そして動き出した。

 

 

 

 




おまけ 今回出てきた機体について

【アルデバル】

元ネタは『第三次スパロボZ』に出てくる敵勢力のユニット。
戦艦ゆえに全長500mを超える巨大さながら、その特殊な操作機構と設計思想から、機動兵器ばりの起動性能と戦艦の火力を併せ持つ機体。
敵を発見したらまず砲撃、倒せなければ突撃という攻撃一辺倒の戦闘スタイルを得意とするが、運用する部隊『ハイアデス』が、揃いも揃って好戦的極まりない『戦闘集団』であることもあり、戦闘になると砲撃や光子魚雷をぶっ放しながらあえて敵の戦闘レンジに突っ込んでいく。
性能のみをきちんと見れば高性能な機体なので、この世界では普通に戦艦として運用するつもりで作られた。動力に次元力を使っているため、スペック自体はオリジナルよりも上なのに加え、ボソンジャンプ等の機構が追加で搭載されている。
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