スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

4 / 113
第3話 捨てられた宇宙船

 

 

【○月▽日】

 

 『アスクレプス』での初陣は、どうにか勝利で飾ることができた。

 

 言ったように、僕の頭の中には、なぜかこの機体の動かし方がインプットされていて、どこをどうやれば、アスクレプスがどう動くのか、完全に把握できていた。

 

 しかし、流石にすぐそのまま、スムーズに動かせるとまでは行かなかった。

 自転車や自動車と同じで、やっぱりこういうのって、知識だけじゃなく、実際に乗って動かして、体で覚えるっていうのが一番必要なんだろうな、と実感したね。

 

 出撃直後は、思い通りに機体を動かす……それこそホントの意味で、飛行しながら上下左右前後に『動く』ことだけに意識をとられて、手足を動かしたり、武装を使ったりとか、そこまで頭を回せなかった。

 おかげで、戦いが始まってからしばらくの間、ガミラスの戦闘機に好き勝手撃ちまくられてたもんなあ……最後の方なんか、あいつら調子乗って近くギリギリのところまで飛んできたりしたし。

 

 それでもどうにか勝てたのは……ひとえにこのアスクレプスの性能ゆえだろう。

 

 機体全体を守るバリアである『D・フォルト』。コレのおかげで、いくら機銃で撃たれても、アスクレプスの体には弾丸は届かず、傷一つできることはなかった。

 ミサイルの直撃すら防いでくれて、衝撃もほとんど伝わってこなかったからな。

 

 そしてその後は、一気にこちらから仕掛けて、あっという間に全機撃墜することができた。

 

 動かし方については、もうほとんど直感みたいな感じでやってみたんだけど、案外と上手くいったというか、見事に思った通りにアスクレプスが動いてくれて、しかも駆動が滅茶苦茶素早い。

 戦闘機とすれ違う一瞬の間に斬りつけたり、超加速して戦闘機を追い抜いたり、ビーム砲で遠くにいる相手を正確に撃ち抜いたりと……これ本当に僕がやったの? AIの自動操縦とかがやってくれたんじゃなくて? とか言いたくなるような戦い方ができた。

 

 数分前までは、思い通りに動くことすら難しかった僕が、だ。なんかもう、逆に怖い。

 

 それこそ、さっき例えたように、『自転車や自動車に乗る感覚』というか……頭で考えながらとかじゃなくても、体が覚えている感覚で思い通りに動かせた。

 何度も言うようだが、そんな経験あるはずもないのに。どうなってるんだろうね、一体。

 

 それと、『感覚』について、もう1つ。

 

 あの戦闘機4機を僕は撃墜したわけだが……あれってやっぱり、パイロットとか乗ってたのかな? 無人機じゃなくて。

 

 もしそうだとすると……パラシュートとか出して脱出した様子もなかったし、機体の爆発と同時に、乗っていたパイロットも……

 

 つまり僕は、4人、人を殺したことになる。異星人とはいえ、命を奪ったわけだ。

 

 なのに……何でだろう、何も感じない。

 

 頭ではきちんと『殺した(かもしれない)』という事実は認識できている。目の前の現実を上手く認識できず、逃避しているとかいうわけではない。

 しかし、そこから『感情』に繋がる部分が何も機能していない。全く揺らいでこない。

 

 こういうのって、まあ人にもよるだろうけど……人を殺した罪悪感とかで、精神的に不安定になったり、押しつぶされそうなほどにさいなまれたりとか……フィクションだとそういう展開がお決まりだったと思うんだけど……僕にそういうのは起こらないんだろうか。

 僕自身の性根が、実はそういうの気にしない、冷血な感じのあれだったのか……はたまた、認識してはいるつもりでも、現在進行形で感覚がマヒして上手く感情が働かないだけか……

 

 ……考えてもわからないな、やめよう。

 

 まあ、別に進んでそういう、鬱な精神状態になりたいわけでもないし……ひとまず気にしないでおくか。後から違う感じになってきたら……その時考えればいいや。

 雑な感じにまとめたけど、そう結論付けることにする。

 

 さて、そういうわけで、僕の感覚やら何やらについての考察はここまで。

 ここからは、今の状況を改めて整理してみようと思う。

 

 まず、今僕は、地球の大気圏を脱出して……ガミラスのものと思しき、輸送機っぽい宇宙船に乗っている。

 

 いきなり何がどうしてそうなったと思ってる皆さん。落ち着かれよ、ちゃんと話す。

 

 まず、戦闘機4機を撃墜した後、いつの間にかそこにいた飛行戦艦から通信が飛んできた。

 そこの所属不明機、何者だ、的なことを聞かれたと思うんだけど……よく覚えてない。見事にテンパって9割方聞き漏らしてしまったので。

 

 というか、こんだけデカい戦艦が近づいてきてたんだから、気付けよって話だよね……戦闘機の方に集中して周りが見えなくなってたんだろうけど、見えなくなり過ぎである。

 

 で、テンパったままに僕は……通信に対して返事を返すこともなく、逃げるが勝ちとばかりにブースターをふかして、その場から飛び去った。

 どこへなんて考えもせず、とにかくこの場から離れたくて、というか逃げたくて、適当な方向へ一目散に飛んでいった。

 

 幸いというか、追っ手とかは差し向けられなかったらしい。レーダーを確認してみても、周囲に自分以外の機体その他の反応はない。

 

 しかし、安心してほっと一息ついたのもつかの間……これからどうしよう、と僕は、コクピットの中で途方に暮れた。

 

 あれだけ目立ってしまったわけだし、地球連邦軍はこの『アスクレプス』というロボットのことははっきりと覚えただろうし、探そうとするだろう。

 そうなると、今までお世話になっていた、あの『捨てられた基地』には……もう戻れないと思った方がいいかもしれない。万が一、見つかって捕まる可能性を考えれば。

 

 軍人でもないいち民間人が、こんな機動兵器を持ってるなんてこと、認められるはずがないだろうし……そもそもこういうのって、動かすのに絶対免許とかいるよね?

 最悪没収されかねないし、その後で僕自身がどうなるかもわからない。

 

 無免許運転や銃刀法違反のロボット版みたいな罪に問われるかも、と考えると……賭けに出る気にはなれない。やっぱり、あの基地にはもう戻れないな。

 

 かといって、他に拠点、ないし隠れ家にできそうな場所を知ってるわけでもないし……なんてことを考えながら飛び続けていたら、いつの間にか僕は宇宙まで飛びあがっていた。

 

 流石の性能だな、アスクレプス。推進器も必要なく、重力を振り切って単体で宇宙空間に出られるなんて……コクピットの気密とかも問題ないみたいだし。

 

 そしてそのすぐ後に、僕は、地球の重力に捕らわれないくらいの離れた位置を漂っている……深緑色の宇宙船みたいなものを見つけた。

 

 カラーリングからして、ガミラスのもの……恐らくは戦艦。

 戦闘機より全然大きく、その分強力な武装を積んでいるであろうことは簡単に予想できた。

 

 流石にアレを相手にするにはちょっと僕の度胸は足りていなかったので……ヤバいどうしよう、逃げるか、とか即考えたんだけど……不思議なことに、その宇宙船からは、動力炉のエネルギー反応もなければ、人が乗っていることを示す生体反応も、何も感じ取れなかった。

 

 不思議に思って、恐る恐る近づいてみると……パッと見、なんだか妙にボロボロになっているように見えた。

 アスクレプスの手が届くくらいの距離まで近づいてみても、何の反応もない。迎撃してくる気配も、逃げ出そうとしてブースターに火を入れる様子も、何もない。

 

 思い切って、開いたままになっているハッチから中に入ってみると……中はもぬけの殻。

 コクピット内に入っていた、宇宙空間用のパイロットスーツを着た上で外に出て、中を隅から隅まで探してみたけど、全く誰もいない。

 

 そこで気づいたんだが、どうやらこの宇宙船、捨てられたもののようだ。

 

 恐らく、推進機関か何かが壊れて使い物にならなくなって、乗組員は脱出して他の船に映ったとか、そんな感じだろう。

 

 納得できたと同時に、僕はふと、この船との出会いを、むしろ喜んだ。

 ちょうどいいじゃん、ここ、しばらく借りて拠点にしよう、と。

 

 丁度、地球で使っていた『捨てられた基地』が使えなくなったところだったし、これからはこの『捨てられた船』を使わせてもらえばいい。

 

 ちょっと弄ってみると、意外にも動力自体は、電源?が入っていないだけで普通に生きていた。メインモニターやデータベースもすぐに復活して、ハッチの開閉や機密チェックまで、全部問題なく行うことができた。

 

 ただし、推進機関に異常があったみたいで……自力での航行が不可能になっていた。なるほど……捨てられた理由はこれか。

 これじゃあ、船の形をした家としてしか使えないな。前にも後ろにも進めず、ただただ宇宙空間を漂流するだけしかできないわけだから。

 

 が、僕にとってはそれで十分ありがたい。有効利用させてもらおう。今日からここが僕の家だ。

 

 

 

【○月◇日】

 

 ガミラスの宇宙船って、意外と居心地いいのな。

 

 宇宙空間だからか、埃も全然積もってなかったし、少し掃除するだけで普通に生活できるスペースになった。

 空調の性能もいいんだろう、温度も快適だし、息苦しい感じもしない、キレイな空気の中で息ができた。

 

 物資はあんまり残ってなかったけど、それでも、捨てる時に持ち出しきれなかった分なのか、携帯食料や水みたいなものが一部残されてた。

 地球人でも食べられるもののようなので、アスクレプスに積んでた分がなくなったら、こっちを食べさせてもらおうかな。

 

 なお、1つ味見してみたけど、まあ……可もなく不可もなく、って感じの味だった。このへんは地球の方がクオリティ上なのか、はたまたただ単にそのへん重視してないだけか……まあいいや。

 

 何気に激動だった気がする昨日一昨日と違って、特に何もない1日だったので、ゆっくり体を休めることができたのはよかった。

 今更だけど、色々あって気疲れしてたみたいで……今日なんか盛大に寝坊したからな、僕。

 

 ……何もない1日ということで、日記に書くことも何もない。

 しかし、それじゃ寂しいので、今日はちょっとここで、『アスクレプス』について、改めて整理してまとめてみようと思う。

 

 僕の愛機(暫定)にさせてもらっている、この『アスクレプス』。

 もともとのパイロットや性能については、前に説明したので省くとして……今日は、こいつの動力や、そこから発揮される力についてまとめておこうと思う。今更だけど、大分大事な設定だし。

 

 機動兵器、ないしロボットには、すべからくエンジンやら動力炉というものが備わっている。備わっていないと動かない。当たり前である。

 

 それらはロボットによって何が搭載されているかは千差万別。

 モビルスーツなら核融合炉、マジンガーZなら光子力、ゲッターロボならゲッター線という具合にそれぞれ違っていて……中にはガソリンや蒸気機関で動く設定のものや、パイロットの気合で動くなんてものまであった気がする。

 

 そして、このアスクレプスの動力が何かというと……それは『次元力』と呼ばれるものだ。

 

 『次元力』とは、恒星に由来する破壊と再生の力であり、この世に存在するあらゆるエネルギーの源となる原初の力、とかいう設定だったはずだ。

 単純に機動兵器の動力や、その他のエネルギーの代替として使うこともできるが、もしこの力の制御できたなら、それはあらゆる事象を完全に制御することにつながる、とまで言われていた。

 

 早い話が、単純な燃料に留まらず、極めればガチで『何でもできる』力である。それこそ、既存のあらゆる法則を無視して、自分の望む形で事象を引き起こせる。

 代表的なところでは、破損した機体を、動画の逆回しみたいに物理的に再生させたり、時空を捻じ曲げて攻撃や防御、移動に使ったりもできる。

 

 何を隠そう、アスクレプスの『D・フォルト』もその1つだ。次元力で周囲の空間を歪ませ、相手の攻撃が届かないバリアにしている。

 

 元ネタの『Z』では、アスクレプスに『D・フォルト』は備わってなかったと思うんだけど……まあ、その辺は気にしなくてもいいか。

 次元力を戦力として転用することにおいては初歩的な技術、らしい。使おうと思えば使えたんだろう、と思うことにする。

 

 他にもいろいろとこの『次元力』、設定上の知識はあるんだが……詳細に説明しようとするとめっちゃ長く、ややこしくなるので、ひとまずここで区切らせてもらう。

 そもそも僕も、今の段階ではそんな高度な制御なんてできないし。アスクレプスの動力及び戦力として使うくらいが関の山だしね。

 

 ひとまずは、『次元力=色んな事ができる、限りなく万能に近いエネルギー』とでも覚えておけばいいだろう。

 

 そしてこのもう1つ知識を。『次元力』、炉から『発生させる』でもなく、どこかで『蓄える』でもなく、専用の機関を使って異次元から『引き出す』形で発揮するものなんだけど……どうやらアスクレプスに搭載されたその機関は、問題なく稼働しているようで。

 こいつが存在したはずである世界から見れば『異世界』になるんであろうこの世界でも、問題なく動いて、武装も使うことができた。

 

 『引き出す』システムが壊れたりしない限りは、『次元力』はほぼ無限に使えるエネルギーだったはずなので、燃料補給の必要がないのはありがたい。

 そのシステム自体も、『次元力』で再生させられるわけだし。

 

 だからあと心配すべきは……パイロットである僕の燃料その他だけってわけだな。

 

 この艦に残されていたものも含めれば、食料その他の物資は、僕1人なら1ヶ月くらいはもちそうな量あるけど……さて、これからどうしたもんか。

 ほとぼりが冷めるのを待って、地球に戻ろうか? 流石に軍も、いくら所属不明機と言っても、人類滅亡の瀬戸際で、ずっと探し続けはしないだろうし……

 

 ……ってそうだ、地球、あと1年で人類滅びるんだった……戻っても何て言うか、その混乱の渦中に飛び込むだけだよな……ああ、どうしよホント。

 

 ……僕に何か、出来ることってあるのかな?

 ヤマトが、無事に目的を果たして帰ってくるのを、ただ祈りながら待つこと以外に。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。