スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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第41話 ミツルとミランダ

【□月◆日】

 

 昨日に引き続き、療養中である。

 

 どうやら、僕が佐渡先生から『最低3日、できれば1週間安静』と言われたのは、部隊全体に広まっているらしく、『いいから休んどけ』って言って、こっちに極力仕事とかは回さないようにしてくれてるそうだ。

 

 なんでそんな、部隊全体に僕の療養状況が出回ってるのかって思ったんだが、どうやら『ヘリオース』の説明のついでとか補足みたいな感じで知らされたらしい。

 

 総司さん達に説明した通り、あの姿は『アスクレプス』に比べて、全てにおいて別格の力を発揮するものの、その反動でパイロットである僕がしばらく動けなくなるくらいに疲労する諸刃の剣であると。

 

 大方の人は、あれだけの力を発揮するんだから、そのくらいのリスクはあってもおかしくはない、とある意味納得してくれたみたいだ。その『力』そのものの異質さはともかくとしても。

 

 中には、『機動兵器の出力がパイロット本人の体調にフィードバックされるのか?』って不思議そうにしてた人もいたようだけど、それに関しては割と今更なところもあるので、すぐに気にされなくなった。

 

 例を挙げれば、エヴァンゲリオンにもそういうのあるしね。機体が受けたダメージが、パイロットにもフィードバックされる。こちらは一応、あくまで感覚だけではあるけど。

 

 他にも『サイコフレーム』や『ラムダ・ドライバ』みたいに、人の意思に反応して動いたり、『NT-D』みたいに、逆に人の精神に影響を及ぼすシステムもあるし、

 

 後は……アンジュのヴィルキス。あれなんか、アンジュの意思一つで自力で転移して飛んできたリ……『歌』で兵装が起動するっていう、より一層よくわからないシステム積んでるし。

 ……いやホントあれどうなってるんだろうね? ただの起動キーなのか、それとも……?

 

 それに比べれば、パイロットの意思で出力が上下したり、反動でパイロットが直接疲れるくらい別に珍しくもなんともない気がしてきた。いや、割とマジで。

 

 そんなわけで、引き続き『アルデバル』の居住区で療養してるわけだが……前に言った通り、その間の僕のお世話は、ミレーネルがやってくれている。

 『病人なんだから大人しくしてて』って、炊事洗濯掃除、全部やってくれて、僕にはゆっくり休むことだけを要求する感じ。

 

 ……嬉しいし楽だけど、ちょっとダメになりそうだ。前とは別な意味で。

 一人暮らしで培って来た自活力が徐々に失われていきそうで……やっぱりちょっとずつでも仕事、あるいは家事を……え、ダメ? あ、はい、大人しくしてます。

 

 しかし、そんなミレーネルであっても、四六時中僕の世話をしているわけにはいかない。

 

 彼女には、動けない僕の代わりに、僕がやるはずだった仕事……戦闘に関する報告とかその他諸々を任せてしまっているので。

 今後の方針を決める会議とかには、必要に応じて『サイデリアル』代表としても出てもらってるし、そもそも彼女だって休まないわけにはいかない。彼女の体は、作り物とは言えど、かなり普通の人間に近い有機体のボディだから、普通に人間よりは頑丈だけど、疲労も蓄積されるのだ。

 

 だから、仕事と僕の世話をどっちもこなすなんてことはできない。

 

 そこで、彼女の手が離せない、あるいは休んでいる間に僕の世話をする人員がもう1人要るとして(あくまでも僕に何かさせる気はないらしい)、白羽の矢が立ったのが……ミランダだった。

 

 独立部隊のメンバーの中では、特に僕と距離が近いし、信用もできる。また、『パラメイル第一中隊』は人数がそれなりにいて、1人くらいちょっと借りても仕事に差し支えないよう穴埋めできるってことで、ミレーネルが相談したところ、二つ返事でOKされたそうな。

 

 外部の人間なのに、なんかごめん、と言ったら、『担当ですから!』って返された。あ、またそこに行き着くのね。

 

 いやまあ、今回ばかりは助かるし、ご厚意に甘えさせていただくけども。

 期間もそんなに長くはならないだろうしね。伸びても1週間だ。

 

 そのミランダだが、今日早速お願いしたんだけど……なんというか、ホントに甲斐甲斐しくお世話してくれるので、普通に快適である。

 炊事洗濯掃除、どれも、ハウスキーパーの経験でもあるのかってくらいに要領よくやってくれるので、感心してしまった。ミレーネルが頼んだ以外のことまでささっとすませて、後から帰ってきた彼女の仕事まで楽にしてしまうほどだった。

 

 彼女は元々世話好きというか、面倒見のいい性格だったらしいので、こういうのは手馴れたものであるらしい。アルゼナルにいた頃から……それこそ、パラメイル第一中隊としてデビューするよりも前から、同期や後輩の面倒とかよく見てたんだって。

 

 ただ……あまりこの話題で掘り下げすぎると、あの子……ココの話題にも触れるから気を付ける必要はあるけども。

 

 暇な時間には、話し相手になってくれたりもした。

 特に何の変哲もない世間話だったけど、退屈しない、楽しい時間だった。

 

 とりとめもないことを話しながら、ふと、褒めるのと一緒に彼女の頭をなでてしまったこともあったんだけど、ちょっとびっくりしながらも、嫌がることはなく、むしろ嬉しそうにしていた。

 

 屈託のないかわいい笑顔で笑う彼女を見ていて、以前チラッと考えた、『妹がいたらこんな感じなのかな』っていうのもふと思い出してしまったり……いや、そうすると僕今、その妹に世話をされてるっていう状況に……ううむ。

 

 ま、いいか、細かいことはこの際。

 

 何にせよ……アンジュを筆頭に、戦いの始まりから色々とあったんであろう彼女が……アルゼナルで出会った直後は、素人目にも不安定な感じだとわかるくらいだった彼女が、こんな風に笑えるようになったっていうのは……彼女を知る者としては、なんというか、うん―――

 

 

 

 ―――喜ばしい、と思うな。純粋に。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

Side.ミランダ

 

 ソファに座ったまま、どうやら寝てしまったらしいミツルさん。

 世間話をしていて、ふと、電源が落ちたようにすとんと眠りについた彼を見て……やっぱり疲れがたまってたんだな、と思った。

 

 彼を起こさないように、お茶請けのお菓子が乗っていた皿と、ジュースが入っていたコップを回収。音は立てないように。

 キッチンに持って行って、そのまま洗う。

 

 その最中、なんだかおかしくなって、ふと笑ってしまった。

 

 ……ほんの数か月前までは、こんな風な日常が待っているなんて、思ってなかったからなあ……あの頃から考えると、色んな意味でずいぶん『遠く』まで来たんだな、と自分でも思う。

 

 

 

 『始祖連合国』を構成する国の1つで生まれた私は、人生の途中まで、ノーマであることを隠して育てられていた。

 弟や妹が多い家だったから、忙しい両親に変わって、そのお世話をする機会が多くて……私が世話焼きなのはその頃からだ。もうなんか、性分、と言ってもいいくらいに染みついてる。

 

 けどある時、私は見つかって、捕まってしまった。

 

 兄弟姉妹でノーマだったのは私だけ。だから、家族と離れ離れになるのが私だけで済んだのは……東洋の諺で言う、『不幸中の幸い』だったかな、と思う。

 お父さんやお母さん、弟・妹達……元気にしてるといいな。もう、会うことはできないだろうけど。

 

 アルゼナルに連れてこられてからは、色々なことを勉強させられた。

 

 そのほとんどは、ドラゴンと戦って生き抜いていくために必要な知識とか技術ばかり。一応、普通の学校で習うんであろう、色々な一般常識とかも教えてはもらったけど……その日々は、ああ、私はきっとここで、一生ドラゴンと戦って生きて行くしかないんだ、と私に思わせた。

 

 諸先輩方もそうしてきて……そして皆、若くして散っていったんだ。

 

 アルゼナル窓の外に見える丘の上に広がる、おびただしい数の墓石が並ぶ墓地を見ると、嫌でもそう想像できた。

 

 ……実際、あの初陣の日……後一瞬、ミツルさんが来てくれるのが遅かったら……私は、ドラゴンに食い殺されていたと思うし。

 目の前に、ぐあっと大顎を開いたドラゴンの牙が迫ってくる光景は……今でも時々夢に見る。

 

 けど、それを生き抜いてからは、急転直下の事態の連続で……ある意味では、アルゼナルで戦って死ぬよりも、よほど壮絶な人生を歩んでる気がする。

 

 アルゼナルを、始祖連合国を飛び出して、宇宙に出たり、別の世界まで来たり、

 

 ドラゴンだけでなく、色々な機動兵器や、凶悪な犯罪者やテロリスト、よくわからない生き物(使徒とかインベーダーとか)とも戦って、

 かと思えば、今まで戦っていたドラゴンとは和解して、一緒に戦うことになって、

 

 ノーマには絶対にできないと思っていた、ノーマ以外の仲間や友達もできた。

 皆、私達がノーマであることなんか、これっぽちも気にしてなくて……同じ人間として、大切にしてくれる。信頼し合って、肩を並べて戦うこともできる。

 

 ……ホント、すごいな、私の人生。

 アルゼナルで一生を終えるんだとばかり思ってた頃から考えると……うん、想像もできないくらいにハチャメチャなことになってる。

 

 ……けど、こういうのも悪くない……ううん、けっこういいな、と思う。

 

 もちろん、上手くいったことばかりじゃなかった。

 

 時には、ドラゴンと戦うよりさらに危険な目にもあったし……お別れすることになってしまった人もいた。

 

 初陣で散ったココやゾーラ隊長、アルゼナル防衛線でMIA……行方不明になった、サリア隊長、エルシャ、クリス……どの別れも、悲しいものだった。

 ココとゾーラ隊長以外は、あくまで『行方不明』だから、また会える可能性がないわけじゃないけど……ミレーネルさん曰く、あの戦いの後に、捜索しても発見できなかったそうだから……

 

(でも……撃墜されたエルシャとクリスはともかく、サリア隊長はどうして? アンジュがきちんと手加減して落としたはずなのに……どこに行ったんだろう……?)

 

 叶うなら、また会いたいと思う。どこかで無事でいて、生きていてほしいと思う。

 彼女達も……大切な仲間だから。

 

 

 

 そんなことを考えている間に、お皿も洗い終わって、リビングに戻る。

 途中で寝室によって、クローゼットから毛布を取り出して……ソファで寝ているミツルさんにかけてあげた。空調はついてるけど、念のためね。

 

 ……思えばこんな風に、男の人と親しくなるなんてことも……もう一生ないんだろうな、と思ってたなあ……。

 (始祖連合国の)常識的に考えて、ノーマが結婚なんてできるはずもないし、その前段階の恋愛だって……。

 

 ……まあ、そのせいでアルゼナルでは、女の子同士のアレコレが発達してたっていうのを、ある時偶然知っちゃって、すっごいびっくりした思い出があるけど……まあそれは置いといて。

 

 ふと、アルゼナルでジル司令に呼び出され、ミツルさんの『担当』になった時のことを思い出す。

 

 アルゼナルでは、私が一番ミツルさんに接する機会が多くて、距離も近いから、今後色々な面で協力関係になることを見据えて、連絡係みたいな立ち位置に任命するって。

 アルゼナルと、ミツルさんの会社……『サイデリアル』とでやり取りすることがある時は。基本的にジル司令が直接交渉とかはするものの、その橋渡しみたいなものを私にやってもらうって。

 

 ……というのが、表向きの話で……ジル司令からは、こうも言われている。

 

『可能なら、星川ミツルを篭絡しろ』

『仕事相手としての関係以上に懐深くまで踏み込んで、情を湧かせて協力関係をとりつけろ』

『使えるものは何でも使え。涙も、体も、傷も、過去も……全て使え。手段を選ぶな』

 

 あの人らしいと言えばそうなんだけど……すごく直球だった。

 

 けど、そんなとんでもない指示を……『可能なら』とついていたとはいえ、私は断らなかった。

 

 ジル司令は多分、いや確実に……私の想いに気付いているんだろう。

 

 総司さんや刹那さん、トビアさんやタスクさん……『独立部隊』の他の男性陣に抱いているのとは違う、私の、ミツルさんへの、この想いを。

 

 正直言うと、これが『恋心』なのかどうかは、私自身にもわからない。

 私、まともな恋愛なんてしたこともない、どころか想像すらできないから。

 

 ひょっとしたら、ミツルさんのことは、兄みたいに思ってるのかもしれないし。

 私、兄弟姉妹で一番上のお姉ちゃんだったから、ちょっと憧れることもあったんだよね。自分より年上で、守ってくれるお兄ちゃんやお姉ちゃんに。

 

 一緒にいたいとも、離れたくないとも思う。

 彼が笑うと私も嬉しい。褒められて、頭をなでられた時は、胸が温かくなった。

 彼の役に立ちたくて、こうして一緒にいると安心する。

 

 ……初めてのことが多すぎて、自分の心がわからないや。

 

 それでも、ミツルさんが私にとって、特別な『何か』であることは、多分確かだ。

 それが何なのかは……これからゆっくり見極めていこうかな、と思ってる。いい機会だし、こうしてお世話をさせてもらってる間にでも考えてみよう。

 

 それでもし、私が本当に自分の心の『本音』に気づけたときに……これからも今のままでも十分に幸せだと思えるなら、今まで通りに暮らせばいい。

 

 でももし、今までのままじゃ物足りない、もっと、もっとミツルさんの近くに行きたいと思うなら……その時は、あらためてどうするか考えて、悔いのない選択をしよう。

 ジル司令の指示とか、ノーマとしての立場とか、そういうのも関係なく、あくまで私の意思で。『始祖連合国』の法なんか気にせずに、私がしたいようにしていいんだって……私は、この部隊で戦う間に、ちゃんと学ばせてもらったから。

 

 今からでも、なんとなくわかるもの。そうしたいと……そうしなきゃむしろ後悔する、ってくらいには……ミツルさんは多分、私にとって、大切な人だから…………そして…………

 

 

 

 ―――その方が、楽しいから。

 

 

 




Q.……あの、何か不穏なフレーズ出てきませんでした?

A.気のせい気のせい(棒読み)
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