スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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第44話 多次元企業サイデリアル

 

【□月%日】

 

 『アルデバル』を用いた、『西暦世界』と『宇宙世紀世界』をまたにかけた物資輸送は、すこぶる順調である。

 最初から『パラレルボソンジャンプ』の使用を視野に入れて作られているだけあって、『ボソンジャンプ』に関しては本家本元といっていい『ナデシコC』すら、その一点においては適正で上回ってるからな。

 

 それ単体でも可能なところを、コアユニットとして『アスクレプス』を搭載して次元移動を行うことで、エネルギー消費や機体への負担を最小限に抑えた上で『パラレルボソンジャンプ』を使うことができている。

 

 午前中に出発して、『サイデリアル』本社についたら、あらかじめ用意してあった物資の積み込み。

 それを待っている間に、僕とミレーネルはこっちでの仕事をさっと片づける。

 

 夕方前くらいには全部積み込みやチェックが終わるので、また『宇宙世紀世界』に戻り、各艦へ物資の受け渡し。

 なんとなんと、並行世界間の移動や物資輸送を日帰りでできちゃうお手軽さである。自分で言うのもなんだけど、まーぶっ飛んでるな。

 

 しかも、ジャンプするごとに蓄積されたデータを解析して、より効率よく、負担は少なくジャンプできるように都度改良が進んでるので、どんどん技術精度も上がって言っている。

 そう遠くない未来、『ナデシコC』でも、通常のボソンジャンプと同じ要領で『パラレルボソンジャンプ』を運用できるようになるんじゃないかな。

 

 ま、それまでは今まで通り、うちが頑張らせていただきますけども。

 

 正式に独立部隊に参加することにはなったけど、物資輸送については、今まで通り『連邦軍』の委託でやらしてもらってますからね。まいどどうもー。

 

 

 

【□月&日】

 

 時空振動で『宇宙世紀世界』に飛ばされてきちゃった際は、『えらいことになったなー……』と思って青ざめてたもんだけど……こうも何度も普通に『パラレルボソンジャンプ』で往復してると、なんかこう、並行世界って言っても、その特別さとか珍しさも薄れるな……。

 

 今ではもう、ちょっと県境超えて遠出して買い物してくるくらいの感覚で次元の壁超えてるし……なまじ一瞬で目的地につくもんだからな……。

 

 すっかり『次元移動』も生活リズムに組み込んだ仕事様式が板についちゃったので、その合間に色々他のこともやれる余裕が出てきた。

 

 例えば、今現在の西暦世界の情報の収集とか、ね。

 

 地球連邦軍の内部では、ミスマル中将主導で『火星の後継者』の協力者・賛同者だった者達の摘発が進んでいて、結構な大掃除になってるっぽい。

 

 『火星の後継者』は、主犯格である草壁や、側近だったシンジョウやヤマサキが逮捕され、見事に壊滅したので、組織自体は既にない。

 が、行き場を失った残党がまだあちこちにいて、行き場をなくして野盗まがいのことをし始めているため、順次摘発してるそうだ。

 

 大変ではあるけど、組織だって色々やってくる頃に比べたらそりゃ対処楽なもんだから、問題ない、って言ってた。

 

 次に、DG同盟について。

 今のところ、連中の活動は確認されていないようだ。

 

 まあ、思いっきりこっちに……『宇宙世紀世界』に引っ張り出されちゃってたからな、それぞれの組織のボスまで含めて。

 エンブリヲが連中を連れて来たんだとすれば……僕らが倒しちゃったから、連中、帰れてないんだろうな、やっぱ。

 

 その他の犯罪者とかはいるみたいだけど、警察とか連邦軍が対処してるらしい。

 

 ……むしろ、あの連中が『宇宙世紀世界』で、どこで何をしてるかを考えて警戒した方がいい……のかも?

 

 そして、個人的に一番気になってた……『始祖連合国』について。

 

 その中でも、『ミスルギ皇国』が、ジュリオ皇帝の崩御で結構な混乱が起こってるようだけど……どうにか国としてのシステムはなんとか最低限保てているようである。

 ホントに『最低限』で、国内では大小の混乱があちこちで起こって、決して平和とは言えないような状態になってるようだけど。

 

 犯罪があちこちで起こっていたり、上の方の混乱のあおりを受けて、流通や生産関係がもたついて庶民の生活も徐々に不便になってきていた。

 

 それに加えて、アルゼナルが機能不全を起こしている――ボンボン皇帝(故)のせいだけど――関係で、ドラゴンが国のあちこちで目撃され、これもまた混乱を加速させている。

 

 そのドラゴンを討伐しろとか、本来の役目を果たしていないアルゼナルを懲罰しろとかいう意見も出てるそうだけど、『そんなことに回す力はない』という状態。

 問題を処理する能力が足りてなくて、追い付かないのだ。

 

 現在あの国、皇帝不在の上、皇族があの車椅子の女の子……アンジュの妹であるシルヴィア皇女1人だけになっちゃってるから、統治機構とか意思決定がかなりガタガタなんだよね。

 一刻も早く即位させるべきだとか、流石にまだ早いから議会か何かを置くべきだとか……

 

 そんな状況でも、『最低限』やれてるだけでも上出来なのかもしれない。官僚とか貴族の皆さんとかが頑張ってんのかな?

 

 ま……正直僕のイメージ、あの国だいぶマイナスに傾いてるから……何が起こってようとあまり興味はないんだけどね。助けたいとも思えないし。

 

 それは、元々あの国に住んでた面々にも同様なようで……パラメイル第一中隊の娘達にこのことを伝えたら、アンジュとヒルダが『ざまあみろ』って感じに笑ってた。闇が深い。

 

 とまあそんな感じで、『西暦世界』でも、あっちこっちで大小のトラブルは起こっているものの……僕ら『独立部隊』が動くほどでもないとのこと。

 艦長達に報告入れたら、そういう結論にまとまったからね。よし、これでゆっくり、心置きなく寝られる。

 

 いやでも、ちょっと気になるというか、不安になる情報も一緒にあったんだっけ……安眠、は、だから難しいかもしれない。

 

 仕入れのついでにアルゼナルにも顔を出した時のことだ。色々と話を聞いたり、こっちであったことを報告したりもした。

 

 当然、エンブリヲを倒したことも報告したんだけど……ジル司令はそれで納得しなかったのである。

 

 司令曰く、『確実に殺したはずなのにしれっと生きている』ということが何度もあったらしく、殺しても油断はできないということだった。

 

 いや、それじゃ結局どうすんだよ。『リベルタス』とやらでエンブリヲを倒すのがあんたの目的だろ……え、あいつの不死身の秘密を暴くのもセット? あーそういう……

 

 なるほど、やっぱまだ油断はできないのね。

 ……思えば、今『ギリギリ』でもっているミスルギも……一応手駒は生かしておいた方がいいってことで、エンブリヲが色々やってる可能性もあるな。

 

 あの『ヒステリカ』に乗った奴個人の戦闘能力は驚異的ではあるけど、手下とかに任せた方がいい面倒な仕事だってあるだろうし。

 

 一応……あいつはまだ健在、という想定の下で動いた方がよさそうだ。あーめんどくさい。

 

 

 

【□月+日】

 

 ここんとこ頻繁に、2~3日に1回のペースで並行世界を行き来している。

 かなり部隊そのものの規模が大きくなってきたのに加え、補給の比重がだいぶNERVよりからこっちよりになってきたからな。

 

 前にも言った通り、NERVも、こっちの地球連邦軍からはちょっと嫌われている身だ。

 『使徒』対策は確かに重要だけど、連邦にとって今最優先で対処すべき敵は『ネオ・ジオン』であり、巨大な戦力を有しながらもそれに対して動くつもりのないNERV、及び独立部隊は、あまりよろしくない評価を受けているようで。

 

 まあ、前々からわかっていたことではあるんだけど……いかに碇司令がやり手とはいえ、そんな状況で補給の面倒を見続けるのも簡単ではない。

 なので、こっちができる分はこっちでやることにした結果がこれだ。

 

 で、その為の色々な事務仕事をやってる時に思ったんだけど……もう宇宙世紀世界(こっち)に拠点作っちゃった方が早いんじゃないかって思ったわけだ。

 

 いや、その発想自体は割と前からあったんだけど、色々忙しいから案だけちょいちょいまとめながらも後回しにしてたんだよね。

 それを、いよいよ実行に移すことにした。

 

 つか、移した。

 

 やることは大きく3つ。

 

 1つ目、拠点とする土地及び建物の確保。

 2つ目、正規の企業としての起業申請。

 3つ目、協力者その他の確保。

 

 このうち、1つ目と2つ目を一気に解決するために、既存の企業を買い取ってしまうことにした。

 西暦世界でもよくやっていて手馴れている、M&Aである。

 

 NERVとの連携もとりやすいように、日本の港湾部にある都市の、いくつかの企業……ネオ・ジオンとの戦争で業績が振るわずあっぷあっぷしていたそれらを、即金で従業員や経営権ごと買い取り、色々手を加えて『サイデリアル・ホールディングス 宇宙世紀世界支店』にした。

 

 あらかじめ用意しておいた機材なんかを運び込んで、あまり見た目的に整ってはいないものの、部隊の補給拠点としては問題なく使える程度にまで体裁を整えた。

 もちろん、普通の工場としても稼働させておき、地元経済を回しておく。こうして地元にもお金をきちんと落としておけば、大体受け入れられて上手くいくから。

 

 そんでもって3つ目。これに関しては、企業としてお世話になる表の人脈と……もう1つ、裏の人脈もどうにかして確保したかった。

 

 表の人脈は、きちんと企業努力で徐々に育てていくとして……裏については、裏社会で調べものをしたり、その他色々する際のノウハウの獲得が目的だ。

 こんなご時世なので、色んな所から妨害を受けた時に対処したり、あるいは妨害される前に処理したりとか、そういう時にも役立つだろう。

 

 しかし、それだけに慎重に構築しなければならないものだったんだけど……運よくと言うべきか、それなりに信頼に値する相手を見つけることができた。

 

 相手は、とある傭兵団みたいな組織。

 といっても、『ミスリル』みたいに大規模なそれじゃなく、まあ言い方は悪いけど、零細で経営にも割と苦労している感じの。

 

 そこに所属している、セイナという女性が交渉役に立って、僕らに『スポンサーになってほしい』と言って来たのである。

 

 あちらからは、僕らが欲している裏社会の人脈や情報を提供でき、必要であれば調査や、本業?である傭兵の派遣なども行える。傭兵団として仕事する場合は、別途料金も発生するが。

 

 それらと引き換えに、こっちからは資金とか物資をもらいたいと。なるほど。取引の内容としては妥当だ。

 

 ミレーネルにも同席してもらって調べた感じ、こっちを利用しようとする意図はあっても、裏切ろうとする意思は感じなかったらしいし、むしろ誠実に物事に当たろうとしているのを読み取れて、裏の人間にしては好感触だという。

 

 加えて、ちょっと独自にこっちでも調べてみたところ、彼女の詳細な素性も明らかになった。

 

 というか、思わぬ形で僕ら『独立部隊』に関わりのあった人物だった。

 正確には、その中の『ミスリル』に、だけど。

 

 以下、宗介君やテッサ艦長から聞かされた話を含む。

 

 彼女の所属する組織『A21』は、元々、彼女の恩人ないし恩師である『タケチ・セイジ』なる人物によって運営されていた、青少年の更生施設を兼ねた孤児院みたいなものだったらしい。

 しかし、策謀によって反社会的組織の烙印を押され、タケチ・セイジは逮捕、獄中で自殺。

 

 その復讐のために、A21は一度はテロリストに身を落とし、ミスリルとも戦ったらしい。その際は『アマルガム』が、尖兵として利用するために武器供与その他をしていたんだとか。

 

 最終的には壊滅させたそうだけど、その残党がまだ活動を続けていたようだ。

 

 しかしそれは、世界を憎むテロリストとしてじゃなく……かつてと同じように、青少年の更生を目的としてのもの。

 色々あって、テロリスト時代の償いのためにも……それこそ、タケチさんの意思を受け継ぐ形で、そういう活動を続けているそうだ。

 

 ……この世界今、めっちゃ戦争真っただ中だもんな。そういう組織も必要になるか。

 

 かつては敵だったものの、今は心配なさそうだってことで、正式に協力関係を形作らせてもらうことにした。

 傭兵として動いてもらうことは多分、そんなにないだろうけど、情報とかノウハウ的なところでは頼りにさせてもらおうと思っている。

 

 テッサ艦長達も、かつて自分達が戦った、悲しい運命を背負った彼らに、ほんの一筋、未来に生きる道が示された形となったことで、ほっとしてもらえたようだった。

 

 ……あと、今更になってようやく気が付いたんだけど、この人達『Z』にもいたな。

 あの世界では、元『黒の騎士団』メンバーだっていうとんでもない過去持ってたけど。確か。

 

 思い出すのだいぶ遅かったけど、色眼鏡で見ることなく対応できたと思えばよかったか。

 

 そんな感じで、無事に『サイデリアル』の宇宙世紀支店が……独立部隊が使える拠点ができた。

 『サイデリアル・ホールディングス』が、多国籍企業ならぬ『多次元企業』になった瞬間であった。祝え!

 

 

 

 さて、と。

 足場も安定してきたってことで……ちょっと最近考えていた、ある計画を実行に移そうと思う。

 

 最近、ますます戦いが激しくなってきていることや、『ガーディム』やら何やらのよくわからない連中が暗躍し始めてる状況を考えると……僕らの方でも、色々な可能性を想定した上で、準備を進めておくべきことが多いと思うんだ。

 

 今回のこの『拠点づくり』もその一環ではあるが、もっと重要な部分の計画にも着手していきたいと思っている。

 猶予は……思っているよりもなさそうだし。

 

 今のこのつかの間の平和は、多分、いわゆる『嵐の前の静けさ』だ。

 また『嵐』が来る前に、できることを進めておかないと。

 

 僕が、それこそ、『西暦世界』に来た当初から、頭の片隅で描いていた……そのために何ができるか、年単位で時間をかけて、構想や準備をちょっとずつ進めていた計画――

 

 

 

 ――『バースカル移設計画』を。

 

 

 

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