【□月¥日(同日)、続き】
たしかに僕らの目の前で死んだはずの……それこそ、亡骸だって僕らが回収したはずの彼女……ココちゃんが、『ラグナメイル』に乗って襲って来た。わけがわからない。
本人は『エンブリヲ様に生き返らせてもらった』とか言ってたそうだけど、いくらなんでもありえないだろ……死者蘇生って。
今だから言っちゃうんだけど……あの時のココちゃんの状態は、凄惨そのもので……素人目にも蘇生なんか絶対に不可能だってくらいに、確実に死んでた。
というか、上半身と下半身が泣き別れになった上、海に落ちたせいで血液もほとんど流れ出て、内臓もなくなってた状態だったんだ。それで死んでなきゃ、生物としてむしろおかしい。
けど、じゃああのココちゃんは一体何だったのか?
残念ながら……その答えは僕にもわからない。
偽物だったのか、あるいは……思いもよらない方法で本当に復活したのか……いや、さすがにそれは……次元力使っても無理だと思うし……
……次元力で思い出した。
もう1つ、ちょっとどころじゃなく厄介なことがあったんだ。
このままでは間に合わないと思って、戦闘後に動けなくなるのも覚悟の上で、『ヘリオース』に変形した後のことだ。
速攻で動いた僕は、エンブリヲのヒステリカをさっさと倒して、他のメンバーへの加勢に行くつもりだった。
しかし、まあ実際にエンブリヲは倒せたものの……その交戦時に、また、ココ復活に匹敵する驚愕を覚えることとなった。
なんと、エンブリヲの奴が……『次元力』を使ってきやがったのである。
見間違いか、あるいは計器の故障かと思って何度も確認したが……信じがたいことに、間違いじゃなかった。
奴の機体……『ヒステリカ』は、確かに次元力を用いて攻撃や駆動をしてきて……こちらが与えたダメージの修復も行っていた。いや、これはもともとできてたことか。
どうしていきなり!? こっちが使ってるのを見てコピーしたのか!?
いやでも、いくらアイツが……常人から見れば規格外の能力を持ってるからって、サンプルも何もなく、見たことがあるだけの力を再現するなんて不可能だろう。
この世界で、次元力を扱えるのは、僕とミレーネルだけだ。そのための設備は、きちんと内部で管理しており、外部には技術的な情報の1つも流出させてはいない。
次元力に関する研究は、社の内外以前に、『西暦世界』でも『宇宙世紀世界』でも行ってはいない。
ほぼ全て『バースカル』で行っていた。まあ、それを使ったプログラムを組める設備が、この世界に存在しなかったし、『バースカル』で作って持ち込むこともなかったからな。
でもだとしたら、どうやってこいつは『次元力』の一端を手にしたんだ……!?
仮に何かしらの形でサンプルを手にできたとしても……実用化するのには並大抵の技術力じゃ足りない上に、次元化学そのものに対しての理解も必要なはずなのに。
それに、だ。
その点以外にも……何だかエンブリヲとの戦いでは、不自然に思えた点がいくつもあった。
まず、戦闘能力。
これは前とはさして変わっていなかった。次元力を使えるようになっていたにも関わらず、だ。
まあ、次元力を使ったからって、必ずしも劇的なパワーアップに繋がるわけじゃないのはそうなんだけど……そのせいで、何だかとってつけたような感じに思えたんだよな。
サブ動力として稼働していたみたいだから、出力そのものは上がっていただろうけど……ほとんど付け焼刃同然というか、全く強みを生かせていないというか。使えるだけ、みたいな。
まあ、これに関しては……まだ使いこなせていないだけ、っていう見方もできなくはない。
けど、気になった点、もう1つ。
気のせいじゃなければ、なんだけど……なんかエンブリヲ、ちょっと性格変わってたような?
次元力を使いだしてからなんだけど……戦っている最中に、苛立っているというか、前より攻撃的で、こっちを見下していて……ああいや、これは元々か。
で、通信越しに舌打ちの音なんかも聞こえてきたりして。
大物ムーブが崩れただけ? それにしては、何だかな……その苛立ち方も、どこか取ってつけたような、不自然さがあった。
後からミレーネルに聞いてみたら……その際の妙な精神波の変化みたいなものを、彼女もわずかに感じ取っていたようで。
何かしらの行動のたびに、エンブリヲから『苛立ち』や『憎しみ』……あるいは『怒り』のような感情が漏れ出してきていた……だそうだ。
……何か、関係あるのかな? あいつが、いきなり次元力を使いだしたことと。
そして、戦っている最中に……なぜか、僕の心がざわついたような気がしたことと。
まあ、エンブリヲについてはこのへんにしておこう。
その後、どうにかエンブリヲと、サリア達『ダイヤモンドローズ騎士団』とやらも撃退した……というか、エンブリヲが僕に負けたと同時に、彼を守って一斉に撤退していったんだが。
幸い、『ヘリオース』への変形の反動が来る前に決着がついたので、残りの敵との戦いの手伝いをしようとして……しかし、それらももうほとんど終わっていた。
ガミラスはヤマトと総司さんが、アマルガムはミスリルが、ネオ・ジオンは宇宙世紀世界のガンダムチームが中心になって、それぞれもう粗方倒し終えたところ。どれも撤退していっていた。
あとはコロニーを止めるだけ、って段階になって……しかし、予想以上にコロニーの落下速度が速くて、既に阻止限界点を突破、地球の重力圏内に入ってしまっていた。
このまま皆で総攻撃を加えても、破壊した破片が地球に降り注ぐ。降り注いでも影響がない……大気圏で燃え尽きるくらいの小さな破片にまで破壊しつくすことは、到底できない。
マジンガーやゲッター、グレートマイトガイン、ヘリオース……いずれの火力でも無理だ。
可能性があるすれば、ヤマトの波動砲だけど……位置が悪い。
あの位置からコロニーを撃つと、地球にも影響が出る可能性が高い。何せ、惑星すら破壊しかねない威力の元祖ロマン砲だ。
威力を絞った試射でも、オーストラリア大陸と同程度の大きさの浮遊大陸を破壊したっていうんだから……そんな危ない橋は渡れない。
かといって、安全な位置まで……それこそ、コロニーの下側まで回り込んで上に向けて撃つとか、そういう手を撃つだけの時間も最早ない。
万策尽きたか、と思われたその時……秘策は、意外なところからもたらされた。
カギとなったのは、ユニコーンガンダムのサイコフィールドと、オードリーが持っていた秘密兵器である、コロニーレーザーだった。
コロニーレーザーの火力なら、コロニーを落下前に完全に消滅させることができる。
しかし、落下速度を鑑みると時間が足りない。
そこで、機動部隊が総出でコロニーを下から支え、ギリギリまで減速させて……コロニーレーザーが飛んでくる直前に、離脱するという作戦に出た。これならどうにか間に合う。
ただそうすると、今度は機動部隊の離脱が間に合わずにコロニーレーザーに巻き込まれる可能性があったんだけど……そこを解決したのが、さっきも言ったユニコーンと、ナデシコのボソンジャンプ。
ユニコーンのサイコフィールドで全員の意識をつなぐと、繋がってる全員がひとまとめみたいな扱いになるらしくて……ボソンジャンプで一斉に全員飛べるらしい。
それを利用して、限界ギリギリまでコロニーを押し戻して時間を稼ぎ……コロニーレーザーの命中直前に全員でジャンプ。
こちらの損害は当然ゼロにして、なおかつコロニーは完全破壊することに成功した。
その結果だけ見れば、作戦は大成功だけど……色々と、大変な事実が明らかになって、前途多難というしかないな、この先。
間違いなく勝ったと言える結果なのに、素直に喜べない形になってしまった。
……あと、この日記を書いている今、僕は……例によってベッドの上です。
こないだ程じゃないけど、ガッツリ反動きて動けなくなったので、療養中。
またしても、と言うしかないんだけども……ミレーネルに仕事を、ミランダにお世話を任せる形に。ホントごめん……。
なんかこの後、ミネバの案内で――今後どっちで呼べばいいんだろ――とある場所に向かってるらしいんだけど……果たしてそこ到着するまで、回復できるかどうか……。
【□月@日】
昨日も衝撃の出来事の連続ではあったけど、今日は今日で色々と衝撃だった。
オードリーちゃん(今後もこう呼んでほしい、って言われた)の協力者であり、アキトさん達のかつての仲間でもある女性・イネスさんから、諸々の説明があった。
その際に行われた『なぜなにナデシコ』なる寸劇がちょっと衝撃的だったので、危うく気を取られて説明聞き逃すところだったんだけど……まずは置いといて。
主にボソンジャンプの仕組みについての説明だったんだけど、細かくは省く。
重要なところだけ抜き出せば……ボソンジャンプは、理論上は時間移動さえも可能な技術である……ということくらいか。
ボソンジャンプの仕組みは、ジャンプ元からジャンプ先に直接飛んでいるのではなく、一度ある時点の時間・場所に跳躍した上で、目的の時間と場所にさらに跳躍しているらしい。
その際に重要になるのが、『火星の後継者』の一件の時にも、度々その存在を聞いていた『演算ユニット』なんだが……西暦世界で、連邦軍も『火星の後継者』もついぞ見つけられなかったそれは、なんとこの宇宙世紀世界にきていたらしい。イネスさんと一緒に。
そら見つからないはずだわ。異世界に来てたんじゃな……。
西暦世界でイネスさんは、『ナデシコA』と『演算ユニット』と共にボソンジャンプを行い、宇宙の果てに飛ぶはずだったのだが……その時、想定外の事態が起こった。
なぜかそのボソンジャンプが『パラレルボソンジャンプ』になってしまい、ここ、宇宙世紀世界の……『アクシズ』に飛ばされてしまったとのこと。
かの赤い彗星『シャア・アズナブル』が地球に落とそうとして、しかし、アムロ大尉が起こした奇跡……世に言う『アクシズ・ショック』によって破壊された、その小惑星の破片に。
そこで、オードリー達の所属する反戦派の組織『ラプラス』に拾われ、今日まで保護されていたそうだ。
ここからは推測交じりの話になるんだけど……イネスさんと『演算ユニット』が流れ着いたのが、宇宙世紀世界の『アクシズ』の破片だったってことを考えると……1つの仮説が立つ。
カギは、アクシズ・ショックを引き起こした張本人……アムロ大尉だ。
今に至っても、何が起こったかよくわかっていないかの謎現象。僕も文献で読んだだけなので、詳しいことは何もわからないけど……その時に起こった奇跡が原因で、『宇宙世紀世界』と『西暦世界』が混線したんじゃないかとのこと。
結果、『ただのボソンジャンプ』は『パラレルボソンジャンプ』になり、イネスさんは演算ユニットごと、宇宙世紀世界に飛ばされた。
そして逆に、アムロ大尉は西暦世界に飛ばされた。その後、火星の後継者に捕まって協力させられていた、と。
事実は小説よりも奇なり、って奴かなあ……また、すごいことになってたもんだ。
そして、イネスさんとオードリーは、この演算ユニットを僕らに託してくれるとのこと。
今まで『火星の後継者』が主に使っていた『ボソンジャンプ戦術』も、こいつを手中に収めている僕らなら、それを正しく使ってくれるだろうから……とのことだ。期待に応えないと、な。