【○月☆日】
今僕は、乗っているガミラスの宇宙船を動かし、火星に向かっている。
何のためかっていうと、物資の補給のためだ。
でも、僕が何かに使おうと思って、というわけではない。地球に届けるためだ。
ここ数日間、ずっと色々と考えていた。僕が、地球のためにできることはないかって。
あれから何度か、嫌がらせ的にガミラスの連中はやってきて、地球を襲った。
やってくるのは戦闘機か、もうちょっと大きいだけの奴だけっぽかったので、アスクレプスで問題なく応戦・撃墜できたんだけど――1回だけとか言いながら、結局何回も関わってるな、僕――その際、地球連邦軍の戦闘機はほぼ出てこなかった。
出て来たこともあったけど、明らかに動きが悪くて、途中で撤退してしまったりしていた。
アスクレプスのレーダーで感知した限りだと、動力が異常に弱かったっぽいので、十分でない燃料で飛んでいたんだと思う。それか、粗悪な代替燃料でも使ったか。
まあ、そんなんじゃ当然、まともに戦えないよね。
けど、そうしなきゃならないくらいに、今の地球にはもう余裕がないんだな、ということの証明にもなった。
そこで僕は、彼らが地球を守るための燃料くらいは何とかできないかと思って、一路木星に向かうことにした。
この船のデータベースを見て知ったんだが、木星にはどうやら、燃料として使用できる鉱物の採掘場があるらしいので。
暇つぶしにこの船のシステムをポチポチ弄ってた時に見つけたんだけど、なんか、言語設定変えられることに気づいたんだよね。
選択肢の中から『テロン人言語』ってのを選んだら、表示が全部地球語に変換されて、読めるようになった。
そのおかげで、木星の燃料採掘場の情報に気づけた僕は、そこで物資を積めるだけ積んで、地球に届ければ……少しは地球の役に立てるんじゃないかと思ったからだ。
地球全体の状況から考えれば、焼け石に水以外の何物でもないだろうけど……それでも、やらない善よりやる偽善、という言葉もある。
できることがあるなら、とにかくやってみようと思った。
なお、推進機関が壊れていたはずのこの船だけど……今朝調べてみたら、なんか直っていた。
自動修復装置の類でもついてたのかな? いやでも、そんなもんがあるならこうして捨てる意味はないだろうし……
……アスクレプスの『次元力』の影響か? 物理的なダメージも修復できるエネルギーだしな……いやでも、何もしてないのに勝手に作用して直るなんてこと、あるのか?
まあ、ありえなくはない、と思う。
次元力を扱うのに最も重要になるのは、人の『意思』の力だ。それに呼応して、次元力は様々な形に姿を変える。
……すごく雑な話、昨日あたりから僕、『推進機関が直ればなー』なんてぼーっと思ってたから、アスクレプスから生み出される次元力の余波か何かがその意思?に反応して、この宇宙船を直した……みたいな? あるのかそんなこと?
……よくわからないけど、まあ、セルフチェックでも問題はなさそうだったし……使えるもんは使っておく、の精神で、有効利用させてもらうことにした。
あ、それと、首尾よく鉱物を採取できたとして、どうやってそれを地球連邦軍に届けるか、についても一応考えた。
ここ数日の戦闘で、アスクレプスはさらに目をつけられてるだろうし……今乗ってるのはガミラスの艦艇だし……正面から『よかったら使ってください』なんて言って持っていくわけにもいかないよなあ。
……適当な基地の玄関前とかに、夜の間にこっそりおいて、クリスマスプレゼントみたいに受け取ってもらう……じゃダメだろうか。
メッセージカードに『伊達直人』とか書いて添えておいたりして。
……案外行ける気がしてきた。これでいこう。
【○月★日】
木星に行こうと思って移動していたら土星についた。
……ヘイ待ってくれ、意味が分からない。
読んでる諸君らもわからないだろうけど、書いてる僕もわかってない。
なので、整理する。
このガミラス艦には、『ゲシュ=タム機関』と呼ばれる動力炉がついており、これを使った機能の1つに、『ゲシュ=タムジャンプ航法』というものがある。
空間を捻じ曲げて任意の行き先に通じるルートを作り、それを通ることで一瞬で超長距離を移動する……いわゆる『ワープ』である。
輸送艦らしき小型艦にまでそんなシステムがついてるなんて……改めてやばいな、ガミラス。
慎重にチェックした結果、そのシステムもきちんと生きていて使えそうだったので、木星に行くために使わせてもらうことにしたのだ。
念には念をってことで、近距離でワープは試してみた。
丁度見える位置に月があったので、そこを目的地にして飛んでみて……成功。一瞬で月面に到着した。
いやあ……なんか、こう……感動した。
一瞬のうちに景色が切り替わるんだもんな……小さい頃にSF系のアニメや小説でしか見たことなかった超技術を、実際に体験すると……うん、感慨深いものがある。
テストは問題なく終了したってことで、ちょっと時間を置いてエンジンの冷却やら何やら済ませた後、本命のワープを実行した。行き先はもちろん、木星だ。
……しかし、着いたのは土星。……わけがわからないよ。
何が起こったのか調べるために、艦の航法システムのログを見てみると……どうやら木星、あるいはその近辺の宙域で、局所的に次元震が発生したと思われる、とのこと。
原因は不明だが、誰か、あるいは何かが、次元を震わせるような何かをしたってことか?
そして、それの影響を受ける形でこっちのワープは失敗し、着地点がずれた……と。
例えるなら、海でゴムボートを漕いで移動してたところで、近くに誰かが飛び込んできて、その時起こった波に流され、ないし煽られて、進む方向が狂った……みたいなもんか。
全く、どこの誰が何をやったのかはわからないけど、迷惑な話だ。
まあ、どことも知れないはるか遠くに飛ばされた、とかいう状況になるよりはましだと思うことにするか。
不幸中の幸いと言えばいいのか、土星にも同じように、燃料になる物質の採掘場はあるみたいだ。せっかく来たんだし、こっちで採掘していくかな。
※その頃の宇宙戦艦ヤマト
木星で『波動砲』の試射。
【○月■日】
ちょっと今日はもう、なんというか……色んな意味で恐怖体験してしまった。
土星にある、これまた捨てられた状態の鉱石燃料採掘場で、使えそうなものを失敬していた時のこと。
突然、目の前に、巨大でおぞましい見た目の怪物が現れ、襲い掛かってきた。
アスクレプスで採掘してたから、すぐに応戦できたのはよかった。機体から降りて生身でいるところを襲われていたらと思うと……ぞっとする。
てか、この怪物見覚えあるんだけど。
白くていかつい人の顔に、怪獣じみた胴体と足、肋骨に似た形にまとまってる、触手?みたいな器官、背中に生えてる昆虫っぽい羽(形的に)。
こいつ、『メタルビースト』じゃね? ゲッターロボだかに出てきたやつ。インベーダーが機械と融合したっていう設定の敵。
ゲッターロボを直接見たことあるわけじゃないけど、ゲームで戦ったことあるよ、コレ?
え、ちょっと待って何でこいつがいるの? ガンダム(モビルスーツ)と宇宙戦艦ヤマトに加えて、ゲッターロボって……まさか、この世界、本格的にスパロボか何かか?
これでマジンガーも出てきたら、スパロボ御三家揃うんですけど。
なんてことを考えたが、そんな場合じゃないのは明らかだったので、すぐさま応戦。
ここ最近は暇な時間を利用して、シミュレーターを使って機体を動かす練習もしていたので、かなり上手く戦えたと思う。
襲って来たのが1匹だけだったこともあって、割と簡単に倒せた。
けど、嫌な予感がした僕は、急いで戦艦に戻ってみると……案の定、そこには今にも戦艦に襲い掛かろうとしている、別なメタルビーストが!
間一髪そこに割り込んで、そいつも倒すことには成功した。
けど、さっきと違って3匹もいたのでかなり苦労した。
が、もはやこの星は安全でも何でもないということが明らかになってしまった。こんな化け物がいるんじゃさ……おちおち戦艦降りて採掘なんてできないよ。最悪、足を失うことになる。
幸い、そこそこの量採掘は既にできたことだし、もうこのへんで切り上げて地球までこれらを運ぶことにしよう。それがいい、そうしよう。
……と、思った矢先に、なんだか余計なものを船のシステムがキャッチした。
この近くにあると思しき別な船から、無差別に周囲に発せられている……救難信号を。
信号のコードやら何やらを解析すると、どうやらテロン……もとい、地球の宇宙船が発しているもののようだ。座礁して動けないか何かの理由で、助けを求めて。
どうしよう、コレ……助けに行くべきかな?
罠、っていう可能性もなくはないけど、もし、これがホントに地球の船が発しているもので、ホントに困ってるなら……この宇宙の片隅で孤独に助けを待っているであろう、同郷の人を、見殺しにするのは……仮にも今から、タイガーマスクムーブで人助け、ないし地球助けしようとしている身としては……どうにも寝覚めが悪い。
というか、まさかとは思うけど……コレ発してるの、ヤマトじゃあるまいな?
いや、ないとは思うけど……仮にもイスカンダル目指して旅立ったヤマトが、太陽系も出ないうちからそんなことになってるなんて、考えたくないし。
けど、この星、インベーダーいるからな……それに襲われてたらと考えると、万が一もありえないとも言えないような……
……一応、見に行ってみよう。ちょっとだけ、ちょっと様子見るだけ。それなら大丈夫だろう。
もしそれで、マジで助けが必要そうな人がいたら、まあ、その時はどうにかして助けられればと思うけど……罠だったり、あるいは何かの間違いだったりしたなら、さっさと帰ればいい。
うん、そうしよう。念のため念のため。ちょっとだけちょっとだけ。
【○月!日】
死ぬかと思った……。
インベーダー相手にするよりよっぽど怖い経験しちゃったよ……やっぱり、怪物なんかより怖いのは人間なんだなって思った。
いや、別に社会の厳しさとか、人間の性が悪だとか、その辺を論じるつもりはないし、そもそも今回のことは半分くらい僕の自業自得なんだけど。
あの後、ちょっとだけ、ちょっとだけ、と自分に言い訳しつつ、僕は救難信号が発せられている場所にやってきた。
そして即、ここに来たことを後悔した。
メタルビースト3匹と戦うくらいなんだ、って言えるくらいのヤバい図がそこに広がっていた。
墜落ないし不時着し、破損して動かなくなっていると思しき、地球の戦艦。
そのすぐ近くに力強く浮遊している、地球でも見た『宇宙戦艦ヤマト』。こちらは当然というか、傷一つなく健在であった。
そこに襲い掛かろうとしている、優に二桁に登る数のメタルビーストの群れ!
そしてそいつらを一方的に蹂躙しているスーパーロボット軍団!!
いたよ、ガンダムもゲッターロボも、そしてマジンガーも! 昨日のアレはフラグだったのか畜生!
あと、ヤマトの艦載機であろう戦闘機が何機かと、地球でも見た灰色の機体もいた。総出でメタルビーストを駆逐していってた。
数で言えばメタルビーストの方が倍以上いるってのに、ほとんど全く相手にならずに蹴散らされていく……全員とんでもない戦闘能力である。
僕が拙い操縦技術で操るアスクレプスなんか、足元にも及んでいないことは明白だった。
呆気に取られてみていると、いくつかのことに気づいた。
まず、これは見た目一発分かったんだけど、ゲッターロボは『ブラックゲッター』だった。竜馬さんが1人で乗って動かす奴。
ってことは、ゲッターチームが3人そろってるわけじゃない、のか?
次に、ガンダムらしき機体が2機いたんだけど……あれは何ガンダムだろう?
面構えからして、ガンダムなのは間違いなさそうだけど……知らない奴だったな。ドクロマークがついたガンダム……そんなのいるのか? 海賊?
そして、マジンガーだけども……よく見るとあれ、『マジンガーZ』じゃないな。あちこち違う。
スクランダーの形も違うし、胸についてる放熱板(ブレストファイヤー出すやつ)が左右繋がって1つになってるし。その他にも、所々鋭角なデザインになってる気がする。何だアレ? 後継機か何かか? こっちも知らない……
……僕、ロボットアニメの知識、あんまりないから、そのへん詳しくないんだよ。
まともに全話見たのって、『エヴァンゲリオン』と『コードギアス』と『グレンラガン』くらいなんだよな。
その他は、スパロボで逆輸入的に得た知識くらいしかない。そしてそれも、『Zシリーズ』の途中からのものだけ。具体的には、破界篇から先だけ。
なので、そこに出てきてないロボット知識は、ないに等しい。
そして、ブラックゲッター以外のロボットに関する知識はその中にはなかったので、ぶっちゃけ名前もわからん。
特にあの灰色の機体。全く何者かも見当つかないんだけど……
というかそもそも、この体の星川少年の記憶の中では、地球には、ガンダムはともかく、あんなスーパーロボット……マジンガーやゲッターがいた記憶はない。……どこから来たんだ?
……思えばこの時、考えるのは後にしてさっさと切り上げるべきだったんだな、と思う。
一番懸念していた、『ヤマト、土星に死す』みたいなことにはならないのは確認できたわけだし。ピンピンしてたもんな、明らかに。
それに、僕ごときが心配するのなんておこがましいと言うしかないくらいの戦力が集まってるのも確認できたわけだから……さっさととんずらするべきだったんだよ……。
……見つかる前に。
具体的には、ブラックゲッターの目(メインカメラ?)がこっちをギロリと見て、遠くから隠れて見ているつもりだった僕が発見されてしまう前に。
そして、通信か何かで僕の存在が伝わったんだろう。メタルビーストと戦いながらも、一斉にロボット達の注意がこちらに向けられる。
それと同時に、ガンダムやあの謎の灰色の機体、そしてヤマトの方から突き付けられる、強烈な敵意。
当たり前である。何せ今僕、ガミラスの船に乗ってんだから。
彼らからすれば、地球を侵略してくる、不俱戴天の仇である。
あの時は……生きた心地がしなかった……。
戦ったら確実に負けるってわかってたもの。というか、戦いにもならないって絶対。
ガンダムや灰色の奴は、目で追うのも大変なぐらいの速さで上下左右に動きながら、正確極まりない動きで攻撃して、メタルビーストをハチの巣かぶつ切りにしてたし、
マジンガー(多分)とブラックゲッターの方は、本当に機械なのか疑いたくなるくらいの滅茶苦茶な動きで……叩き切って、焼き払って、引き裂いて、切り刻んで……
そしてヤマトは、近づいてくるメタルビーストをビームっぽい砲撃を直撃させて木端微塵にしてたし……
無理。絶対無理。戦えるわけない。
アスクレプスを出したとしても確実に負ける。死ぬ。勝負にならない。
初手で撃墜される光景がもう既に幻視できる。
幸いだったのは、彼らがメタルビーストと戦ってる最中で……一方的であっても、それらに背を向けるような真似はしなかったこと。
向かってくるメタルビースト達に対して、敵ではあるが逃げて行く僕の方の優先度・驚異度は低いと考えたのか、追ってこずに見逃してくれたことだ。
見事なまでに尻尾巻いて逃げて、どうにか土星の重力圏を脱出できた時は……安堵のあまり、ものすごく大きなため息が口から出た。
ああ、ホント……死ぬかと思った……
……今日はもう疲れた。
ある程度土星から離れたところにまで船を進ませたら、早いとこ休もう……