スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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突然ですが、腱鞘炎になりました……現在、左手の握力が限りなくゼロです。
今はやりのスマホ腱鞘炎ってやつかなコレ……右手で食事しながら左手でスマホいじるのやめようかな、って思いました。

正直キーボード叩くのもちょっときついので……更新遅れたらすいません。


第50話 今までありがとう

 人工の肉体と言えど、ミレーネルの義体は限りなく生身の人間に近い形で作られている。

 

 ゆえに、損傷すれば痛みもあるし、動きも鈍る。

 

 今まさに、胸を……恐らくは肺を貫通するという、致命傷に近いダメージを受けながらも、ミレーネルは目をそらそうとはせず、その女性……ジェイミーを睨みつける。

 

 その目を見て、ジェイミーは、はぁ、と露骨に呆れたような態度でため息をついた。

 

「『目は口程に物を言う』……テロン人の格言だったかしら? よく言ったものね……けど、そういうの……美しくないなあ?」

 

 小馬鹿にしたようにそう言うと、ジェイミーはつかつかと歩み寄り、持っていた銃を、今度は至近距離で、ミレーネルのこめかみに向ける。

 

「どう考えても逆転の目はないのに、何をそんなに反抗的な目をしているのかしら? 全く、劣等種族の考えはわからないわね……負けを認めて素直に恭順すればいいのに。まあ……単に体が偽物だから惜しくないのかもしれないけど」

 

「……あっそ。そんなことまでお見通しなわけね」

 

「当然よ。アンドロイドや義体の作成なんて、ガーディムの技術では基本レベル……あなた達劣等種族の低レベルな技術とは違うのよ、何もかも。そしてそれゆえに……あなた達がこの艦を、自分のものであるかのように扱っていることは、許されないことなの」

 

 彼女に後ろには、何体かの女性型アンドロイドが控えていた。

 以前、総司とナインを襲撃したグーリーが率いていた、また、アルデバルに侵入してミツルとアスクレプスの拿捕をもくろんだそれらと同タイプだ。

 

 無表情で無機質、見た目は整っているし人間と見分けがつかないくらいに精密ではあるが……不思議と、いかにもアンドロイドといった印象を受ける。

 

「あなた達が超空間航法とも違う奇妙なやり方で次元の壁を超えて、度々どこかに行っているというのは予想していた。けど、それを逆探知して追尾して来てみれば……まさか、次元断層の中にこんなものがあったなんてね。そしてそれを、劣等種族ごときが勝手に使っていたなんて」

 

「落ちてたから拾って再利用しただけなんだけど? というか、長いこと放っとかれたものを今更所有権とか主張されてもねえ? こっちがびっくりするわよ、その面の皮の厚さに」

 

「あら、当たり前でしょう? 私達の文明は、私達ガーディムによってのみ行使され、それ以外の劣等種族は、ガーディムによって管理されなければならない。この『バースカル』は、ガーディムの艦隊旗艦。あなたのように物わかりの悪い劣等種族を、矯正し、教育するための装置なのよ」

 

 徹頭徹尾見下してくるジェイミーに対し、ミレーネルも怯みもせずに反論をぶつけ、怯える様子を見せない。

 屈服しないその姿勢が、ジェイミーには面白くなかったようだ。わずかに眉間にしわを寄せ、

 

「はーあ……テロン人って、どうしてこうなのかしら。本当に美しくない……ああでも、あなたテロン人じゃなかったわね。その義体の特徴……色の薄い灰色の髪と肌……ジレル人の魔女か。他人の心の中に土足で踏み込んで覗いたり操ろうとする、無作法で下品な種族。まさかまだ生き残りがいたなんて、そっちの方が驚きだわ」

 

「……っ……」

 

「まあ、どっちでもいいわ。この艦は返してもらう。従う気がないのなら、あなたは不要よ」

 

 警告もなく、引き金が引かれる。

 一条の光線が眉間を貫いて……ミレーネルの義体は脱力し、崩れ落ちた。

 

 ジェイミーはそれを押しのけて床に捨てるように倒し、『片づけておきなさい』とアンドロイドに一言指示を出す。そして自身は、艦の状態を把握するためにコンソールを叩き始める。

 

 しかしその少し後……顔色を変えた。

 

「……っ!? 何コレ……どういうこと!? データが、何も残っていない……システムも……基礎OSすら満足に稼働して……どういうことよ!?」

 

 ジェイミーは当初、この『バースカル』を持ち帰り、自分達のフラグシップとして再利用するつもりでいた。

 

 現在、拠点として運用している『スリニバーサ』は、同じくガーディムの戦艦であるが、通常配備のそれである。

 対して、今乗っている『バースカル』は、艦隊の旗艦として運用される、ガーディムの最大戦力たる戦艦。戦闘能力はもちろん、機体の生産・整備機能も『スリニバーサ』よりも上だ。

 

 回収できれば大きな戦力になり、今後あらゆる面で動きやすくなるという考えだったが……それは当然、この艦が十全に能力を行使できればの話。

 

 しかし、モニターを睨むジェイミーの目に映っているのは……『バースカル』の、万全とは程遠い現状を示す、いくつもの表示。

 

「これは……システムやデータだけじゃない、ハンガーや各部の武装も……解体されている!? 推進機関や……メイン動力まで!? い、一体どういうことなの!?」

 

 長期間放置されていたのだから、ある程度の機能不全は予想していたが……今のこの状態は、明らかに整備不良で起こるようなものではない。

 

 データやシステムはがほとんど全て消されている上……武装から何から、あちこちの構造そのものが、虫食いのように穴だらけになっているのだ。

 動力すら、粗悪な代替品に置き換わっており、これでは最早、戦艦どころか、『艦』としての満足な運用すらできない、ただの張りぼてになってしまっている。

 

 困惑するジェイミーの耳に、

 

『ざぁんねんでした! あなた、ちょっと遅かったの!』

 

 通信越しに、そんな声が聞こえてきた。

 聞き覚えのある……どころか、つい先ほど聞いたばかりの声が。

 

 しかし今度は、小馬鹿にする攻守が見事に逆転した形で。

 

「……っ……魔女!? どういうことよ……あなた、『バースカル』に何をしたの!?」

 

『見ればわかるでしょ? もうその艦からは、使えそうなものほとんど全部引っぺがして運び出して、よそに移してあるのよ。生産設備も、武装も、動力炉も、全部ね。残ってんのは一部の転送用システムその他と、外側の装甲だけ』

 

「なっ……」

 

『あなた達が『ガーディム』……この『バースカル』の元の持ち主だとわかった段階で、こうなることは予想できてたわ。コレの存在を察知して、奪いに来るかもしれないってね。だからそうなる前に、重要な機能を全部、新しい拠点に移し替えてたのよ、ちょっとずつ、時間をかけてね』

 

「新しい、拠点……!?」

 

『もともとこの艦、推進機関が死んでてここから動かせなかったのよね。戦艦としては運用できないわけだし、でも戦艦ってやっぱりあった方がいいし……だったらいっそ新しく作ろうってことになったの。で、それならこの艦にあるもの、ごっそり全部移してもってっちゃおうとして……ついこないだ完了したとこなのよ。で、今回みたいにあんた達が何らかの……逆探知的な方法で『バースカル』の存在をかぎつけるかもしれないから、私のリスポーンを含む、通常空間との行き来の起点だけはここに残してたの。私達の……今の、本当の拠点に来させないためにね。そして……』

 

「……ジェイミー一等武官」

 

 と、通信越しにミレーネルが話している最中に、背後からアンドロイド兵がジェイミーに話しかけてくる。

 

「何よ!? 今忙しいの、後にして!」

 

「しかし、早めにお伝えした方がよろしいかと。今しがた、外部空間との接続が遮断されました。本艦の外に、通信波や次元観測を含めた一切のアクセスができません」

 

「……何ですって?」

 

 通信はともかく、次元観測もできない。

 それはつまり、外部から見てこの位置を補足することも、逆にここから外部の……転移先の地点を補足することもできないことを意味する。

 要するに、転移技術による脱出ができない……閉じ込められたということだ。

 

 そして、そんな事態が今、偶然に起こるはずもなく。

 こんな事態を起こすとすれば、その犯人は限られていて。

 

「……この、魔女ッ……何をした!?」

 

『さっきから魔女魔女ってうるさいわね、この性悪女! ……ってか、今スキャンしてみたけど、そういうあなたはアンドロイドじゃないの。グーリーとおんなじで』

 

「はぁ!? 何をバカなことを言って……私がアンドロイドなわけ……」

 

『……ああ、そういう感じなのね。こっちも知らされてなかったと……まあいいや。どっちみち、ここから生きては返さないし』

 

 

 

 バースカルの外……次元断層内部の空間に、『それ』はいつの間にか浮いていた。

 

 光学迷彩やジャミングを含めた偽装を施され、ここに来た当初、ジェイミーらは気付くことができなかったそれは……『バースカル』よりも、『アルデバル』よりも大きく、力強い『何か』。

 

 しかし、その見た目からして、あきらかにまだ『未完成』なのであろう構造物だった。

 

 それでも、今からやろうとしていることに関しては、機能として足りていた。

 ゆえに、それに乗り込んでいるミレーネルは、新しい体の指をよどみない動きで動かし、コンソールを操作……発射までのカウントを開始させる。

 

「全砲門展開。エネルギー充填……『タキオンブリッツ・プレッシャー』発射用意。……バースカル、今までありがとう。ごめんね……私達はもう、そこには戻れないから……発射ッ!」

 

 そして、引き金が引かれる。

 

 超高速、かつ超火力で放たれるレーザーの砲撃が、張りぼてとなったバースカルに十重二十重に殺到し……その装甲をものともせずに貫通し、爆砕していく。

 在りし日のガーディム最強の艦は、ひしゃげて、火を噴いて、崩れて行く。

 

『……っ……! こんなのッ、美しくな―――』

 

 通信の向こうから聞こえていたそんな声は、それっきり永遠に聞こえなくなった。

 

 砕けて、崩れて、蒸発して……先程までそこにあった『バースカル』は、数十秒後には、ごくわずかに、元々が何であったかなどわからない残骸が残るのみとなり、跡形もなくその場から消失していた。

 

 その、ぽっかりと空いた空間を、何とも言えない気持ちで見つめながら……ミレーネルは、彼女曰く所の『本当の拠点』の中で、しばし感傷に浸っていた。

 

 しかしそれもすぐに吹っ切り、再度偽装を施した上で、ミレーネルはその場を後にした。

 一応は防衛成功したであろう、アルゼナルに戻り、ミツル達と合流し……ことの次第を報告するために。

 

 

 ☆☆☆

 

 

【▽月▲日 続き】

 

 そういうわけで、『バースカル』はお役御免となり……僕ら『サイデリアル』の生産拠点は、ここ最近ずっと準備を進めていた、新しい拠点の方に移設した。

 というか、移設は既に終わっていた。

 

 あとは、バースカルに忘れ物とかないか確認しつつ、逆探知避けとしてだけ使ってたんだけど……それも終わったわけだ。

 

 ミレーネルも言ったそうだけど……バースカル、今までお疲れ様。ありがとね。

 

 そして、これから先は……今はまだ未完成だけど、完成すれば強力極まりない戦力になるであろう、『アレ』を仕上げていくことにしよう。

 

 ……日記でまで『アレ』なんて書いて思わせぶりにするのもどうかと思うんだけど……どうせならバッチリ完成した時に書きたいよね。

 なので、うん、日記だけど名前は出さずに行こうと思う。

 

 試作機として作った『アルデバル』のおかげで、必要なデータは粗方揃ってるから、もう完成も間近なんだよね……ああ、楽しみだ。

 

 ……けど、しばらくはお預けかな……アンジュ救出とエンブリヲとの決戦の方に注力しないといけないし。

 

 

 

 

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