【▽月☆日】
エンブリヲ襲撃から一夜明け……僕らは着々と、次なる戦いのための準備を進めている。
アンジュ救出はもちろん、サリア達の奪還、龍の民の始祖・アウラの奪還、そして何より、エンブリヲの打倒も。
そのためにも、急いで、かつ万全に準備を整えなきゃいけないわけで。
独立部隊総出でそれに取り組んでるんだけど……一部、それに乗れていない人がいる。
誰かって? ジル司令です。
なんか、自暴自棄って言うか、諦めモードになってる。もうおしまいだ、って。
アンジュがエンブリヲの手に落ちて、ヴィルキスは海の藻屑と消えた、って。
アンジュとヴィルキス中心の『リベルタス』しか考えてなかったせいで、今のこの状況が、もう挽回不可能な絶望的なものにしか思えないっぽい。完全にやる気なくしてる。
尤も、ミレーネルやスメラギさんから見ると、他にも何か理由、ないし事情がありそうだって話だったけど……ミーティングの時には話してもらえなかった。
後で、スメラギさんがもう一回話して聞いてみるのと、説得も同時にしてみる、とのことだ。
その時、男の人はいない方がいい気がする……とのことらしい。なぜかは知らんが。
まあ、女同士の方が話しやすかったりもする……のかな?
あと、ヴィルキスはきちんと回収して、今整備に回してますから。海の藻屑になってないよ。
それと、タスクもきちんと回収して治療に回したし、アーキバスも修理に回したよ。まだ意識は戻らないけど。
だから、拉致られたアンジュを除けば、こっち陣営からリタイアは、人も機体も出てな……ああ、ミランダのグレイブはダメだったっけな。
中破だけど、破損の度合からして戦いには間に合わないって、整備班が言ってた。
まあ、それならそれで問題ない。彼女には、もう1つの方の機体があるし。
次の戦いでは、それがいよいよお目見えすることになるだろう。
他にも、決戦を見据えてさらなる機体の強化や、新兵器の調整なんかも進めている。
それと……準備とは違うんだけど、もう1つ。
前回の戦いで投降してきたエルシャへの事情聴取も済んだので、書いておく。
やはりというか、彼女は洗脳されて従っているわけではなく……ある理由から、自分の意思でエンブリヲの元についていたのだった。
前にも何度か書いたことがあるが、エルシャは面倒見がいいお姉さん的存在であり、アルゼナルの幼年部の子達をことさら可愛がっている。
自分の報酬を使ってお菓子や洋服を買ってあげたり、時間がある時は遊んであげたりと。
きっと彼女は、ノーマじゃなければ、幼稚園の先生とかになっていたんだろうな、なんて思ったもんだ……あの『始祖連合国』で、まともな幼稚園でまともな教育を施されて、きちんとまともな園児が育つのかは疑問ではあるが。
その『幼年部』の子達なんだが……あの、最初のアルゼナル襲撃の時に、全員死んでしまったのだそうだ。
しかし、悲しみに暮れる彼女の前に、エンブリヲが現れ……なんと、その子供達を生き返らせたのだという。
そして、『アルゼナルにいればこの子たちはまた危険にさらされる。私のところで預かって、幸せに過ごさせてあげよう』と言って、エルシャ共々、その子達を引き取った。
始祖連合国の中枢部に『エンブリヲ幼稚園』なるものを作り(その名前を聞くと同時にヒルダ達が『うえぇ……』って顔になってた。多分僕もなった)、子供達をそこで引き取った。そして、エルシャはそこの園長さんになったのだという。
生き返らせてくれた恩、そして安全な居場所をくれた恩を返すために、エルシャはエンブリヲに忠誠を誓い、『ダイヤモンドローズ騎士団』に入った、というわけだった。
……とりあえずどこからツッコめばいいのやら。
子供達が亡くなる原因になったあの襲撃は、そもそもエンブリヲが黒幕で、ボンクラ皇帝をたきつけた結果だし……つまりは、死の遠因はエンブリヲだ。
それを助けて恩を売るって……完全にマッチポンプじゃないかと思うんだが。
あと、『エンブリヲ幼稚園』なる安全な場所に保護したって……アルゼナルが危険なのはあらゆる意味でそのエンブリヲのせいだろ、元々。
攻めてくるのはもちろんだけど、そもそもノーマをドラゴンと戦うように仕向けたのもエンブリヲだ。アルゼナルっていうか、ノーマにとっての危機が全体的にエンブリヲのせいだ。
そしてコレ、ココの時にも思ったことだけど……エンブリヲってマジでザオ○クでも使えるの?
死んだ人がポンポン生き返ってるんだけど……ドラゴン○ールなみに、命の不可逆性ってもんが塗り替えられてるよ。
……まあ、理に反するとはいえ、本当に死んだ人が生き返った(きちんと真っ当な形で、に限るが)っていうのなら、それ自体はいいこと、ないし結果かもしれないけど……
総合的に考えて、明らかにエルシャを取り込むためのエンブリヲの策だよねコレ?
けど、エルシャにしてみれば、子供達が生き返った、これから安全に暮らせるっていう部分が最重要ポイントなわけだから、彼女は自分の意思でラグナメイルに乗ったんだろう。
けど、かつての仲間達と戦ってそれもゆらいでしまったと。
エルシャは、流石に今回の戦いには不参加になった。
見守る、ないし見届けるくらいは問題ないけど、ひとまず大人しくしてろと。
それを承諾した上で、エルシャは、『どうか子供達は助けてあげてほしい』とのこと。
……まあ、きちんと生きてたら、助けるよ。そりゃ。
ココといい……本当にどういう仕組みなんだかな……?
なお、サリアやクリスについても聞いてみたけど……こちらはあまり情報は得られなかった。
公言している限りの情報であれば、サリアもクリスも……あと、ココもターニャもイルマも、エンブリヲに命を救われた恩から、っていう共通点はあるらしい。
が、個人個人に細かい動機とか事情みたいなものもあると思われる、とのこと。
……クリスで言えば、呼び方が『エンブリヲ君』だったり……やたらと『友達』を強調したり……気になる部分は随所にあったな。そのへんだろうか。
洗脳やら精神制御なしで、自分への忠誠心を植え付けるくらいだしな……何かしらはあるんだろうと思う。
そのあたりが、やっぱカギだろうな……説得するにあたっては。
追記
エンブリヲ君について、もう1つ、注意しなきゃいけない部分があった。
これは、アルゼナル内でアンジュが襲われた時のことを、宗介から聞いた際に明らかになった話なんだが……ゲイツ達アマルガムに加えて、なんとモモカがアンジュに銃を突き付けて襲ったのだという。
が、もちろんモモカが実は敵のスパイだった、なんてとんでもない展開があるわけではない。
エンブリヲはどうやら、『ホムンクルス』……ノーマではない『始祖連合国』の人間を、マナを媒介にして操ることができるらしいのだ。
どこぞの絶対遵守みたいに、自意識を残したまま命令を聞かせる、って感じじゃなく……当人の自由意思とか意識をほとんど消して、本当に操り人形みたく操作する感じになる。
どっちかって言うと、イノベイド連中の脳量子波を使った遠隔操作に近いな。
監視カメラの映像を見せてもらったんだけど……その時のモモカ、目がうつろっていうか、ハイライト消えてて……不気味と言うか、怖かった。
ハイライト消えならSEED勢も同じだけど、あっちはきちんと自分の意思も残ってるし、感情も声に籠って表に出てくるので、ただ見た目のすごみだけなんだよな。
モモカの方はホントに人形っぽくなってて……普段が明るくて活発な性格だから、その分のギャップも相まって……。
これで大人数を操作して襲い掛かってとかこられた日には、ホラーだよなマジで。
それ考えると、アルゼナルは拠点としては好立地だよ。モモカとエマさん以外は、ノーマか外界の人間だけだから。マナとか関係ないから。
ちなみにだが、モモカはその後、アンジュを傷つけないために自力で支配を振り切り、自分で自分を撃って無理やり無力化した。
……前にも思ったけど、アンジュのためとなるとマジでこの子覚悟決まり過ぎである。傷つけるくらいなら自決するってか……。
あ、きちんと治療して一命はとりとめてます。ご安心を。
むしろ、アンジュ救出作戦の時に同行したいってごねてるので、そっちの説得の方が大変です。当面絶対安静だっつの。
【▽月★日】
準備が整った。
これからいよいよ、ミスルギ皇国に殴り込みである。
ええと、作戦目標は……と。
まず、アンジュの救出。これは基本。
なんかエンブリヲが去り際に気持ち悪いことを言っていたので、急いだほうがいいかも。
続いて、千鳥かなめの救出。
アマルガムが協力している以上、エンブリヲの本拠地であるここに彼女もいる可能性が高い。
そして、マリナ・イスマイールとカガリ・ユラ・アスハの救出。彼女達も、失踪当時の状況から察すると、エンブリヲに捕まっている可能性大。
始祖・アウラの救出。これについては、どこに捕らわれているのかわからない。予想はつくけど、確証はない。
サラマンディーネ達のスパイがミスルギ皇国に潜り込んで情報を流してくれていたそうなんだが……最近連絡が取れないらしい。安否が心配である。
サリア達の救出というか、ぶんなぐって目を覚まさせる。必要に応じて。
これについては、基本、それぞれの親友枠に一任する。ヒルダとロザリー、そしてミランダがやる気になっていた。
アマルガムの壊滅。具体的には、レナード・テスタロッサの打倒。
あいつがアマルガムのボスだから、それを倒すなり捕獲するなりすれば、アマルガムは組織として終わりを迎えるだろう、とのこと。
そしてもちろん、エンブリヲの打倒。理由とか言うまでもないよね。いくらでもあるよ。
全部で7つかー……やること多いな……
これらの目的を遂行するにあたり、機動兵器で正面から戦う部隊と、潜入して救出やら何やらする部隊の2つに分かれなければならない。
潜入組は、タスクと宗介がメインになる。それぞれのガールフレンド救出に執念を燃やす2人だ。白兵戦能力も高いので、適任だろう。
機動部隊として戦うのがそれ以外の面子。恐らく例の騎士団が出てくるだろうから、それと戦う気満々の面子を中心に動くことになるだろう。
そして、僕は……どちらでもなく、待機。
どっちかと言えば機動部隊側ではあるんだが、出撃はしない。例によって、対エンブリヲの隠し玉として、あいつが機体で出てくるまでは温存、ってことになった。
そして今回、僕もちょっと秘策というか、隠し玉を用意しているので……もし戦いになって、もし使う時が来たら……これまで以上に活躍できる自信があったりなかったり。
欠点や弱点を、把握していながらそのままにしておくなんて、ダメだからね、うん。
さーて……そろそろ時間だ。
この日記の続き、無事に書けますように。