スーパーロボット大戦 とある蛇使い座の日記   作:破戒僧

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第52話 ミスルギ決戦、開幕

 

 ミスルギ皇国を舞台とした、エンブリヲとの決戦。

 

 これまで攻め込まれる、あるいはおびき寄せられる一方だった独立部隊は、アルゼナルを出て、初めてその総力をもってミスルギ皇国に進軍。宮殿及び『暁の御柱』前の広場に歩みを進める。

 

 それを迎え撃たんと出撃してきたのは、サリア率いる『ダイヤモンドローズ騎士団』。

 それに加えて、いつもの、とでも言うべきか、お得意の無人機部隊である。円盤型の『ピレスロイド』に始まり、他の各勢力の機体をAI制御に改造したのであろう、モビルスーツやマジン、ASなども姿を見せた。

 

 サリアとクリス、ターニャとイルマがそれらを率いて出撃し、ナデシコとプトレマイオス、トゥアハー・デ・ダナンから出撃した機動部隊各機を迎え撃つ。

 

 そして、そんな彼ら・彼女らの戦いの裏で……もう1つ、別な戦いが始まっていた。

 

 先の戦いでエンブリヲに拉致されたアンジュと、アマルガムに捕らわれていると思しき千鳥かなめの救出。

 機動部隊の戦いを陽動とし、ミスリルの陸戦部隊の掩護を受けながら、宗介とタスクが敵拠点に突入。自らも脱出に向けて動いていたアンジュと無事合流し、保護することに成功。

 

 同時に、レナードに連れられていた千鳥かなめとも遭遇し……舌戦?の末、彼女は洗脳……ではなく、自身の精神と一体化していた少女『ソフィア』の精神による支配をはねのけ、宗介の手を取った。

 アンジュ、千鳥かなめ、両方の脱出を妨害することなくただ見送るレナードの態度に、違和感を覚えないわけではなかったが、ひとまず脱出を優先することに。

 

 その後、外に出るまでに、アンジュ絡みのいくつかの騒動を経た後、一同は無事に宮殿の外に脱出することができた。

 

 が……外に出たその瞬間、早くも次の受難が待っていた。

 

『やっぱり逃げ出してきましたね、アンジュリーゼ様!』

 

「っ!? この声……ココ!?」

 

 宮殿から脱出した直後のアンジュ達の前に、機動部隊との戦いには出ず、伏兵として隠れていたココが『ビルキス』で降り立ったのである。

 

『アンジュリーゼ様を奪い取ろうとしてネズミが入り込むかもしれないって、エンブリヲ様が言っていました。自分の代わりにあなたを守っていてくれ、って頼まれたんです。大人しく宮殿に戻ってください、アンジュリーゼ様? でないと……』

 

「はっ……お断りよ! あんたと違って私はあんな奴に飼われる趣味はないから。妻になんかなるくらいなら死んだ方がマシだわ! あと様付けやめてって言ったわよね!?」

 

 気丈に言い返しつつも、アンジュは頭の中で、ここからどうすればいいか考えを巡らせていた。

 

 建物から出たら、タスクと宗介はすぐさま用意しておいた機体に乗り、アンジュもヴィルキスを呼び出してそれに乗り込むつもりでいた。しかし、それを制されてしまった形になる。

 

 いくら宗介やタスクが白兵戦能力に優れていても、機動兵器を、それもパラメイルと比較して桁違いの性能を持つ『ラグナメイル』を相手にして戦えるわけがない。

 ビームライフル1発放たれるだけで、生身の人間など容易く蒸発してしまうだろう。

 

 逃げるにしろ抗うにしろ、機体は必須。せめて、ほんのわずかな間だけでも隙ができれば……と考えるアンジュだが、

 

「大丈夫だ、アンジュ。ここで追っ手がかかるのも、スメラギさんの予想通りだ」

 

「えっ?」

 

「すぐにこっちにも応援が……」

 

 と、耳元で小声でささやくタスク。

 彼が何かを言い終わるより先に……その場にいる全員の耳に、特徴的な音が聞こえ始める。

 

 『独立部隊』の面々にとっては、それなりに聞きなれた音だ。

 敵にせよ味方にせよ、その場面を目にすることが多かったがために。

 

 そして次の瞬間には、音だけでなく、視界にもそれは明らかになり始める。

 

 何もない空間から、『ボソンジャンプ』を終え……ちょうど、アンジュ達とココの間に立ちはだかるように、それは出現した。

 

(ブラックサレナじゃない……パラメイル? でもコレ、誰の……?)

 

 現れたのは、アンジュにとっては見覚えのない……深緑色のパラメイルだった。

 

 デザインは『グレイブ』のそれによく似ている。アンジュの記憶にある、ヒルダやロザリーが乗っていたそれと、主だった特徴が一致する。武装など細部が異なるようだが、そのあたりは任意の改造でいくらでも変わるだろう。

 しかし、彼女が覚えている限り、『深緑色』に塗装しているグレイブに乗っている者はいなかったはずであり、目の前の機体のパイロットが誰なのかには思い至らない。

 

 が、その疑問はすぐに解消することとなる。

 他でもない、その機体に乗っている者の発した声が、彼女達のところまで届いたために。

 

『向こうの方に出てきてないから、どこかに隠れてるとは思ってたよ……ココ』

 

「! その声は……」

 

『ミランダ!? どうしてここに……しかも、何その機体!?』

 

『私の新しいパラメイルだよ。ココ……あなたと戦うための、ね!』

 

 そう言うなり、困惑して動きの止まっていたココの『ビルキス』に勢いよく突進するミランダ。

 

 ビームライフルの銃身をつかんで、射線がアンジュ達に向かないように反らしながら、そのまま押し出すようにしてアンジュ達から引き離していく。

 

『アンジュ! タスク達も、今のうちに!』

 

「っ……よくわからないけど、サンキュー、ミランダ! 来なさい、ヴィルキス!」

 

 そうしてできた隙に、アンジュは困惑しながらもヴィルキスを呼ぶ。

 乗り手の意思に応え、空間を超えて現れたヴィルキスに、アンジュは素早く乗り込む。タスク達もその場を離れ、すぐ近くに用意していたそれぞれの機体……アーキバスとレーバテインに乗り込んですぐに出てきた。

 

 一方で、困惑から立ち直ったココは、ビルキスを押して飛ぶグレイブをどうにか振りほどいて、体勢を立て直す。

 

 しかしその時には既に、宮殿からかなり引き離されてしまっていたうえ、遠くの方でアンジュのヴィルキスが飛翔する光景が見えていた。

 エンブリヲから言いつけられた自らの務めを果たせなかった事実と、その原因になった目の前の存在に、苛立ちからギリ、と奥歯を鳴らす。

 

「ミランダ……私、この前言ったよね? 邪魔するなら、あなたでも容赦しないって……」

 

「うん、言われたね」

 

「でも……邪魔するんだね?」

 

「うん……そのためにここに来た。この間は、何もできなかったけど……」

 

 そこで一拍置いて、ミランダは呼吸を整え……そして、はっきりとした口調で言い放つ。

 

「私が止めるよ、ココ。そして今度こそ……助けてみせる! エンブリヲなんかに騙されて、また命を粗末にしようとしてるあんたを!」

 

「何が『助ける』よ……それじゃ私が今、可哀そうみたいじゃない。私は……もう救われてるの! エンブリヲ様に助けられて、力も、居場所も、夢ももらったの! それを邪魔するなら……」

 

 ココはビルキスを操作し、持っていたビームライフルを左手に持ち替え……右手には剣をとる。

 

 それに呼応するように、ミランダは背中に装備していた、かなり銃身の長い、重厚な装飾のついた銃……のような武器を手に取って構える。

 

 互いが互いに、剣の切っ先と銃口を向けた。

 

「ミランダ……あなたを倒す!」

 

「来い、ココ! 私は、私だってもう……逃げないし、迷わない!」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 ミランダとココ……かつての親友達の戦いが始まったその頃。

 

 場所は変わり……戦場の外縁に待機して全体の動きを見ている、『プトレマイオス』の格納庫。

 

 予備戦力兼エンブリヲ戦への控えとして待機していたミツルは、乗機であるアスクレプスの足元で、ノートパソコン型の端末を通して戦場の動きを見守っていた。

 

 画面の中で、ミランダがココと戦闘に入ったのを見ながら、声には出さずに心の中で彼女の勝利を祈っていると……コツ、コツ、と足音を立てて近づいてくる足音に気付く。

 

 視線を向けると、その先にいたのは……意外な人物だった。

 

「あれ、ジル司令……どうしてこんなところに?」

 

「ああ、こんなロートルにもできることがあるかもしれんと思ってな……念のための待機だ」

 

 現れたのは、アルゼナルの司令官であり、普段は後方で指揮を執る立場であるはずの女性……ジルだった。

 

 軍服のようないつもの服装ではなく、アンジュ達が来ているのと似たデザインの、メイルライダー用のパイロットスーツに身を包んでいる。見慣れない姿だけに、ミツルの目には新鮮に映った。

 

「え、戦闘に出るんですか? ジル司令が? パラメイルで?」

 

「意外か? 何も不思議なことはないだろう……私とてノーマだ、昔は最前線でドラゴンと戦わされていたんだぞ?」

 

「ああ、なるほど、確かにそうなりますね……ノーマ=メイルライダーですもんね」

 

「『リベルタス』に向けて、腕は錆びつかせないように訓練は続けていたからな、そこらの小娘などには負けんさ」

 

 そう言い放って、歯を見せて獰猛な笑みを浮かべるジル。

 その姿には、アンジュとヴィルキスを喪失し、リベルタスの頓挫を悟って失意に暮れていた時の悲壮な様子は、どこにも残ってはいなかった。

 

 スメラギとの語り合いの中で、自分にできること、逃げずに向き合うべきことを再認識した結果なのだろう。

 かつての自分の過ちを乗り越えるため……過去と決別し、今度こそ未来を手にするため……彼女の目には、最早迷いはなく、業火を思わせる光が宿っていた。

 

「そりゃ頼もしいですね。でも、機体は何を使うんです? 一応、クリスとエルシャのハウザーは持ってきてますけど……」

 

「エルシャが乗ってきたラグナメイルがあるだろう、アレを使わせてもらう。かつて『ヴィルキス』に乗っていた身として、小娘などにはまだまだ負けんと言うことを見せつけてやるとも」

 

 得意げにそう言って、格納庫の隅にある『レイジア』へ歩いていこうとするジル。

 ミツルはそれを、苦笑しながら見送るが……

 

 

 

「悪いことは言わない、無駄だからやめておきたまえ。結果のわかり切っている勝負のために命を懸けるなど、愚か者のやることだよ……アレクトラ」

 

 

 

「「!?」」

 

 突如として格納庫に響いた声。

 

 ミツルとジル、両方にとって、聞き覚えのある……どころではない、聞き間違いようもないその声に、2人は目を見開いて声がした方を振り返った。

 

 しかしてそこには、予想通りの人物が立っていた。

 

 これまでと同じ。要塞の中だろうと、結界の中だろうと……その男は、どこにでも、いつでも、好きなように現れる。

 

「エンブリヲ!?」

 

「何でここにっ……」

 

「やあ、この間ぶりだね、アレクトラ。そして……直接会うのは初めてだな、星川ミツル」

 

 超常の力を持ち、世界の調律者を標榜する男は、殺気交じりで向けられる視線を何ら気にすることもなく、常と同じ不遜な笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

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