その分気合入れて書いたつもりではありますが……
ひさびさにがっつりバトルシーン書きました……第55話、どうぞ。
『神の兵器』とも呼ばれる絶対兵器『ラグナメイル』。
その性能は、デッドコピー版である『パラメイル』と比較して、まさしく天と地と言えるほどの差がある。
武器の火力、装甲やシールドの防御力、継戦能力やその他の特殊能力に至るまで、あらゆる面でラグナメイルはパラメイルを突き放す性能を持つ。
パラメイルと違って、武装の種類において多彩とまでは言えないという点は確かにあるが、それを補って余りあるレベルで、現行の武器の性能が凄まじいため、問題にはならない。
凍結バレットも追加武装もないが、そんな小細工などしなくとも、純粋な力でねじ伏せられるだけの力があるのだ。
ゆえに、パラメイルとラグナメイルでは、相対した場合、ろくに戦いにすらならない……はずである。
しかし、その絶対的な性能さを感じさせないほどに食らいつき、あるいは覆さんとする戦いが、この戦場のあちこちで起こっていた。
「いいかげんに落ちろ、ヒルダ、ロザリー! エンブリヲ君のために!」
「やなこった! お前こそ、その似合わねー機体からさっさと降りな!」
「お前を助けるまで……あたし達は絶対にあきらめないからな!」
歯ぎしりをしながらビームライフルを放つ、クリスの『テオドーラ』。
その攻撃をかいくぐり、ヒルダの『アーキバス』と、ロザリーの『グレイブ』が空中で踊る。性能差を腕と気合、そしてコンビネーションで強引に埋め、今度こそ、こうして出会えた友を絶対に逃すまいと食らいつく。
「アンジュ……あなたは、せっかくのエンブリヲ様の好意を踏みにじって!」
「あんな女の子に悪戯して喜んでるようなド変態の好意なんて願い下げよ、気持ち悪い! あんたこそいい加減目を覚ませ、サリア! あんなのに使われるような女じゃないでしょ、あんたは!」
また別な場所では、こちらはラグナメイル同士の戦い。
アンジュの乗る『ヴィルキス』と、サリアの『クレオパトラ』が火花を散らす。
機体性能が互角であるがゆえに、パイロットの腕で勝るアンジュが押しており、戦意こそ衰えずあるものの、サリアは防戦一方となっていた。
そのアンジュを、時折タスクが支援する形で戦い……また、その戦いに割り込ませないために、ターニャとイルマの機体……『エイレーネ』と『ヴィクトリア』を、機動部隊の他の機体が抑え込む。
そして……それらからまた少し離れた場所では、
「機体が変わったところで……パラメイルじゃラグナメイルには勝てないよ、ミランダ!」
「それは……やってみなきゃわからないでしょっ!」
驚異的な加速で迫りくる、ココの『ビルキス』。その手に持った剣は、直撃すれば、装甲の薄いパラメイル程度の機体であれば、容易く両断して勝負を決めるだろう。
しかし、迫る凶刃を前にしても、ミランダは取り乱すことなく操縦桿を握り、精神を集中する。
すると、その意思に応えるように……ミランダの『グレイブ』の胴体から、いや機体の各所から、澄んだ緑色の光が放たれ始め……出力が爆発的に上がって行く。
(……ッ!? 何、この出力……?)
計測され、コクピットに表示されたその数値に驚きながらも、ココは突撃の勢いを緩めることなく迫り、懐に飛び込んだところで剣を横凪ぎに振るった。
完全に射程範囲内。突進の勢いも載せたこれなら、例えシールドで防御しようとも突破して勝負を決められる。そう確信しての一太刀。
実際、それがただのパラメイルであれば……いや、相当にカスタムされて強化されたものであっても、その予想通りの結末になっただろう。
しかし、目の前の機体は……それに当てはまらなかった。
―――ガ キィン!!
「……っ、嘘!?」
甲高い音と共に、不可視の障壁によって、ビルキスが振り抜いた剣は止められ、グレイブの深緑の装甲に傷一つつけることは叶わなかった。
その一瞬の動揺の隙を突き、ミランダは手に持った銃の狙いをつける……というよりも、ほとんどゼロ距離で構えた。
とっさにココはラグナメイルのシールド機構を発動させ、さらに腕のビームシールドでそれを受ける構えを取るが……直後にミランダが放った光弾は、そのラグナメイルの防御力をもってしても大きな衝撃をコクピットに届かせるものだった。
盾で受け流すような形で受けたことで、破損こそどうにか免れたものの、大きく押し戻されてしまったビルキス。
そこに、体勢を立て直す暇もやらないとばかりに、ミランダは手に持った長銃型武装『ガナリー・カーバー』から、今度は光線……あるいは、光の槍のようにも見えるそれを連射する。
「その程度っ!」
大きく螺旋を描くような動きでそれらの攻撃をかわし、再び懐に飛び込もうとするココ。
照準を合わせ直すのが間に合わず、再びミランダは距離を詰められそうになってしまうが……その直後、銃を構えたまま、ミランダの機体に異変が起こる。
両肩のパーツがスライドして変形し……ちょうど、ラグナメイルが『ディスコード・フェイザー』を放つときのような形態に姿を変えたのである。
その変形に一瞬ぎょっとするココだったが、ミランダがそれを使えるはずがないとすぐに思い直して突撃し……しかし、次の瞬間さらに驚愕することになる。
確かに、発動に『永遠語り』という歌と、皇家の血、そして秘宝の指輪を必要とする『ディスコード・フェイザー』は、ミランダが例えラグナメイルに乗ったとしても使えるわけがないものであるし、そもそもパラメイルに搭載されているはずがない武装である。
実際に、そのグレイブに搭載されていたのは、それではなかった。
ただし、ある意味ではよりたちの悪い武装、と言ってもいいものだった。
「『クラフティブ・レイガン』展開……モード・ニードル!」
展開した肩を覆うように、澄んだ緑色の障壁、あるいは力場のようなものがさらに出現。
その表面から、針のような形をした無数のエネルギー弾が放たれる。
懐に飛び込もうとしていたココに、豪雨のごとく降り注ぐエネルギーの針。
流石に防御しきれないと判断したココは、急旋回してその攻撃から逃れる。幸い射程はそれほどないようで、ある程度離れるだけで、針は空に溶けて消えていった。
しかし、距離を開けたら開けたで、先程と同じように手にした銃からのレーザーにさらされる。
それならばと、ココは自らもビームライフルを撃ってけん制しながら、先程よりもさらに大回りして接近していく。
今度はミランダも機体を動かし、ココのビームライフルの銃撃をかわしながら、遠距離からの射撃で戦いを続ける。
常に距離を保ち、あの手この手で接近させまいとするその様子から、ココはミランダの得意分野が遠距離戦であることを、あるいは逆に、接近戦が不得手であることを見抜いた。
最初、こちらが油断しているうちにその防御力を生かして奇襲を狙った時以降、ずっとミランダはココを近づかせないように戦っている。
それならばと、ここは市街地に飛び込んで建物を遮蔽物にし、得意の射撃もエネルギーの針も通らないようにして戦い始める。
そのココを追いかけて、ミランダも市街地に入り……射線を開けてここに攻撃が通るように、それでいてココに近づきすぎないように注意しつつ戦いを続けていた。
しかし、ココの狙いはただ遮蔽物越しの戦闘を行うだけではなかった。
(……! よし、かかった!)
何度目かの攻防、何度目かの逃走を経て、ミランダはそこに来た。
ココに誘導され、誘い込まれた。
そこは、縦方向に長い大通りになっていて……通りそのものの見通しはいいが、遮蔽物になるような構造物はほとんどない場所だった。
しかも、横道に抜けて退避できるような道はほとんどなく、その上どれも細く、パラメイルどころか普通の乗用車が通ることも困難であろう小ささ。
ゆえに、ある程度その中まで入ってしまうと、一直線に伸びているそのライン上で戦うしかない場所だった。
そこにミランダを誘い込んだココは、ミランダが道の半ば……つまり、引き返して逃げようと思っても絶対に間に合わない位置まで引き込むと、即座に方向転換。
ビームライフルも撃ってけん制しながら、急加速してミランダのグレイブ目掛けて突っ込んでいき……一気に勝負を決めにかかる。シールドを発生させて防御し、エネルギーの針の多少の被弾は許容する形で勝負を決めに行った。
が、防御か回避、あるいは苦し紛れの迎撃に移ると思われていたミランダは……またしてもココの予想に反し……こちらも正面から突っ込んでいく。
ココが驚いた直後には、急加速した機体同士が正面衝突する形になり……とっさにココは、手に持った剣を間に挟んで防御しようとする。
間一髪その防御は間に合ったものの……激突の瞬間、またしても凄まじい衝撃がココの乗るビルキスのコクピットを襲い……ビルキスの方が一方的に吹き飛ばされて体勢を崩した。
まるで、巨大なダンプカーに激突した軽乗用車が吹き飛ばされて転がるように。明らかに強度や勢いに差がある2つの激突と取れるような結果になった。
「な、あっ……何で……私だけ……!?」
「隙あり! 『クラフティブ・レイガン』……モード・マイン!」
激突してなお、ほとんど勢いを落とすことなく飛んで向かってくるグレイブ。
その周囲に、よく目をこらすと見える、球形のシールドが……否、『フィールド』が展開されているのを、ココはかろうじて見ることができた。
おそらくは、あの障壁ごとこちらに突っ込んできたせいで、こちらが一方的に押し負けたのだろうということにも気づけたが、そこからさらに何か推察する暇もなく、次の一手が迫る。
肩口から今度は、丸い大きめのエネルギー弾が何発も……しかし今度は、放物線を描いて飛ぶような軌道で、斜め上に放たれる。
放ちながら、手にした『ガナリー・カーバー』から光弾を連射しながら飛んでいく。
退避しようにも、自分からここに誘い込んだ理由そのもののせいで逃げ場はなく、
さらに、唯一退避できそうな上方向には、今しがた放った光弾が……否、『
そのまま突っ込んでいれば、接触し起爆……そのまま周囲のものが全て起爆し、大ダメージを負っていただろう。
やむを得ず、またしても突っ込んで懐に入らんとするココだが、先程と同じように、振るった剣は不可視の障壁に阻まれ、怯んだ瞬間に両肩から放たれるエネルギーの針の雨。
さらに、離れようとした瞬間に今度は『ガナリー・カーバー』からのビーム連射。
さらに、ビームライフルでけん制しながら離れようとするココに対し、ミランダは逃がさないとばかりに、そのまま突っ込んで追いかけて撃ちまくる。
けん制のビームライフルもものともしない。全て防ぐかかわされ、全く痛打にならない。
『っ……何なの、このパラメイル!? 絶対普通のパラメイルじゃないっ!』
それらの光景を、同じく市街戦の最中で、あるいは空中から見ていた者達がいた。
パラメイルと同様、小型の機体を操る、ミスリルやエステバリス隊の面々である。
きちんと自分達が戦っている敵の相手をしながらも、ある者は驚き、またある者は感心して、ミランダとココの戦いを見て、各々考察を行っていた。
「なあ、今のあれ……シールドごとラグナメイルに突っ込んでいったのって……アキトのあれと同じじゃ……あれ、『ディストーションフィールド』だよな?」
「ネルガルとサイデリアルは協力関係にあったはずだし、『火星の後継者』の機体もいくつか拿捕していたはずだ。それを解析したんだろう」
クルツの疑問に、宗介はそう返すが、そこにさらにアルが口を挟んでくる。
『恐らくそれだけではありません、軍曹。あの機体、『ラムダ・ドライバ』も搭載しているようです』
「何っ!?」
『同様にアマルガムの拿捕した機体を解析したのだと思われます。ディストーションフィールドや、その他のエネルギーが干渉してわかりにくくなっていますが、その2つを並列稼働させているとすれば、正面衝突やビームライフルの直撃でも揺るがないあの防御力も納得できます』
「加えて、あの緑色の光……恐らくだが、星川の『ヘリオース』や、『アルデバル』と同様のエネルギーを動力炉として搭載しているのだろう」
「ありゃ最早、パラメイルの皮をかぶった全く別の何かだね……下手したらラグナメイルよりスペック上なんじゃないの?」
続けてクルーゾーとマオも言う。
その視線の先で、その『全く別の何か』とまで言われたミランダの機体は、手にした『ガナリー・カーバー』と、両肩の『クラフティブ・レイガン』の同時掃射で弾幕を張り、逃げ場を奪ってココのビルキスを乱れ撃っていた。
『戦術は単純ですね。ラムダ・ドライバとディストーションフィールドの防御力で攻撃を防ぎつつ、高火力・高汎用性の遠距離攻撃で、ロングレンジから一方的に攻撃。敵が近づいてきた際には、可能ならば弾幕でけん制して再度距離を取り、それが無理なら防御力に任せて突貫、怯んだところで再度距離をとる、という繰り返しのようです』
「ワンパターンではあるが、逆に言えばシンプルゆえに対策が取りづらいやり方だな……いや、むしろ最初からそのつもりで設計した機体なのかもしれん」
「なるほど、確かにな。元々ミランダは、部隊の中でもそこまで操縦技術が高いわけではない。強力な武装をいくつも積んだところで、使いこなせなければかえって邪魔になる。ミランダの技量と得意な戦術に機体の方を合わせた結果があれなのだろう」
アルと宗介の考察を補足する形でクルーゾーも続けた。
結論を言えば、彼らの推測は全面的に正解である。
ミランダに新たな機体を与えるにあたって一番の問題になったのは、本末転倒な話、彼女自身の技量の未熟さであった。
それも、無理のないことではある。何せミランダは、数か月前に初陣を迎えたばかりの、比喩も誇張も抜きの『新兵』なのだ。
ヒルダやサリアのように、長い期間をかけて鍛え上げた操縦の腕があるわけでもない。
もともと才能があり、また似たようなスポーツの経験があったアンジュとは違い、例えばいきなりラグナメイル級の機体に乗せたところで、その力を存分に発揮して戦えるわけもない。
ゆえにミツルが考えた、ミランダの機体の強化方針は、実に単純なものだった。
「素人にできる戦い方でも強い感じで作ろう」
ミツルも元々は、素人同然の腕でいきなり『アスクレプス』に乗ることになり、その多彩で強力な機能を最初からは使いこなせていなかった。
ゆえに、その頃のことを思い出せば、『このくらいのことしかできないのでこの程度の機能でいい』『その機能の範囲でなるべく強くしてほしい』という感覚がわかる。
重視したのは、ミランダが主に使う戦術。
エルシャやサリアと同じく、遠距離での射撃・狙撃がメイン。
ただ、そういう戦い方というのは、逆に敵に補足・狙撃されないように、あるいは敵の接近を許さないようにする、位置取りや立ち回りが重要になる。
こちらが狙いをつけている間に逆に狙い撃たれたり、撃っている間に接近されることは絶対に避けなければならない。また、遠くの敵に注意が行ってしまい、他の敵の接近や攻撃に気づかないなどの事態も注意するべきである。
そのあたりの立ち回りにまだ不安が残るミランダを手っ取り早く強化するには、敵に狙いをつける際のアシスト機能に加え、単純に武器の火力や射程距離の強化、そして何より、相手の反撃に対する防御性能を強化するのが一番効率的であるとミツルは見た。
ゆえに、まずは防御の要として『ディストーションフィールド』を搭載。これは、相手の攻撃に対してオートで発動する。
加えて、その補助として『ラムダ・ドライバ』と、宗介達は気づかなかったが、次元力を用いた『D・フォルト』も搭載し、射撃機としては過剰なほどに防御をガチガチに固めた。
そして攻撃面では、超射程かつ高火力の『ガナリー・カーバー』をメイン武器として所持。
さらにサブの兵装として、両肩には『クラフティブ・レイガン』を組み込んだ。
『クラフティブ・レイガン』は、他の武装のように、既存の技術を解析したり、アスクレプスの中にあったデータから作成したものではない。
それらも参考程度にはしているものの、あくまで設計段階からミツル自身が組み上げた、いわば『サイデリアル・ホールディングス製』と言っていい武器である。
強いて言うなら、『バースカル』内にあったガーディム製の兵器もいくつか参考にしていたが。
この武器は射撃系の兵装であるが、砲身や発射口というものがなく、機体表面に層状のエネルギーフィールドを発生させ、それを媒介にエネルギー弾を放つ形になっている。
その形状は変幻自在。もちろん、ビームライフルのように普通に放つこともできるし、大口径の砲弾にして放つこともできる。球体に固めて設置することで機雷のように使ったり、無数の針のような形で散弾のようにばら撒くこともできる。
なお、『ガナリー・カーバー』の方も、これほどではないものの、連射や大威力のフルバーストなど、様々な銃撃のバリエーションがある。
基本は遠距離から『ガナリー・カーバー』による銃撃・砲撃。
接近されたら『クラフティブ・レイガン』で機雷や散弾を放ってけん制し、再度距離をとる。
あるいは、ココに対して先程やってみせたように、3つの防御機構を全開にし、強固な障壁を纏って自らを砲弾として突貫するでもいい。
そして、それら全てを支える動力は、ミツルがもたらした技術の核とも呼べる『次元力』。
人の意思に応えて、その源理の力を引き出す『Dエクストラクター』。
モビルスーツの巨体を支える『常温核融合炉』と比較してなお、別格の出力を当たり前のように発揮する、文字通り別次元の動力炉である。
動力・火力・防御性能……それら全てが『パラメイル』とはまるで違うその機体は、ココの言う通り、全くの別物というにふさわしい存在だった。
「この、ビルキスでも……ラグナメイルでも、押し切れないなんて……! 機体性能頼りの、ミランダなんかにっ……!」
「それは……お互い様でしょ!」
ビームライフルでけん制しながら懐に飛び込もうとするココ。
それを防いで立ち回り、接近を許さず撃ち続けるミランダ。
ココの攻撃は防がれ、ミランダの攻撃はかわされる。
互いに慎重になったがゆえに、千日手に持ち込まれるかと思われた戦いだったが、その均衡を崩すべく、先にココが動いた。
「ビームライフルやブレードの威力じゃ、あの防御を抜くことはできない……超至近距離から最高出力でライフルを撃つくらいじゃないと……いや、それでも……なら!」
何かを考えついたらしいココは、ミランダの攻撃を避けながら、全速力で突貫していく。
逃げても追いつかれると悟ったミランダは『クラフティブ・レイガン』で周囲に機雷を出す。
しかしその瞬間、ココがさらに加速し……なんと機雷がばら撒かれる中を、無視して突っ込んできた。一直線に、最短距離で。
「なっ……ココ!?」
「機雷を出したばかりなら……シールドもないでしょ!?」
どれだけ堅い防御だとしても、攻撃する瞬間にそれはない。
ならば、ミランダが攻撃する瞬間……そのための機雷を出している最中であれば、その瞬間だけは防壁もなく、こちらの攻撃が当たる。
「っ……ぐぅぅ……この、くらい……エンブリヲ様の、ためぇ!」
当然、突っ込んでいって接触したエネルギー機雷は起爆し、ココの機体はダメージを受ける。しかしそれも気にせず、ココはビームライフルを連射しながら飛ぶ。
着弾直前に発動させた『D・フォルト』によってそれは防がれてしまうが、
「やっぱり……すぐに万全の防御にはできないみたいね。さっきより機体が大きく揺れてるよ……これなら、こっちの攻撃も通る!」
そのままライフルを連射しながら距離を詰め、懐に飛び込み……こちらも自らの機体を弾丸に見立てて突撃するココ。
本命の攻撃……手に持った剣の切っ先をミランダに向け、突進の勢いも載せてそれを突き立てようとする。
「……っ……!」
ミランダは更に周囲に機雷をばらまくも、ココはそれで怯むことも一切なかった。
「失敗だねミランダ! それじゃ余計に防御が薄くなって……っ!?」
しかし、その瞬間。
もうあと1~2秒後には彼我の距離が0になるというタイミングで……ココの眼前から、ミランダの機体が……かき消されたように消失した。
それと同時に、ビルキスのコクピットで、敵機の反応を現すアラートがなる。
場所は……今いるココから、上空高い位置。
その反応は……ミランダの機体。
そのごくわずかな時間で……ココは、今の一瞬で何が起こったのかを察した。
思い出したからだ。最初にミランダが、どうやって自分の目の前に現れたかを。
「ボソン……ジャンプ……!」
最早、目の前に……飛んでいく先にミランダはいない。
しかし、機雷はそのまま残されている。
そして、加速しすぎた機体は……急には止まれない。
ココはビームライフルを乱れ討って機雷を誘爆させ、さらにビームシールドを前方に構えることで衝撃の緩和を図るも、立て続けに起爆する機雷の爆発は、容赦なくビルキスにダメージを刻んでいく。
その瞬間、ミランダが上空から『ディストーションフィールド』を纏って急降下し、ビルキスに激突。そのまま機雷群をぶちぬいて地上まで押し込み……地面にたたきつけた。
シールド機構で緩和したものの、その衝撃はあまりにも大きかった。
加えて、特攻同然に機雷群に突っ込んだせいで、機体そのものもボロボロになり、動作不良もあちこちに生じている。
衝撃で剣もビームライフルもどこかに飛んでいってしまい、ビームシールドの発生装置も火花を噴いて沈黙している。
最早まともに飛べるかどうかすら危うい状態にまでなったビルキスのコクピットでは、いくつものモニターが消え、あるいは明滅したり、ノイズが走っている。様々なアラートが、先程から鳴りっぱなしでうるさい限りだった。
そんな光景の中、唯一生きているモニターには……倒れ伏しているのであろうビルキスを見下ろしながら、ミランダのグレイブが、手に持った銃を突き付けている光景が映っている。
それを目にしたココは……自身の敗北を悟らざるを得なかった。
「……おめでとう。ミランダの勝ちだね」
「……うん。あんたの負けだよ、ココ」
スピーカー越しに聞こえるミランダの声は、勝利者であるにも関わらず、ちっとも嬉しそうなものではなかった。